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第2章 王都編
53、辺境の街
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王都を出発して二日後の午後。俺たちは問題なく、不毛な大地に一番近い街までやってきていた。国の端だからか予想していたより何倍も頑丈な外壁に囲まれた街は、かなり栄えている様子だ。
しかし王都などとは雰囲気が異なり、いかにも戦いに従事していますという人が多いように見える。国の端ということで魔物が多く、さらには万が一のために国を守る役目に就いている人たちもいるのだろう。
宿の部屋を借りて少し休憩したところで、まだ夕食まで時間があったので街の外に出てみることになった。
「人の手が入ってないね……」
「本当だな。こっち側には街道もない」
「でも私たちが向かうのはこの先なんだよね」
外門を出てから街の周囲を少し回ると、すぐ近くに深い森があるのが視界に入るけど、その森の先が不毛な大地がある場所なのだ。
『この森を行くのか。魔物がたくさんいそうだな』
『楽しそうじゃ』
『木の実もたくさんありそう!』
少しだけ憂鬱な気分になっている俺たちとは違い、神獣三人組は楽しそうに瞳を輝かせている。
「デュラ爺、野営の時はお願いね」
『ああ、任せておくと良い。木の上に野営場所を作り、ベッドも設置しよう』
「異空間収納に布団も入れたもんな」
『快適に寝られるじゃろう』
そう考えると、森の中での野営も悪くないと思えてくるかもしれない。木の上で布団に寝れたら……うん、気分が上がってきたかも。
「デュラ爺が仲間になってくれて良かった」
「本当だね。旅が凄く快適になったよ。ありがとう」
『わしもお主らの仲間になれて嬉しいぞ』
それから森の中の様子を下見しようということで皆で中に入り、どうせならと依頼の魔物を探すことになった。今回受けた依頼はブラックビートルの素材納品とホワイトビーの討伐、それからリネの花の採取依頼だ。
「この森は昆虫型の魔物が多いんだよな」
「うん。それも巨大なやつがたくさんいるらしいよ」
「ちょっと嫌だな……昆虫型って、足が気持ち悪くてあんまり好きになれない」
「それ分かる……あの何本も足があるのを見ると、ちょっと寒気がするよね」
フィーネとそんな会話をしていたら、リルンが耳をぴくぴくっと動かして、西の方向に視線を向けた。
『魔物がいるな。音がする』
『わしにも聞こえとる。これは羽音じゃな』
「どんな感じの羽音?」
『ゆっくりと飛んでるな』
ゆっくりということは、ブラックビートルでもホワイトビーでもなさそうだ。
「蝶系の魔物?」
『その可能性が高いな。こっちだ』
俺たちが付いていける速度で森の中を走り始めたリルンの後ろに続くと、少しして魔物の姿が見えてきた。森の中で大きな羽を羽ばたかせて飛んでいるのは……とても優美な蝶だ。
「危険な魔物なのか?」
動きの緩やかさと見た目の綺麗さに思わず首を傾げると、リルンに呆れた表情を向けられた。
『知らないのか? 近づいたら酸を飛ばされて、当たった場所は皮膚が爛れて剥がれ落ちるぞ』
「酸!? 皮膚が爛れて剥がれ落ちるって……怖っ」
あんなに綺麗なのに致死性の酸を吐くとか、やっぱり魔物は怖い。絶対に油断してやられた人が今までにいたはずだ。
「確かバタフライガーって名前だったよね?」
『そうじゃ。あの羽は高く売れるんじゃなかったか?』
「そうなの? じゃあ傷つけないように倒そうか。リルン、デュラ爺、お願いね」
『うむ、分かった……と言いたいところだが、羽を傷つけないのならデュラ爺の方が適任だな。頼むぞ』
『任せておけ。わしの植物魔法で瞬殺じゃ』
二人はそんな会話をするとデュラ爺が一歩前に出て、それと同時にバタフライガーの近くにある植物が一斉に動いた。
ざわざわっと木の枝や葉が擦れる音がして、バタフライガーの周囲を囲っていく。バタフライガーは逃げようとしたが、植物の動きの方が早く一瞬で囲まれてしまったようだ。
植物の檻に閉じ込められたバタフライガーは、酸を吐き出して反撃を試みるも……それによって植物が溶ける前に、胴体を鋭い枝に刺されて息絶えた。
『終わったぞ』
「デュラ爺、ありがとう。あの檻ごと地面に下ろせる?」
『もちろんじゃ。ついでに蝶も取り出そう』
植物による檻はゆっくりと地面に降りてくると、その場でするするっと複雑に絡まっていた植物たちが解けていき、すぐにその場に残るのはバタフライガーを支える少しの植物だけになった。
その植物によってバタフライガーはフィーネの目の前まで運ばれて、あとはフィーネがそれを受け取るだけだ。
やっぱり神獣の魔法は規格外だな……そしてバタフライガー、地上に来ると予想以上に大きい。俺が両手を広げたのと同じぐらいの大きさだ。
「羽だけ切り取っちゃうね」
「ありがとう。これには俺が触れないほうが良いよな」
「そうだね。また次に倒せたらその時は変質させてみようか」
「そうだな」
