22 / 26
颯太くんと飲みに行きました②
しおりを挟むナミちゃんの様子を見て僕はマスターに目で合図する。
しばらくするとストローが挿してあるアイスティーがきた。
「これはただのアイスティーだから」
僕は不思議そうな顔で何か言いたげなナミちゃんに深く頷く。
「さっきのはね、別名〝魔法のカクテル〟というんだよ」
「魔法のカクテル?素敵ですね」
「そうだね、すごく素敵だと思う。全然紅茶を使ってないのにアイスティーの味がするから魔法と言われるんだ。とても飲みやすいけど実はすごく強いアルコールなんだよ」
「ぇ、私ってば一気飲みしちゃった」
「うん、知ってる。見てたから、笑」
ふと、元カノを思い出していた。
彼女は最初からロングアイランドアイスティーを知っていた。
「酔わそうとしてる?」
笑いながらストローで飲むけど全然平気だった。
スクリュードライバーも一緒で僕はまだ酒の加減がわからない頃、3杯飲んだだけで腰が抜けたけど、ストローで飲んだせいもあると言われた。
彼女は酒にも強くて遊びも知ってて、僕には理想的な恋人だった。
ナミちゃんが遊び慣れてないのが本物だと確信した。疑うわけじゃないけど、人ってわからないからさ。
「今後誰かに誘われてカクテル飲む時は三三九度みたいに少しずつ飲むんだよ、それにストローが挿してあっても使っちゃダメ。わかった?」
ナミちゃんは充血してたちまち重くなり始めた瞼を必死に持ち上げて、コクリと頷いた。
「そのカクテルにはウォッカ、ジン、テキーラが入っているんだ、どれも強いお酒だよ」
ナミちゃんは返事する代わりに慌ててアイスティーを飲んで体内のアルコールを薄めようとしてる。
僕のうんちくを素直に聞き素直に反応してくれている。
「ウォッカって強いけど無味無臭でクセがないから飲みやすいんだよ」
一呼吸置いて言う「まるで高島さんみたいだね」
「颯太くんの言いたいこと、ちょっとだけわかります」
「えー、なんだろう?」
「脈のない人をいつまで好きなのかな?…ですよね?」
女って、これだから怖いな。
1秒前まで何もわからない純度100%乙女だと思っていたが…
「まだ、そこまでは思ってなかったけどね、ほら、あの人は石だから」
「それも、わかってます。私の片想いは一方通行のままだと」
ナミちゃんは、言っていることとは真逆の笑顔を浮かべた。
「颯太くんは片想いしたことあります?」
「うーん、そうだね。割とずっとそんな感じかな、子供の頃からね」
「辛いですよね?」
「うん、辛い以外に何があるのかってくらい」
「私は、全然辛くないです」
「好きの気持ちが強くて純粋だから、かな?」
「私は高島さんに何も求めていませんから、ですね、多分」
多分って……
「あ、だから、今この時代に同じ場所にいる、それだけでもう胸がいっぱいになるのですよね!この気持ちって片想い以外にはなんて呼びます?」
そういうと、ひとりでケラケラと笑い出した。
…酔っていたのかな?
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
無敵のイエスマン
春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ほつれ家族
陸沢宝史
青春
高校二年生の椎橋松貴はアルバイトをしていたその理由は姉の借金返済を手伝うためだった。ある日、松貴は同じ高校に通っている先輩の永松栗之と知り合い仲を深めていく。だが二人は家族関係で問題を抱えており、やがて問題は複雑化していく中自分の家族と向き合っていく。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣の優等生は、デブ活に命を捧げたいっ
椎名 富比路
青春
女子高生の尾村いすゞは、実家が大衆食堂をやっている。
クラスの隣の席の優等生細江《ほそえ》 桃亜《ももあ》が、「デブ活がしたい」と言ってきた。
桃亜は学生の身でありながら、アプリ制作会社で就職前提のバイトをしている。
だが、連日の学業と激務によって、常に腹を減らしていた。
料理の腕を磨くため、いすゞは桃亜に協力をする。
play ball
輝夜
青春
窪塚莉奈。
好きなことなし。得意なことなし。
こんな小学生。
「ほんと毎日つまらないなあ」
そんな彼女が生まれて初めて虜になったのは、”ソフトボール”だったー
「莉奈、君は大物になれる。 僕の球に反射的に反応し捕ろうとしたなんて、これは才能かもしれない…」
「莉奈、一緒にソフトボールをやらないか?」
ソフトボールを通して彼女は大切なことを学び成長していくー
莉奈を初め、小学生にして天才とされるエースの神崎亜衣や愉快な仲間たちが繰り広げる爽やかな青春ストーリー!
※この話はフィクションです。 実在の人物ではありません。
※誤字・脱字が多々あるかと思いますがご了承下さい。
※ソフトボールを知らない方でも読みやすいようになっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる