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第3章 黒山編
73、黒山の情報と釣り
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「黒山って観光で行くようなところなんですか?」
フィーネの問いかけに、男性はすぐに頷いた。
「おう、月に何回か観光馬車が定期的に出てるんだ。山の麓には観光客のための街があって、宿とか美味い料理もあるぞ。後は温泉だな」
まさか黒山がそんなところだとは。一気に行くのが楽しみになってきた。
『温泉だってよ!』
『あら、いいじゃない』
『昔はあまり人もいなかった気がするが、変わったんじゃな』
『温泉ということは火山だな』
皆も男性の話に黒山への興味が増したらしい。
「教えてくださってありがとうございます。私たち、黒山に行こうって思ってて」
「そうなんか。それなら観光馬車がおすすめだぜ。街の中心の広場でチケットが買える」
「後で行ってみますね」
「おうっ、じゃあ俺は残りの料理を作ってくるな」
それからはたくさん頼んだ海産料理を端から堪能し……そのあまりの美味しさに何度もおかわりをして、もう何も入らないほど満腹になったところで食堂を後にした。
『美味しかったわ~』
スーちゃんは恍惚とした表情で、デュラ爺の背中で毛繕いをしている。
「何が一番好きだった?」
俺の質問にまず答えてくれたのはフィーネだ。
「私はホタテのオーブン焼きが好きだったかな」
「おおっ、あれか。確かに美味かったな……でも俺はタコの唐揚げかな」
『私はマグロのステーキが好きだったわ』
スーちゃんのその言葉に、全員が納得の表情で頷く。スーちゃんはマグロのステーキを五枚も食べてたから、これで好きじゃないと言われたらびっくりだ。
『わしは金目鯛の煮付けが好みじゃったな』
『……我はやはりパンがいい』
『僕も木の実が美味しかったぁー!』
リルンとラトの全くブレない答えにフィーネと二人で笑っていると、目的地である冒険者ギルドが見えてきた。
今日はここで借りられる一軒家に関する話を聞いて、その後に観光馬車の予約をしに行く予定だ。
中は混んでいたのでリルンとデュラ爺にはギルドの外で待っててもらい、ラトがフィーネの肩に、スーちゃんは俺の肩に乗った。
スーちゃんが肩に乗るとかなり重いんだけど……それを言ったら確実に怒らせるので、口を閉じている。
『ここはいつも混んでるわね~』
『人がたくさんいるよね~』
二人ののんびりとした会話を聞きながら受付に向かい、キリッとした眼差しの女性に声を掛けた。
「こんにちは、色々と聞きたいことがあるのですが」
「はい。何でしょうか」
「この街に滞在する間に借りることができる、一軒家を紹介して欲しいです。それから黒山に向かう観光馬車があると聞いたのですが、これについても教えてもらいたくて」
「かしこまりました」
女性はカウンターの下に少しだけ身を屈めると、一枚の紙を渡してくれた。
「まず観光馬車ですが、直近の運行予定はこのようになっています。次の運行は一週間後ですね。まだ席は空いているはずですので、街の中心広場の受付に向かっていただけばチケットを購入できるはずです」
一週間か。この街でちょっとのんびりして依頼をいくつか受けるのにちょうど良いな。
「それから一軒家ですが、こちらは不動産屋を紹介させていただきますので、そちらに向かっていただけたらと思います」
「わかりました。ありがとうございます」
そうして俺たちは必要な情報を得ると、まずは広場に行ってチケットを購入し、それから不動産屋で一軒家を一週間だけ借りた。
この街で過ごす準備は整ったし、今後の予定も決まったし、順調だな。
次の日の午前中。今日からさっそく依頼を受けることも考えたけど、せっかく海に来たのだから堪能しなければということで、俺たちは全員で海釣りにやってきていた。
海の近くには釣り具を貸してくれるお店がたくさんあり、その中の一つに向かって二人分の道具を借りた。
ワクワクしながら海に向かえば、港のあちこちに釣り糸を垂らしている人たちがいる。玄人っぽい真剣な表情の人もいれば、家族で遊びにきているのだろう楽しげな人たちもいて、多種多様だ。
そんな中に俺たちも入り、さっそく教えてもらったように釣り糸を垂らした。
「よしっ、いっぱい釣るか!」
「エリク、釣りの経験あるの?」
「全くない」
「ふふっ、それじゃあ釣るのは難しいんじゃない?」
「いや、何となく釣れる気がする」
久しぶりの純粋な遊びにテンションが上がり、俺は立ち上がって真剣に魚が来るのを待った。
近くにいた人が魚を釣っても意識を逸らさず、ひたすら待っていたが――数十分経っても、竿はぴくりとも動かない。
