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1巻
1-3
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「エリクごめん、そんなに悩まないで? もう意地悪なことしないから」
フィーネのその言葉で、今までの言動は故意だったと判明した。
「やっぱりそうだったのか!」
「初心な感じの反応が楽しくて、ごめんね。いつもはあんまりこういうことしないんだけど、エリクはなぜかいいかなって……」
不思議そうなフィーネに、俺は思わず胸を押さえてしまう。多分今の言葉は、素で言ってたよな……そういうのが一番グッと来るんだ。
俺がかなり弱いからっていうのが大きな理由だと思うが、俺に壁を作らないでくれるのは素直に嬉しい。でもその信頼を裏切れないというのは、ちょっとだけ辛いかもしれない。
「……控えめにしてくれると嬉しい。あとフィーネは可愛いから、もっと気を付けた方がいいぞ」
なんとかダメージを受けながらもそう伝えると、少しだけぽかんとしていたフィーネが、じわじわと頬を赤くしていった。
「えっと……ありがとう」
もしかして可愛いって言葉に照れたの? そういうところは純粋とか、ズルい……
「とにかく、移動しよう」
これ以上この話を広げるのはダメだと思い、そう提案した。
するとフィーネも、すぐ頷いてくれる。
「そうだね。お腹空いたし、早く岩場に行こうか」
それから俺たちは森を出て、街から少し離れた場所に向かった。
そこは、草原の中にあるちょっとした岩石地帯みたいなところだ。
「ここでいい?」
「ああ、もちろんだ。こんなところがあるんだな」
今までの生活では知ることもなかった街の外の環境に、少し楽しくなって心が浮き立つ。
まあ呑気に楽しんでいられるのは、リルンのおかげなんだけどな。
さっきから襲いかかってくる魔物は全てリルンが瞬殺してくれるから、全く危険を感じることなく街の外を歩けていた。
「そういえば、魔物素材ってどの段階で採取前になるのかな」
リルンが倒した魔物をさっきまでと同じように解体しようとして、フィーネがふと思い付いたように口を開く。
確かに……魔物素材はまだ試してなかったな。
「解体前に触れてみてもいいか? もしかしたら、ダメになるかもしれないけど」
「もちろんいいよ。ちゃんと解体するのも面倒で、さっきから魔石しか取ってないから」
苦笑しつつ告げたフィーネの言葉に、俺も同じような表情を浮かべた。
「うん、もったいないと思ってた。でもこの速度でリルンが魔物を倒してたら、確かにちゃんと解体するのは面倒だよな。持ち帰れる量にも限度があるし」
「そうなんだよね。だから大体は魔石しか取らなくて、たまに貴重な部位や毛皮、あとは私たちの食事用にお肉ぐらいかな」
そんな話をしながら、フィーネが首元を引き裂かれたホーンラビットを手渡してくれる。
俺は魔物をその状態で見ることはほとんどなかったので、少しだけ躊躇いつつ受け取った。
するとその瞬間、ホーンラビットがキラキラとした光に包まれ、光が収まって現れたのは――
「え、アイアンラビットだよね!?」
「だ、だと思う……」
ホーンラビットの上位種である、角部分が純度の高い鉄でできているアイアンラビットだった。
「魔物は解体前に触れるといい方向に変質するんだね」
「そうみたいだな……」
改めて自分のスキルに驚く。
これってかなり凄いスキルだよな。アイアンラビットなんて、相当稀にしかお目にかかれない魔物だったはずだ。錬金工房で働いていた六年間で、数回しか見たことがない。
「アイアンラビットの角は持ち帰ろうか」
それからフィーネが手早く解体を済ませ、俺たちは昼食を食べながら話をすることになった。
『早く食べよ!』
『もう腹ペコだ』
「すぐ準備するから、ちょっと待ってね」
待ちきれない二人に笑いながら、フィーネが準備をしてくれる。
俺とフィーネは肉や野菜をパンに挟んだサンドパンで、ラトはもちろんファムの実、そしてリルンは砂糖がたっぷりと付いた揚げパンみたいだ。
さっそくサンドパンを口に運ぶと、味がしっかりと付いていてパンもパリッと歯応えがあり、とても美味しい。
『やっぱりファムの実は最高だね! 何個食べても美味しい!』
『このパン屋は当たりだな。絶妙な揚げ具合だ』
二人も満足なようだった。
そんな二人の様子を確認してから、フィーネが口を開く。
「じゃあ、まずは私から話をするね。私はこの国シュトイヤー王国じゃなくて、スピラ王国にある小さな村で生まれたの。スキルが発現したのは十五歳の時。両親は私が小さい頃に病気で死んじゃって、私は親戚の家で育てられたんだけど、その親戚は私のことを嫌いだったんだ。だから隣村の権力者だっていう嫌な感じの男に嫁がされそうになって、それに抵抗してる時にちょうど、このスキルが発現した」
