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第二章 旅立ち
列車の出発【3】
しおりを挟むこうしてようやく、展望フロアへ向かう事に。
展望フロアへは階段で上るのかと思ったが、なんとこの世界にもエレベーターが存在したんだ!
正確にはエレベーターという名前ではなくて、こちらの世界では魔法式昇降機と呼ぶらしいが。
使用方法などは前の世界と全く同じで、違う部分は動力源が電力ではなく魔石を使った魔法によるっていうところくらい。
ヨルはマージャーを見たのも初めてらしく、これまたぽかんと口を開けていたが、今度は自分の手で開いた口を閉じていた。
俺はマージャーの動力が魔石っていうところに興味は湧くが、前の世界でエレベーター二は乗った事あったので今回はそこまで物珍しく感じなかった。
きっと、俺より先にこちらの世界に来た異世界転移者か転生者が流行らせたのだろうっていう感じ。
乗り心地は動きがスムーズでとても良かったのには感動したかな。
そして、マージャーに乗りようやく四階の展望フロアへと昇りきり、扉が開いたその時の景色はとても輝かしく目に焼き付いたんだ。
「「わぁ!!」」
「いい景色だろう?」
ゼンの言葉の通り、天井は澄んだ青が広がり、前方にはこれから進む青々とした木々を分けて通った線路が続き、左右はじっくり見る事が出来なかった色とりどりで大小さまざまな建物が並ぶこの町と、様々な服を着た人々が行き交う駅構内をじっくり見渡すことが出来るようになっていた。
左側のガラスに近づいて駅構内をよく見て見ると、なんと! 耳が尖って長い人物が居たり、明らかに身長が二メートル以上あるだろうと思われる者が居たり、肌の色が赤褐色の者もいたり、様々な人種が行きかっているのが良く分かる。
遠目だけど、初めて人族らしくない人種を見る事ができたぞ!!
列車に乗るまでの駅構内にいた時は、チケットを購入する事や乗車についての説明をゼンから聞いたりであまり周りをよく見てなかったから、ようやく落ち着いて見れた。
でたよ! ファンタジー!
なんだか、この光景を見ていると本当に自分は異世界にいるんだなと再認識させられる。
「凄いな! リンタロウ! いろんな人種がこんなにたくさんいるぞ! それによく見れなかったけど、ここの町はこんなに色鮮やかな町だったんだなあ」
「あぁ! 俺、こっちに来てから初めてこんなにたくさんの人種を見たよ。街の風景も色鮮やかでいろんな建物があって綺麗だ」
俺のすぐ横で一緒に景色を眺めていたヨルも、俺と同じことを思っていたよう。
ヨルのキラキラと輝く表情や瞳を見た後、もう一度ガラスの外を見ようと前を見ると、ガラスにうっすらと映っている俺の表情や瞳がヨルのようにキラキラと輝いていて、まるで童心に帰ったようで少しくすぐったかった。
「よかった。どうやら気に入ってくれたようだな」
「ゼン! 連れて来てくれてありがとう!」
「俺も俺も! 俺が英雄王になったら必ずこのお礼はするぞ!」
『――――まもなく出発いたします。ご乗車の皆さまは出発の際の揺れにご注意ください。繰り返しお伝えします。オリマギナ行き、ブライヤーエクスプレス……』
「あは! もうすぐ出発するって! 楽しみだな!」
「おれもちょっとわくわくしてきた。魔法で動く列車、どんな感じなんだろ」
「動き出しは意外と揺れるからな。お前達、近くの手すりに掴まっておけ」
「はーい!」
「わかった」
それから少しの間、ゼンとヨルと外を眺めながら談笑をしていたら、ピィイイイというおそらく汽笛らしい笛の音が大きく音が響いた。
その後すぐにアナウンスで出発の知らせが流れると、ガタンッと大きく車体が揺れ、景色が少しずつ動き出した。
いや、正式に言えば動き出したのは俺達が乗っている列車が動いたのだが。
ゼンに言われた通り、事前に大きな揺れに備えていたから、実際に車体が揺れてもすぐに反応できたので余裕であった。
そんな事よりも、目の前の景色の変化の方が魅力的だった。
「わっ! 動き出したぞ!」
「ははっ、とうとう出発するんだな」
「二人は初めての列車度だろう。存分に楽しんでくれ」
三者三様、ヨルはガラスに張り付いてそのまま外を眺め、俺は進行方向を向いて列車の行く末に胸を弾ませ、ゼンはそんな俺達の様子を余裕のある表情の中、あたたかな瞳で眺めてくれていた。
さあ、ついに出発!
今日も含めて二日もすれば、都心部であるオリマギナへ到着だ!!
俺は次の旅路への期待を列車がスピード上げていくと共に上げていったのだった。
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