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お昼休みに宮田紗枝がやってきた件
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「染谷君、学園祭は裏方なの?」
「僕は裏で一人やってる方がいいから」
学園祭の事を話す私は染谷くんと屋上に来ている。
二人でお昼を過ごすようになって中庭の木の下へは行っていない。
正確には行けない
その場所は杏と有坂くんがいるから…
「ねぇ、染谷君美味しい?」
「うん、すごく美味しいよ」
この一ヶ月、私は染谷君の為にずっとお弁当を作っている。
染谷君の好きな物は?嫌いな物は?と考えながら作っていてそれが楽しかったし、幸せに感じて大変だと思った事は一度もない。
私の中は染谷君でいっぱいだった。
頑張って作ったお弁当を食べる染谷君を見るのも好きでこんなに幸せでいいのかと思ってしまう。
「これ、どうぞ」
「ありがとう」
私の分のハンバーグを染谷君にお裾分け。
この幸せな時間がずっと続きますようにと心の中で祈った。
◇◇◇
私はいつも皆でお昼休みを過ごしていた中庭の木の下へ行ったけど、そこには杏ちゃんと有坂くんの二人の姿しかなかった。
なんで二人きりでいるんだろうと思ったけど賢くんに会うのが優先なので私は賢くんを探し回り、屋上でやっと見つけた賢くんに近づいて行く。
「探したよ、賢くん」
「えっ!?、紗枝ちゃん?」
「さ、紗枝?」
賢くんと美織ちゃんは確認するようにそう言って驚いた表情をしていた。
「そうだよ」
私は一ヶ月努力した成果を見せるように満面の笑みを浮かべた。
「紗枝ちゃんすごく綺麗になったね!」
「紗枝、本当に変わったよ、綺麗になったよ」
美織ちゃんと賢くんにそう言ってもらえると本当に嬉しくなってしまう。
賢くんに綺麗になったと言われたのには照れてしまったけど、「変わったかなぁ」と言いながら私は賢くんの隣に座った。
◇◇◇
「なっ!?」
すぐに染谷君の隣に紗枝ちゃんが座ったのを見て声が出てしまった。
「どうしたの?美織ちゃん?」
「何でもない…よ…」
紗枝ちゃんにはそう返したけど、私は紗枝ちゃんが染谷君の隣に座った事に少し嫌悪感を抱いてしまった。
(私、こんな人だったかな…本当に嫌な女になっちゃったよ…)
タメ息をつく私はずっと二人で過ごしていた染谷君の隣に自分以外の女の人がいるのが嫌になっていた。
それが紗枝ちゃんであろうと杏であろうと…
(独占欲が強くなっちゃったな)
こんな事では染谷君に嫌われてしまうと思うけど沸々と沸き上がってくる黒い感情が私の心に広がって行った。
◇◇◇
「そうだ!」
思い出したようにそう言った紗枝がバックをゴソゴソして中からお弁当を取り出すと僕に差し出した。
「どうぞ」
「なっ!賢は私のお弁当を食べているから!」
僕よりも先に北澤さんが話に割り込んだ。
「あら?美織ちゃんはいつの間に.賢って呼ぶようになったのかな?」
「それは……と、とにかく紗枝ちゃんのお弁当はいらないと思うよ?ねぇ賢?」
笑顔だが目が笑っていない北澤さんを見て僕の体が震えくる。
この状況でいらないとは言えない。僕は言葉が出てこなかった。
「 賢お弁当いるよね?」
北澤さんと同じように僕の事を呼び捨てにした紗枝も笑顔だけど、目が笑っていない……
はっきりとしない僕が作り出した状況だけどこれは無理だ。
笑顔の裏で鬼が見え隠れする二人に睨まれた僕はハートブレイクで崩壊寸前だ。
オタクとして平穏に生きてきた僕の十八年の集大成がこれだなんてあんまりだ!笑えないよ……
「まだ食べれるから紗枝のお弁当も食べるよ」
二人に挟まれ寿命が縮む思いでやっと捻り出した。そして、僕は更に追い込まれてしまう。
「私のお弁当じゃ少ないって言うの?」
北澤さんは僕に詰め寄る。
「そうゆうわけじゃ…」
「私のお弁当はついでなのね…」
すねる態度を見せる紗枝に焦る僕は「もうやめて」と声が出そうになる。
「ち、違う!ついでじゃない」
そして、僕は二人に挟まれた……
「じゃぁなに?」
「私のはついでなのね……」
北澤さんも怖い、紗枝も怖い、二人は可愛いはずなのに僕には鬼にしか見えない。
どうする事もできなくなった僕は立ち上がる。
そして、
「すいませんでしたー!」
とても綺麗な土下座をした。
結局、二人のお弁当を食べる事になった僕はタメ息を吐く。
