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学園祭二日目が始まった件③
しおりを挟む杏ちゃんの演技は本当にすごくてどんどん引き込まれていく。
回りもそれにつられ相乗効果で素晴らしい演技を見せ、観客の生徒達も俺達の劇に見入っているように感じる。
俺は深呼吸して出番を待っていた。
杏ちゃんが毒を飲み俺の出番がやってきた。
舞台の袖から出て倒れる杏ちゃんに駆け寄る。
「どうして、どうして死んでしまっんだ、ジュリエト!」
感情が入りすぎて俺の目から滴が一つ落ちる。
「ジュリエトのいない世界に意味は無い……」
俺は胸ポケットに入れていた小瓶を口にする。
そして抱き上げる杏ちゃんを見て胸の鼓動が早くなった。
「すごく……綺麗だ……」
目を瞑り、脱力感を見せる杏ちゃんの顔を見ると、俺の中に沢山の感情が溢れ出してきて自分を抑える事が出来なくなった。
(杏ちゃん、ごめん……)
俺は心の中で謝ると顔を近づけ、杏ちゃんに唇を重ねた。
◇◇◇
「ジュリエト、どうして死んでしまっんだ」
有坂くんの台詞が聞こえ、毒を飲んで倒れる私の側での演技に耳を傾ける。
劇はいよいよクライマックスを向かえる。
私はここまで台詞を通して賢に想いをぶつけてきた。
私の想いは賢に届いたかな?
届いたとしても私にはどうする事も出来ないと思う。
それでも伝えたかった。
本当は直接伝えたい、でもそれはできない……
有坂くんが私の事を抱き上げる。
(これで終わりなんだ……)
そう思うとなぜかわからないが悲しくなった。
少しの沈黙の後、唇に何かの感触と頬に息が掛かった。
私はうっすらと目を開けた。
目の前には目を閉じ、私にキスをする有坂くんの姿
私の頭の中はグチャグチャで沸々と怒りと悔しさが込み上げ、有坂くんの頬に向けて手を上げた。
パシーン!
静寂の中で響くその音と共に涙が溢れ、止まらない。
私は顔を隠し、舞台を降り、観客席を駆け抜けて行った。
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