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第3章 黒山編
91、船を借りる
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「何か思いついた?」
すぐ問いかけると、フィーネは俺に視線を向けて頷いてくれた。
「うん。水晶華があるっていう海岸の洞窟があるでしょ? そこに案内してもらうのはどうかなと思って。もしくは船を借りるだけでも。ほら、確か船がないと行けないって話だったよね?」
おおっ、確かにそれはありだ。デュラ爺の話では地上からでも行けないことはないけど、船があると凄く楽だという感じだった。
楽できるに越したことはないし、アルフさんとマーサさんにもそこまでの負担にはならない提案のはずだ。
「それいいかも。お二人ともどうですか?」
俺たちの会話を聞いていた二人に問いかけると、二人は快く頷いてくれた。
「それがお礼になるのであれば、問題ありません」
「船をお貸しするのでもいいですし、船員を用意することも可能です」
「では、船をお借りできますか? 壊れている船でも海に浮かべば問題ありません。従魔たちが動かしますから」
苦笑しつつデュラ爺とリルンに視線を向けると、アルフさんが納得したように頷いてくれた。
「分かりました。では頑丈な船を準備しておきますね」
「ありがとうございます。フィーネもそれでいい?」
「もちろん。アルフさん、マーサさん、よろしくお願いします」
「はい。船はいつ準備しましょうか」
そうだな……大変な船旅をしたばかりだし、もう少しここで休みたい気がする。別に急ぐ旅でもない。
そう考えてフィーネに問いかけると、フィーネもそれに同意してくれた。
「では三日後でお願いします。場所は港になるのでしょうか」
「そうですね。三日後までに港に船を準備しておきます」
そうして二人と約束をしたら、その後は食事の時間だ。二人も一緒に食事をしていくことになったので、神獣の皆も入れたら総勢八人での食事になった。
テーブルの上にはたくさんの料理が並び、皆で楽しく食事をする。
アルフさんたちが無事で良かった。美味しい食事と会話を楽しみながら、もう一度心からそう思った。
アルフさんとマーサさんと一緒に食事をした日から三日後の朝。俺たちは約束通り港にやってきていた。そこには三日前よりもさらに元気になった様子のアルフさんと、かなり頑丈そうに見える船があった。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます」
アルフさんから声をかけてくれて、船の近くに向かう。
「大きな船ですね~」
思わずボケーと見上げてしまった。この前乗った漁船より一回りは大きくて、さらに頑丈そうに見える。
「これはアルフさん所有の船ですか?」
俺が疑問に思っていたことをフィーネが聞いてくれて、アルフさんは苦笑を浮かべつつ首を横に振った。
「いえ、これはこの街の漁業連合が所有している船なんです。今回の経緯を説明したら貸してもらえて。とても頑丈な船なので安心してください」
「わざわざ借りてくださったのですか! ありがとうございます」
フィーネが驚きを露わにして感謝を伝えると、アルフさんは「いえいえ」と両手を振った。
「気にしないでください。お二人は命の恩人ですから。これでお礼になるといいのですが」
「とってもありがたいですよ」
俺がそう伝えると、フィーネも笑顔で同意してくれた。
「本当に助かります」
そうして俺たちが話をしている間に、デュラ爺たち神獣組は、すでに船へと乗り込んでいた。その自由な動きに、思わず口調に呆れが滲んでしまう。
「皆、船の備品とか壊すなよ!」
『分かっておる。問題ない』
『心配いらないぞ』
『エリク! 凄い船だよ!』
『私が乗るのにふさわしいわ』
皆は一応返答してくれたけど、本当に悪さをしないか全く信じられない。そもそも神獣と人間は、やっぱり価値観が違ったりするからな。
それにデュラ爺とリルンはまだしも、ラトとスーちゃんは全く俺の話を聞いてないだろ。
「エリク、私たちも早く乗ろうか」
苦笑を浮かべたフィーネにそう言われ、俺は頷いた。俺たちの会話を聞いていたアルフさんはすぐに乗り方を教えてくれて、問題なく船上に上がることができる。
「簡単な使い方だけお伝えしますね。船の固定の仕方が分かると便利だと思うので」
「ありがとうございます」
それから数十分かけて必要な船の扱い方だけ教えてもらい、アルフさんは船を降りた。あとは出発するだけだ。
海上で遭難したアルフさんたちを助けたということで、話題になってるらしい俺たちを一目見るためか、港には多くの人たちが集まっている。
「気をつけろよー!」
「アルフたちを助けてくれてありがとな!」
「お前らはすげぇぞ!」
そんな声をたくさん掛けられ、俺とフィーネで大きく手を振った。なんだか長期間の船旅に出るぐらいの、盛大な見送りだ。
遅くとも数日以内には帰ってくることを考えると、少しだけ恥ずかしい。
『では行くぞ』