フィーネは軽い口調で話しているけど、予想外に重い話の導入に驚く。
「最初は使い方なんて分からなくて、このスキルが役に立つのかどうかも分からなかったけど、神獣を召喚できるなんて強そうじゃない? だからこのスキルにかけて、嫁がされる前日に村を逃げ出したんだ。鞄に数日分の食料だけ詰め込んでね」
「行動力あるな……」
「でしょ?」
思わず溢してしまった感想に、フィーネはイタズラな笑みを浮かべた。
「それで近くの森の中に隠れて、必死に神獣を召喚しようと頑張ったの。でも召喚陣はすぐに出現させられたのに、召喚陣から何も現れずに三日が過ぎて、そろそろ食料も尽きるしどうしよう……そう焦ってた時、偶然近くの木に生ってたコルンの実が召喚陣の中に落ちたんだ。それでラトが召喚されて」
ということは、神獣を召喚するには何かしらの捧げ物? みたいなやつが必要ってことか。それは何かの偶然がないと気付けないな。
「フィーネ、よく生きてたな」
あまりにも無謀な逃亡劇にそんな感想を漏らすと、フィーネも苦笑しつつ頷く。
「本当に幸運だったよ。三日間魔物に襲われなかったし、何よりもラトを召喚できたからね。そこからはラトに色々と教えてもらって、リルンの召喚にも成功して、二人と一緒に表向きはテイマーとして冒険者をやってるんだ。もう冒険者になって三年目かな」
「スキルのことは誰にも話してないのか?」
「うん。私のスキルはテイマーだって簡単に誤魔化せるから、その方が面倒がないかなって」
確かにそうか。俺も最初は普通にテイマーだと思ったんだ。まさか神獣なんじゃ? なんて疑う人はいないだろう。
「あと他に話すことはあるかな……あっ、二人の能力についても話しておくね」
フィーネはそう言うと、まずはラトの能力から説明してくれるのか、ファムの実に夢中なラトを手のひらの上に乗せた。
「ラトは印を付けた場所に自分だけ瞬間移動できる能力があって、あとは結界っていう透明な壁みたいなやつを作り出せるんだ」
俺がその説明を聞いて首を傾げていると、ファムの実から口を離したラトが、追加で説明をしてくれる。
『瞬間移動の印は十ヶ所に付けられるんだ。エリクの肩にも付けておくから、フィーネとエリクは僕を通していつでも意思疎通ができるよ。あと結界は、こういうやつ!』
ラトが小さな右手を前に出すと、俺の身長より高くて幅も広い透明な壁が出現した。神獣の力って凄いな……俺の常識外にある力だ。
『この壁を結界っていうんだ。よっぽど強い攻撃じゃなければ、なんでも防げるよ!』
「ラトって凄いんだな……」
『へへっ、神獣だからね』
「ふふっ、そうだね。ラトはこんな感じで、次にリルンは……」
フィーネがリルンの説明に移ろうとすると、言葉を遮るようにリルンが立ち上がった。
『我の能力はこの鋭い爪での攻撃と、風を自在に操れることだ。こんなふうにな』
自慢げに自分の能力を説明してくれるリルンは可愛いが、その能力自体は全く可愛くなかった。
リルンが顎を少しだけツンと上げた瞬間、近くにあった大木が数本、根本から折れるように吹き飛んだ。さらにその近くの木は圧縮された空気がぶつけられたのか、小さな穴が空いている。
それで終わりかと思えば、今度は太い枝を一本、風魔法で上空に吹き飛ばした。そしてその枝が落ちてくる前にリルンが地面を蹴って宙に飛び上がり、その枝をスパスパと爪で切っていく。
その跳躍力や爪の切れ味に、目の前の光景が信じられない気持ちだ。
シュタッと着地したリルンは、顎を上げて満足げに言った。
『まあ、こんなものだ。他にはハリケーンのようなものを起こしたり、風による静電気で雷のような現象も起こせる』
「なんか、本当に凄いな……」
もうこの感想しか出てこなくて、俺は呆然としてしまう。
しかしその言葉だけで、リルンには満足だったようだ。
『ふふんっ、凄いのは当然だ。我は神獣、フェンリルだからな』
その決め台詞で満足したのか、リルンはまた食事に戻る。そんなリルンを苦笑して見守り、フィーネは口を開いた。
「私が説明するまでもなかったけど、二人の能力はこんな感じかな。凄く強いから魔物への心配はいらないよ」
「もう、十分に伝わった。この辺の魔物なんて敵じゃないな」
「そうだね。今まで危険に陥ったことはないかな。でも、この強さで本来の力の半分ぐらいなんだって。そもそも神獣って世界の危機? に対処するための存在らしくて、その時だけ本来の力を解放できるらしいよ」
初めて聞く壮大な話に、現実味が湧かない。
「そうなのか……」
