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第四章 交易発展編
142、街の様子と転移板
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次の日の朝。
俺は朝食を食べてから、父上と共に歩きで屋敷の敷地から外に出た。外にはしばらく屋敷で働く人達の住居や畑などがあり、その先から住宅街に入るようだ。そして住宅街をさらに進むと大通りがあり、屋台やお店が密集しているところがある。
「自然豊かで開放的で、とても気持ちが良いですね」
外壁も王都より低いので、より開放感を感じるのだと思う。後はやっぱり家の密集度合いが全く違うからだろう。王都みたいな感じも栄えている雰囲気で好きだけど、こういう開放的な街も長閑で良い。
「私はこちらの街が好きなんだ」
「分かります。空気も美味しい気がします」
そんな話をしながら父上と歩いていると、たくさんの領民達に話しかけられる。
「旦那様、もしかして……フィリップ様かい!?」
「そうだ。息子をよろしく頼む」
「こちらこそだよ。それにしても旦那様に似て賢そうなお方だね~」
グイグイ来るおばちゃんに捕まったけど、全く嫌味はなくて親愛の感情が伝わってくるのでとても嬉しい。王都ではこうして平民と関わる機会ってあんまりないから、久しぶりにこうして話すと楽しいな。
「領地をもっと良くしていくから、これからよろしくね」
「期待してるよ!」
それからも礼儀正しい人やおばちゃんのように接してくる人、それから子供達などいろんな人と接しながら街を見て回った。そして最後に辿り着いたのは私兵団の勤務地である門だ。
門には私兵団の皆が休憩する部屋があって、父上はその中に入っていく。
「皆、ちょっと集まってくれるか?」
「はっ!」
父上の声掛けによって兵士達が集まると、門の中にはかなりの人数がいたみたいで、俺達の周りにはちょっとした人垣ができた。
今日の朝に屋敷内にある私兵団詰所で兵士の皆とは挨拶をしたんだけど、家族がいてそこには住んでない兵士もたくさんいるみたいで、こっちにも顔を出しに来たのだ。
「息子のフィリップだ。これからしばらくは領地にいるから顔を覚えてほしい。危険なことがないように頼む」
「かしこまりました!」
兵士の中でも一番先頭にいる男性が、ビシッと敬礼をしながらそう答えてくれた。この人は団長とか、何かしら役職がある人なんだろうな。
「フィリップ・ライストナーです。この街は長閑でとても良い雰囲気だと思う。これからもよろしくね」
「評価していただき光栄です。これからもこの街のために、精一杯働かせていただきます!」
「ありがとう。期待してるよ」
そうして皆に挨拶をして、兵士達はさっき返事をしてくれていた男性を残して持ち場に戻って行った。その男性は父上が呼び止めていて、これから俺達と話し合いをするそうだ。
「改めまして、ヤニックと申します。ライストナー公爵家私兵団、団長をしております。よろしくお願いいたします」
ソファーに腰掛けると、男性はさっそく挨拶をしてくれた。
「団長だったんだ。改めてよろしくね」
俺の予想は当たってたな。それにしてもこの人が団長なのか……真面目で誠実そうで、確かに団長には向いてるだろう。ガタイが良くて強そうだし。
でもかなり若く見える。多分……二十代半ばぐらいかな。ここまで若い団長は珍しい気がする。
「フィリップ、ヤニックはかなり強いんだ。それに魔力も豊富で魔法陣魔法を習わせたいと思っていた」
「そうなのですね。では私が領地にいる間に教えましょうか?」
「良いのか? ならば空いている時間で頼みたい」
「魔法陣魔法を教えていただけるのですか!」
ヤニック団長は嬉しそうに瞳を輝かせて反応した。魔法陣魔法についての情報は流れてきたけど、まだ領地では習得する術がなかったんだろう。ここで俺が団長に教えれば今度は団長が教える立場になれるし、本腰入れて教えようかな。
「もちろん教えるよ。今回一緒に来てる騎士と冒険者も魔法陣魔法を使えるから、俺に時間がない時は皆に教えてもらうと良いと思う」
「ありがとうございます……!」
「ではヤニック、フィリップ達がいる間に魔法陣魔法を習得するように」
