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ロミオとジュリエットの件
しおりを挟む私は、明日に控えた演劇披露に向けて最終調整をしていた。
クラスメイトの演技を見つめる私は、白いドレスに赤い薔薇のブローチを胸に着け、中世ヨーロッパの貴族を思わせる装いをしている。
ここまでのクオリティーの衣装を用意してくれた賢と美織は本当に凄いと思う。
「杏ちゃん、とても似合ってて綺麗だよ」
「ありがとう」
私を見つめ、顔を赤らめた有坂くんは照れた表情をしている。
役が決まってすぐに、有坂くんに告白されたけど返事はまだしていない。
有坂くんは優しくて私に対してとても一途で顔もいい。
叶わぬ願いかもしれないけど、私は賢と一緒にいたい。賢の隣で歩んで行きたい。
そう思う私に一途な有坂くんの思いに応える事はできない。
「いつでもいい」と言ってくれた有坂くんには早めに返事を出したいと思っている。
「杏ちゃん次だよ」
「うん」
私は頷き演技の輪の中に入って行った。
◇◇◇
「杏ちゃんすごく綺麗だ」
演技をする杏ちゃんに見惚れてしまう。
俺は演技の事はよくわからないが杏ちゃんの演技は素晴らしいと思う。
心寄せる人だから贔屓目で見てるのかもしれない。
俺は杏ちゃんには綺麗と言ったけど杏ちゃんは俺の事には触れない。
回りの女子は「似合ってる」「カッコいい」と言ってくれたけど、俺は杏ちゃんに言ってほしいし、杏ちゃんには俺だけを見てほしい。
俺に見せない演技をする杏ちゃんの笑顔が俺の胸を締め付けた。
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