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颯大と彼女
しおりを挟む「だからさ、もう付き合っちゃいなよ」
会話中にちょっとでもチャンスがあると高島さんにナミちゃんコールをしていた。
こういう奴には後押ししないと進まないよね。軽い感じで言っているみたいだけどちゃんと配慮しながらだよ。
高島さんは石のくせに思いやりは深いから傷つけたり嫌がられたりはしたくない。
僕が彼女と別れた時、高島さんは彼女が〝泣いてないかな?〟と心配するようなことを言うから気になってしまった。
結局は隠れて様子を見に行くことになったけど、彼女はもう次の男とイチャイチャしていた。だいたいの予想はついていたんだ。
あのあと、少しでも早くフォローに行っても
きっと振られている。
もう次のがいたから強気に出たんだろうね。
ただ1点、未練がある。
僕と彼女は体形が似ていて同じ趣向だったためジェンダーレスファッションに磨きがかかった。
あの日、彼女の部屋が見える所で車の中から見ていて、彼女が男と出て来た時センス良い上着を着ていて思わず見つめた。
ゆるパンもカッコイイ
どこで買ったのか知りたかった。
でも状況的に、ここで外に出たらまるで僕が別れた彼女が男といるのを知り、待ち伏せしていたように見えないだろうか?
ちょっとヤバい奴にされてしまいそうだ。
「久しぶり、どうしたの?こんな所で」
でも彼女の方から容赦なく真っ直ぐにやって来た。
こっちからよく見えるってことは、あっちからもよく見えるってことなんだよね。
車に指紋がつかないように軽く手首を乗せて
「穏やかじゃないの?」と笑った。
「うん」
僕は怯えて震える犬の目で彼女を見上げる
「その服、どこで買ったの?教えて」
彼女の隣りで男が「ププ」と笑い、「失礼」と真顔で手を振った。
「良い人じゃん、さすがセンス良いね」
彼女は付き合ってた時と変わらない笑顔をくれた。
ついでに、僕に合いそうな服を後で送ってくれると約束してくれた。
僕はきっかけをくれた高島さんに感謝している。
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