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本編
19:大暴露の一夜 前編
しおりを挟むカツサンドランチがあったその晩、俺は個別にアルベールに呼ばれた。
平民の俺をわざわざ私室へ呼び付け、人払いまでするウィリデリア王国第一王子。
就寝前なのか、彼は寛いだ服装で大きくため息を吐いた。
「今日は、助かった」
昼間リディがルシャードに働いた不敬を俺がやんわり窘めた事を言っているのだろう。
あの後ルシャード殿下はフェリシテお嬢様とお話しして機嫌良く帰られたと伝えると、胸を撫で下ろしたようだ。
この世界、貴族令嬢に対しての扱いはとても緩く甘い。特に彼女に惚れているアルベールは余り強く言えないのだろう。
「在学中はリディの自由さが魅力だったが、こうやって他の貴賓を招いて客観的に見ると……彼女には少々教育が必要だと感じる」
「リディ様は現在妃教育を受けられているのでは?そのための離宮暮らしだと思っていましたが」
「勿論毎日受けさせてはいるが昼間の様子を見る限り、芳しくないようだ」
またもや溜息を溢すアルベール。
大丈夫か王子?溜息と一緒に魂が半分抜け出してんぞ。
学園では一応平等であると謳っていたため、彼女が貴族令嬢として相応しくない行動をしても気に留めなかったのだろう。
今更気付いたかと思うが、新鮮な刺激をもたらす彼女にどっぷりハマっていた王子にそれを咎めたところで意味はなく、寧ろ気付いたお陰でお嬢様の婚約破棄が遠退く危険性が高まる。
何しろ俺のお嬢様は完璧だ。
それこそ帝国皇子の隣にいても全く遜色無い、淑女レベル99のカンスト間近のプロ令嬢。
王子妃という立場を考えれば、リディとフェリシテお嬢様の差は歴然だ。俺がお嬢様の侍従になる前から教育され積み重ねて来た努力は計り知れず。
片やリディは貴族としての教育も浅く、更にこの世界がイージーモードだと思っている彼女にたかが一年で王子妃としての素養が身につくとは到底思えない。俺でさえ無理だと思うレベルだからな。
アルベールはリディの自由奔放さという魅力の影に潜む無教養に頭を悩ませ始めている。
可哀想なので暫くアルベールの愚痴に付き合っていた。
そして気が緩んだのか、アルベールの本音がポツリと溢れる。
「このままでは俺はフェリシテと結婚させられてしまう…」
は?
結婚、させられてしまう、だと?
おい。ウチのお嬢様を罰ゲーム扱いか?
その言葉に俺は怒りを覚えた。
俺は無言でやつの金色に輝く頭を掴み、目の前の高級なテーブルへ顔面を叩きつけた!
「ぐはっ!」
鈍い音がして彼の傷ひとつない顔から鼻血が噴き出る。
それでも俺は髪の毛を掴んだまま持ち上げ、何度も何度も打ち付ける。
「やっ、め……!」
「ウルセェよ!お嬢様だってテメェのような出来損ないのダメ王子はお断りだってんだよ!テメェに選ばれたくなくてあんな扱い受けても大人しくしてんのが分かんねーのかクズ野郎が!あー分かる訳ねーよな!あんな低俗な女がお好みのお前には一生分かんねーだろうな!」
鼻血が吹き出て歯が欠けてもさらに打ち付ける。テーブルが真っ赤に染まりアルベールの顔も自身の血と涙と鼻水でぐちゃぐちゃになる。
それでも俺は許さず、やつのズボンを下着ごとずり下ろしそのまま荒々しく穴へ指を突っ込んでやる。
「ふぐぁぁぁぁぁーーっ!」
突然の鈍痛に悲鳴を上げる王子。まだまだ許さねーよ!