俺は意図的に意識を切り替えて、フィーネに問いかけた。
「召喚した神獣は、無条件でフィーネの仲間になってくれるのか?」
「ううん。召喚はしてもメリットを提示できないと帰っちゃうんだって。ラトはコルンの実を定期的にあげることを条件に、リルンはパンを毎日あげることを条件に仲間になってもらったの」
「契約みたいな感じなんだな」
でもここまで見てきた三人の関係性から、もうそんな契約がなくてもラトとリルンがフィーネから離れることはなさそうだ。
ラトは分かりやすく、リルンは分かりづらいけど確実に、フィーネのことが大好きに見える。
「私の話はこのぐらいかな。次はエリクの番ね」
「分かった。俺は――」
それからは俺の孤児院時代の話から始め、錬金工房の職人時代、そしてスキルを発現して錬金工房を追い出され、スキルの真価に気付くところまで話をした。
フィーネほど波乱万丈でもないので、すぐに説明は終わる。
「そんな経緯だったんだね……エリクはこのまま冒険者として生きていくのでいいの?」
「ああ、このスキルは冒険者の方が生かせるだろうしな」
「良かった。じゃあこの後街に戻ったら、パーティー登録をしようか。パーティーとして登録すると、一緒に一つの依頼を受けるのが楽になるらしいから」
パーティー登録か。このスキルがある限り俺には無理だと諦めてたが、まさか冒険者になって初日にできるなんて。
「もちろんしよう。それでその後はどうする? 俺はいろんなレア素材を手に入れて、錬金を楽しみたいと思ってるんだ」
「おお、いい夢だね。私はもっとたくさんの神獣と知り合いたいなと思ってるのと、せっかくだから世界中の国を全て回ってみたいなと思ってるんだ。ラトやリルンたちがいれば、無理なく実現できるかなって」
かなり壮大な夢だな……でも楽しそうだ。俺は家族がいないからこの街に愛着はないし、世界を巡るのに支障はない。
「それ、わくわくするな」
「本当? エリクがそう言ってくれて良かった」
「今までは何ヶ国巡ったんだ?」
「それがね、まだここが三ヶ国目なの。途中の街で幻のパンがあるみたいな話を聞いて、それを探すのに凄く時間を取られて……」
フィーネが苦笑を浮かべつつ発した言葉を聞いて、リルンが眉間に皺を寄せたのが見えた。
『凄く期待して我が何ヶ月も時間をかけて見つけ出したというのに、パンではなくてパインだったのだ! あの時の絶望は忘れられんぞ!』
リルンの嘆きに、フィーネが耐えられないというような笑いを溢す。
「ふふっ、はははっ、あの時のリルンは面白かったよ。山の頂上で一週間しか採取できないパンってところで、何かおかしいんじゃないかとは思ったんだけどね」
『それでも一度パンと言われたら、自らの目で確かめてみなければならん』
「それで、そのパインは美味しかったのか? 確か果物だったよな」
「うん。美味し……くはなかったかな。パインの一種だったんだけど、食べるものじゃなくて、光り輝く皮が貴重だったみたい」
光り輝く果物の皮。俺にとっては美味しいパインよりも気になるな。リルンに嫌がられそうだけど、どこかで手に入れたい。
「そんな感じで寄り道もかなりするから、のんびりとした旅になると思うんだけど、それでもいいかな」
「ああ、もちろん。別に急ぐ用事はないしな。俺ものんびりと素材採取をして錬金もしたいから、ちょうどいい」
「良かった。じゃあエリク、これからよろしくね」
フィーネが笑みを浮かべて差し出してくれた手を、俺はしっかりと握り返した。
「こちらこそよろしくな」
これからの人生がとても楽しいものになりそうな予感に、俺は頬が緩むのを抑えられなかった。
第二章 依頼受注とスキルの検証
昼食とそれぞれに関する話を終えた俺たちは、街の中に戻ってきた。まずはパーティー登録をしようと、今は冒険者ギルドに向かっているところだ。
「そういえば、フィーネは何ランクなんだ?」
「私は個人でDだよ。昇格試験が面倒であまり受けてなくて。でも高ランクの方が色々と融通が利いたりするから、そろそろ上げようかなと思ってるところ」
「じゃあ、直近の目標は冒険者ランクを上げることにするか」
「そうだね。まだこの街に来て数週間しか経ってないし、もうしばらくはここに滞在して、ランクを上げるのもいいかも。でも、どうせならパーティーランクを上げない?」
個人のランクとは別にパーティーにもランクが付いていて、パーティー単位で昇格試験を受けるのだ。
だからそっちなら、俺でもランクアップできる可能性がある。
「そうしてもらえるとありがたいな」
「うん。どうせこれからは個人で依頼を受けることなんてないんだし、その方がいいよね。パーティーでAランクを目指しちゃう?」