「かしこまりました」
ヤニック団長がやる気十分な様子で頷いたところで、父上が居住まいを正した。
「さっそく本題に入るが、転移板のことは聞いているか?」
「はい。どのようなもので、設置に際して注意が必要だということは聞いております」
「それなら話は早い。その転移板の設置場所だが、門にある休憩室の一室にしようかと考えている。警備のしやすさや、万が一転移板を使って敵が現れた場合にどこなら一番被害が少ないかを考えた結果だ」
最初は屋敷の一室に設置しようと思ってたんだけど、それは危険じゃないかってことで領地側では門に設置することに変更したのだ。ちなみに王都では他に良い場所がなくて公爵家の屋敷に設置しているけど、そのうち屋敷の庭に転移板を設置するための建物を建てる予定だ。
「確かに……門ならば兵士が常駐していますし、警備の負担は減ると思います。また門は敵が入り込んだ時のために入り組んだ作りとなっていて、部屋が細かく分かれるような工夫もされています。この街では一番適した場所だと愚考いたします」
「ああ、私もそう思っている。したがってここに転移板を設置するので、設置する部屋を決めてもらいたい。さらに警備体制についても考えてくれないか? できれば今日中に体制を整えたい」
「かしこまりました。少々お待ちください」
それからヤニック団長は部下に頼んで、門の地図を持ってきてくれた。机の上に広げて皆で覗き込みながら話を再開する。
「こちらの部屋が良いのではないかと思うのですが」
「ほう、確かにありだな」
団長が指差したのは物置のような小さな部屋だった。ここなら万が一、対になる転移板から敵が流れ込んできたとしても、部屋に敵が留まれないというのは良いだろう。
「実際に運用してみると問題点も浮かび上がるだろうし、とりあえずここにしよう」
「そうですね。何かあればまた場所を変えましょう」
「かしこまりました。ではこちらに設置するということで準備を進めます。警備は三人一組で交代でやることにしますので、こちらも問題があれば改善いたします」
それからはヤニック団長を中心に兵士の皆が動いてくれて、転移板は無事に設置された。これでティナにいつでも会いに行ける……!
俺は朝食を食べてから、父上と共に歩きで屋敷の敷地から外に出た。外にはしばらく屋敷で働く人達の住居や畑などがあり、その先から住宅街に入るようだ。そして住宅街をさらに進むと大通りがあり、屋台やお店が密集しているところがある。
「自然豊かで開放的で、とても気持ちが良いですね」
外壁も王都より低いので、より開放感を感じるのだと思う。後はやっぱり家の密集度合いが全く違うからだろう。王都みたいな感じも栄えている雰囲気で好きだけど、こういう開放的な街も長閑で良い。
「私はこちらの街が好きなんだ」
「分かります。空気も美味しい気がします」
そんな話をしながら父上と歩いていると、たくさんの領民達に話しかけられる。
「旦那様、もしかして……フィリップ様かい!?」
「そうだ。息子をよろしく頼む」
「こちらこそだよ。それにしても旦那様に似て賢そうなお方だね~」
グイグイ来るおばちゃんに捕まったけど、全く嫌味はなくて親愛の感情が伝わってくるのでとても嬉しい。王都ではこうして平民と関わる機会ってあんまりないから、久しぶりにこうして話すと楽しいな。
「領地をもっと良くしていくから、これからよろしくね」
「期待してるよ!」
それからも礼儀正しい人やおばちゃんのように接してくる人、それから子供達などいろんな人と接しながら街を見て回った。そして最後に辿り着いたのは私兵団の勤務地である門だ。
門には私兵団の皆が休憩する部屋があって、父上はその中に入っていく。
「皆、ちょっと集まってくれるか?」
「はっ!」
父上の声掛けによって兵士達が集まると、門の中にはかなりの人数がいたみたいで、俺達の周りにはちょっとした人垣ができた。
今日の朝に屋敷内にある私兵団詰所で兵士の皆とは挨拶をしたんだけど、家族がいてそこには住んでない兵士もたくさんいるみたいで、こっちにも顔を出しに来たのだ。
「息子のフィリップだ。これからしばらくは領地にいるから顔を覚えてほしい。危険なことがないように頼む」
「かしこまりました!」
