どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~

黒飴細工

文字の大きさ
上 下
89 / 105
第二章 旅立ち

どうすんの?【2】

しおりを挟む







「何あれ!?」
「山猪だよ! 知らないの!?」
「知るか! そもそもお前も誰だよ!?」


 そんなこと話している場合じゃねぇ!! このままじゃ追いつかれる!!

 俺は全身に魔力を巡らせ、身体強化をし、仕方なく俺の手を引っ張っている奴の事を担ぎ上げて思いっきり逃げ出した。
 担ぐ相手が俺より小さいから良かったけれども、この状態で逃げ続ける事なんて無理だぞ!


「おい! あんた! 自分の魔力で身体強化して走れないのか!? それともさっきのが最大限!?」
「あはは! 俺、魔力操作苦手でそういうの一切できないんだよなぁ」
「はぁあああ!? どうやって生活してんだよ!」
「そこはー、便利な魔道具を爺様から貰ってるから生活道具はどうにか使えるんだ!」


 マジかよ! ずっとこいつ抱えたまま走るのなんて無理!
 ていうか、こいつ担がれてるだけだから急に明るく話し出しやがった!!


「あ、追いつかれそうだぞ! 頑張れ!」
「お前が言うな!!」


 なんだこいつ!? その辺に捨て置くぞ!!!


「ぉぉおおお助けぇええええええええ!!!!」
「俺の台詞だよ!!!」


 それ今一番言いたいのは俺!!
 …………はっ! そうだ! こういう時こそ!


 ピィイイイイイイイイイイ!!!!


「ゼェェェェエエエンンン!!! なんでもいいから助けろ!!!」


 まさか、こんなところでリッシュ家の子供達に貰った笛を使うことになるなんて思いもしなかったよ!!
 笛を吹いてどれくらいでゼンが来てくれるかなんて分からないけど、それまで逃げるしかない!
 後ろをチラリとみると三頭の山猪という動物が追いかけて来ている。

 ていうかあれが猪!? 豚みたいな見た目だけど猪みたいに牙があってサイみたいに顔に角生えてるんだぞ!?
 あと、でかさが規格外!!!


「はぁ! はぁ! まじで! やばいって!!」
「えぇ!? 頑張ってくれ! じゃないと俺が危ない!」
「うるせぇ! さっきまで自分で走って逃げれてたなら自分で逃げろ!!!」


 こうやってぎゃあぎゃあ、こいつと言い合っても仕方がないし、無駄に体力使う!
 ゼンー! まだかぁ!?
 さすがにプティ君の時とは違って、俺と歳が近そうな奴を抱えて走り続けるのは体力の消費量が全然違う!


「ぶひぃいいいいいい!!!!」
「えぇ!? めっちゃ怒ってるじゃん!? くっそぉおおお! いい加減助けに来いよ! ゼェエエエン!!!!」


「はいはい」


 どっすぅううううううんんんん!!!!!!




 物凄い音と一緒に、三頭もいた山猪達は俺達を追いかける事を止めた。
 というよりか、仕留められた。ゼンによって。


「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ。おま、遅いんだよ、助けに来るの」
「リンタロウがいつ助けを呼んでくれるかと思ってな。試してみた」
「試すな!! 死ぬかと思ったわ!!」
「というより、いつ拾ったんだ? その子」
「拾ってないわ! 巻き込まれたんだ!!」


 俺はずっと抱えていた謎の人物をようやくおろし、初めてまともに顔を見た。


 ………………一瞬、女の子かと思ったけど、こいつも男なんだよな?


 まるで、前の世界でのアイドルのような可愛らしい顔立ちの少年? は、俺からおりると身体についていた葉っぱやらなんやらをパンパンとはたき落とし、星がちりばめられているかのようにキラキラとした、まるで夕暮れ時のような不思議な色合いのぱっちりとした瞳をこちらに真っすぐと向ける。
 夜空のような群青色の髪がおさげになっているのも、女の子の様に見える理由の一つかもしれない。


「そこのお前! 助けてくれたこと感謝する! この未来の英雄王である俺の側近にしてやってもいいぞ!」
「………………遠慮します」
「俺も、右に同じで。俺はリンタロウのなんでね」
「何!? 英雄王だぞ!? まだなってないけど、未来の英雄王になる男だぞ!!」


 この世界って顔が良いと個性強いのか…………?
 そういうファンタジー設定なわけ?
 いや、どちらかというと普通の雰囲気を出していたドゥース様も、ぶっ飛んでるとこあったな。
 あと、双子。
 プティ君、君はそのまま素直に育ってくれ。どうかパルフェット様と双子の影響受けませんように。
 遅いと思うけど……。
 ベルトラン君、君だけが頼りだ。

 あと、ゼン。俺はお前を所有した覚えはないぞ。
 どちらかというと、今は俺が世話になってるていうか。

 いやいや、今はそんな事考えている暇じゃ無いんだった。
 ていうか、この山猪達、どうすんの……。
 あと、いまだに未来の英雄王のどうのこうの言っているこの子。英雄王ってそもそも何それ。
 ……………………どうすんの、この状況。

 いつの間にか、少年は英雄王とやらがどんなに凄い存在なのかを語りだしちゃったし。
 ゼンはゼンで、俺の事放置で山猪達の所に行っちゃったし。

 本当、どうすんの。これ……………………。










しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

無自覚主人公の物語

裏道
BL
トラックにひかれて異世界転生!無自覚主人公の話

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

この恋は無双

ぽめた
BL
 タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。  サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。  とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。 *←少し性的な表現を含みます。 苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

処理中です...