フィーネが冗談のように発したその言葉に、俺はさすがに無謀だと笑い飛ばしそうになって、しかし寸前で笑いを引っ込めた。
「……もしかして、本当にAランクも目指せたりする?」
神獣であるリルンとラトの力があれば、不可能じゃないのかもしれない。そう思って問いかけると、フィーネは顎に手を当てて少しだけ悩んでから頷いた。
「戦闘能力という点ではいけるかも。でも昇格試験って純粋な力だけじゃなくて、いろんな知識とかも問われるでしょ? 素材採取の試験もあるし……あっ、でもそれはエリクが詳しいか」
「ああ、素材に関しては普通の人より詳しいはず」
「……それなら、Aランクも夢じゃないのかも」
フィーネがポツリと呟いた言葉に信じられない気持ちになりながら、それを否定する材料を俺は持っていない。
今更だけど、本当に凄い仲間ができたな。
「目標は高く、Aランクを目指してみるか」
「そうだね」
フィーネが楽しそうな笑みを浮かべて頷いたところで、俺たちは冒険者ギルドに到着した。
ギルドはテイムされた魔物も一緒に入ることができるので、全員で中に入る。リルンは体が大きいので、ギルドが混んでいる時は外で待つこともあるらしい。
「エリクさん、ご無事で良かったです」
中に入って受付に向かうと、俺の冒険者登録をしてくれた女性が安心したような笑みを浮かべて声をかけてくれた。
心配してくれてたなんて、本当にいい人だな。
「ご心配をおかけしました」
「いえ、受注された依頼は達成されましたか?」
「はい。ヒール草を十本です」
依頼票とともに変質後のヒール草をカウンターに載せると、女性は丁寧な手付きでそれを受け取った。
「ありがとうございます。……これはとても質のいいヒール草ですね。依頼は問題なく達成です」
そこまで確認をして顔を上げたところで、女性はフィーネが偶然居合わせた冒険者じゃなく、俺の連れだということに気付いたらしい。
居住まいを正してフィーネに視線を向けた。
「申し訳ございません。エリクさんのご友人でしょうか? 何かご用件がおありでしたら、お聞きしますが……」
「あっ、とりあえずは大丈夫です。でもこの後にパーティー登録をお願いしたいです」
「……エリクさんとでしょうか?」
「はい」
俺とパーティー登録をするというフィーネの言葉に、女性の表情はあからさまに明るくなった。
リルンとラトを見ればフィーネがテイマーだということは明白だし、特にリルンは外見からも強そうな魔物に見える。そんな魔物を従えているテイマーと仲間になれば、俺の安全が保障されると思ったのだろう。
「かしこまりました。ではさっそくパーティー登録の準備もいたします」
女性は俺の依頼票とヒール草を手にし、軽い足取りで後ろに下がっていった。
その様子を見て少し複雑な気分になるけど、俺が弱くてフィーネと仲間になることで安全を確保できるのは紛れもない事実なので、何も反論できることはない。
「知り合いなの?」
「今日の午前中に冒険者登録をしてくれた人なんだ。その時に弱そうな俺をかなり心配してくれてたから、フィーネと一緒で安心したんだと思う」
「ああ~…………」
フィーネは俺の頭から足先までを順に見つめて、納得するように何度か頷いた。
「確かにエリクは、お世辞にも強そうとは言えないかな」
「……自分でも分かってる」
「ふふっ、でも仕方ないよね。これから鍛えればいいよ。リルンに相手してもらう?」
『我が鍛えてやろうか?』
リルンはキラッと目を輝かせて楽しげな表情だ。相当扱かれそうだが……そのぐらいやらないと強くなれないよな。
「お手柔らかにお願いします」
俺がリルンにそう伝えて話が一段落したところで、女性が書類を手にして戻ってきた。
「お待たせいたしました。こちらにご記入をお願いいたします」
それからいくつかの手続きを済ませると、パーティー登録は無事に完了した。Fランクのパーティーカードを受け取ると、そこにはフィーネの名前も印字されている。
「なんか嬉しいね。一人は気楽で良かったけど、やっぱりちょっと寂しかったから」
「俺も嬉しいよ。ずっと一緒にいる人がいるって安心するんだな」
物心付いた頃から孤児院にいた俺は、友達や知り合いは多いが、ずっと一人だった。誰かと一緒に行動するなんて初めてだ。
俺とフィーネは顔を見合わせ、同時に笑い合う。まだ知り合って数時間なのに、なぜか波長が合うんだよな。
それから俺たちは採取した素材などを売却して、冒険者ギルドを後にした。
「この後はどうする? エリクって今夜寝る場所も決まってないんだよね?」
「ああ、錬金工房で暮らしてたからな」
「じゃあ、私が泊まってる宿に行く? お客さんは冒険者が中心だから、当日でも泊まれるはずだよ」
「本当か! それは凄くありがたい」
