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第3章 黒山編
78、サンダーフィッシュの群れ
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港を出てから数時間が経ち、俺たちはアルフさんが漁をしたであろうポイントまでやってきた。しかし辺りは見渡す限り海ばかりで、何か目印になりそうなものはない。
「これは厳しいなぁ」
思わずそんな言葉を溢してしまう。
「そうだね……もうアルフさんが海に出た日から何日も経ってるし、手掛かりになるものがあったとしても、流されちゃってるんじゃないのかな」
「そもそもアルフさんは、何で帰ってこれなくなったんだろう。船が転覆したのか、船の機能が壊れて海の上を漂ってるのか、魔物に襲われたのか、もっと別の要因なのか……」
別の要因として考えられるとすれば、人為的なものだよな。アルフさんが自分の意思で港に帰らないか、誰かによって船ごと襲われたか。
「リグルさん、海には盗賊みたいな悪人っているんですか?」
その問いかけに、リグルさんは眉間に皺を寄せながらも頷いた。
「そこまで数は多くないですが、存在してます。ただ盗賊のように完全に悪人に落ちているというよりは、同じ漁師が獲物を横取りするんです」
「そんな酷いことをする人がいるんですね……」
フィーネが瞳を見開いて驚きを露わにした。俺も驚きを隠せない。漁師が漁師を襲うなんてことをしたら、誰も海に出られなくなってしまうんじゃないだろうか。
「今回はそういう悪人にアルフさんが襲われた可能性はありますか?」
「……ないとは言えません。ただうちの船はそこまで高級なものを捕らないので、狙われる可能性は低いと思うんですが……」
そうなのか。それだと悪人説は可能性が低いか……
そうして何もない海を眺めながら思考を巡らせていると、突然少し離れた場所に水飛沫が上がった。
「あれなんだ?」
目を凝らしてじっと水面を見つめると……何百匹もの魚が水面に飛び出してきているのが目に入る。そこまで大きな魚ではないが、数がとにかく多い。
フィーネも魚の群れに気付いたのか、心配そうな瞳を俺に向けた。
「リグルさん!」
俺はフィーネと視線を絡ませてから、異常事態じゃないかと慌ててリグルさんを呼ぶ。しかし水飛沫を見たリグルさんは全く焦りを見せず、頼もしい笑みを浮かべた。
「大丈夫です。あれはサンダーフィッシュと言って、この辺の海にはよく出る魚なので。船も襲う厄介な奴らですが、腐りかけの魚を特に好んで食べるので、それを海に投げ入れてる間に逃げられます」
「そうなんですね……それなら安心です」
「良かったね」
「ああ、焦った」
俺とフィーネが安堵している間に、リグルさんは船員たちに告げた。
「おい皆! サンダーフィッシュに餌をくれてやれ!」
「へい!」
「分かりやした~」
バケツにたくさん入れられた魚を、船の後ろから海に投げ入れていく。すると餌を投げ入れて少しした後に、その場所にたくさんの水飛沫が上がった。
「うわっ、凄いな」
「ちょっと怖いね」
「分かる」
船上は逃げ場がないから、そこまで強くない魔物に対しても恐怖を感じてしまう。でもリルンとデュラ爺がのんびりしてるなら、何も問題はないはず――
そう思って二人が寝そべっていたはずの場所に視線を向けると、二人ともその場に立ち上がり、さらには厳しい視線を海に向けていた。
それを見た瞬間に、俺の中にまた不安が生まれる。
「リ、リルン、デュラ爺、どうしたんだ?」
恐る恐る問いかけると、答えてくれたのはリルンだ。
『サンダーフィッシュの群れは通常で数百、多くても千ほどだったはずだ。しかしここには……万を超えるサンダーフィッシュがいるぞ』
『うむ、まだまだ海の中におるな』
二人のその言葉を聞いた瞬間に、別の場所でも水飛沫が上がった。さらにそれは一ヶ所だけでなく、次々と増えていく。
「リ、リグルさん! これは大丈夫なんでしょうか!?」
海に視線を向けていたリグルさんに問いかけると、今度のリグルさんは大丈夫だと言ってくれなかった。
「こんなに大きな群れは、初めて遭遇しました。……餌が足りないかもしれません」
「足りないと、どうなるんでしょうか」
「……船が襲われるかと」
「サンダーフィッシュに、船は壊されてしまうのですか?」
「……はい。サンダーフィッシュは雷撃を放てます。そこまで威力は強くないですが、たくさんのサンダーフィッシュに次々と攻撃を当てられれば、さすがに船は耐えられないかもしれません」
そうなったら俺たち全員、サンダーフィッシュが無数にいる海の中に投げ出されるってことか?
