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第2章 王都編
60、希少素材で錬金
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まずはいつもと同じ手順で魔力水を作っていく。その過程もデュラ爺は楽しそうに見ていて、なんだか少し恥ずかしいほどだ。
「デュラ爺は錬金を見たことがあるんだっけ?」
『もちろんじゃ。しかしもう何十年も前の話だからな、その頃よりも錬金が進化しておる』
「へぇ~手順が違うとか?」
『以前よりも魔力水を作る工程が複雑になり、その代わりに質が向上しているようじゃ。ずっと昔はひたすら力技で砕いた魔石を、ぐつぐつ煮込んでなんとか魔力水を作っていたぞ』
マジか……それで錬金が成功するのだろうか。よほど運も持ち合わせていないとひたすら失敗しそうだ。
そう考えると、手順がしっかりと明文化されてる今はありがたい時代なんだな。
『今日は生命草を使うんじゃったか?』
「そのつもりだよ。とりあえず回復薬のレシピで、ヒール草を生命草に変えてみようかと思って。似たような効能を持つ植物だから」
これが成功しなかったら、回復薬に生命草を足すのもありかもしれないな。それから生命草の処理方法もいろいろ試してみるとか……
そんなことを考えていたら魔力水が出来上がったので、俺はそこにまず光草を加えた。そして生命草を、少しずつ刻んで足していく。
「意外と失敗しないな」
魔力水の色が変わらないので成功もしてなさそうだけど、黒水にならないので失敗でもない。生命草って、意外とたくさん入れないとダメなのかな……
そう思った瞬間、魔力水がさあぁぁと黒く染まった。
「うっ……失敗だ」
『この色は変わらんな。なんだか懐かしい光景じゃ』
「俺にとっては悔しい光景だけどな……よし、もう一回だ」
次は生命草を刻むのではなく、そのまま入れてみることにした。光草を適量入れた後に一株の生命草をそのまま投入すると、一瞬にして魔力水は真っ黒に染まる。
「……全然ダメだ。やっぱりこのレシピじゃ上手くいかないのかな」
ポツリとそう呟くと、真っ黒に染まった魔力水をじっと見つめているデュラ爺が、徐に口を開いた。
『生命草はそれ単体で効果が高いものじゃ。ならば他のものと混ぜることで打ち消しあってしまうのではないか? 例えばそうじゃな……そのものに大きな効果はないが、別の薬草の効果を引き出すようなものと混ぜたら良いかもしれん』
「デュラ爺、それだ!」
薬草の効果を引き出すものとしてすぐに思いつくのは空草だな。それから……氷草も回復薬ではないけど、調薬には使われると聞いたことがある。
後は白華草も入れてみるか。これは素材同士を結びつけて調和させる役割があったはずだ。
三つの素材をデュラ爺に取り出してもらい、どうやって処理しようか頭を悩ませた。とりあえず白華草はいつも通り細かく刻めば良いはずだ。
空草は……そのまま入れてみるかな。氷草は他と馴染みやすいように、少しだけ温めたほうがいい気がする。
『エリクは錬金が上手いな』
「デュラ爺から見てもそう思う?」
『ああ、とても手際が良いし、錬金の感覚とでも言うのか? それを持ち合わせておる』
「……ありがと」
デュラ爺にそう言ってもらえると嬉しいな。背筋が伸びる気分だ。
「じゃあ入れていくな」
それから慎重に魔力水の様子を見極めながら各種素材を投入していくと……生命草を一欠片追加したその瞬間に、魔力水の色が生命草と同じものに変わった。
少し青みがかった黒にキラキラとたくさんの光が散りばめられていて、とても綺麗だ。
「これは、黒水じゃないよな?」
『違うじゃろう。……何かは分からんが、何かしらが完成したな』
「……だよな!」
うわぁ、めちゃくちゃ嬉しい。レシピなしで成功しちゃったよ! 早く鑑定してもらいたい。まだフィーネたちが帰ってくるまでに時間はあるかな……
そう思って時計を見ると、ちょうどお昼時だった。そしてタイミングよく、フィーネたちが帰ってきた声が聞こえてくる。
「鑑定は午後か……」
「ただいま~」
「おかえり。早かったな」
「ラトのクッションがすぐに見つかったからね。エリクの錬金は?」
「それがさ、今ちょうど成功したところなんだ。これからとりあえず瓶に詰める予定」
俺が錬金釜の中を指さすと、三人が一斉に中を覗き込んだ。
「凄く綺麗だね」
『キラキラしてるね』
『見たことがない液体だな。生命草に似た色合いか?』
「うん。生命草と同じ色になったんだ」
「それなら生命草に似た効果がこの液体にもあるのかもしれないね」
もしそうなら凄いよな……強回復薬よりも凄い効果の治癒薬になっていたらどうしよう。早く鑑定をして真実を知りたい。
「午後にギルドで鑑定してもらおうと思ってるんだけど、皆も一緒に来る?」
「一緒に行っても良いのなら行きたいかな。結果が気になるから」
『僕も行きたい!』
『我も行こう』
『わしももちろん行くぞ』
「皆だな。じゃあ早く昼ご飯を食べていくか」