「案内するね」
行き先を決めた俺たちは、足取り軽く賑やかな大通りを先に進んだ。
フィーネのその言葉で、今までの言動は故意だったと判明した。
「やっぱりそうだったのか!」
「初心な感じの反応が楽しくて、ごめんね。いつもはあんまりこういうことしないんだけど、エリクはなぜかいいかなって……」
不思議そうなフィーネに、俺は思わず胸を押さえてしまう。多分今の言葉は、素で言ってたよな……そういうのが一番グッと来るんだ。
俺がかなり弱いからっていうのが大きな理由だと思うが、俺に壁を作らないでくれるのは素直に嬉しい。でもその信頼を裏切れないというのは、ちょっとだけ辛いかもしれない。
「……控えめにしてくれると嬉しい。あとフィーネは可愛いから、もっと気を付けた方がいいぞ」
なんとかダメージを受けながらもそう伝えると、少しだけぽかんとしていたフィーネが、じわじわと頬を赤くしていった。
「えっと……ありがとう」
もしかして可愛いって言葉に照れたの? そういうところは純粋とか、ズルい……
「とにかく、移動しよう」
これ以上この話を広げるのはダメだと思い、そう提案した。
するとフィーネも、すぐ頷いてくれる。
「そうだね。お腹空いたし、早く岩場に行こうか」
それから俺たちは森を出て、街から少し離れた場所に向かった。
そこは、草原の中にあるちょっとした岩石地帯みたいなところだ。
「ここでいい?」
「ああ、もちろんだ。こんなところがあるんだな」
今までの生活では知ることもなかった街の外の環境に、少し楽しくなって心が浮き立つ。
まあ呑気に楽しんでいられるのは、リルンのおかげなんだけどな。
さっきから襲いかかってくる魔物は全てリルンが瞬殺してくれるから、全く危険を感じることなく街の外を歩けていた。
「そういえば、魔物素材ってどの段階で採取前になるのかな」
リルンが倒した魔物をさっきまでと同じように解体しようとして、フィーネがふと思い付いたように口を開く。
確かに……魔物素材はまだ試してなかったな。
「解体前に触れてみてもいいか? もしかしたら、ダメになるかもしれないけど」
「もちろんいいよ。ちゃんと解体するのも面倒で、さっきから魔石しか取ってないから」
苦笑しつつ告げたフィーネの言葉に、俺も同じような表情を浮かべた。
「うん、もったいないと思ってた。でもこの速度でリルンが魔物を倒してたら、確かにちゃんと解体するのは面倒だよな。持ち帰れる量にも限度があるし」
「そうなんだよね。だから大体は魔石しか取らなくて、たまに貴重な部位や毛皮、あとは私たちの食事用にお肉ぐらいかな」
そんな話をしながら、フィーネが首元を引き裂かれたホーンラビットを手渡してくれる。
俺は魔物をその状態で見ることはほとんどなかったので、少しだけ躊躇いつつ受け取った。
するとその瞬間、ホーンラビットがキラキラとした光に包まれ、光が収まって現れたのは――
「え、アイアンラビットだよね!?」
「だ、だと思う……」
ホーンラビットの上位種である、角部分が純度の高い鉄でできているアイアンラビットだった。
「魔物は解体前に触れるといい方向に変質するんだね」
「そうみたいだな……」
改めて自分のスキルに驚く。
これってかなり凄いスキルだよな。アイアンラビットなんて、相当稀にしかお目にかかれない魔物だったはずだ。錬金工房で働いていた六年間で、数回しか見たことがない。
「アイアンラビットの角は持ち帰ろうか」
それからフィーネが手早く解体を済ませ、俺たちは昼食を食べながら話をすることになった。
『早く食べよ!』
『もう腹ペコだ』
「すぐ準備するから、ちょっと待ってね」
待ちきれない二人に笑いながら、フィーネが準備をしてくれる。
俺とフィーネは肉や野菜をパンに挟んだサンドパンで、ラトはもちろんファムの実、そしてリルンは砂糖がたっぷりと付いた揚げパンみたいだ。
さっそくサンドパンを口に運ぶと、味がしっかりと付いていてパンもパリッと歯応えがあり、とても美味しい。
『やっぱりファムの実は最高だね! 何個食べても美味しい!』
『このパン屋は当たりだな。絶妙な揚げ具合だ』
二人も満足なようだった。
そんな二人の様子を確認してから、フィーネが口を開く。
「じゃあ、まずは私から話をするね。私はこの国シュトイヤー王国じゃなくて、スピラ王国にある小さな村で生まれたの。スキルが発現したのは十五歳の時。両親は私が小さい頃に病気で死んじゃって、私は親戚の家で育てられたんだけど、その親戚は私のことを嫌いだったんだ。だから隣村の権力者だっていう嫌な感じの男に嫁がされそうになって、それに抵抗してる時にちょうど、このスキルが発現した」
フィーネは軽い口調で話しているけど、予想外に重い話の導入に驚く。
