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第2章 王都編
50、魔物襲撃
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『魔物がいるな』
『む、本当じゃ。しかもかなり近いぞ。風上で気づかんかったな』
二人のその会話に俺とフィーネが周囲に視線を向けると、俺たちから少し離れたところで遊んでいる子供たちが視界に入った。そしてその子供たちのすぐ近くに迫っている、青色の大きな魔物も。
あれは……確かウォーターベアだ。素材を扱ったことがあるから覚えている。かなり強くて、森の浅いところにはいないはずの魔物なのに。
「魔物がいる! 逃げて!」
フィーネの叫び声で皆がウォーターベアの存在に気づいたその瞬間、ウォーターベアは雄叫びを上げながら上半身を持ち上げた。
ヤバい、あのまま子供達を押しつぶす気だ。
「グォォォォォ!!!」
そう思っても俺には何をすることもできず、目の前の光景をただただ見つめていると……ウォーターベアに狙いを定められた女の子を守るように植物が素早く動いて盾になり、さらにウォーターベアは目視できないほどの速さで近くの木まで吹き飛んだ。
もちろん植物の方はデュラ爺、そして吹き飛ばしたのはリルンだ。
「デュラ爺、リルン、ありがとう! リルンはそのまま倒しちゃって!」
『分かった』
リルンはウォーターベアに向かって飛び掛かると、爪の攻撃で正確にウォーターベアの急所を切りつけた。しかし辛うじてまだ息があったらしいウォーターベアが水弾を周囲に撒き散らし、それが俺たちの方にまで飛んでくる。
ただその攻撃も俺たちに届くことはなかった。リルンが風魔法で全てを吹き飛ばしたのだ。
水弾を防いだリルンは今度は風の刃をウォーターベアに放ち、今度こそウォーターベアは完全に息絶えた。
『倒したぞ』
さすがリルンだな……何度見ても本当に強い。リルンが苦戦する敵っているのだろうか。
「リルンありがとう。デュラ爺も防御をありがとう」
フィーネが二人を労うと、そこでやっと危機が去ったことを理解したのか、他の乗客たちが安心した様子で草原に座り込むのが目に入った。
女の子のお母さんは、泣きながら女の子の下へ駆けているようだ。
「大丈夫!? 怪我はない!?」
「……うん、大丈夫……」
女の子は目の前で起きたことがまだ理解しきれていないのか、呆然とした様子で口を開いた。
「娘を助けてくださってありがとうございます。本当に助かりました……!」
「いえ、助けるのは当然ですよ。怪我がないようで良かったです」
それから女の子とお母さんが抱き合うのをほっこりとした気持ちで眺めていると、俺たちのところに御者の男性が駆け寄ってきた。
「お前ら、魔物を倒してくれてありがとう! 従魔の強さに驚いたぜ!」
「この子たちは頼りになるんです」
「本当だな……! あれはウォーターベアだろ? あんなやつが襲ってきたら全滅も覚悟するほどだ。本当に助かった。お前らは命の恩人だ!」
御者の男性はリルンの戦いに興奮しているのか、大声でそう捲し立てた。すると他の乗客も俺たちに命を救われたことを実感したのか、次々と近づいてきて感謝を伝えてくれる。
それから全員の乗客に感謝を伝えられ、ウォーターベアをフィーネが素早く解体して素材を回収したところで、馬車は今夜泊まる予定の街に向かって出発した。
日が沈む少し前、俺たちは無事に街へと到着していた。馬車ごと街中に入った俺たちの目の前には、大きな宿がある。
この宿はいつも御者の男性が泊まっている宿で、乗客が全員泊まれるぐらいの部屋は確保されているらしい。ただ別の宿に泊まりたかったら、それもありなんだそうだ。
俺たちは特に宿にこだわりはないので、リルンとデュラ爺の小屋があることを確認して、この宿の部屋を取った。
「これが鍵だよ。夕食は近くの食堂で食べてね」
「分かりました。おすすめの食堂はありますか? 美味しいお店を教えてください」
フィーネが女将さんに期待の眼差しを向けてそう聞くと、女将さんは苦笑しつつ街の内側を指差した。
「あっちに美味しい店があるよ。この宿の前の通りをまっすぐ行って、黄色い屋根が特徴的な店の三軒先を左に曲がるんだ。それで路地をしばらく道なりに進んで、途中で右に曲がってすぐに店がある。その右に曲がるところが分かりづらいんだけど、美味しい匂いがするから分かるはずだよ」
「ありがとうございます! 行ってみますね。ちなみにおすすめのメニューは……」
「そうだね~。米をスパイスで煮込んだ料理が美味しいかな。後はステーキが絶品さ。その日に手に入った新鮮な肉を焼いてくれるんだ」
「それ良いですね。従魔も入れますか?」
「もちろんさ」
