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第2章 王都編
51、田舎街と王都到着
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「デュラ爺はステーキを食べるよね? リルンはもしパンがなかったら、帰りに別のお店に行くのでいい?」
『うむ、それで良いぞ』
「ありがとう。ラトは木の実の何かがあったら頼もうね」
『うん!』
そんな話をしつつ教えてもらった通りに路地を進んでいくと、目的のお店はすぐに分かった。とてもいいスパイスの香りが漂ってきている。
「いらっしゃい!」
中に入ると店員の男性が笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは。従魔もいるけど良いですか?」
「もちろんいいよ。じゃあ……奥のあの席を使ってくれるか?」
「分かりました」
席に着いてメニューを開くと、思っていたよりもかなり豊富なメニューが目に入る。リルンが好きなパンもあるみたいだ。それにラトが興味を示しそうな、木の実の炒め物まである。
『僕はこれがいい! これ!』
「はいはい。頼むからちょっと落ち着いて」
ラトは尻尾をピンっと立てて大興奮だ。リルンはパンをいくつか選び、デュラ爺は予定通り本日のステーキを選んだ。
「エリクはどうする?」
「俺は女将さんおすすめの、このスパイス煮込みにする」
「それ気になるよね。私はステーキにするから分けて食べない?」
「あっ、それいいな。じゃあもう一つスープも分ける?」
「そうだね。あと飲み物は……」
それから店員さんに注文を済ませ、少し待っていると一気に料理が運ばれてきた。どの料理もとても美味しそうな香りを発している。
『食べていい!?』
「良いけど暑いから気をつけてね」
『うん!』
ラトは湯気を発している木の実を手に取ると、幸せそうな表情で口に詰め込んだ。ほっぺを膨らませながら、もぐもぐとしている様子がとても可愛い。
『すっごく美味しいよ! ちょっとだけ塩味が効いてて、バターの風味もするかも。ふふっ、ふふふっ、たまには炒めた木の実もいいね!』
「俺ももらっていい?」
『うん!』
スプーンで掬って口に運ぶと、ザクザクとした木の実の歯ごたえと塩味がとても美味しかった。
「これはいいな」
「そんなに? 私も一口もらうね」
フィーネも木の実を口に運ぶと、咀嚼しながら口端を緩めた。その表情を見てラトが嬉しそうに頬を緩ませる。
『美味しいよね!』
『この肉も美味いぞ。この店は当たりじゃな』
『ああ、パンもかなりいける。何個でも食べられそうだ』
リルンとデュラ爺も嬉しそうだ。
そんな表情を見ながらスパイス煮込みも口に運んでみると、女将さんがおすすめするだけあってかなり美味しかった。
少し辛いけど、その辛味が食欲をそそる。
「エリク、ステーキを切り分けちゃって良い?」
「もちろん。ありがと」
それからも皆で美味しい夕食を堪能し、大満足で食堂を後にした。そして宿でゆっくりと休んですぐに次の日だ。
次の日も馬車にひたすら揺れて子供たちと話をして、かなり疲れてきたところでやっと王都に到着した。
初めての王都は――あまりにも大きくて人がたくさんいて、門前広場で思わずぽかんと周辺の景色を見つめてしまう。
「やっぱり王都は凄いね~」
「こんなに大きいなんて、予想外だ。大きいんだなって予想はしてたけど、ここまでなんて……」
『確かにこの街は広いな』
『でもこのぐらいの街はたまにあるよな』
『人がたくさんいるね~』
皆はいくつもの街を巡ってきたからか、この大きさの街にも慣れているらしい。こんな大きさの街がたまにあると言えるほどに存在してるのか……信じられない。
「今回は乗車ありがとな。そこの大通りを進むといくつも宿があるぞ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
御者の男性は慣れている様子で俺たちに手を降り、大通りを馬車ごと奥に向かっていった。
「あの、今回は色々とありがとうございました。とても助かりました。本当に何とお礼を申し上げたらいいか……」
馬車を見送ると乗客の皆は各々移動を開始し、お母さんは俺たちの下にやってきて何度も頭を下げる。
「いえ、気にしないでください。二人のおかげで私たちも楽しかったですし」
フィーネが女の子と男の子に視線を向けて笑顔でそう言うと、お母さんはホッとした様子で最後にもう一度大きく頭を下げた。
「お二人のおかげでこの子たちも楽しかったと思います」
「うん! ラトちゃん可愛かった~」
女の子の純粋なその褒め言葉に、ラトは少し照れた様子だ。
『えへへ』
俺の耳には笑い声も届いてきて、思わず苦笑を浮かべてしまう。ラトって感情表現が豊かで素直だから可愛いんだよな。
