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夏祭りに行った件②
しおりを挟む夏祭りの会場は沢山の人で溢れかえっていた。
どこを見ても人、人、人。アニメフェス以外での人混みは嫌いだけど今日の僕は違う。
不思議な高揚感で異常なテンションになっている僕は逆に興奮してしまう。
「まいった!人が多い!しか~し!俺にはあゆたんがついている!あゆたんがついているのだ!」
僕の胸には笑顔のあゆたんがいる。
あゆたんがついてくれている今、嫌いな人混みごときに怯むわけにはいかない。
「さぁ、杏、紗枝、北澤さん行こう!」
あゆたんがついている今の僕に怖いものは何もない。
「ちょっと、賢どうしたのよ急に!」
そんな事を言って困惑の表情をする滝川さんはあゆたんだけじゃなくきっと自分の事も誉めてほしのだと思う。なので誉める事にする。
「どうしたの杏?それにしても浴衣似合うね!綺麗さが神がかってるよ」
「ば、バカ!な、何言ってるのよあんた!」
あたふたとする滝川さんにウィンクすると今度は北澤さんを誉める。
「北澤さんもカワイイよ、浴衣を着るとその可愛さも倍増するね」
「あ、ありが、とう…」
少し顔を赤らめた北澤さんは可愛かった。
◇◇◇
(あっ、この顔ヤバイ、美織ちゃん……)
私は賢くんにかわいいと言われて顔を赤くする美織ちゃんを見て恋する乙女だと思い焦ってしまった。
(杏ちゃんだけじゃなくて美織ちゃんも出てくると大変だよ)
私は、勢いに任せて賢くんの腕に抱きつくと金魚すくいに連れて行った。
慌てて杏ちゃんと美織ちゃんが追いかけてきてる。
金魚すくいの露店につくと賢くんはお金を払い金魚すくい用の網を受けとった。
「賢くん、あの赤い金魚と黒い金魚取れる?」
私のお願いに「大丈夫」と返事をすると賢くんは金魚すくいに集中して頑張っているけどなかなか金魚はとれず、三回ほど網を変えてもらってやっと取れた金魚を袋に入れてもらった賢くんは嬉しそうにしていた。
一発で取れてないのに取れた金魚を私に渡す時の賢くんのドヤ顔にはおかしくなってしまったけど、私のお願いに一生懸命頑張ってくれて嬉しかったから心を込めてお礼をする。
「ありがとう賢くん」
◇◇◇
染谷君が次はどこに行こうか?と言っていたのですぐに射的に行きたいと言った私の意見が通り、私達は射的の露店に向かった。
狙いは、可愛い熊のぬいぐるみ。
染谷君は銃を構え、熊のぬいぐるみに狙いを定めて引き金を引くと、弾は見事ぬいぐるみに当たったけどびくともしない。
それで意地になったのか染谷君はお金を払って全く動かない熊のぬいぐるみに銃を打ち続けた。
途中で私がもういいからと言ったけど染谷君はやめなかった。
どれくらいお金を使ったのかわからないけど染谷君が構える銃に射的屋のおじさんが手を置いた。
「お前の熱意に負けたよ」と言って台に置いてある景品の熊のぬいぐるみを手に取り、染谷君に手渡すと親指を上げた。
そんなおじさんと、染谷君は手をガッチリと握り合い、お礼を言うと受け取った熊のぬいぐるみを私に手渡した。
「賢君、なんかごめんね…」
「いいよ気にしないで」
手をヒラヒラとする染谷君は疲れた顔をしていた。
あんなに頑張ったんだから疲れるよね。
あまりかっこいいとは言えないけど私の為に頑張ってくた染谷君にお礼をした。
「染谷君、ありがとう」
◇◇◇
金魚すくいと射的に行った私は「お腹が空いたな」と小声で呟いたけど、賢にはそれが聞こえたみたいで食べ物を買いに行った。
四人分の食べ物を抱えるのは大変なので私も「一緒に行くよ」と言ったけど、賢は「大丈夫」と言って一人で行ってしまった。
「なんか、疲れたね…」
「本当に…」
「ね…」
賢が買い出しに行った後、私と美織、紗枝ちゃんの三人は少し静かな木の側で座って賢の帰りを待つ。
そして、三人で女子トークをしていると声をかけられた。
「三人ともカワイイね!ちょうど俺達も三人なんだけどどう?」
ありきたりなナンパだった。
こうゆうのは本当にめんどくさい……
「間に合ってるんでけっこうです」
私は声をかけてきた男を立ち上がり睨み付けたけど、
「いいねぇ~怒った顔もカワイイなんてすごいね~」
「だな!たまらん!」
「お前に同意する」
こんな事を言っているこの人達バカなのか?不機嫌な私の顔と口調で嫌がっているのをわからないのだろうか
そんな男達を見ていた美織と紗枝ちゃんも立ち上がり、私の手を掴んで「行こ」と言ったけど男達は引かれる私の逆の手を掴んだ。
「行かせるわけないじゃーん!」
ニヤニヤしてそう言った男の手を振りほどこうとしたけど力が強くて振りほどけない。
「気持ち悪いから本当にやめて!」
私の手を掴む男に叫んだけど男はニヤニヤして手を離さない。
「ちょっ、本当に離してよ!」
「なんなのよ!杏の手を離しなよ!キモいんだよ!」
「そうだよ、離してよ!」
美織と紗枝ちゃんも私の手を引っ張り声をあげた。
その時、
「やめろーー!」
声が聞こえ、男が近づいてくる。
私達に声をかけてきた男達は振り向き、近づいてくる男を見た。
だんだんと近づいてくる男は賢だった。
私は賢の姿が見えた瞬間に胸が激しく動くのがわかってすごく嬉しかった。
のに─────
「そのTシャツなんなのよぉぉぉ!」
存在感を放つ賢のTシャツのあゆたんは場違いに笑顔だった。
◇◇◇
僕が戻ってくると三人は絡まれていた。
僕は叫んで手に持っていた食べ物を投げ捨て、三人に近よったけど滝川さんにTシャツの事を言われてしまった。
この状況で僕のTシャツに触れるなんて滝川さんは案外余裕があるかもしれない。
僕は滝川さんの手を掴む男と滝川さんの間に体を割り込ませ、男の手を掴んだ。
「手、離せよ」
「あぁん!殺すぞテメー!」
「やってみろよ!」
男は僕の顔に拳を放つ!
(大丈夫、今の僕は無敵だ!こんなヤツには負けるはずが───)
「ブファッ!」
男の拳をもろに顔面にくらい自慢のくろぶちメガネは飛んでいき、膝から崩れ落ちた。
「威勢だけの雑魚かよ」
男の言葉に僕はそいつの足にしがみついた。
「テメー離せよ!」
男は僕に何度も拳を振り下ろしたけど僕は掴んだ足を離さなかった。
「テメーいいかげんに離──」
「お前ら何してるんだ!」
声が聞こえた所で僕は意識を失った。
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