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第3章 黒山編
111、兵士の到着
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フィーネがいるところに着くと、そこには横たわった男性が一人いた。近くには少し白髪が目立つ女性が涙を浮かべていて、倒れている男性も同じぐらいの年齢だ。
服装が全く戦いに適してないものであることからも、運悪く現場に居合わせた観光客だろう。
「フィーネ、どうしたっ?」
荒くなった息を整えながら問いかけると、男性の容体を真剣に確認していたフィーネがバッと顔を上げた。
「エリク! この男性が全身に火傷を負ってるの。回復薬を試したんだけどあんまり回復しなくて、多分強回復薬じゃないと無理だと思う。強回復薬ってまだある?」
「もちろんある。さっそく使おう」
男性の意識が全くないことを確認して、俺は急いで強回復薬を取り出す。そしてフィーネが回復薬を染み込ませていた布を取り除き、今度は強回復薬を染み込ませた布で特に火傷の酷い部分を覆った。
「回復薬って飲ませた?」
「それが飲ませようとしたんだけど、目を覚ましてくれないから難しくて、とりあえず回復薬は全部布に染み込ませたの。ほら、無理に飲ませて肺に入ると大変だって前に聞いたから……」
そうだ、確か治癒院では管を使って直接回復薬を体内に入れるんだ。でも俺たちにそんなことはできない。
「あなた、ほら起きて。早く起きないとダメよ。回復薬を飲んで……!」
男性の妻だろう女性が必死に声をかけてくれるけど、男性は目を覚さない。
どう動くのが正解なのだろう。ここで無理にでも飲ませるか、それとも街にある治癒院まで運ぶか、または強回復薬を全て布に染み込ませて火傷を覆うか。
どれを選べば男性が助かる可能性が高いのか、判断がつかない。多分強回復薬を飲めないとしてもこうして半分以上は使っていて、その上で目を覚さないのは、かなり酷い状態なんだと思う。
「フィーネ……」
自分の中では答えが出ず、フィーネに声をかけようとしたその時。街の方から大勢の人たちがやってくるのが見えた。
一部は騎乗していて、他の人たちは隊列を組んでこちらに来ているようだ。
「もしかして、街にいる兵士とか?」
「多分そうだよ! 先に逃げた人たちが兵士を呼んでくれたんだっ」
フィーネが興奮した様子でそう叫びながら立ち上がると、大きく手を振った。
「すみませーん! ここに怪我人がいます! 治癒行為をできる方はいませんか!」
その言葉で俺も気づいた。兵士団とか騎士団には、必ず治癒をできる人がいるのだと聞いたことがあるのだ。
「ここです! 重病人がいます!」
俺も両手を振ってアピールすると、騎乗で真っ先に現場へと到着した人たちの中から、数人が俺たちの下に来てくれた。
「どうした!」
「怪我人か!」
「はい。この男性が全身に火傷を負っています。持っていた強回復薬を布に染み込ませて火傷部分を覆っていて、残り半分を飲ませようとしたのですが、意識がなくて飲ませることができていません」
現状を簡潔に伝えると、若い一人の男性が馬からひらりと飛び降りた。男性は大きなカバンのようなものも馬から下ろすと、急いでこちらに来てくれる。
「僕が治癒をできます。残っている強回復薬をもらえますか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます。もう少し待っていてください。回復薬を流し込む準備をします」
「は、はいっ」
男性は真剣な表情で手際よく動き、意識のない男性の体位を変えたり、いろいろな器具を準備して、細い管を男性の口から中に入れた。
そして管の先に回復薬を流し込むための口みたいなものを取り付けると、そこに強回復薬を少しずつ流し入れる。
「これで大丈夫です。強回復薬がこの場になければ、この方は助からなかったかもしれません。この強回復薬はあなたが?」
男性にそう聞かれ、俺は素直に頷いた。
「はい。俺は冒険者と共に錬金もしていて、自分で作ったものを持ってたんです」
「そうだったのですね。治癒へのご協力、本当にありがとうございます」
そう言って頭を下げた男性は、今度はテキパキと管を取り除き始める。そしてそれが終わる頃に、さっきまで意識がなかった男性が僅かに身じろぎした。それと共に瞼が開き、ゆっくりと上半身を起こす。
その様子を見ていた治癒を施した男性は、驚いたように目を大きく見開いた。
「随分と効果が高いな……」
その言葉に、俺は心臓が跳ねるのを感じる。やっぱり俺が作る強回復薬って、素材変質スキルの影響で普通の強回復薬よりも効果が高いのだろうか。
もしそうだとしても……他人に使うことなんて稀だし、騒ぎになることはないよな。俺は自分の中でそう結論づけて、大きく深呼吸をした。
そうしている間にも治癒を施した男性が火傷から生還した男性と話をしていて、もう問題なさそうだ。妻だろう女性も泣きながら笑っていて、助けられて良かったと心から思う。
「フィーネ、良かったな」
「うん。間に合って良かった。エリクの力のおかげだね」
「これからも錬金を頑張るよ」
二人でそんな話をしていると、その様子を遠巻きに見ていた別の兵士の男性が俺たちの下に近づいてきた。そして眉間に皺を寄せた険しい表情で口を開く。