「最初は使い方なんて分からなくて、このスキルが役に立つのかどうかも分からなかったけど、神獣を召喚できるなんて強そうじゃない? だからこのスキルにかけて、嫁がされる前日に村を逃げ出したんだ。鞄に数日分の食料だけ詰め込んでね」
「行動力あるな……」
「でしょ?」
思わず溢してしまった感想に、フィーネはイタズラな笑みを浮かべた。
「それで近くの森の中に隠れて、必死に神獣を召喚しようと頑張ったの。でも召喚陣はすぐに出現させられたのに、召喚陣から何も現れずに三日が過ぎて、そろそろ食料も尽きるしどうしよう……そう焦ってた時、偶然近くの木に生ってたコルンの実が召喚陣の中に落ちたんだ。それでラトが召喚されて」
ということは、神獣を召喚するには何かしらの捧げ物? みたいなやつが必要ってことか。それは何かの偶然がないと気付けないな。
「フィーネ、よく生きてたな」
あまりにも無謀な逃亡劇にそんな感想を漏らすと、フィーネも苦笑しつつ頷く。
「本当に幸運だったよ。三日間魔物に襲われなかったし、何よりもラトを召喚できたからね。そこからはラトに色々と教えてもらって、リルンの召喚にも成功して、二人と一緒に表向きはテイマーとして冒険者をやってるんだ。もう冒険者になって三年目かな」
「スキルのことは誰にも話してないのか?」
「うん。私のスキルはテイマーだって簡単に誤魔化せるから、その方が面倒がないかなって」
確かにそうか。俺も最初は普通にテイマーだと思ったんだ。まさか神獣なんじゃ? なんて疑う人はいないだろう。
「あと他に話すことはあるかな……あっ、二人の能力についても話しておくね」
フィーネはそう言うと、まずはラトの能力から説明してくれるのか、ファムの実に夢中なラトを手のひらの上に乗せた。
「ラトは印を付けた場所に自分だけ瞬間移動できる能力があって、あとは結界っていう透明な壁みたいなやつを作り出せるんだ」
俺がその説明を聞いて首を傾げていると、ファムの実から口を離したラトが、追加で説明をしてくれる。
『瞬間移動の印は十ヶ所に付けられるんだ。エリクの肩にも付けておくから、フィーネとエリクは僕を通していつでも意思疎通ができるよ。あと結界は、こういうやつ!』
ラトが小さな右手を前に出すと、俺の身長より高くて幅も広い透明な壁が出現した。神獣の力って凄いな……俺の常識外にある力だ。
『この壁を結界っていうんだ。よっぽど強い攻撃じゃなければ、なんでも防げるよ!』
「ラトって凄いんだな……」
『へへっ、神獣だからね』
「ふふっ、そうだね。ラトはこんな感じで、次にリルンは……」
フィーネがリルンの説明に移ろうとすると、言葉を遮るようにリルンが立ち上がった。
『我の能力はこの鋭い爪での攻撃と、風を自在に操れることだ。こんなふうにな』
自慢げに自分の能力を説明してくれるリルンは可愛いが、その能力自体は全く可愛くなかった。
リルンが顎を少しだけツンと上げた瞬間、近くにあった大木が数本、根本から折れるように吹き飛んだ。さらにその近くの木は圧縮された空気がぶつけられたのか、小さな穴が空いている。
それで終わりかと思えば、今度は太い枝を一本、風魔法で上空に吹き飛ばした。そしてその枝が落ちてくる前にリルンが地面を蹴って宙に飛び上がり、その枝をスパスパと爪で切っていく。
その跳躍力や爪の切れ味に、目の前の光景が信じられない気持ちだ。
シュタッと着地したリルンは、顎を上げて満足げに言った。
『まあ、こんなものだ。他にはハリケーンのようなものを起こしたり、風による静電気で雷のような現象も起こせる』
「なんか、本当に凄いな……」
もうこの感想しか出てこなくて、俺は呆然としてしまう。
しかしその言葉だけで、リルンには満足だったようだ。
『ふふんっ、凄いのは当然だ。我は神獣、フェンリルだからな』
その決め台詞で満足したのか、リルンはまた食事に戻る。そんなリルンを苦笑して見守り、フィーネは口を開いた。
「私が説明するまでもなかったけど、二人の能力はこんな感じかな。凄く強いから魔物への心配はいらないよ」
「もう、十分に伝わった。この辺の魔物なんて敵じゃないな」
「そうだね。今まで危険に陥ったことはないかな。でも、この強さで本来の力の半分ぐらいなんだって。そもそも神獣って世界の危機? に対処するための存在らしくて、その時だけ本来の力を解放できるらしいよ」
初めて聞く壮大な話に、現実味が湧かない。
「そうなのか……」
俺は意図的に意識を切り替えて、フィーネに問いかけた。
「召喚した神獣は、無条件でフィーネの仲間になってくれるのか?」
