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第二章 旅立ち
列車の出発【2】
しおりを挟む「ほら、列車に乗る前に渡したこれがあるだろう?」
ゼンはそう言うと首にかけてある、ザ・魔法陣っていう模様が描かれているタグが付いたネックレスの様なものを俺とヨルの前に掲げた。
それは、俺とヨルの首にも同じものが下がっている。
「これは特別な通行証でな、この一両目には通行証を持っている者しか入れないんだ。だいたいここを利用するのはチケットとは別にこれが購入できる人間だけ。必然的に王族や貴族、その他は商人や名のある者、冒険者でもそこそこランクがある者くらいしかいない」
「そ、そんな貴重な物だったらかなりの値段がするんじゃ……」
「まぁ、一般的にはそこそこする値段だろうが、せっかくの列車だ。皆で隅々まで楽しみたいだろう?」
その話を聞いて、俺はこのタグが大金に見えてしかたがない。
思わず顔が青ざめる。
「いいのか!? 俺、チケットもこれもお前に支払ってもらったぞ。俺は今まで村で貯金していたお金しかないから、いくらか聞いていないが、チケット代は払えてもこれの料金まではお前に返せないと思う」
そう。ヨルの言うとおり、この列車のチケット代などは全てゼンが支払っている。
チケットを購入する際に、俺はまだこちらの世界のお金を稼いだことないので自分のお金を持っていないし、チケットが無くなるまで時間も無かったので急いで購入したかったのあり、とりあえずまとめて払おうという事になりゼン払ったのだ。
ヨルが支払いを気にするのも分かる。
「あぁ、その事だが、列車のチケット代もこのタグの支払いも俺に持たせてくれ」
「いや! そういうわけには」
「そうだぞ、ゼン。俺も稼げるようになったらいずれ今までの支払いの分は返そうと思ってるんだ。高価な物は相談してくれないと」
「そう言うと思って黙って買ったんだ。リンタロウは俺が後見人なんだから金の心配をする必要はない。ヨルも夢を持っているのだろう? いざという時の為にその貯金はなるべく使わないほうがいい。未来ある若者に年長者が見栄を張りたいだけだ。気にするな」
丸め込めるように言われて、なんとも納得のいかない俺とヨルはお互い顔を見合わせる。
そんな俺達に、ゼンは続けてこう言った。
「そうだな。どうしても何か返したいというのなら、お礼の言葉と笑顔を貰おうかな」
この追い打ちの言葉に、諦めが付いたのか、まずはヨルがゼンに向けて大輪の花のような笑顔を見せてお礼を言った。
「ありがとう! ゼン。俺が英雄王になった時には何かお礼をするからな!」
そしてそれに続いて俺も。
「ありがとう、ゼン。でも、後見人と言えども必ずこの借りはいずれ返すからな!」
俺とヨルは共に今回は折れるが、ゼンに結局いずれ何かしら理由を付けて今回のお礼をすると遠回しに言う。
ゼンもゼンで、それで構わないのか両手を上げて『了解』と言い、お手上げとこちらに示してきた。
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