「君たち、サラマンダーと戦っている魔物のことを知っているか?」
その言葉に、フィーネがあっと呟きながらすぐに答えた。
「あの子たちは私の従魔なんです。サラマンダーを倒してくれるはずなので、もう少しだけ待っていてもらえますか?」
服装が全く戦いに適してないものであることからも、運悪く現場に居合わせた観光客だろう。
「フィーネ、どうしたっ?」
荒くなった息を整えながら問いかけると、男性の容体を真剣に確認していたフィーネがバッと顔を上げた。
「エリク! この男性が全身に火傷を負ってるの。回復薬を試したんだけどあんまり回復しなくて、多分強回復薬じゃないと無理だと思う。強回復薬ってまだある?」
「もちろんある。さっそく使おう」
男性の意識が全くないことを確認して、俺は急いで強回復薬を取り出す。そしてフィーネが回復薬を染み込ませていた布を取り除き、今度は強回復薬を染み込ませた布で特に火傷の酷い部分を覆った。
「回復薬って飲ませた?」
「それが飲ませようとしたんだけど、目を覚ましてくれないから難しくて、とりあえず回復薬は全部布に染み込ませたの。ほら、無理に飲ませて肺に入ると大変だって前に聞いたから……」
そうだ、確か治癒院では管を使って直接回復薬を体内に入れるんだ。でも俺たちにそんなことはできない。
「あなた、ほら起きて。早く起きないとダメよ。回復薬を飲んで……!」
男性の妻だろう女性が必死に声をかけてくれるけど、男性は目を覚さない。
どう動くのが正解なのだろう。ここで無理にでも飲ませるか、それとも街にある治癒院まで運ぶか、または強回復薬を全て布に染み込ませて火傷を覆うか。
どれを選べば男性が助かる可能性が高いのか、判断がつかない。多分強回復薬を飲めないとしてもこうして半分以上は使っていて、その上で目を覚さないのは、かなり酷い状態なんだと思う。
「フィーネ……」
自分の中では答えが出ず、フィーネに声をかけようとしたその時。街の方から大勢の人たちがやってくるのが見えた。
一部は騎乗していて、他の人たちは隊列を組んでこちらに来ているようだ。
「もしかして、街にいる兵士とか?」
「多分そうだよ! 先に逃げた人たちが兵士を呼んでくれたんだっ」
フィーネが興奮した様子でそう叫びながら立ち上がると、大きく手を振った。
「すみませーん! ここに怪我人がいます! 治癒行為をできる方はいませんか!」
その言葉で俺も気づいた。兵士団とか騎士団には、必ず治癒をできる人がいるのだと聞いたことがあるのだ。
「ここです! 重病人がいます!」
俺も両手を振ってアピールすると、騎乗で真っ先に現場へと到着した人たちの中から、数人が俺たちの下に来てくれた。
「どうした!」
「怪我人か!」
「はい。この男性が全身に火傷を負っています。持っていた強回復薬を布に染み込ませて火傷部分を覆っていて、残り半分を飲ませようとしたのですが、意識がなくて飲ませることができていません」
現状を簡潔に伝えると、若い一人の男性が馬からひらりと飛び降りた。男性は大きなカバンのようなものも馬から下ろすと、急いでこちらに来てくれる。
「僕が治癒をできます。残っている強回復薬をもらえますか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます。もう少し待っていてください。回復薬を流し込む準備をします」
「は、はいっ」
男性は真剣な表情で手際よく動き、意識のない男性の体位を変えたり、いろいろな器具を準備して、細い管を男性の口から中に入れた。
そして管の先に回復薬を流し込むための口みたいなものを取り付けると、そこに強回復薬を少しずつ流し入れる。
「これで大丈夫です。強回復薬がこの場になければ、この方は助からなかったかもしれません。この強回復薬はあなたが?」
男性にそう聞かれ、俺は素直に頷いた。
「はい。俺は冒険者と共に錬金もしていて、自分で作ったものを持ってたんです」
「そうだったのですね。治癒へのご協力、本当にありがとうございます」
そう言って頭を下げた男性は、今度はテキパキと管を取り除き始める。そしてそれが終わる頃に、さっきまで意識がなかった男性が僅かに身じろぎした。それと共に瞼が開き、ゆっくりと上半身を起こす。
その様子を見ていた治癒を施した男性は、驚いたように目を大きく見開いた。
「随分と効果が高いな……」
その言葉に、俺は心臓が跳ねるのを感じる。やっぱり俺が作る強回復薬って、素材変質スキルの影響で普通の強回復薬よりも効果が高いのだろうか。
もしそうだとしても……他人に使うことなんて稀だし、騒ぎになることはないよな。俺は自分の中でそう結論づけて、大きく深呼吸をした。
そうしている間にも治癒を施した男性が火傷から生還した男性と話をしていて、もう問題なさそうだ。妻だろう女性も泣きながら笑っていて、助けられて良かったと心から思う。
「フィーネ、良かったな」
「うん。間に合って良かった。エリクの力のおかげだね」
「これからも錬金を頑張るよ」
二人でそんな話をしていると、その様子を遠巻きに見ていた別の兵士の男性が俺たちの下に近づいてきた。そして眉間に皺を寄せた険しい表情で口を開く。
「君たち、サラマンダーと戦っている魔物のことを知っているか?」
その言葉に、フィーネがあっと呟きながらすぐに答えた。
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