「ううん。召喚はしてもメリットを提示できないと帰っちゃうんだって。ラトはコルンの実を定期的にあげることを条件に、リルンはパンを毎日あげることを条件に仲間になってもらったの」
「契約みたいな感じなんだな」
でもここまで見てきた三人の関係性から、もうそんな契約がなくてもラトとリルンがフィーネから離れることはなさそうだ。
ラトは分かりやすく、リルンは分かりづらいけど確実に、フィーネのことが大好きに見える。
「私の話はこのぐらいかな。次はエリクの番ね」
「分かった。俺は――」
それからは俺の孤児院時代の話から始め、錬金工房の職人時代、そしてスキルを発現して錬金工房を追い出され、スキルの真価に気付くところまで話をした。
フィーネほど波乱万丈でもないので、すぐに説明は終わる。
「そんな経緯だったんだね……エリクはこのまま冒険者として生きていくのでいいの?」
「ああ、このスキルは冒険者の方が生かせるだろうしな」
「良かった。じゃあこの後街に戻ったら、パーティー登録をしようか。パーティーとして登録すると、一緒に一つの依頼を受けるのが楽になるらしいから」
パーティー登録か。このスキルがある限り俺には無理だと諦めてたが、まさか冒険者になって初日にできるなんて。
「もちろんしよう。それでその後はどうする? 俺はいろんなレア素材を手に入れて、錬金を楽しみたいと思ってるんだ」
「おお、いい夢だね。私はもっとたくさんの神獣と知り合いたいなと思ってるのと、せっかくだから世界中の国を全て回ってみたいなと思ってるんだ。ラトやリルンたちがいれば、無理なく実現できるかなって」
かなり壮大な夢だな……でも楽しそうだ。俺は家族がいないからこの街に愛着はないし、世界を巡るのに支障はない。
「それ、わくわくするな」
「本当? エリクがそう言ってくれて良かった」
「今までは何ヶ国巡ったんだ?」
「それがね、まだここが三ヶ国目なの。途中の街で幻のパンがあるみたいな話を聞いて、それを探すのに凄く時間を取られて……」
フィーネが苦笑を浮かべつつ発した言葉を聞いて、リルンが眉間に皺を寄せたのが見えた。
『凄く期待して我が何ヶ月も時間をかけて見つけ出したというのに、パンではなくてパインだったのだ! あの時の絶望は忘れられんぞ!』
リルンの嘆きに、フィーネが耐えられないというような笑いを溢す。
「ふふっ、はははっ、あの時のリルンは面白かったよ。山の頂上で一週間しか採取できないパンってところで、何かおかしいんじゃないかとは思ったんだけどね」
『それでも一度パンと言われたら、自らの目で確かめてみなければならん』
「それで、そのパインは美味しかったのか? 確か果物だったよな」
「うん。美味し……くはなかったかな。パインの一種だったんだけど、食べるものじゃなくて、光り輝く皮が貴重だったみたい」
光り輝く果物の皮。俺にとっては美味しいパインよりも気になるな。リルンに嫌がられそうだけど、どこかで手に入れたい。
「そんな感じで寄り道もかなりするから、のんびりとした旅になると思うんだけど、それでもいいかな」
「ああ、もちろん。別に急ぐ用事はないしな。俺ものんびりと素材採取をして錬金もしたいから、ちょうどいい」
「良かった。じゃあエリク、これからよろしくね」
フィーネが笑みを浮かべて差し出してくれた手を、俺はしっかりと握り返した。
「こちらこそよろしくな」
これからの人生がとても楽しいものになりそうな予感に、俺は頬が緩むのを抑えられなかった。
第二章 依頼受注とスキルの検証
昼食とそれぞれに関する話を終えた俺たちは、街の中に戻ってきた。まずはパーティー登録をしようと、今は冒険者ギルドに向かっているところだ。
「そういえば、フィーネは何ランクなんだ?」
「私は個人でDだよ。昇格試験が面倒であまり受けてなくて。でも高ランクの方が色々と融通が利いたりするから、そろそろ上げようかなと思ってるところ」
「じゃあ、直近の目標は冒険者ランクを上げることにするか」
「そうだね。まだこの街に来て数週間しか経ってないし、もうしばらくはここに滞在して、ランクを上げるのもいいかも。でも、どうせならパーティーランクを上げない?」
個人のランクとは別にパーティーにもランクが付いていて、パーティー単位で昇格試験を受けるのだ。
だからそっちなら、俺でもランクアップできる可能性がある。
「そうしてもらえるとありがたいな」
「うん。どうせこれからは個人で依頼を受けることなんてないんだし、その方がいいよね。パーティーでAランクを目指しちゃう?」
フィーネが冗談のように発したその言葉に、俺はさすがに無謀だと笑い飛ばしそうになって、しかし寸前で笑いを引っ込めた。
「……もしかして、本当にAランクも目指せたりする?」
