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本編
01:俺は卒業パーティーを外から眺めている人
しおりを挟む悪役令嬢ものですが、【BL】でございます。
今までよりも少々長めの作品ですので、ゆっくりと展開していきます。
十話までヒーローが出て来ませんが、どうぞ宜しくお願いします(^人^)
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
おいおいおい。
これありがちな悪役令嬢の断罪劇そっくりじゃね?
なんて呑気に考えていたら断罪されているのは俺が仕えるフェリシテお嬢様で、俺の容量少ない脳内に乙女ゲームの記憶が蘇った。
——— あれ?! 俺のお嬢様、悪役令嬢じゃん!
マジかー!
今更思い出したわ!
そうそうそう!
確かヒロインて髪色ピンクだったわ!王子に引っ付いてる子がそうか。さすがヒロイン、顔は可愛いな。
そんでこの国の王子がメインヒーローで、他にも攻略キャラが…あ、成る程。お嬢様を取り囲んでる奴ら全員そうだな。御大層に怖い顔で威嚇してるよ!
宰相の息子に騎士団長の息子に、伯爵家のチャラ息子な。
もうコレ詰んでるよな?修正効かねーよな?
参ったな。
あークソ。
俺のポンコツ記憶力め!なんで思い出さなかったかなぁ!
今日はフェリシテお嬢様が通う学園の卒業パーティだった。
侍従の俺はお嬢様の美しい姿をホールの外から眺めていたんだが、まさかの断罪劇に遭遇するとは。
救いなのはお嬢様の弟のジュール坊ちゃんが攻略されずに済んでたって所か。
「フェリシテ・マレクラルス侯爵令嬢!リディに対する数々の非道な行為は目に余る!よってこの場で婚約を破棄する!」
声高らかに宣言するアルベール王子。
そもそも婚約者であるアルベール王子がエスコートに来ない時点で察せればよかったんだが、シスコン弟のジュールが〝姉上をエスコートするっ!〟って息巻いてたから脳みそからすっぽり抜け落ちていた。
それで、これだよ。
道理でフェリシテお嬢様が最近アルベール王子の話をしないと思ったら、すっかり悪役令嬢にされていたって訳か。
俺も一緒に学園に通えばよかったと後悔しても既に遅し。
傍らには王子にしがみつき怯えた顔をするヒロイン、リディ。確か男爵令嬢だったな。
リディはヒロインらしく、ピンクブロンドの長い髪に同じくピンクの大きな瞳。庇護欲をそそる可愛らしい顔立ちに低い身長。
片やウチのお嬢様は輝く金髪にアイスブルーの瞳。氷の令嬢と呼ばれてもいい位の凛とした佇まい。……うん、完璧な悪役令嬢だな。
「アルベール殿下!姉上との婚約は王命のはずです!陛下のお許しはあるのですか⁉︎」
慌ててフェリシテお嬢様に駆け寄るジュール坊ちゃん。俺が仕えるマレクラルス侯爵家の跡取りだ。お嬢様と同じ金髪にアイスブルーの瞳を持つ美少年だ。
何故か見事なシスコンに育ったせいで、ヒロインに攻略されずに済んだのは救いだったな。
ゲーム内では『生意気な下級生』ポジで、奴が敵に回ると内部告発されてマレクラルス家も破滅だ。いやー危なかった。
俺は起こってしまった断罪劇をソワソワともどかしく見守った。
「もはや王命は関係ない!フェリシテの素行に問題があるのだ!これでは王子妃の資質も危ぶまれる!」
おぉぅ。
王子妃の資質を問うてきたアルベール王子。
俺から見れば王子妃の資質が何であるかは知らんが、フェリシテお嬢様ほど品行方正で気品に満ちた令嬢は居ないと思うんだけどな。
「資質、とは?姉上ほど完璧で賢く、しかも姉上以上に美しい令嬢は他には居ないと思いますが?」
ジュール坊ちゃんよ。俺もたった今同じことを考えていたが過度なシスコン発言は周囲に引かれてしまうぞ?
案の定、アルベール王子は顔を引き攣らせながらフェリシテお嬢様の凶行を挙げてきた。
「リディに何度も冷たい言葉を浴びせた!」
「わたくしは淑女として相応しくない行動を注意しただけですわ」と、しれっと答えるフェリシテお嬢様。
「リディの教科書を池に捨てた!」
「それは…私ですわ。ですがマルセル様にベタベタ触っていたんですもの!」と、お嬢様の取り巻きA嬢。お前かーい!
因みにマルセルは騎士団長の息子で攻略キャラだ。
「リディの服をわざと汚した!」
「わ、私です!だってエドメ様と手を繋いでいたんですもの!」と、お嬢様の取り巻きB嬢。やっぱりお嬢様ちゃうやんけ!
エドメは伯爵家のチャラ息子で攻略キャラだ。
「リディを階段から落とそうとした!」
「………誰かしら?」
令嬢達は顔を突き合わせ、首をかしげる。
「リディを街でゴロツキに襲わせた!」
「………何のこと?」
マジでそれはウチの仕業でもねーぞ?やるなら俺に指示が来るはずだし。
しん、と静まる大ホール。
皆、息を潜めてこの尊大な断罪劇を見ていたのだが、次第にヒソヒソと声が上がる。
「階段から落とされたですって?可哀想に」
「リディ嬢が襲われただと?さぞかし怖かっただろうに……一体誰が…」
これが原作強制力と言うものだろうか、リディが可哀想と同情の声が上がり、お嬢様には侮蔑の目が向けられ空気が悪くなった。
本来なら侍従如きがホールへ入る事は疎まれる行為だが緊急事態だ。俺はすぐにフェリシテお嬢様に駆け寄り耳元へ囁く。
「お嬢様、お疲れでしょうから帰りましょう。全ては侯爵様に委ねるべきです」
弟のジュール坊ちゃんにも目配せし、彼も大きく頷く。
そしてお嬢様は美しい姿勢で立ち、王子に提言する。
「この件に関してはわたくしの一存では承服しかねます。一旦お父様にご相談し後日改めて正式な手順で契約を致しましょう」
お嬢様の凛とした声はホール中を沈黙させた。さすが俺のお嬢様。
だが見ればお嬢様の脚は震えていた。
「よく頑張りましたね、お嬢様」
さりげなく彼女を支え、俺たちは会場を去る。
俺は最後に攻略対象者を覚えるため、一人ずつ目を合わせてしっかりと脳に焼き付けた。
……お前ら覚えてろよっ!(雑魚キャラ感)
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