それからフィーネたちが買ってきてくれた美味しい屋台飯を堪能し、少し休んだところで皆で冒険者ギルドに向かった。
「デュラ爺は錬金を見たことがあるんだっけ?」
『もちろんじゃ。しかしもう何十年も前の話だからな、その頃よりも錬金が進化しておる』
「へぇ~手順が違うとか?」
『以前よりも魔力水を作る工程が複雑になり、その代わりに質が向上しているようじゃ。ずっと昔はひたすら力技で砕いた魔石を、ぐつぐつ煮込んでなんとか魔力水を作っていたぞ』
マジか……それで錬金が成功するのだろうか。よほど運も持ち合わせていないとひたすら失敗しそうだ。
そう考えると、手順がしっかりと明文化されてる今はありがたい時代なんだな。
『今日は生命草を使うんじゃったか?』
「そのつもりだよ。とりあえず回復薬のレシピで、ヒール草を生命草に変えてみようかと思って。似たような効能を持つ植物だから」
これが成功しなかったら、回復薬に生命草を足すのもありかもしれないな。それから生命草の処理方法もいろいろ試してみるとか……
そんなことを考えていたら魔力水が出来上がったので、俺はそこにまず光草を加えた。そして生命草を、少しずつ刻んで足していく。
「意外と失敗しないな」
魔力水の色が変わらないので成功もしてなさそうだけど、黒水にならないので失敗でもない。生命草って、意外とたくさん入れないとダメなのかな……
そう思った瞬間、魔力水がさあぁぁと黒く染まった。
「うっ……失敗だ」
『この色は変わらんな。なんだか懐かしい光景じゃ』
「俺にとっては悔しい光景だけどな……よし、もう一回だ」
次は生命草を刻むのではなく、そのまま入れてみることにした。光草を適量入れた後に一株の生命草をそのまま投入すると、一瞬にして魔力水は真っ黒に染まる。
「……全然ダメだ。やっぱりこのレシピじゃ上手くいかないのかな」
ポツリとそう呟くと、真っ黒に染まった魔力水をじっと見つめているデュラ爺が、徐に口を開いた。
『生命草はそれ単体で効果が高いものじゃ。ならば他のものと混ぜることで打ち消しあってしまうのではないか? 例えばそうじゃな……そのものに大きな効果はないが、別の薬草の効果を引き出すようなものと混ぜたら良いかもしれん』
「デュラ爺、それだ!」
薬草の効果を引き出すものとしてすぐに思いつくのは空草だな。それから……氷草も回復薬ではないけど、調薬には使われると聞いたことがある。
後は白華草も入れてみるか。これは素材同士を結びつけて調和させる役割があったはずだ。
三つの素材をデュラ爺に取り出してもらい、どうやって処理しようか頭を悩ませた。とりあえず白華草はいつも通り細かく刻めば良いはずだ。
空草は……そのまま入れてみるかな。氷草は他と馴染みやすいように、少しだけ温めたほうがいい気がする。
『エリクは錬金が上手いな』
「デュラ爺から見てもそう思う?」
『ああ、とても手際が良いし、錬金の感覚とでも言うのか? それを持ち合わせておる』
「……ありがと」
デュラ爺にそう言ってもらえると嬉しいな。背筋が伸びる気分だ。
「じゃあ入れていくな」
それから慎重に魔力水の様子を見極めながら各種素材を投入していくと……生命草を一欠片追加したその瞬間に、魔力水の色が生命草と同じものに変わった。
少し青みがかった黒にキラキラとたくさんの光が散りばめられていて、とても綺麗だ。
「これは、黒水じゃないよな?」
『違うじゃろう。……何かは分からんが、何かしらが完成したな』
「……だよな!」
うわぁ、めちゃくちゃ嬉しい。レシピなしで成功しちゃったよ! 早く鑑定してもらいたい。まだフィーネたちが帰ってくるまでに時間はあるかな……
そう思って時計を見ると、ちょうどお昼時だった。そしてタイミングよく、フィーネたちが帰ってきた声が聞こえてくる。
「鑑定は午後か……」
「ただいま~」
「おかえり。早かったな」
「ラトのクッションがすぐに見つかったからね。エリクの錬金は?」
「それがさ、今ちょうど成功したところなんだ。これからとりあえず瓶に詰める予定」
俺が錬金釜の中を指さすと、三人が一斉に中を覗き込んだ。
「凄く綺麗だね」
『キラキラしてるね』
『見たことがない液体だな。生命草に似た色合いか?』
「うん。生命草と同じ色になったんだ」
「それなら生命草に似た効果がこの液体にもあるのかもしれないね」
もしそうなら凄いよな……強回復薬よりも凄い効果の治癒薬になっていたらどうしよう。早く鑑定をして真実を知りたい。
「午後にギルドで鑑定してもらおうと思ってるんだけど、皆も一緒に来る?」
「一緒に行っても良いのなら行きたいかな。結果が気になるから」
『僕も行きたい!』
『我も行こう』
『わしももちろん行くぞ』
「皆だな。じゃあ早く昼ご飯を食べていくか」
それからフィーネたちが買ってきてくれた美味しい屋台飯を堪能し、少し休んだところで皆で冒険者ギルドに向かった。
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