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学園祭二日目が始まった件⑥
しおりを挟む「やっと見つけたよ滝川さん!」
校舎裏や教室、大きな木の下と散々探し回りやっと滝川さんを見つけた場所は夏祭りの会場になっていた神社だった。
神社へと続く階段に座って顔を覆っている滝川さんは僕の声に体を震わせた。
「賢、来ないで!」
叫ぶ滝川さんに近づこうとしていた足が止まる。
「どうして、どうして滝川さんの側に行ったらダメなの?」
「来ないでって言ってるでしょ!」
滝川さんは怒りを露にするばかりだけど僕はそれでも声を掛け近づいて行く。
「滝川さん、大丈夫?」
「あっちへ行ってよ!」
一歩、
「滝川さん、辛かったね」
「うるさい!」
また一歩、
「滝川さん、僕がついてるから……」
「お願い……だから……」
そして滝川さんの側にたどり着くと僕は隣に座った。
「うっ…ぐっ…、うっ…ぐっ」
泣いている滝川さんは本当に辛そうで苦しそうにしていた。
こうゆう時にはどうすればいいのか分からない。
でも妹は頭を撫でると泣き止む。だから僕は滝川さんの頭を優しく撫でた。
その瞬間滝川さんはビクンとしたが、落ち着いたように感じた。
「どうして、どうしてなのよ……」
どうしてって言われても僕は滝川さんの事が好きだから側にいたいと思うし、泣いている姿を見ると僕も同じように辛くなる。
だから素直に自分の気持ちを滝川さんに伝えようと思う。
「僕は滝川さんが辛そうにしてたら僕も辛くなる」
「……」
「滝川さんが笑っていたら僕も楽しくなる」
「……」
「滝川さんとずっと一緒にいたい!」
「……うっ」
「僕は……僕は滝川さんが好きだ!」
◇◇◇
賢から驚きの告白を受けた私の心臓は激しくなり、爆発するんじゃないかと思うほどだった。
賢が撫でてくれる感触が私の心を癒して行くがまだ涙は止まらない。
賢は私の事を好きと言ってくれた。
私も賢の事が好き。
でも賢の事が好きなのは私だけじゃなく、美織や紗枝ちゃんも賢の事が好きだ。
だから、賢には確認しなくちゃいけない。
「美織と紗枝ちゃんは?」
「僕は滝川さんが好き」
顔を隠す私は賢のこてドキッとした。でもそれは答えになってない。
だから、
「答えになってないよ?」
私は思った事をそのまま口にした。
「えっ?」
賢のそれには笑いそうになったけど我慢だ。
「だから答えになって無いってば!」
私は笑いそうになるのを堪えるように声を荒げた。
「えっと、怒ってる?」
コイツは本当に何に言ってるんだろう。
検討違いな事ばかり言ってきてこれじゃ初めて会った頃と一緒じゃない。
段々と腹が立ってきた私は立ち上がった。
「何を言ってるのかな?賢!」
そう言って睨む私に賢は満面の笑みを浮かべ抱きついた。
「杏が元気になったぞーー!」
「ちょっ、な、何してるのよ!」
「だって大好きな杏が元気になったんだよ?抱きつかないでどうする!」
「ちょっ、離れろ!離れて!」
「なんで?どうしてさ!こんなに大好きなのに!」
ヤバイヤバイどうして賢はこの状態になってるの?おかしいよ、ドキッとした私の気持ちを返してほしい。
「本当にやめて!お願いだから!」
「そんな怒った杏も綺麗だよ」
場違いにうっとりとする賢の顔が気持ち悪くて私は悲鳴を上げた。
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして私の悲鳴が神社にこだました。
賢は本当に最後までしまらない男だと思った。
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