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第3章 黒山編
79、船上での魔物討伐
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リルンとデュラ爺はやる気十分な様子でサンダーフィッシュに視線を向けると、まずはリルンが口を開いた。
『さっそく倒すぞ。デュラ爺、サンダーフィッシュを捕らえられるか?』
『もちろんじゃ。植物を準備するから少し待て』
そう言ったデュラ爺は、異空間からたくさんの鉢植え植物を取り出していく。
リグルさんたちに異空間干渉が見られてしまうが、この緊急事態にそんなことを気にしていられないので、デュラ爺を止めることはしない。
「な、な、何を……」
リグルさんは突然現れた鉢植え植物に呆気に取られた様子だ。どこから現れたんだって話だし、この緊急事態に植物なんて意味不明だよな。
しかもデュラ爺の植物魔法は成長促進などができないため、どれもこれも巨大な植物ばかりだ。
「少し下がっていてください。サンダーフィッシュをリルンとデュラ爺が何とかしてくれるので」
そう声を掛けて俺も一緒に船の中央に向けて下がると、スーちゃんがリルンの背中に身軽に飛び乗った。
『エリク、二人だけじゃなくて私も活躍するわ』
スーちゃんはそう言ってサンダーフィッシュを見つめてるけど……大丈夫なのか? スーちゃんが戦ってるところは、今まで見たことがない。
『三人とも頑張れー!』
ラトが呑気に応援してるから、そこまで心配はいらないのかもしれないけど……
「フィーネ」
不安に思ってフィーネに声をかけると、フィーネも不安そうにスーちゃんを見つめながらも、信頼するように頷いてみせた。
「大丈夫だよ。皆は強いし賢いから。それにもしスーちゃんが危なくなっても、リルンとデュラ爺が助けてくれるはず」
「そうだな……皆、頼んだぞ!」
俺がそう言った直後、デュラ爺が植物魔法を発動させた。いくつも取り出された鉢植えの植物はほとんどが長い蔦を持つもので、その蔦が複雑に動いて絡まっていく。
今更だけど、これって船沈まないよな……? サンダーフィッシュは討伐できたけど、植物の重さに船が耐えられませんでした……みたいな。
『リルン、いくぞ』
俺が不安を口にする前に、デュラ爺が複雑に絡ませた蔦を海に向かわせた。するとその蔦は植物の網のようになっていたようで、海の中で広がってサンダーフィッシュを次々と捕らえていく。
呆然とその様子を見守っていると、植物の網が海上に引き上げられた。その中にはサンダーフィッシュが数百、いやもしかしたら千以上いるかもしれない。
『海に落ちる前に倒し切ってくれ』
『もちろんだ』
『私もリルンが撃ち漏らしたやつを倒すわ』
三人の中では意思疎通が取れているらしく、そんな会話をした直後、デュラ爺が海面から数メートル上で植物の縄を一気に解いた。
するとその瞬間にサンダーフィッシュは海に落ちていくが……海に落ちる暇もなく、リルンの風魔法によって切り刻まれた。
さらにそれから逃れたやつも、スーちゃんが空中散歩という宙を三回までなら自在に蹴れるという能力を使って、的確に爪で切り刻んでいく。
『よしっ、次じゃ』
『分かった』
『どんどん倒すわよ』
それからは戦闘というよりも、またしても一方的な蹂躙が始まった。サンダーフィッシュはなす術もなくデュラ爺に捕えられ、リルンとスーちゃんによって切り刻まれる。
それを何度か繰り返したところで、サンダーフィッシュもやばい敵がいると悟ったのだろう。船から逃げるような動きをし始め――
すぐ巨大な群れは消え去った。
『何だ、もう終わりか』
『早く済んで良かったではないか』
『そうよ。サンダーフィッシュなんて美味しくもない魚、いくら倒しても仕方がないわ』
『皆お疲れー!』
四人がする呑気な会話が聞こえてきたところで、俺は完全に緊張から解放されて、深く息を吐き出した。
はぁ……本当に神獣って凄いんだな。規格外だ。
「皆、ありがとう」
「本当にありがとう。助かったよ」
俺とフィーネが感謝を伝えると、四人は少しだけ自慢げな表情で各々寛ぎ始める。そんな四人に癒されつつ……少し遅れて突っ込んだ。
「いや、ラト。お前は何もしてないだろ」
『えぇ~応援したよ!』
可愛い上目遣いでそう言われてしまえば、俺はそれに頷くしかない。そうしていつものように皆と戯れていると、驚きから復活したらしいリグルさんが口を開いた。
他の船員の人たちも、俺たちを凝視している。
「あの……い、今のは」
これってどう説明すればいいんだろう。皆に能力を使ってもらわないと助からなかったから、リグルさんたちに皆の特殊能力が見られたのは仕方ない。
でもだからと言って神獣なんですって説明するのも……まだそこまではバレてないはずだ。それに神獣だと説明すると、フィーネのスキルにも言及しないといけなくなるだろう。
俺じゃなくてフィーネが決めるべきことだろうと思い視線を向けると、フィーネは悩んでいる様子ながらも、しっかりと頷いた。
そしてリグルさんと船員たちに視線を向ける。
「――実はこの子たち、その……特殊個体なんです。なので不思議な能力を持っていたりして……騒ぎになりたくないので秘密にしていただけませんか?」
おおっ、随分とゴリ押しで行くんだな。それで納得してもらえるのか?
