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第二章 旅立ち
どうすんの?【2】
しおりを挟む「何あれ!?」
「山猪だよ! 知らないの!?」
「知るか! そもそもお前も誰だよ!?」
そんなこと話している場合じゃねぇ!! このままじゃ追いつかれる!!
俺は全身に魔力を巡らせ、身体強化をし、仕方なく俺の手を引っ張っている奴の事を担ぎ上げて思いっきり逃げ出した。
担ぐ相手が俺より小さいから良かったけれども、この状態で逃げ続ける事なんて無理だぞ!
「おい! あんた! 自分の魔力で身体強化して走れないのか!? それともさっきのが最大限!?」
「あはは! 俺、魔力操作苦手でそういうの一切できないんだよなぁ」
「はぁあああ!? どうやって生活してんだよ!」
「そこはー、便利な魔道具を爺様から貰ってるから生活道具はどうにか使えるんだ!」
マジかよ! ずっとこいつ抱えたまま走るのなんて無理!
ていうか、こいつ担がれてるだけだから急に明るく話し出しやがった!!
「あ、追いつかれそうだぞ! 頑張れ!」
「お前が言うな!!」
なんだこいつ!? その辺に捨て置くぞ!!!
「ぉぉおおお助けぇええええええええ!!!!」
「俺の台詞だよ!!!」
それ今一番言いたいのは俺!!
…………はっ! そうだ! こういう時こそ!
ピィイイイイイイイイイイ!!!!
「ゼェェェェエエエンンン!!! なんでもいいから助けろ!!!」
まさか、こんなところでリッシュ家の子供達に貰った笛を使うことになるなんて思いもしなかったよ!!
笛を吹いてどれくらいでゼンが来てくれるかなんて分からないけど、それまで逃げるしかない!
後ろをチラリとみると三頭の山猪という動物が追いかけて来ている。
ていうかあれが猪!? 豚みたいな見た目だけど猪みたいに牙があってサイみたいに顔に角生えてるんだぞ!?
あと、でかさが規格外!!!
「はぁ! はぁ! まじで! やばいって!!」
「えぇ!? 頑張ってくれ! じゃないと俺が危ない!」
「うるせぇ! さっきまで自分で走って逃げれてたなら自分で逃げろ!!!」
こうやってぎゃあぎゃあ、こいつと言い合っても仕方がないし、無駄に体力使う!
ゼンー! まだかぁ!?
さすがにプティ君の時とは違って、俺と歳が近そうな奴を抱えて走り続けるのは体力の消費量が全然違う!
「ぶひぃいいいいいい!!!!」
「えぇ!? めっちゃ怒ってるじゃん!? くっそぉおおお! いい加減助けに来いよ! ゼェエエエン!!!!」
「はいはい」
どっすぅううううううんんんん!!!!!!
物凄い音と一緒に、三頭もいた山猪達は俺達を追いかける事を止めた。
というよりか、仕留められた。ゼンによって。
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ。おま、遅いんだよ、助けに来るの」
「リンタロウがいつ助けを呼んでくれるかと思ってな。試してみた」
「試すな!! 死ぬかと思ったわ!!」
「というより、いつ拾ったんだ? その子」
「拾ってないわ! 巻き込まれたんだ!!」
俺はずっと抱えていた謎の人物をようやくおろし、初めてまともに顔を見た。
………………一瞬、女の子かと思ったけど、こいつも男なんだよな?
まるで、前の世界でのアイドルのような可愛らしい顔立ちの少年? は、俺からおりると身体についていた葉っぱやらなんやらをパンパンとはたき落とし、星がちりばめられているかのようにキラキラとした、まるで夕暮れ時のような不思議な色合いのぱっちりとした瞳をこちらに真っすぐと向ける。
夜空のような群青色の髪がおさげになっているのも、女の子の様に見える理由の一つかもしれない。
「そこのお前! 助けてくれたこと感謝する! この未来の英雄王である俺の側近にしてやってもいいぞ!」
「………………遠慮します」
「俺も、右に同じで。俺はリンタロウのなんでね」
「何!? 英雄王だぞ!? まだなってないけど、未来の英雄王になる男だぞ!!」
この世界って顔が良いと個性強いのか…………?
そういうファンタジー設定なわけ?
いや、どちらかというと普通の雰囲気を出していたドゥース様も、ぶっ飛んでるとこあったな。
あと、双子。
プティ君、君はそのまま素直に育ってくれ。どうかパルフェット様と双子の影響受けませんように。
遅いと思うけど……。
ベルトラン君、君だけが頼りだ。
あと、ゼン。俺はお前を所有した覚えはないぞ。
どちらかというと、今は俺が世話になってるていうか。
いやいや、今はそんな事考えている暇じゃ無いんだった。
ていうか、この山猪達、どうすんの……。
あと、いまだに未来の英雄王のどうのこうの言っているこの子。英雄王ってそもそも何それ。
……………………どうすんの、この状況。
いつの間にか、少年は英雄王とやらがどんなに凄い存在なのかを語りだしちゃったし。
ゼンはゼンで、俺の事放置で山猪達の所に行っちゃったし。
本当、どうすんの。これ……………………。
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