外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗

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第3章 黒山編

84、人の気配?

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 ファイヤーリザードを問題なく倒したリルンは俺たちの下に戻ってくると、満足げな表情で口を開いた。

『なかなか強い敵だったな。もう数匹いると良いのだが』

 そんなことを言うリルンに、俺は呆れた笑みを浮かべてしまう。
 最近のリルンは特に好戦的というか、戦いを好んでるよな。俺としてはもっと平和を愛してほしい。

 ただ錬金術師の俺としては、希少素材であるファイヤーリザードの入手を喜ぶ気持ちもあって、ちょっと複雑だ。
 倒れたファイヤーリザードを見て、各部位はどう使えるのかなんてことにまず思考が向かってるから……あんまりリルンのことは言えないか?

 そんなことを考えていると、さっきまで楽しげな笑みを浮かべていたリルンが訝しげな表情になり、今度は山ではなく森の中に視線を向けた。

 さらにデュラ爺も、リルンと同じ方向をじっと見つめる。

「二人ともどうしたんだ?」
「何かあったの?」

 俺とフィーネが問いかけると、答えてくれたのはデュラ爺だ。

『人間がいるぞ。ここにいるわしら以外の人間だ』

 ――はぁ!? 

 驚いて、思わず叫びそうになってしまった。だってこんなに小さな島だぞ? そこに俺たち以外の人間がいるって、ここは無人島じゃなかったってことか?
 でもこんな小さな島に人が住んでるなんてこと、あんまり考えられないけど……

「友好的な、人たちかな」

 フィーネの不安げな声が聞こえてきた。

「どうだろうな……というか、話が通じるのかも分からない」

 この島に住む独自の民族とかだったら、十中八九言葉は通じないはずだ。小島に住む民族と交易してるなんて話は聞いたことがないし。

 色々なことが頭の中を駆け巡ってるうちに、俺たちの耳にも人が森の中を歩くような音が聞こえてきた。
 ザク、ザクという木の葉や木の枝を踏み締めるような音が、やけに大きく感じられる。

 リルンとデュラ爺を先頭に、リグルさんたちにも近くに来てもらって未知の人間を待つと――

 姿を現したのは、痩せ細って薄汚れた男性が数人だった。俺とフィーネが警戒を最大限に高める中、近くにいたリグルさんたちが大きく反応する。

「ア、ア、アルフさん……!?」

 え、この人がアルフさんなの!?

 まさか、生きていたなんて。この島に流れ着いて生き残ってたのか……? 生きていたことも、ここで俺たちと合流できたことも、全てが奇跡だ。

 俺とフィーネは顔を見合わせてから、アルフさんらしい男性に駆け寄るリグルさんたちに視線を戻した。

「リ、グル、か? 皆も、どうしてここに……」
「アルフさんが帰ってこなくて、探しに来たんですよ!」
「そう、か。ありがとう……」

 力ない声でそう呟くと、アルフさんらしい男性はその場にへたり込んでしまった。後ろに続いていた男性たちも、限界なようで次々とその場に座り込む。

「アルフさん! お前らも大丈夫か!?」
「……大きな怪我は、ないのだが、碌に寝ていなく、食料も水も、最低限しかなく……」

 アルフさんのそのセリフを聞いて、俺はフィーネの隣で小さく口を開いた。

「……フィーネ。デュラ爺に異空間から食料を出してもらうか? 確か保存食として、ビスケットとか堅パンとか仕舞ってあったよな」
「……そうだね。鞄に入ってたことにすれば良いし、リグルさんたちにはもう能力も見られてるから良いかな」

 フィーネはそう言うと、こっそりデュラ爺から保存食を受け取った。さらにこの島の森で採取した果物の中から、特に水分が多いものを選んでいく。

「これを渡そう」
「そうだな」

 二人でアルフさんとリグルさんの下に向かうと、リグルさんから俺たちの説明を受けたのか、アルフさんは深々と頭を下げてくれた。

「エリクさん、フィーネさん、助けに来てくださり、本当に、ありがとうございます」
「いえ、依頼を受けたのですから当然ですよ。それよりもこれ、食べてください」
「果物は水代わりに。保存食なので味は保証しませんが、エネルギーにはなるかと」

 俺たちが差し出したビスケットと果物を見て、アルフさんたちはごくりと喉を鳴らした。しかしアルフさんが遠慮して断ろうとするので、俺は無理やりアルフさんの手のひらに食料を載せていく。

「俺たちの分もあるので気にしないでください」

 そう伝えると、アルフさんたちはまだ躊躇いを見せながらも、素直に受け取ってくれた。そしてまずは果物を口にして、喉が潤ったらビスケットだ。

 これで少しは体力が回復するかな。後は少し寝て休んでもらえば、デュラ爺作で操縦士がリルンの植物船にも……耐えられるよな?

 耐えられると信じたい。多分、大丈夫なはずだ。

「アルフさんたちは、どうやってこの島に?」

 俺が植物船の酷さを思い出して空虚を見つめていると、リグルさんが少し躊躇いながらもそんな質問をした。
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