兵士の中でも一番先頭にいる男性が、ビシッと敬礼をしながらそう答えてくれた。この人は団長とか、何かしら役職がある人なんだろうな。
「フィリップ・ライストナーです。この街は長閑でとても良い雰囲気だと思う。これからもよろしくね」
「評価していただき光栄です。これからもこの街のために、精一杯働かせていただきます!」
「ありがとう。期待してるよ」
そうして皆に挨拶をして、兵士達はさっき返事をしてくれていた男性を残して持ち場に戻って行った。その男性は父上が呼び止めていて、これから俺達と話し合いをするそうだ。
「改めまして、ヤニックと申します。ライストナー公爵家私兵団、団長をしております。よろしくお願いいたします」
ソファーに腰掛けると、男性はさっそく挨拶をしてくれた。
「団長だったんだ。改めてよろしくね」
俺の予想は当たってたな。それにしてもこの人が団長なのか……真面目で誠実そうで、確かに団長には向いてるだろう。ガタイが良くて強そうだし。
でもかなり若く見える。多分……二十代半ばぐらいかな。ここまで若い団長は珍しい気がする。
「フィリップ、ヤニックはかなり強いんだ。それに魔力も豊富で魔法陣魔法を習わせたいと思っていた」
「そうなのですね。では私が領地にいる間に教えましょうか?」
「良いのか? ならば空いている時間で頼みたい」
「魔法陣魔法を教えていただけるのですか!」
ヤニック団長は嬉しそうに瞳を輝かせて反応した。魔法陣魔法についての情報は流れてきたけど、まだ領地では習得する術がなかったんだろう。ここで俺が団長に教えれば今度は団長が教える立場になれるし、本腰入れて教えようかな。
「もちろん教えるよ。今回一緒に来てる騎士と冒険者も魔法陣魔法を使えるから、俺に時間がない時は皆に教えてもらうと良いと思う」
「ありがとうございます……!」
「ではヤニック、フィリップ達がいる間に魔法陣魔法を習得するように」
「かしこまりました」
ヤニック団長がやる気十分な様子で頷いたところで、父上が居住まいを正した。
「さっそく本題に入るが、転移板のことは聞いているか?」
「はい。どのようなもので、設置に際して注意が必要だということは聞いております」
「それなら話は早い。その転移板の設置場所だが、門にある休憩室の一室にしようかと考えている。警備のしやすさや、万が一転移板を使って敵が現れた場合にどこなら一番被害が少ないかを考えた結果だ」
最初は屋敷の一室に設置しようと思ってたんだけど、それは危険じゃないかってことで領地側では門に設置することに変更したのだ。ちなみに王都では他に良い場所がなくて公爵家の屋敷に設置しているけど、そのうち屋敷の庭に転移板を設置するための建物を建てる予定だ。
「確かに……門ならば兵士が常駐していますし、警備の負担は減ると思います。また門は敵が入り込んだ時のために入り組んだ作りとなっていて、部屋が細かく分かれるような工夫もされています。この街では一番適した場所だと愚考いたします」
「ああ、私もそう思っている。したがってここに転移板を設置するので、設置する部屋を決めてもらいたい。さらに警備体制についても考えてくれないか? できれば今日中に体制を整えたい」
「かしこまりました。少々お待ちください」
それからヤニック団長は部下に頼んで、門の地図を持ってきてくれた。机の上に広げて皆で覗き込みながら話を再開する。
「こちらの部屋が良いのではないかと思うのですが」
「ほう、確かにありだな」
団長が指差したのは物置のような小さな部屋だった。ここなら万が一、対になる転移板から敵が流れ込んできたとしても、部屋に敵が留まれないというのは良いだろう。
「実際に運用してみると問題点も浮かび上がるだろうし、とりあえずここにしよう」
「そうですね。何かあればまた場所を変えましょう」
「かしこまりました。ではこちらに設置するということで準備を進めます。警備は三人一組で交代でやることにしますので、こちらも問題があれば改善いたします」
それからはヤニック団長を中心に兵士の皆が動いてくれて、転移板は無事に設置された。これでティナにいつでも会いに行ける……!
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