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第2章 王都編
58、変質と王都に帰還
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『終わったぞ』
倒れたロックスパイダーの隣に降り立ったリルンが少し得意げにそう言って、そのすぐ後にデュラ爺の声も聞こえてきた。
『硬さと不意打ちだけじゃな。そこまで強くなかった』
この巨大な硬い魔物を強くないって言えるのは、この二人ぐらいだよな。俺の攻撃なんて奇跡的に一発決まっただけだ。
「二人ともありがとう。助かったよ」
「やっぱり二人は強いね。……それにしても、大きいね」
フィーネがロックスパイダーに近づき、恐る恐るその硬い胴体に触れた。俺はもう触れないので、少し離れたところから皆の様子を見学している。
「エリク、これどうする? 変質させてみる?」
「そうだな……このままで売れると思う?」
「いや、多分珍しいけど高くは売れないと思う。ただの硬い岩みたいなものだし」
「そっか。じゃあ変質させてみようかな」
岩が鉱石にでも変わったら最高だな。そう思いながらロックスパイダーの胴体に触れて少し待つと……十秒ほどで変質が始まった。
キラキラといつもの光に包まれたロックスパイダーは、みるみる形を小さくしていく。変質が終わった時には、手のひらに載るサイズだ。
「なんだか綺麗なものになったな。……もしかして、宝石とか?」
「確かにそんな感じだね。デュラ爺、これが何か知ってる?」
『もちろん知っておるぞ。それはパールスパイダーじゃ』
パールって、あの宝石のパール? それにしては巨大なパールだな……もしかしたら、高く売れたりするのだろうか。
「この辺に生息してる魔物じゃないよな?」
『そうじゃな。わしはもっと西の方でしか見たことがない』
やっぱりそうか。そこまで希少で地域限定のものだと、安易に売りに出せないな。デュラ爺にずっと収納しておいてもらうか、今度錬金に使ってしまおう。
それからパールスパイダーのパール部分のみを解体して収納し、俺たちは不毛な大地を離れることになった。星屑石に生命草、さらにはパールスパイダーなんてものまで手に入って、ここへの遠征は大成功だ。
「今度こそ帰ろうか」
「そうだな」
帰り道は星屑石が手に入ったことで行きよりも落ち着いた気分で、楽しく道中を過ごすことができた。
不毛な大地を出てから数日が経過し、俺たちは無事に王都まで戻ってきた。冒険者ギルドで依頼の達成報告は終わらせ、素材の売却も済ませたところだ。
「この後はどうする? まだ王都にはいるよね?」
「そうだな。最近は忙しく動いてたから、ここでしばらくはゆっくりしたいかも」
「賛成! またランクアップもしたいし、王都の観光もしたいかな」
「俺は錬金も」
二人でそんな話をして顔を見合わせ、多分同じことを考えて頷き合った。
「一軒家を借りようか」
「私も同じことを言おうと思ってた。今日からは借りられなくても、話だけ聞きに行こうか」
今は夕方少し前の時間なので、お店は開いてるだろう。でも一軒家の賃貸なんて即日は難しそうだ。
『あっ、いい匂いがするね』
今日は珍しく俺の肩の上にいたラトが、頬にギュッと手を置きながら俺の顔越しに近くの店を見つめた。
『絶対に木の実を焼いてるよ』
「さすがラト、木の実に対する嗅覚は凄いな」
『ふふっ、当然だよ!』
ラトは自慢げに腰に手を当てて胸を逸らしている。そんなラトの頭を指先で撫でていると、目的のお店が見えてきた。
「不動産賃貸、あそこだね」
「すぐに見つかって良かったな」
かなり大きな看板が目立つそのお店は、まだ開いているようだ。ドアをノックして中に入ると、すぐに店員の男性が出てきてくれる。
「いらっしゃいませ。こちらは賃貸専門ですがよろしいでしょうか?」
「はい。従魔がいるので宿ではなくて、一軒家を借りたくて来たんです。一軒家の賃貸はありますか?」
「もちろんございます。それではこちらのソファーにお掛けください」
男性に促されてソファーに座ると、すぐにいくつかの物件情報が載っている紙を手渡してもらえた。
「こちらの三軒がおすすめでございます。どちらも従魔可の物件でして、さらに庭付きとなっております」
「賃貸は一週間単位ですか?」
「はい。しかしこちらの一軒だけは、月単位で借りていただくと割引がございます」
その説明を聞いて三つの物件を比較して、俺たちはそれぞれ気になる物件を指差してみることにした。
「せーの」
俺の掛け声で指差したのは、二人とも同じ物件だ。冒険者ギルドから徒歩五分という立地の良さと、何よりも一階と二階の両方にお風呂とトイレがあるのが魅力的だった。
これならフィーネと完全に生活空間を分けることができるし、フィーネも過ごしやすいだろう。
「ここで決まりだね」
「そうだな」
「そちらの物件でよろしいでしょうか?」
「はい。いつから借りられますか?」
「本日からでも大丈夫ですよ。この後すぐにご案内できます」
「本当ですか! ありがとうございます。ではまずは一週間でお願いします」
それから俺たちは一週間分の賃料を先払いして、男性に家がある場所まで案内してもらった。