神獣であるリルンとラトの力があれば、不可能じゃないのかもしれない。そう思って問いかけると、フィーネは顎に手を当てて少しだけ悩んでから頷いた。
「戦闘能力という点ではいけるかも。でも昇格試験って純粋な力だけじゃなくて、いろんな知識とかも問われるでしょ? 素材採取の試験もあるし……あっ、でもそれはエリクが詳しいか」
「ああ、素材に関しては普通の人より詳しいはず」
「……それなら、Aランクも夢じゃないのかも」
フィーネがポツリと呟いた言葉に信じられない気持ちになりながら、それを否定する材料を俺は持っていない。
今更だけど、本当に凄い仲間ができたな。
「目標は高く、Aランクを目指してみるか」
「そうだね」
フィーネが楽しそうな笑みを浮かべて頷いたところで、俺たちは冒険者ギルドに到着した。
ギルドはテイムされた魔物も一緒に入ることができるので、全員で中に入る。リルンは体が大きいので、ギルドが混んでいる時は外で待つこともあるらしい。
「エリクさん、ご無事で良かったです」
中に入って受付に向かうと、俺の冒険者登録をしてくれた女性が安心したような笑みを浮かべて声をかけてくれた。
心配してくれてたなんて、本当にいい人だな。
「ご心配をおかけしました」
「いえ、受注された依頼は達成されましたか?」
「はい。ヒール草を十本です」
依頼票とともに変質後のヒール草をカウンターに載せると、女性は丁寧な手付きでそれを受け取った。
「ありがとうございます。……これはとても質のいいヒール草ですね。依頼は問題なく達成です」
そこまで確認をして顔を上げたところで、女性はフィーネが偶然居合わせた冒険者じゃなく、俺の連れだということに気付いたらしい。
居住まいを正してフィーネに視線を向けた。
「申し訳ございません。エリクさんのご友人でしょうか? 何かご用件がおありでしたら、お聞きしますが……」
「あっ、とりあえずは大丈夫です。でもこの後にパーティー登録をお願いしたいです」
「……エリクさんとでしょうか?」
「はい」
俺とパーティー登録をするというフィーネの言葉に、女性の表情はあからさまに明るくなった。
リルンとラトを見ればフィーネがテイマーだということは明白だし、特にリルンは外見からも強そうな魔物に見える。そんな魔物を従えているテイマーと仲間になれば、俺の安全が保障されると思ったのだろう。
「かしこまりました。ではさっそくパーティー登録の準備もいたします」
女性は俺の依頼票とヒール草を手にし、軽い足取りで後ろに下がっていった。
その様子を見て少し複雑な気分になるけど、俺が弱くてフィーネと仲間になることで安全を確保できるのは紛れもない事実なので、何も反論できることはない。
「知り合いなの?」
「今日の午前中に冒険者登録をしてくれた人なんだ。その時に弱そうな俺をかなり心配してくれてたから、フィーネと一緒で安心したんだと思う」
「ああ~…………」
フィーネは俺の頭から足先までを順に見つめて、納得するように何度か頷いた。
「確かにエリクは、お世辞にも強そうとは言えないかな」
「……自分でも分かってる」
「ふふっ、でも仕方ないよね。これから鍛えればいいよ。リルンに相手してもらう?」
『我が鍛えてやろうか?』
リルンはキラッと目を輝かせて楽しげな表情だ。相当扱かれそうだが……そのぐらいやらないと強くなれないよな。
「お手柔らかにお願いします」
俺がリルンにそう伝えて話が一段落したところで、女性が書類を手にして戻ってきた。
「お待たせいたしました。こちらにご記入をお願いいたします」
それからいくつかの手続きを済ませると、パーティー登録は無事に完了した。Fランクのパーティーカードを受け取ると、そこにはフィーネの名前も印字されている。
「なんか嬉しいね。一人は気楽で良かったけど、やっぱりちょっと寂しかったから」
「俺も嬉しいよ。ずっと一緒にいる人がいるって安心するんだな」
物心付いた頃から孤児院にいた俺は、友達や知り合いは多いが、ずっと一人だった。誰かと一緒に行動するなんて初めてだ。
俺とフィーネは顔を見合わせ、同時に笑い合う。まだ知り合って数時間なのに、なぜか波長が合うんだよな。
それから俺たちは採取した素材などを売却して、冒険者ギルドを後にした。
「この後はどうする? エリクって今夜寝る場所も決まってないんだよね?」
「ああ、錬金工房で暮らしてたからな」
「じゃあ、私が泊まってる宿に行く? お客さんは冒険者が中心だから、当日でも泊まれるはずだよ」
「本当か! それは凄くありがたい」
「案内するね」
行き先を決めた俺たちは、足取り軽く賑やかな大通りを先に進んだ。
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