上 下
42 / 105
第一章 始まり

見えてなかった陰【3】

しおりを挟む


「リンタロウ、本当に顔色が悪い。どこかで休もう」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ……」

「「リーン!」」
「リーンにーちゃー!!」
「リンタロウ様ー! お買い物は進んでますかー!」

「ぁ…………おぉ! 皆! 買いたい物は買えたかー!」


 ゼンが俺を心配している顔をしているが、今はこちらに向かってくる天使達とその執事さんを出迎えよう。
 もちろん、暗い顔なんてこちらに向かって来てくれている皆には見せはしない。


「リン! 良いモノ買えたぞ!」
「買えたぞ!」
「おぉー! そうかそうか、見てみたいなー」
「「はっ!!」」
「それはだめぇええ!!」
「えぇ? なんでダメなのプティ君」
「「ひ、ヒミツだもんねー……ひゅーひゅひゅー」」
「ヘタクソな口笛だな、おい」
「リンタロウ様にお願いされてもこればっかりは見せられません。俺達兄弟の大事な秘密なのです」


 珍しい。
 隠し事とか悪戯とか大好きで、楽しければ割とぶっ飛んだことする双子お兄ちゃんズと、そんな双子お兄ちゃんズを見て育った真似っこ大好きプティ君が秘密を隠すのは分かるのだが。
 まさかのリッシュ家の良心、且つ常識人のベルトラン君まで秘密とな。

 えぇー、めっちゃ気になるじゃん?

 でも、兄弟の秘密って言われるとそれ以上聞きにくいじゃん?
 …………聞くけどね!


「ベルトラン君そう言わずにちょっとだけ! すこーしでいいから!」
「駄目です!」
「「ダメです!!」
「だぁあめです!」
「そっかぁ……俺だけのけ者かあ、兄弟にならないかって言われたんだけどなあ……」
「「「「っう!!」」」」


 必殺!!! 泣き落とし!!!

 なあんて、これ以上は可愛い天使達を追い詰めないけどね。
 俺って良心的ー、なんつって。
 とか思ってたらプティ君が。


「リンにいちゃ! えっとね! 買ったのはぅむぐっ……」
「「プティ! めっ!」」
「あぶないあぶない…………」


 普通なら、プティ君以外の兄弟が今口止めしたと思うだろ? 違うんだなー!

 なんとあのセリューさんが素早く優しくしゅぱっと白い手袋を付けた手でプティ君の口を塞ぎ、それに続いてお兄ちゃん兄弟ズがわらわらとプティ君を止めにかかったのだ。
 なんともまあ、セリューさんの行動はスマートでスピードがありました。


「プティ坊ちゃま、それ以上は楽しい秘密が台無しになってしまわれますぞ」
「……ぷはっ! ぅー、ごめんなしゃい」
「はは! わかったよ、もう聞かないから!」
「でも、そのうちお教えしますから」
「「リン! ビックリ!」」
「いや、お前たちのビックリは怖いから!」


 きゃはははと笑う双子お兄ちゃんズとプティ君、それに便乗してベルトラン君も笑ってる。
 あー、癒される。

 本当に、さっきのなんて何かの幻覚だったのかもしれない。










「――――何か、ございましたか?」
「……ほんの少し、目を離してしまった時に」
「リンタロウ様はなんと?」
「大丈夫だとは」
「では、リンタロウ様を信じましょう。あまり過保護でもリンタロウ様に嫌われてしまいますし、そのお顔では皆様を不安にさせますぞ」
「あまり顔には出ないほうなのですが……ふっ、そうですね」


「――ゼン、何話してるんだ? 今から子供達とさっき行けなかった出店に行こうって話になったんだけど、行っていい? まだ買い足すのある?」
「いや、必需品は買えたから大丈夫だ」
「そっか、じゃあ……皆! さっきの出店に行こう!」
「「「うえーい!」」」











しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

【連載】異世界でのんびり食堂経営

茜カナコ
BL
異世界に飛ばされた健(たける)と大翔(ひろと)の、食堂経営スローライフ。

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!? 実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。 ※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。 こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...