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第3章 黒山編
74、釣果とトラブル発生
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フィーネに負けたことを少し悔しく思いつつ、フィーネの手助けをするために竿を一度置いた。
「エ、エリク、どうすれば良いんだっけ」
「糸を巻くんだ! 魚が近づいてきたら網で……」
完全に初心者の俺たちは二人いてもあまり意味はなく、あたふたと慌てながら時間をかけて、何とか一匹の魚を引き上げることに成功した。
「やったね! 一匹目だよ」
嬉しそうなフィーネに俺も嬉しくなりつつ、負けていられないとまた自分の竿を手にする。
「次は俺が釣ってやる」
それから二時間ほど。釣果は――
フィーネが三匹、俺が〇匹だ。
「なんで釣れないんだ……」
俺は完全に自信を失っていた。隣でやってるフィーネには魚が何度も掛かるのに、俺は一度も竿が動かなかった。ぴくりとも振動を感じられなかった。
「エリク、多分私は運が良かったんだよ。あんまり落ち込まないで」
『釣りは運も必要だからな』
『エリク、僕はお魚いらないから大丈夫だよ!』
フィーネとデュラ爺が慰めてくれて、ラトが微妙な言葉を掛けてくれる。そんな三人にありがとうと落ち込みつつ声を掛けていると、リルンとスーちゃんが俺の傷を抉ってきた。
『他の者を見ていても結構釣れているが、エリクは才能がないのではないか?』
『もう、私の好きな魚を一匹も釣れないなんて!』
うっ……今そのストレートな言葉は、結構痛い。
何で全く釣れないんだろう。もしかして、俺のスキルが関係あったりする? 例えば釣竿と釣り糸を通して、何となく魚に嫌われる成分が滲み出てるとか。
「手袋をして……」
やってみようかな。そう言葉を続けようとした瞬間、突然近くの釣り人たちから悲鳴が上がった。さらにバンッッッという衝撃音が聞こえてくる。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「ま、魔物だ!」
大勢の人たちが指差す先にいたのは、俺が両手を広げても掴めないだろう大きさの魔物だった。海上には体表のみが見えていて、その数は十ほど。
水弾を放てるようで、先ほどの衝撃音は水弾により港近くの建物の一部が壊れた音らしい。
「あれはアクアシャークだ!!」
誰かが叫んだ声が聞こえた。
「アクアシャークって知ってるか?」
『うむ、結構強い魔物じゃな。大きなサメ型の魔物で、とにかくその顎の力が強い。噛みつかれたら金属にも歯形が残ると言われておる。しかし水中にしか生息できないため、海に入らなければ噛みつかれることはない。それよりも陸に向けて放ってくる水弾の方が危険じゃな。あとは群れで行動するため、一匹いたら数十匹は覚悟するべきじゃ』
デュラ爺の説明に、俺は顔を引き攣らせることしかできなかった。
数十匹ってことは、水面に見えてる以上の数がいるってことだよな……
「こんな陸の近くに来る魔物なの?」
フィーネの疑問には、スーちゃんが答えた。
『普通は沖にしかいないはずよ。海で何が起きてるのかは分からないけど、イレギュラーな事態でしょうね』
「そうなんだ……」
俺たちが話をしている間にもアクアシャークの水弾は次々と港を襲った。さらに停泊している船も襲っているようだ。
「早く逃げろ!!」
「だが、俺の船が!」
「アクアシャークに狙われたんならもうダメだ、諦めろ!」
そんな声がそこかしこから聞こえてくる。さらに水弾によって怪我をした人も何人もいるようだ。
『リルン、デュラ爺、海の魔物は……』
フィーネがアクアシャークの討伐を頼もうと思ったのか二人に声を掛けたところで、スーちゃんがフィーネの言葉を遮った。
『リルン、デュラ爺、早くあいつらを倒すのよ!』
そう告げるスーちゃんはキラキラと輝く瞳だ。
「スーちゃんが他人を助けようとするなんて珍しいな」
瞳の輝きが気になりつつそう声をかけると、スーちゃんにはすぐ否定された。
『人助けじゃないわよ。エリク……アクアシャークはとっても美味しいのよ!』
『そういえば、昔に食べたことがあるが、不思議な食感でとろけるようじゃったな』
『そうなのよ!』
スーちゃんが乗り気なのはそういうことか……でも美味しいなら、人助けと一石二鳥だな。
「じゃあリルンとデュラ爺、改めてアクアシャークを討伐してくれる?」