「「今、タメ息吐いた?」」
「すいませんでしたー!」
こうして波乱のお昼休みは終わったのだった。
「僕は裏で一人やってる方がいいから」
学園祭の事を話す私は染谷くんと屋上に来ている。
二人でお昼を過ごすようになって中庭の木の下へは行っていない。
正確には行けない
その場所は杏と有坂くんがいるから…
「ねぇ、染谷君美味しい?」
「うん、すごく美味しいよ」
この一ヶ月、私は染谷君の為にずっとお弁当を作っている。
染谷君の好きな物は?嫌いな物は?と考えながら作っていてそれが楽しかったし、幸せに感じて大変だと思った事は一度もない。
私の中は染谷君でいっぱいだった。
頑張って作ったお弁当を食べる染谷君を見るのも好きでこんなに幸せでいいのかと思ってしまう。
「これ、どうぞ」
「ありがとう」
私の分のハンバーグを染谷君にお裾分け。
この幸せな時間がずっと続きますようにと心の中で祈った。
◇◇◇
私はいつも皆でお昼休みを過ごしていた中庭の木の下へ行ったけど、そこには杏ちゃんと有坂くんの二人の姿しかなかった。
なんで二人きりでいるんだろうと思ったけど賢くんに会うのが優先なので私は賢くんを探し回り、屋上でやっと見つけた賢くんに近づいて行く。
「探したよ、賢くん」
「えっ!?、紗枝ちゃん?」
「さ、紗枝?」
賢くんと美織ちゃんは確認するようにそう言って驚いた表情をしていた。
「そうだよ」
私は一ヶ月努力した成果を見せるように満面の笑みを浮かべた。
「紗枝ちゃんすごく綺麗になったね!」
「紗枝、本当に変わったよ、綺麗になったよ」
美織ちゃんと賢くんにそう言ってもらえると本当に嬉しくなってしまう。
賢くんに綺麗になったと言われたのには照れてしまったけど、「変わったかなぁ」と言いながら私は賢くんの隣に座った。
◇◇◇
「なっ!?」
すぐに染谷君の隣に紗枝ちゃんが座ったのを見て声が出てしまった。
「どうしたの?美織ちゃん?」
「何でもない…よ…」
紗枝ちゃんにはそう返したけど、私は紗枝ちゃんが染谷君の隣に座った事に少し嫌悪感を抱いてしまった。
(私、こんな人だったかな…本当に嫌な女になっちゃったよ…)
タメ息をつく私はずっと二人で過ごしていた染谷君の隣に自分以外の女の人がいるのが嫌になっていた。
それが紗枝ちゃんであろうと杏であろうと…
(独占欲が強くなっちゃったな)
こんな事では染谷君に嫌われてしまうと思うけど沸々と沸き上がってくる黒い感情が私の心に広がって行った。
◇◇◇
「そうだ!」
思い出したようにそう言った紗枝がバックをゴソゴソして中からお弁当を取り出すと僕に差し出した。
「どうぞ」
「なっ!賢は私のお弁当を食べているから!」
僕よりも先に北澤さんが話に割り込んだ。
「あら?美織ちゃんはいつの間に.賢って呼ぶようになったのかな?」
「それは……と、とにかく紗枝ちゃんのお弁当はいらないと思うよ?ねぇ賢?」
笑顔だが目が笑っていない北澤さんを見て僕の体が震えくる。
この状況でいらないとは言えない。僕は言葉が出てこなかった。
「 賢お弁当いるよね?」
北澤さんと同じように僕の事を呼び捨てにした紗枝も笑顔だけど、目が笑っていない……
はっきりとしない僕が作り出した状況だけどこれは無理だ。
笑顔の裏で鬼が見え隠れする二人に睨まれた僕はハートブレイクで崩壊寸前だ。
オタクとして平穏に生きてきた僕の十八年の集大成がこれだなんてあんまりだ!笑えないよ……
「まだ食べれるから紗枝のお弁当も食べるよ」
二人に挟まれ寿命が縮む思いでやっと捻り出した。そして、僕は更に追い込まれてしまう。
「私のお弁当じゃ少ないって言うの?」
北澤さんは僕に詰め寄る。
「そうゆうわけじゃ…」
「私のお弁当はついでなのね…」
すねる態度を見せる紗枝に焦る僕は「もうやめて」と声が出そうになる。
「ち、違う!ついでじゃない」
そして、僕は二人に挟まれた……
「じゃぁなに?」
「私のはついでなのね……」
北澤さんも怖い、紗枝も怖い、二人は可愛いはずなのに僕には鬼にしか見えない。
どうする事もできなくなった僕は立ち上がる。
そして、
「すいませんでしたー!」
とても綺麗な土下座をした。
結局、二人のお弁当を食べる事になった僕はタメ息を吐く。
「「今、タメ息吐いた?」」
「すいませんでしたー!」
こうして波乱のお昼休みは終わったのだった。
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