そのままナカを弄り前立腺を刺激してやれば奇声を上げた。
痛いのか気持ちいいのか分からない混乱したヤツは鼻水を垂れ流し許しを乞う。
「そもそもウチのお嬢様は昔から周辺諸国の王族からバンバン縁談がやって来る超優良女子だぞ!今だってテメェなんかよりずっとハイスペックな皇子に執着され俺すら嫉妬されるほど溺愛されているくらいだからな!テメェこそお嬢様には到底釣り合わねぇクソ雑魚って分かれや!」
そのまま慣らさず後ろの穴に俺のチンコをぶち込み同時にヤツの逸物を扱くと泣きながら射精をした王子。
「あははは!〝に~んげ~んポンプぅ~☆〟」
某猫型ロボットの口調で嬲りながら嗚咽を流す王子を蹂躙し………
……ふぅ。
という俺の脳内暴力は、ひとまず落ち着かせた。
俺はやれば出来る侍従だ。
俺は侍従フェイスを保ち提案をしてみる。
「俺はただの平民で、これは何の教養もない侍従の戯言と思って聞き流してくださればいいご提案ですが…、ひとまずフェリシテお嬢様を解放されては如何でしょう」
「解放……?」
聞き流しても良いと言えば、人は聞き耳を立てる不思議。
アルベールは俺に紫色の瞳を向け、しっかりと聞く体勢を整えた。
「フェリシテお嬢様とのご婚約を白紙に戻し、リディ様は…王子妃としての教育が困難ならば必然的に脱落するでしょう」
「そうなれば俺は妃を迎えられないではないか」
「思うに、今すぐご結婚を考える必要性はないのでは?」
「え……?」
困惑するアルベールに俺は甘言を垂れる。
「畏れながら、確か三十歳までにご成婚なされば問題はないはずですよね?」
「………!あ、あぁ!そうだ。先先代は三十一歳で結婚した…」
「時間はたっぷりあります。その間じっくりと考慮し殿下に相応しい令嬢をご自身で選ばれたら如何でしょうか」
「な、なるほど…。俺自身で、選ぶ…」
揺らぐアルベールにトドメの一発。
「それまで殿下は、誰の束縛も受けません」
にっこりと侍従スマイルを向ければ、彼の顔は輝いた。
一度は自由恋愛を楽しんだアルベールだ。束縛を受けないという言葉は何より甘美だろう。
…但し、陛下を説得するという最難関が待ち受けているけどな。
「セバスティアン!」
「はい」
アルベールは立ち上がり、俺の手を取り荒々しく握手をする。
その表情はまるで憑き物が取れたかのように晴々としており、先ほどの陰鬱な溜息は興奮の鼻息となっていた。
嬉々としてハグまでかまし、彼の興奮度は最高潮らしい。
以前俺を脅していた表情とは大違いだ。
「お前の事を誤解していたようだ!ただの不埒な侍従と思っていたが、さすがマレクラルス侯爵が雇っているだけのことはある!」
「お褒めに与り光栄です」
…正確には派遣侍従だけどな。
俺の雇用主は組織のボスだ。
しかも微妙にディスられたが気にしない。
心の中でほくそ笑んだ俺は、お暇しようとハグをする王子の肩を緩く弾いた。
「それでは殿下、俺はこの辺で…」
同時に扉がノックされ向こうで声が上がる。
「殿下?クロヴィスです!」
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「ん?どうした、いいぞ入れ」
アルベールが言い終わらないうちに扉が開き、慌てて駆け込んできたクロヴィス。
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「セバスティアンを個別に呼び出したと聞いて慌てて来たが…まさかアル!君は……手を出したのか!」
てをだした?
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あらヤダ!クロヴィスったら誤解してるぅ。
「落ち着けクロヴィス。これは単なる感謝のハグだ、勘違いするな」
冷静に宥めようとするアルベールだが、逆鱗に触れている事に気付いていないご様子。
「感謝の…ハグだと……?」
一体何を感謝されたんだろうね?
俺は焦った様子を見せて更に煽ってみた。
「あの、これは……!」
俺は恥ずかしそうに下を向きオズオズとアルベールから離れる。
その場の流れに乗っちゃうボクの悪い癖♡
俺の怪しい行動に激昂した氷の貴公子は、慌てて俺を抱き寄せ気高く吠えた。
「いくら君が王子でも親友でもこれだけは許せん!リディは譲ってやったがセバスティアンだけは絶対に渡さない!」
激昂して思わず吐いたクロヴィスの言葉に、アルベールは気付いた。
「おい待てクロヴィス。〝リディは譲ってやった〟だと?お前とリディはそういう関係にあったと言うのか?」
「っは!私たちが彼女をどんな目で見ていたかは知っていただろう!それにリディと関係していたのは私だけではないぞ。手の早いエドメは勿論のこと、マルセルもだ!」
「なっ………!?」
何と。
ここに来てクロヴィスからの、
大 暴 露 !
プギャーーーっ!
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完全アウトだろコレ!
あははははっ!笑いが止まらねー!
静まれ俺の表情筋よ!まだその時ではないぞ!
「とにかく!セバスティアンは連れて帰る!」
思考停止したアルベールを放置して、俺はクロヴィスに抱かれたまま部屋を後にした。
どうなるんだ、コレ?
果たしてリディの運命は!
いやぁん♡明日から楽しみ~♡
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