『任せておけ』
『もちろんじゃ』
そうして二人は誰もが港から離れていくなか、悠々とアクアシャークに向かって足を進めた。
「エ、エリク、どうすれば良いんだっけ」
「糸を巻くんだ! 魚が近づいてきたら網で……」
完全に初心者の俺たちは二人いてもあまり意味はなく、あたふたと慌てながら時間をかけて、何とか一匹の魚を引き上げることに成功した。
「やったね! 一匹目だよ」
嬉しそうなフィーネに俺も嬉しくなりつつ、負けていられないとまた自分の竿を手にする。
「次は俺が釣ってやる」
それから二時間ほど。釣果は――
フィーネが三匹、俺が〇匹だ。
「なんで釣れないんだ……」
俺は完全に自信を失っていた。隣でやってるフィーネには魚が何度も掛かるのに、俺は一度も竿が動かなかった。ぴくりとも振動を感じられなかった。
「エリク、多分私は運が良かったんだよ。あんまり落ち込まないで」
『釣りは運も必要だからな』
『エリク、僕はお魚いらないから大丈夫だよ!』
フィーネとデュラ爺が慰めてくれて、ラトが微妙な言葉を掛けてくれる。そんな三人にありがとうと落ち込みつつ声を掛けていると、リルンとスーちゃんが俺の傷を抉ってきた。
『他の者を見ていても結構釣れているが、エリクは才能がないのではないか?』
『もう、私の好きな魚を一匹も釣れないなんて!』
うっ……今そのストレートな言葉は、結構痛い。
何で全く釣れないんだろう。もしかして、俺のスキルが関係あったりする? 例えば釣竿と釣り糸を通して、何となく魚に嫌われる成分が滲み出てるとか。
「手袋をして……」
やってみようかな。そう言葉を続けようとした瞬間、突然近くの釣り人たちから悲鳴が上がった。さらにバンッッッという衝撃音が聞こえてくる。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「ま、魔物だ!」
大勢の人たちが指差す先にいたのは、俺が両手を広げても掴めないだろう大きさの魔物だった。海上には体表のみが見えていて、その数は十ほど。
水弾を放てるようで、先ほどの衝撃音は水弾により港近くの建物の一部が壊れた音らしい。
「あれはアクアシャークだ!!」
誰かが叫んだ声が聞こえた。
「アクアシャークって知ってるか?」
『うむ、結構強い魔物じゃな。大きなサメ型の魔物で、とにかくその顎の力が強い。噛みつかれたら金属にも歯形が残ると言われておる。しかし水中にしか生息できないため、海に入らなければ噛みつかれることはない。それよりも陸に向けて放ってくる水弾の方が危険じゃな。あとは群れで行動するため、一匹いたら数十匹は覚悟するべきじゃ』
デュラ爺の説明に、俺は顔を引き攣らせることしかできなかった。
数十匹ってことは、水面に見えてる以上の数がいるってことだよな……
「こんな陸の近くに来る魔物なの?」
フィーネの疑問には、スーちゃんが答えた。
『普通は沖にしかいないはずよ。海で何が起きてるのかは分からないけど、イレギュラーな事態でしょうね』
「そうなんだ……」
俺たちが話をしている間にもアクアシャークの水弾は次々と港を襲った。さらに停泊している船も襲っているようだ。
「早く逃げろ!!」
「だが、俺の船が!」
「アクアシャークに狙われたんならもうダメだ、諦めろ!」
そんな声がそこかしこから聞こえてくる。さらに水弾によって怪我をした人も何人もいるようだ。
『リルン、デュラ爺、海の魔物は……』
フィーネがアクアシャークの討伐を頼もうと思ったのか二人に声を掛けたところで、スーちゃんがフィーネの言葉を遮った。
『リルン、デュラ爺、早くあいつらを倒すのよ!』
そう告げるスーちゃんはキラキラと輝く瞳だ。
「スーちゃんが他人を助けようとするなんて珍しいな」
瞳の輝きが気になりつつそう声をかけると、スーちゃんにはすぐ否定された。
『人助けじゃないわよ。エリク……アクアシャークはとっても美味しいのよ!』
『そういえば、昔に食べたことがあるが、不思議な食感でとろけるようじゃったな』
『そうなのよ!』
スーちゃんが乗り気なのはそういうことか……でも美味しいなら、人助けと一石二鳥だな。
「じゃあリルンとデュラ爺、改めてアクアシャークを討伐してくれる?」
『任せておけ』
『もちろんじゃ』
そうして二人は誰もが港から離れていくなか、悠々とアクアシャークに向かって足を進めた。
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