そう思ったけど、案外リグルさんはすぐに頷いてくれた。
「も、もちろんです。命の恩人である皆さんの不利益になるようなことは言いません。なっ、お前らもそうだよな」
「お、おう!」
「もちろんです」
「ぜ、絶対に言わねぇ」
「ありがとうございます」
フィーネが嬉しそうに微笑むと、男性たち全員は少しだけ鼻の下を伸ばして何度も頷いた。
あぁ……フィーネって可愛いもんな。
今回ばかりはありがたいけど、男って単純だ。男である俺が言うのもなんだけど、単純すぎる。
そうして少し呆れていると、リグルさんが話を切り替えるように手を叩いてくれた。
「ではこれからどうしますか?」
『さっそく倒すぞ。デュラ爺、サンダーフィッシュを捕らえられるか?』
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「な、な、何を……」
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しかもデュラ爺の植物魔法は成長促進などができないため、どれもこれも巨大な植物ばかりだ。
「少し下がっていてください。サンダーフィッシュをリルンとデュラ爺が何とかしてくれるので」
そう声を掛けて俺も一緒に船の中央に向けて下がると、スーちゃんがリルンの背中に身軽に飛び乗った。
『エリク、二人だけじゃなくて私も活躍するわ』
スーちゃんはそう言ってサンダーフィッシュを見つめてるけど……大丈夫なのか? スーちゃんが戦ってるところは、今まで見たことがない。
『三人とも頑張れー!』
ラトが呑気に応援してるから、そこまで心配はいらないのかもしれないけど……
「フィーネ」
不安に思ってフィーネに声をかけると、フィーネも不安そうにスーちゃんを見つめながらも、信頼するように頷いてみせた。
「大丈夫だよ。皆は強いし賢いから。それにもしスーちゃんが危なくなっても、リルンとデュラ爺が助けてくれるはず」
「そうだな……皆、頼んだぞ!」
俺がそう言った直後、デュラ爺が植物魔法を発動させた。いくつも取り出された鉢植えの植物はほとんどが長い蔦を持つもので、その蔦が複雑に動いて絡まっていく。
今更だけど、これって船沈まないよな……? サンダーフィッシュは討伐できたけど、植物の重さに船が耐えられませんでした……みたいな。
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するとその瞬間にサンダーフィッシュは海に落ちていくが……海に落ちる暇もなく、リルンの風魔法によって切り刻まれた。
さらにそれから逃れたやつも、スーちゃんが空中散歩という宙を三回までなら自在に蹴れるという能力を使って、的確に爪で切り刻んでいく。
『よしっ、次じゃ』
『分かった』
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それからは戦闘というよりも、またしても一方的な蹂躙が始まった。サンダーフィッシュはなす術もなくデュラ爺に捕えられ、リルンとスーちゃんによって切り刻まれる。
それを何度か繰り返したところで、サンダーフィッシュもやばい敵がいると悟ったのだろう。船から逃げるような動きをし始め――
すぐ巨大な群れは消え去った。
『何だ、もう終わりか』
『早く済んで良かったではないか』
『そうよ。サンダーフィッシュなんて美味しくもない魚、いくら倒しても仕方がないわ』
『皆お疲れー!』
四人がする呑気な会話が聞こえてきたところで、俺は完全に緊張から解放されて、深く息を吐き出した。
はぁ……本当に神獣って凄いんだな。規格外だ。
「皆、ありがとう」
「本当にありがとう。助かったよ」
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「いや、ラト。お前は何もしてないだろ」
『えぇ~応援したよ!』
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俺じゃなくてフィーネが決めるべきことだろうと思い視線を向けると、フィーネは悩んでいる様子ながらも、しっかりと頷いた。
そしてリグルさんと船員たちに視線を向ける。
「――実はこの子たち、その……特殊個体なんです。なので不思議な能力を持っていたりして……騒ぎになりたくないので秘密にしていただけませんか?」
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「も、もちろんです。命の恩人である皆さんの不利益になるようなことは言いません。なっ、お前らもそうだよな」
「お、おう!」
「もちろんです」
「ぜ、絶対に言わねぇ」
「ありがとうございます」
フィーネが嬉しそうに微笑むと、男性たち全員は少しだけ鼻の下を伸ばして何度も頷いた。
あぁ……フィーネって可愛いもんな。
今回ばかりはありがたいけど、男って単純だ。男である俺が言うのもなんだけど、単純すぎる。
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