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第3章 黒山編
80、海では一刻も油断できない
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これからどう動くのが正解なのか……俺はリグルさんに今後の動きを問いかけられてから、顎に手を当てて考え込んだ。
この場所でサンダーフィッシュの異常な群れに襲われたということは、アルフさんもこの群れに襲われた可能性があるだろう。
そうなると生存は……いや、希望を完全に捨てるのは早いか。ただ船が壊された可能性は高い気がする。
「リグルさん、船が中途半端に壊された場合、例えば船員たちの意思で動かせなくなった時には、船はどう動くのですか?」
「その場合は潮の流れに沿って、船はゆっくりと動いていきます」
「ではその流れの先に向かえますか? サンダーフィッシュの群れの影響か、他に原因があるのか分かりませんが、アルフさんが帰還しない以上は、船に何か原因があると思うので」
リグルさんはその提案に少しだけ悩むようにしてから、真剣な表情で頷いてくれた。
「分かりました。なんとか潮の流れを見極めて、船を進めてみます」
「お願いします」
忙しそうに動き出したリグルさんと船員たちを少しの間だけ見つめ、俺も大きく体を伸ばしてフィーネと神獣たちに視線を戻した。
「またしばらくは移動時間だな」
「そうだね……何か痕跡が見つかれば良いけど」
『それから朱鉄もじゃな。今のところ小島の一つも見当たらないぞ』
デュラ爺のその言葉で、朱鉄探しも並行していたことを思い出した。
「小島ってもっとあるのかと思ってたけど、意外と遠くにも見えないんだな」
『それはたくさんあるとは言え、広い海に転々とあるだけじゃ。そうそう見つからん』
「そういうものか」
海は広いと聞くし、実際にこうして船から周囲を眺めても見える範囲には何もない。ただ海が広がってるだけだ。
「朱鉄探しも難航するかもしれないね。デュラ爺、もし朱鉄が見つからなかったら、船で闇雲に探す以外に方法はあるの?」
『そうじゃな……空を飛べる神獣を召喚し、空から探してもらうのが良いのではないか?』
「おおっ、空から」
思わず感嘆の声を漏らしてしまった。空を飛べるなんて夢だよな。
「じゃあ今回の数日で朱鉄が見つからなかったら、その神獣のことを教えてもらえる?」
『もちろんじゃ』
「ありがとう」
フィーネが笑顔でデュラ爺の首元に手を伸ばすと、デュラ爺は気持ち良さそうに目を細めた。その光景を何気なく見つめていると、船の先頭からリグルさんの声が聞こえてくる。
「エリクさん、少し手伝ってもらえますか!」
「分かりましたー! 今行きますね」
そうして俺たちは、アルフさん探しを続行した。
サンダーフィッシュの群れに遭遇してから約一日が経過し、現在は翌日の昼頃だ。俺たちはとにかく変化がない景色に飽き飽きし……ていたはずなのだが、それは数十分前までだ。
少し雲が増えてきたなと思ったら、あっという間に空を曇天が多い、強い風が吹きつけてきた。まさに嵐の前というような雰囲気だ。
「おいっ、そっちを引っ張れ!」
「早く動け! この嵐はヤバい!」
「逃げるぞ!」
リグルさんたちのそんな言葉が聞こえ、不安を煽られる。
「これ、大丈夫なのか……?」
「どうなんだろう。船って悪天候で沈んだりするのかな」
フィーネと共に不安気に空を見上げていると、デュラ爺が異空間から植物を取り出し始めた。
「どうしたんだ? 雨が降りそうだから水やりの代わりか?」
『そうではない。万が一船が転覆したら、代わりに乗るものが必要じゃろう? それをわしの植物魔法で作るのじゃ』
「おおっ、それは心強いな」
最悪の事態でも助かる方法があるのはありがたい。やっぱりデュラ爺は凄いな。純粋な強さだけじゃない凄さがある。
『我も手伝おう。必要ない部分があれば切り落とせる』
『それは助かるな。では植物の棘を落として欲しいのじゃが……』
『私もやるわ』
『僕も!』
リルンに続いてスーちゃんとラトも手伝いに手を挙げて、神獣四人は揺れる船の上で器用に植物の船を作り始めた。
形は船というよりも平べったい板みたいな感じだが、何もないよりは圧倒的にマシだろう。
「フィーネ、俺たちもできることをしよう」
「そうだね。リグルさんにできることを聞きに行こうか」
そうして全員が役割を持って、近いうちに来るだろう嵐に備えて船上で駆け回った。
最悪な事態に陥った時にはデュラ爺たち神獣に任せるということで、俺たちは最悪な事態に陥らないために動く。
できる限り嵐から逃げられるように、嵐に遭遇しても船が転覆しないように。リグルさんの指示で船内の荷物を動かしたり、よく分からない縄を引っ張ったり括り付けたりしていく。
どのぐらい時間が経過したのかも分からないほど、必死に動き回ったが――船は嵐から逃げることができず、大粒の雨粒が俺の頬に当たった。