十分ほど歩いて目の前に現れたのは……予想以上に綺麗な、そして大きな一軒家だ。
倒れたロックスパイダーの隣に降り立ったリルンが少し得意げにそう言って、そのすぐ後にデュラ爺の声も聞こえてきた。
『硬さと不意打ちだけじゃな。そこまで強くなかった』
この巨大な硬い魔物を強くないって言えるのは、この二人ぐらいだよな。俺の攻撃なんて奇跡的に一発決まっただけだ。
「二人ともありがとう。助かったよ」
「やっぱり二人は強いね。……それにしても、大きいね」
フィーネがロックスパイダーに近づき、恐る恐るその硬い胴体に触れた。俺はもう触れないので、少し離れたところから皆の様子を見学している。
「エリク、これどうする? 変質させてみる?」
「そうだな……このままで売れると思う?」
「いや、多分珍しいけど高くは売れないと思う。ただの硬い岩みたいなものだし」
「そっか。じゃあ変質させてみようかな」
岩が鉱石にでも変わったら最高だな。そう思いながらロックスパイダーの胴体に触れて少し待つと……十秒ほどで変質が始まった。
キラキラといつもの光に包まれたロックスパイダーは、みるみる形を小さくしていく。変質が終わった時には、手のひらに載るサイズだ。
「なんだか綺麗なものになったな。……もしかして、宝石とか?」
「確かにそんな感じだね。デュラ爺、これが何か知ってる?」
『もちろん知っておるぞ。それはパールスパイダーじゃ』
パールって、あの宝石のパール? それにしては巨大なパールだな……もしかしたら、高く売れたりするのだろうか。
「この辺に生息してる魔物じゃないよな?」
『そうじゃな。わしはもっと西の方でしか見たことがない』
やっぱりそうか。そこまで希少で地域限定のものだと、安易に売りに出せないな。デュラ爺にずっと収納しておいてもらうか、今度錬金に使ってしまおう。
それからパールスパイダーのパール部分のみを解体して収納し、俺たちは不毛な大地を離れることになった。星屑石に生命草、さらにはパールスパイダーなんてものまで手に入って、ここへの遠征は大成功だ。
「今度こそ帰ろうか」
「そうだな」
帰り道は星屑石が手に入ったことで行きよりも落ち着いた気分で、楽しく道中を過ごすことができた。
不毛な大地を出てから数日が経過し、俺たちは無事に王都まで戻ってきた。冒険者ギルドで依頼の達成報告は終わらせ、素材の売却も済ませたところだ。
「この後はどうする? まだ王都にはいるよね?」
「そうだな。最近は忙しく動いてたから、ここでしばらくはゆっくりしたいかも」
「賛成! またランクアップもしたいし、王都の観光もしたいかな」
「俺は錬金も」
二人でそんな話をして顔を見合わせ、多分同じことを考えて頷き合った。
「一軒家を借りようか」
「私も同じことを言おうと思ってた。今日からは借りられなくても、話だけ聞きに行こうか」
今は夕方少し前の時間なので、お店は開いてるだろう。でも一軒家の賃貸なんて即日は難しそうだ。
『あっ、いい匂いがするね』
今日は珍しく俺の肩の上にいたラトが、頬にギュッと手を置きながら俺の顔越しに近くの店を見つめた。
『絶対に木の実を焼いてるよ』
「さすがラト、木の実に対する嗅覚は凄いな」
『ふふっ、当然だよ!』
ラトは自慢げに腰に手を当てて胸を逸らしている。そんなラトの頭を指先で撫でていると、目的のお店が見えてきた。
「不動産賃貸、あそこだね」
「すぐに見つかって良かったな」
かなり大きな看板が目立つそのお店は、まだ開いているようだ。ドアをノックして中に入ると、すぐに店員の男性が出てきてくれる。
「いらっしゃいませ。こちらは賃貸専門ですがよろしいでしょうか?」
「はい。従魔がいるので宿ではなくて、一軒家を借りたくて来たんです。一軒家の賃貸はありますか?」
「もちろんございます。それではこちらのソファーにお掛けください」
男性に促されてソファーに座ると、すぐにいくつかの物件情報が載っている紙を手渡してもらえた。
「こちらの三軒がおすすめでございます。どちらも従魔可の物件でして、さらに庭付きとなっております」
「賃貸は一週間単位ですか?」
「はい。しかしこちらの一軒だけは、月単位で借りていただくと割引がございます」
その説明を聞いて三つの物件を比較して、俺たちはそれぞれ気になる物件を指差してみることにした。
「せーの」
俺の掛け声で指差したのは、二人とも同じ物件だ。冒険者ギルドから徒歩五分という立地の良さと、何よりも一階と二階の両方にお風呂とトイレがあるのが魅力的だった。
これならフィーネと完全に生活空間を分けることができるし、フィーネも過ごしやすいだろう。
「ここで決まりだね」
「そうだな」
「そちらの物件でよろしいでしょうか?」
「はい。いつから借りられますか?」
「本日からでも大丈夫ですよ。この後すぐにご案内できます」
「本当ですか! ありがとうございます。ではまずは一週間でお願いします」
それから俺たちは一週間分の賃料を先払いして、男性に家がある場所まで案内してもらった。
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