女将さんにいい店を紹介してもらったところで、俺たちはさっそくその店に向かうために宿を出た。
『む、本当じゃ。しかもかなり近いぞ。風上で気づかんかったな』
二人のその会話に俺とフィーネが周囲に視線を向けると、俺たちから少し離れたところで遊んでいる子供たちが視界に入った。そしてその子供たちのすぐ近くに迫っている、青色の大きな魔物も。
あれは……確かウォーターベアだ。素材を扱ったことがあるから覚えている。かなり強くて、森の浅いところにはいないはずの魔物なのに。
「魔物がいる! 逃げて!」
フィーネの叫び声で皆がウォーターベアの存在に気づいたその瞬間、ウォーターベアは雄叫びを上げながら上半身を持ち上げた。
ヤバい、あのまま子供達を押しつぶす気だ。
「グォォォォォ!!!」
そう思っても俺には何をすることもできず、目の前の光景をただただ見つめていると……ウォーターベアに狙いを定められた女の子を守るように植物が素早く動いて盾になり、さらにウォーターベアは目視できないほどの速さで近くの木まで吹き飛んだ。
もちろん植物の方はデュラ爺、そして吹き飛ばしたのはリルンだ。
「デュラ爺、リルン、ありがとう! リルンはそのまま倒しちゃって!」
『分かった』
リルンはウォーターベアに向かって飛び掛かると、爪の攻撃で正確にウォーターベアの急所を切りつけた。しかし辛うじてまだ息があったらしいウォーターベアが水弾を周囲に撒き散らし、それが俺たちの方にまで飛んでくる。
ただその攻撃も俺たちに届くことはなかった。リルンが風魔法で全てを吹き飛ばしたのだ。
水弾を防いだリルンは今度は風の刃をウォーターベアに放ち、今度こそウォーターベアは完全に息絶えた。
『倒したぞ』
さすがリルンだな……何度見ても本当に強い。リルンが苦戦する敵っているのだろうか。
「リルンありがとう。デュラ爺も防御をありがとう」
フィーネが二人を労うと、そこでやっと危機が去ったことを理解したのか、他の乗客たちが安心した様子で草原に座り込むのが目に入った。
女の子のお母さんは、泣きながら女の子の下へ駆けているようだ。
「大丈夫!? 怪我はない!?」
「……うん、大丈夫……」
女の子は目の前で起きたことがまだ理解しきれていないのか、呆然とした様子で口を開いた。
「娘を助けてくださってありがとうございます。本当に助かりました……!」
「いえ、助けるのは当然ですよ。怪我がないようで良かったです」
それから女の子とお母さんが抱き合うのをほっこりとした気持ちで眺めていると、俺たちのところに御者の男性が駆け寄ってきた。
「お前ら、魔物を倒してくれてありがとう! 従魔の強さに驚いたぜ!」
「この子たちは頼りになるんです」
「本当だな……! あれはウォーターベアだろ? あんなやつが襲ってきたら全滅も覚悟するほどだ。本当に助かった。お前らは命の恩人だ!」
御者の男性はリルンの戦いに興奮しているのか、大声でそう捲し立てた。すると他の乗客も俺たちに命を救われたことを実感したのか、次々と近づいてきて感謝を伝えてくれる。
それから全員の乗客に感謝を伝えられ、ウォーターベアをフィーネが素早く解体して素材を回収したところで、馬車は今夜泊まる予定の街に向かって出発した。
日が沈む少し前、俺たちは無事に街へと到着していた。馬車ごと街中に入った俺たちの目の前には、大きな宿がある。
この宿はいつも御者の男性が泊まっている宿で、乗客が全員泊まれるぐらいの部屋は確保されているらしい。ただ別の宿に泊まりたかったら、それもありなんだそうだ。
俺たちは特に宿にこだわりはないので、リルンとデュラ爺の小屋があることを確認して、この宿の部屋を取った。
「これが鍵だよ。夕食は近くの食堂で食べてね」
「分かりました。おすすめの食堂はありますか? 美味しいお店を教えてください」
フィーネが女将さんに期待の眼差しを向けてそう聞くと、女将さんは苦笑しつつ街の内側を指差した。
「あっちに美味しい店があるよ。この宿の前の通りをまっすぐ行って、黄色い屋根が特徴的な店の三軒先を左に曲がるんだ。それで路地をしばらく道なりに進んで、途中で右に曲がってすぐに店がある。その右に曲がるところが分かりづらいんだけど、美味しい匂いがするから分かるはずだよ」
「ありがとうございます! 行ってみますね。ちなみにおすすめのメニューは……」
「そうだね~。米をスパイスで煮込んだ料理が美味しいかな。後はステーキが絶品さ。その日に手に入った新鮮な肉を焼いてくれるんだ」
「それ良いですね。従魔も入れますか?」
「もちろんさ」
女将さんにいい店を紹介してもらったところで、俺たちはさっそくその店に向かうために宿を出た。
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