それからバタフライガーの解体を終えて、とりあえずデュラ爺の異空間干渉で収納してもらったところで、俺たちはもう少し森を探索するために、奥に向かってみることにした。
しかし王都などとは雰囲気が異なり、いかにも戦いに従事していますという人が多いように見える。国の端ということで魔物が多く、さらには万が一のために国を守る役目に就いている人たちもいるのだろう。
宿の部屋を借りて少し休憩したところで、まだ夕食まで時間があったので街の外に出てみることになった。
「人の手が入ってないね……」
「本当だな。こっち側には街道もない」
「でも私たちが向かうのはこの先なんだよね」
外門を出てから街の周囲を少し回ると、すぐ近くに深い森があるのが視界に入るけど、その森の先が不毛な大地がある場所なのだ。
『この森を行くのか。魔物がたくさんいそうだな』
『楽しそうじゃ』
『木の実もたくさんありそう!』
少しだけ憂鬱な気分になっている俺たちとは違い、神獣三人組は楽しそうに瞳を輝かせている。
「デュラ爺、野営の時はお願いね」
『ああ、任せておくと良い。木の上に野営場所を作り、ベッドも設置しよう』
「異空間収納に布団も入れたもんな」
『快適に寝られるじゃろう』
そう考えると、森の中での野営も悪くないと思えてくるかもしれない。木の上で布団に寝れたら……うん、気分が上がってきたかも。
「デュラ爺が仲間になってくれて良かった」
「本当だね。旅が凄く快適になったよ。ありがとう」
『わしもお主らの仲間になれて嬉しいぞ』
それから森の中の様子を下見しようということで皆で中に入り、どうせならと依頼の魔物を探すことになった。今回受けた依頼はブラックビートルの素材納品とホワイトビーの討伐、それからリネの花の採取依頼だ。
「この森は昆虫型の魔物が多いんだよな」
「うん。それも巨大なやつがたくさんいるらしいよ」
「ちょっと嫌だな……昆虫型って、足が気持ち悪くてあんまり好きになれない」
「それ分かる……あの何本も足があるのを見ると、ちょっと寒気がするよね」
フィーネとそんな会話をしていたら、リルンが耳をぴくぴくっと動かして、西の方向に視線を向けた。
『魔物がいるな。音がする』
『わしにも聞こえとる。これは羽音じゃな』
「どんな感じの羽音?」
『ゆっくりと飛んでるな』
ゆっくりということは、ブラックビートルでもホワイトビーでもなさそうだ。
「蝶系の魔物?」
『その可能性が高いな。こっちだ』
俺たちが付いていける速度で森の中を走り始めたリルンの後ろに続くと、少しして魔物の姿が見えてきた。森の中で大きな羽を羽ばたかせて飛んでいるのは……とても優美な蝶だ。
「危険な魔物なのか?」
動きの緩やかさと見た目の綺麗さに思わず首を傾げると、リルンに呆れた表情を向けられた。
『知らないのか? 近づいたら酸を飛ばされて、当たった場所は皮膚が爛れて剥がれ落ちるぞ』
「酸!? 皮膚が爛れて剥がれ落ちるって……怖っ」
あんなに綺麗なのに致死性の酸を吐くとか、やっぱり魔物は怖い。絶対に油断してやられた人が今までにいたはずだ。
「確かバタフライガーって名前だったよね?」
『そうじゃ。あの羽は高く売れるんじゃなかったか?』
「そうなの? じゃあ傷つけないように倒そうか。リルン、デュラ爺、お願いね」
『うむ、分かった……と言いたいところだが、羽を傷つけないのならデュラ爺の方が適任だな。頼むぞ』
『任せておけ。わしの植物魔法で瞬殺じゃ』
二人はそんな会話をするとデュラ爺が一歩前に出て、それと同時にバタフライガーの近くにある植物が一斉に動いた。
ざわざわっと木の枝や葉が擦れる音がして、バタフライガーの周囲を囲っていく。バタフライガーは逃げようとしたが、植物の動きの方が早く一瞬で囲まれてしまったようだ。
植物の檻に閉じ込められたバタフライガーは、酸を吐き出して反撃を試みるも……それによって植物が溶ける前に、胴体を鋭い枝に刺されて息絶えた。
『終わったぞ』
「デュラ爺、ありがとう。あの檻ごと地面に下ろせる?」
『もちろんじゃ。ついでに蝶も取り出そう』
植物による檻はゆっくりと地面に降りてくると、その場でするするっと複雑に絡まっていた植物たちが解けていき、すぐにその場に残るのはバタフライガーを支える少しの植物だけになった。
その植物によってバタフライガーはフィーネの目の前まで運ばれて、あとはフィーネがそれを受け取るだけだ。
やっぱり神獣の魔法は規格外だな……そしてバタフライガー、地上に来ると予想以上に大きい。俺が両手を広げたのと同じぐらいの大きさだ。
「羽だけ切り取っちゃうね」
「ありがとう。これには俺が触れないほうが良いよな」
「そうだね。また次に倒せたらその時は変質させてみようか」
「そうだな」
それからバタフライガーの解体を終えて、とりあえずデュラ爺の異空間干渉で収納してもらったところで、俺たちはもう少し森を探索するために、奥に向かってみることにした。
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