するとすぐにかなりの勢いで雨が降り始め、桶に溜まった水をひっくり返したような、立っているのも大変な雨が降り注ぐ。そこに強風も吹き荒れ、雷も鳴り始めた。
大変な嵐の始まりだ。
この場所でサンダーフィッシュの異常な群れに襲われたということは、アルフさんもこの群れに襲われた可能性があるだろう。
そうなると生存は……いや、希望を完全に捨てるのは早いか。ただ船が壊された可能性は高い気がする。
「リグルさん、船が中途半端に壊された場合、例えば船員たちの意思で動かせなくなった時には、船はどう動くのですか?」
「その場合は潮の流れに沿って、船はゆっくりと動いていきます」
「ではその流れの先に向かえますか? サンダーフィッシュの群れの影響か、他に原因があるのか分かりませんが、アルフさんが帰還しない以上は、船に何か原因があると思うので」
リグルさんはその提案に少しだけ悩むようにしてから、真剣な表情で頷いてくれた。
「分かりました。なんとか潮の流れを見極めて、船を進めてみます」
「お願いします」
忙しそうに動き出したリグルさんと船員たちを少しの間だけ見つめ、俺も大きく体を伸ばしてフィーネと神獣たちに視線を戻した。
「またしばらくは移動時間だな」
「そうだね……何か痕跡が見つかれば良いけど」
『それから朱鉄もじゃな。今のところ小島の一つも見当たらないぞ』
デュラ爺のその言葉で、朱鉄探しも並行していたことを思い出した。
「小島ってもっとあるのかと思ってたけど、意外と遠くにも見えないんだな」
『それはたくさんあるとは言え、広い海に転々とあるだけじゃ。そうそう見つからん』
「そういうものか」
海は広いと聞くし、実際にこうして船から周囲を眺めても見える範囲には何もない。ただ海が広がってるだけだ。
「朱鉄探しも難航するかもしれないね。デュラ爺、もし朱鉄が見つからなかったら、船で闇雲に探す以外に方法はあるの?」
『そうじゃな……空を飛べる神獣を召喚し、空から探してもらうのが良いのではないか?』
「おおっ、空から」
思わず感嘆の声を漏らしてしまった。空を飛べるなんて夢だよな。
「じゃあ今回の数日で朱鉄が見つからなかったら、その神獣のことを教えてもらえる?」
『もちろんじゃ』
「ありがとう」
フィーネが笑顔でデュラ爺の首元に手を伸ばすと、デュラ爺は気持ち良さそうに目を細めた。その光景を何気なく見つめていると、船の先頭からリグルさんの声が聞こえてくる。
「エリクさん、少し手伝ってもらえますか!」
「分かりましたー! 今行きますね」
そうして俺たちは、アルフさん探しを続行した。
サンダーフィッシュの群れに遭遇してから約一日が経過し、現在は翌日の昼頃だ。俺たちはとにかく変化がない景色に飽き飽きし……ていたはずなのだが、それは数十分前までだ。
少し雲が増えてきたなと思ったら、あっという間に空を曇天が多い、強い風が吹きつけてきた。まさに嵐の前というような雰囲気だ。
「おいっ、そっちを引っ張れ!」
「早く動け! この嵐はヤバい!」
「逃げるぞ!」
リグルさんたちのそんな言葉が聞こえ、不安を煽られる。
「これ、大丈夫なのか……?」
「どうなんだろう。船って悪天候で沈んだりするのかな」
フィーネと共に不安気に空を見上げていると、デュラ爺が異空間から植物を取り出し始めた。
「どうしたんだ? 雨が降りそうだから水やりの代わりか?」
『そうではない。万が一船が転覆したら、代わりに乗るものが必要じゃろう? それをわしの植物魔法で作るのじゃ』
「おおっ、それは心強いな」
最悪の事態でも助かる方法があるのはありがたい。やっぱりデュラ爺は凄いな。純粋な強さだけじゃない凄さがある。
『我も手伝おう。必要ない部分があれば切り落とせる』
『それは助かるな。では植物の棘を落として欲しいのじゃが……』
『私もやるわ』
『僕も!』
リルンに続いてスーちゃんとラトも手伝いに手を挙げて、神獣四人は揺れる船の上で器用に植物の船を作り始めた。
形は船というよりも平べったい板みたいな感じだが、何もないよりは圧倒的にマシだろう。
「フィーネ、俺たちもできることをしよう」
「そうだね。リグルさんにできることを聞きに行こうか」
そうして全員が役割を持って、近いうちに来るだろう嵐に備えて船上で駆け回った。
最悪な事態に陥った時にはデュラ爺たち神獣に任せるということで、俺たちは最悪な事態に陥らないために動く。
できる限り嵐から逃げられるように、嵐に遭遇しても船が転覆しないように。リグルさんの指示で船内の荷物を動かしたり、よく分からない縄を引っ張ったり括り付けたりしていく。
どのぐらい時間が経過したのかも分からないほど、必死に動き回ったが――船は嵐から逃げることができず、大粒の雨粒が俺の頬に当たった。
するとすぐにかなりの勢いで雨が降り始め、桶に溜まった水をひっくり返したような、立っているのも大変な雨が降り注ぐ。そこに強風も吹き荒れ、雷も鳴り始めた。
大変な嵐の始まりだ。
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