それから女の子たちとも別れ、俺たちも今夜の宿泊場所を見つけるために大通りを街の奥に向かった。
『うむ、それで良いぞ』
「ありがとう。ラトは木の実の何かがあったら頼もうね」
『うん!』
そんな話をしつつ教えてもらった通りに路地を進んでいくと、目的のお店はすぐに分かった。とてもいいスパイスの香りが漂ってきている。
「いらっしゃい!」
中に入ると店員の男性が笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは。従魔もいるけど良いですか?」
「もちろんいいよ。じゃあ……奥のあの席を使ってくれるか?」
「分かりました」
席に着いてメニューを開くと、思っていたよりもかなり豊富なメニューが目に入る。リルンが好きなパンもあるみたいだ。それにラトが興味を示しそうな、木の実の炒め物まである。
『僕はこれがいい! これ!』
「はいはい。頼むからちょっと落ち着いて」
ラトは尻尾をピンっと立てて大興奮だ。リルンはパンをいくつか選び、デュラ爺は予定通り本日のステーキを選んだ。
「エリクはどうする?」
「俺は女将さんおすすめの、このスパイス煮込みにする」
「それ気になるよね。私はステーキにするから分けて食べない?」
「あっ、それいいな。じゃあもう一つスープも分ける?」
「そうだね。あと飲み物は……」
それから店員さんに注文を済ませ、少し待っていると一気に料理が運ばれてきた。どの料理もとても美味しそうな香りを発している。
『食べていい!?』
「良いけど暑いから気をつけてね」
『うん!』
ラトは湯気を発している木の実を手に取ると、幸せそうな表情で口に詰め込んだ。ほっぺを膨らませながら、もぐもぐとしている様子がとても可愛い。
『すっごく美味しいよ! ちょっとだけ塩味が効いてて、バターの風味もするかも。ふふっ、ふふふっ、たまには炒めた木の実もいいね!』
「俺ももらっていい?」
『うん!』
スプーンで掬って口に運ぶと、ザクザクとした木の実の歯ごたえと塩味がとても美味しかった。
「これはいいな」
「そんなに? 私も一口もらうね」
フィーネも木の実を口に運ぶと、咀嚼しながら口端を緩めた。その表情を見てラトが嬉しそうに頬を緩ませる。
『美味しいよね!』
『この肉も美味いぞ。この店は当たりじゃな』
『ああ、パンもかなりいける。何個でも食べられそうだ』
リルンとデュラ爺も嬉しそうだ。
そんな表情を見ながらスパイス煮込みも口に運んでみると、女将さんがおすすめするだけあってかなり美味しかった。
少し辛いけど、その辛味が食欲をそそる。
「エリク、ステーキを切り分けちゃって良い?」
「もちろん。ありがと」
それからも皆で美味しい夕食を堪能し、大満足で食堂を後にした。そして宿でゆっくりと休んですぐに次の日だ。
次の日も馬車にひたすら揺れて子供たちと話をして、かなり疲れてきたところでやっと王都に到着した。
初めての王都は――あまりにも大きくて人がたくさんいて、門前広場で思わずぽかんと周辺の景色を見つめてしまう。
「やっぱり王都は凄いね~」
「こんなに大きいなんて、予想外だ。大きいんだなって予想はしてたけど、ここまでなんて……」
『確かにこの街は広いな』
『でもこのぐらいの街はたまにあるよな』
『人がたくさんいるね~』
皆はいくつもの街を巡ってきたからか、この大きさの街にも慣れているらしい。こんな大きさの街がたまにあると言えるほどに存在してるのか……信じられない。
「今回は乗車ありがとな。そこの大通りを進むといくつも宿があるぞ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
御者の男性は慣れている様子で俺たちに手を降り、大通りを馬車ごと奥に向かっていった。
「あの、今回は色々とありがとうございました。とても助かりました。本当に何とお礼を申し上げたらいいか……」
馬車を見送ると乗客の皆は各々移動を開始し、お母さんは俺たちの下にやってきて何度も頭を下げる。
「いえ、気にしないでください。二人のおかげで私たちも楽しかったですし」
フィーネが女の子と男の子に視線を向けて笑顔でそう言うと、お母さんはホッとした様子で最後にもう一度大きく頭を下げた。
「お二人のおかげでこの子たちも楽しかったと思います」
「うん! ラトちゃん可愛かった~」
女の子の純粋なその褒め言葉に、ラトは少し照れた様子だ。
『えへへ』
俺の耳には笑い声も届いてきて、思わず苦笑を浮かべてしまう。ラトって感情表現が豊かで素直だから可愛いんだよな。
それから女の子たちとも別れ、俺たちも今夜の宿泊場所を見つけるために大通りを街の奥に向かった。
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