こんなに難しいのかと落ち込み始めていたその時。
「あっ、来たかも!」
フィーネの竿に魚が掛かった。
フィーネの問いかけに、男性はすぐに頷いた。
「おう、月に何回か観光馬車が定期的に出てるんだ。山の麓には観光客のための街があって、宿とか美味い料理もあるぞ。後は温泉だな」
まさか黒山がそんなところだとは。一気に行くのが楽しみになってきた。
『温泉だってよ!』
『あら、いいじゃない』
『昔はあまり人もいなかった気がするが、変わったんじゃな』
『温泉ということは火山だな』
皆も男性の話に黒山への興味が増したらしい。
「教えてくださってありがとうございます。私たち、黒山に行こうって思ってて」
「そうなんか。それなら観光馬車がおすすめだぜ。街の中心の広場でチケットが買える」
「後で行ってみますね」
「おうっ、じゃあ俺は残りの料理を作ってくるな」
それからはたくさん頼んだ海産料理を端から堪能し……そのあまりの美味しさに何度もおかわりをして、もう何も入らないほど満腹になったところで食堂を後にした。
『美味しかったわ~』
スーちゃんは恍惚とした表情で、デュラ爺の背中で毛繕いをしている。
「何が一番好きだった?」
俺の質問にまず答えてくれたのはフィーネだ。
「私はホタテのオーブン焼きが好きだったかな」
「おおっ、あれか。確かに美味かったな……でも俺はタコの唐揚げかな」
『私はマグロのステーキが好きだったわ』
スーちゃんのその言葉に、全員が納得の表情で頷く。スーちゃんはマグロのステーキを五枚も食べてたから、これで好きじゃないと言われたらびっくりだ。
『わしは金目鯛の煮付けが好みじゃったな』
『……我はやはりパンがいい』
『僕も木の実が美味しかったぁー!』
リルンとラトの全くブレない答えにフィーネと二人で笑っていると、目的地である冒険者ギルドが見えてきた。
今日はここで借りられる一軒家に関する話を聞いて、その後に観光馬車の予約をしに行く予定だ。
中は混んでいたのでリルンとデュラ爺にはギルドの外で待っててもらい、ラトがフィーネの肩に、スーちゃんは俺の肩に乗った。
スーちゃんが肩に乗るとかなり重いんだけど……それを言ったら確実に怒らせるので、口を閉じている。
『ここはいつも混んでるわね~』
『人がたくさんいるよね~』
二人ののんびりとした会話を聞きながら受付に向かい、キリッとした眼差しの女性に声を掛けた。
「こんにちは、色々と聞きたいことがあるのですが」
「はい。何でしょうか」
「この街に滞在する間に借りることができる、一軒家を紹介して欲しいです。それから黒山に向かう観光馬車があると聞いたのですが、これについても教えてもらいたくて」
「かしこまりました」
女性はカウンターの下に少しだけ身を屈めると、一枚の紙を渡してくれた。
「まず観光馬車ですが、直近の運行予定はこのようになっています。次の運行は一週間後ですね。まだ席は空いているはずですので、街の中心広場の受付に向かっていただけばチケットを購入できるはずです」
一週間か。この街でちょっとのんびりして依頼をいくつか受けるのにちょうど良いな。
「それから一軒家ですが、こちらは不動産屋を紹介させていただきますので、そちらに向かっていただけたらと思います」
「わかりました。ありがとうございます」
そうして俺たちは必要な情報を得ると、まずは広場に行ってチケットを購入し、それから不動産屋で一軒家を一週間だけ借りた。
この街で過ごす準備は整ったし、今後の予定も決まったし、順調だな。
次の日の午前中。今日からさっそく依頼を受けることも考えたけど、せっかく海に来たのだから堪能しなければということで、俺たちは全員で海釣りにやってきていた。
海の近くには釣り具を貸してくれるお店がたくさんあり、その中の一つに向かって二人分の道具を借りた。
ワクワクしながら海に向かえば、港のあちこちに釣り糸を垂らしている人たちがいる。玄人っぽい真剣な表情の人もいれば、家族で遊びにきているのだろう楽しげな人たちもいて、多種多様だ。
そんな中に俺たちも入り、さっそく教えてもらったように釣り糸を垂らした。
「よしっ、いっぱい釣るか!」
「エリク、釣りの経験あるの?」
「全くない」
「ふふっ、それじゃあ釣るのは難しいんじゃない?」
「いや、何となく釣れる気がする」
久しぶりの純粋な遊びにテンションが上がり、俺は立ち上がって真剣に魚が来るのを待った。
近くにいた人が魚を釣っても意識を逸らさず、ひたすら待っていたが――数十分経っても、竿はぴくりとも動かない。
こんなに難しいのかと落ち込み始めていたその時。
「あっ、来たかも!」
フィーネの竿に魚が掛かった。
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