楽しげな声音でリルンがそう発し、次の瞬間には船が動き出した。そして普通ならばあり得ない速度で船は移動し――俺たちはあっという間に、再び海上にいた。
すぐ問いかけると、フィーネは俺に視線を向けて頷いてくれた。
「うん。水晶華があるっていう海岸の洞窟があるでしょ? そこに案内してもらうのはどうかなと思って。もしくは船を借りるだけでも。ほら、確か船がないと行けないって話だったよね?」
おおっ、確かにそれはありだ。デュラ爺の話では地上からでも行けないことはないけど、船があると凄く楽だという感じだった。
楽できるに越したことはないし、アルフさんとマーサさんにもそこまでの負担にはならない提案のはずだ。
「それいいかも。お二人ともどうですか?」
俺たちの会話を聞いていた二人に問いかけると、二人は快く頷いてくれた。
「それがお礼になるのであれば、問題ありません」
「船をお貸しするのでもいいですし、船員を用意することも可能です」
「では、船をお借りできますか? 壊れている船でも海に浮かべば問題ありません。従魔たちが動かしますから」
苦笑しつつデュラ爺とリルンに視線を向けると、アルフさんが納得したように頷いてくれた。
「分かりました。では頑丈な船を準備しておきますね」
「ありがとうございます。フィーネもそれでいい?」
「もちろん。アルフさん、マーサさん、よろしくお願いします」
「はい。船はいつ準備しましょうか」
そうだな……大変な船旅をしたばかりだし、もう少しここで休みたい気がする。別に急ぐ旅でもない。
そう考えてフィーネに問いかけると、フィーネもそれに同意してくれた。
「では三日後でお願いします。場所は港になるのでしょうか」
「そうですね。三日後までに港に船を準備しておきます」
そうして二人と約束をしたら、その後は食事の時間だ。二人も一緒に食事をしていくことになったので、神獣の皆も入れたら総勢八人での食事になった。
テーブルの上にはたくさんの料理が並び、皆で楽しく食事をする。
アルフさんたちが無事で良かった。美味しい食事と会話を楽しみながら、もう一度心からそう思った。
アルフさんとマーサさんと一緒に食事をした日から三日後の朝。俺たちは約束通り港にやってきていた。そこには三日前よりもさらに元気になった様子のアルフさんと、かなり頑丈そうに見える船があった。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます」
アルフさんから声をかけてくれて、船の近くに向かう。
「大きな船ですね~」
思わずボケーと見上げてしまった。この前乗った漁船より一回りは大きくて、さらに頑丈そうに見える。
「これはアルフさん所有の船ですか?」
俺が疑問に思っていたことをフィーネが聞いてくれて、アルフさんは苦笑を浮かべつつ首を横に振った。
「いえ、これはこの街の漁業連合が所有している船なんです。今回の経緯を説明したら貸してもらえて。とても頑丈な船なので安心してください」
「わざわざ借りてくださったのですか! ありがとうございます」
フィーネが驚きを露わにして感謝を伝えると、アルフさんは「いえいえ」と両手を振った。
「気にしないでください。お二人は命の恩人ですから。これでお礼になるといいのですが」
「とってもありがたいですよ」
俺がそう伝えると、フィーネも笑顔で同意してくれた。
「本当に助かります」
そうして俺たちが話をしている間に、デュラ爺たち神獣組は、すでに船へと乗り込んでいた。その自由な動きに、思わず口調に呆れが滲んでしまう。
「皆、船の備品とか壊すなよ!」
『分かっておる。問題ない』
『心配いらないぞ』
『エリク! 凄い船だよ!』
『私が乗るのにふさわしいわ』
皆は一応返答してくれたけど、本当に悪さをしないか全く信じられない。そもそも神獣と人間は、やっぱり価値観が違ったりするからな。
それにデュラ爺とリルンはまだしも、ラトとスーちゃんは全く俺の話を聞いてないだろ。
「エリク、私たちも早く乗ろうか」
苦笑を浮かべたフィーネにそう言われ、俺は頷いた。俺たちの会話を聞いていたアルフさんはすぐに乗り方を教えてくれて、問題なく船上に上がることができる。
「簡単な使い方だけお伝えしますね。船の固定の仕方が分かると便利だと思うので」
「ありがとうございます」
それから数十分かけて必要な船の扱い方だけ教えてもらい、アルフさんは船を降りた。あとは出発するだけだ。
海上で遭難したアルフさんたちを助けたということで、話題になってるらしい俺たちを一目見るためか、港には多くの人たちが集まっている。
「気をつけろよー!」
「アルフたちを助けてくれてありがとな!」
「お前らはすげぇぞ!」
そんな声をたくさん掛けられ、俺とフィーネで大きく手を振った。なんだか長期間の船旅に出るぐらいの、盛大な見送りだ。
遅くとも数日以内には帰ってくることを考えると、少しだけ恥ずかしい。
『では行くぞ』
楽しげな声音でリルンがそう発し、次の瞬間には船が動き出した。そして普通ならばあり得ない速度で船は移動し――俺たちはあっという間に、再び海上にいた。
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