その未来を想像してしまい、一気に寒さを感じた。
「ど、どうする? リルン、デュラ爺、ラト、スーちゃん」
神獣四人に助けを求めるように視線を向けると、フィーネも四人に視線を向け、真剣な表情で問いかけた。
「皆なら何とかできる?」
『うむ、楽勝だ』
『わしらがサンダーフィッシュ如きに負けることはない』
リルンとデュラ爺が頼もしい声音でそう言ってくれたところで、俺は心からの安堵とともに思わず膝の力が抜けそうになってしまった。
本当に皆は頼りになる。皆がいてくれて良かった。
「これは厳しいなぁ」
思わずそんな言葉を溢してしまう。
「そうだね……もうアルフさんが海に出た日から何日も経ってるし、手掛かりになるものがあったとしても、流されちゃってるんじゃないのかな」
「そもそもアルフさんは、何で帰ってこれなくなったんだろう。船が転覆したのか、船の機能が壊れて海の上を漂ってるのか、魔物に襲われたのか、もっと別の要因なのか……」
別の要因として考えられるとすれば、人為的なものだよな。アルフさんが自分の意思で港に帰らないか、誰かによって船ごと襲われたか。
「リグルさん、海には盗賊みたいな悪人っているんですか?」
その問いかけに、リグルさんは眉間に皺を寄せながらも頷いた。
「そこまで数は多くないですが、存在してます。ただ盗賊のように完全に悪人に落ちているというよりは、同じ漁師が獲物を横取りするんです」
「そんな酷いことをする人がいるんですね……」
フィーネが瞳を見開いて驚きを露わにした。俺も驚きを隠せない。漁師が漁師を襲うなんてことをしたら、誰も海に出られなくなってしまうんじゃないだろうか。
「今回はそういう悪人にアルフさんが襲われた可能性はありますか?」
「……ないとは言えません。ただうちの船はそこまで高級なものを捕らないので、狙われる可能性は低いと思うんですが……」
そうなのか。それだと悪人説は可能性が低いか……
そうして何もない海を眺めながら思考を巡らせていると、突然少し離れた場所に水飛沫が上がった。
「あれなんだ?」
目を凝らしてじっと水面を見つめると……何百匹もの魚が水面に飛び出してきているのが目に入る。そこまで大きな魚ではないが、数がとにかく多い。
フィーネも魚の群れに気付いたのか、心配そうな瞳を俺に向けた。
「リグルさん!」
俺はフィーネと視線を絡ませてから、異常事態じゃないかと慌ててリグルさんを呼ぶ。しかし水飛沫を見たリグルさんは全く焦りを見せず、頼もしい笑みを浮かべた。
「大丈夫です。あれはサンダーフィッシュと言って、この辺の海にはよく出る魚なので。船も襲う厄介な奴らですが、腐りかけの魚を特に好んで食べるので、それを海に投げ入れてる間に逃げられます」
「そうなんですね……それなら安心です」
「良かったね」
「ああ、焦った」
俺とフィーネが安堵している間に、リグルさんは船員たちに告げた。
「おい皆! サンダーフィッシュに餌をくれてやれ!」
「へい!」
「分かりやした~」
バケツにたくさん入れられた魚を、船の後ろから海に投げ入れていく。すると餌を投げ入れて少しした後に、その場所にたくさんの水飛沫が上がった。
「うわっ、凄いな」
「ちょっと怖いね」
「分かる」
船上は逃げ場がないから、そこまで強くない魔物に対しても恐怖を感じてしまう。でもリルンとデュラ爺がのんびりしてるなら、何も問題はないはず――
そう思って二人が寝そべっていたはずの場所に視線を向けると、二人ともその場に立ち上がり、さらには厳しい視線を海に向けていた。
それを見た瞬間に、俺の中にまた不安が生まれる。
「リ、リルン、デュラ爺、どうしたんだ?」
恐る恐る問いかけると、答えてくれたのはリルンだ。
『サンダーフィッシュの群れは通常で数百、多くても千ほどだったはずだ。しかしここには……万を超えるサンダーフィッシュがいるぞ』
『うむ、まだまだ海の中におるな』
二人のその言葉を聞いた瞬間に、別の場所でも水飛沫が上がった。さらにそれは一ヶ所だけでなく、次々と増えていく。
「リ、リグルさん! これは大丈夫なんでしょうか!?」
海に視線を向けていたリグルさんに問いかけると、今度のリグルさんは大丈夫だと言ってくれなかった。
「こんなに大きな群れは、初めて遭遇しました。……餌が足りないかもしれません」
「足りないと、どうなるんでしょうか」
「……船が襲われるかと」
「サンダーフィッシュに、船は壊されてしまうのですか?」
「……はい。サンダーフィッシュは雷撃を放てます。そこまで威力は強くないですが、たくさんのサンダーフィッシュに次々と攻撃を当てられれば、さすがに船は耐えられないかもしれません」
そうなったら俺たち全員、サンダーフィッシュが無数にいる海の中に投げ出されるってことか?
その未来を想像してしまい、一気に寒さを感じた。
「ど、どうする? リルン、デュラ爺、ラト、スーちゃん」
神獣四人に助けを求めるように視線を向けると、フィーネも四人に視線を向け、真剣な表情で問いかけた。
「皆なら何とかできる?」
『うむ、楽勝だ』
『わしらがサンダーフィッシュ如きに負けることはない』
リルンとデュラ爺が頼もしい声音でそう言ってくれたところで、俺は心からの安堵とともに思わず膝の力が抜けそうになってしまった。
本当に皆は頼りになる。皆がいてくれて良かった。
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