上 下
12 / 54

修羅場がやってきた件

しおりを挟む



 僕は困惑している。滝川さんと紗枝がにらみ合いをしているんだけど……

 (なんで紗枝がいるんだ?) 

 修羅場になりそうな予感しかないけど状況がよくわからない。
 この状況に僕はどうしたらいいのだろう。

 滝川さんが紗枝に話しかけると突然の修羅場が始まる。

 「宮田さん、だっけ?」

 「そう」

 「宮田さんは、何してるの?」

 「くんを守ってる」

 「!?」

 ちょっと紗枝!僕を守ってるってどうゆう事!! 

 「け、け、賢君て呼んで、親しそうだけど宮田さんは、とはどうゆう関係なの?」

 ぎこちない口調で滝川さんは紗枝にそう質問した。

◇◇◇
 
 私は滝川さんが賢くんの事を『賢』と呼び捨てにしたのを聞いて驚いた。
 今まで私と私の母、賢君の家族以外の女の人に、賢と呼ばれるのを聞いた事がなかった。

 「た、た、滝川さんこそ賢くんの事、賢ってよ、呼び捨てにしてるけど、どうゆう関係なの?」

 驚きすぎてどもってしまったけど私は逆に滝川さんに聞き返した。

 「えーっと…彼氏だけど?」

 お昼休みに滝川さんと北澤さんの三人でいる賢くんを見て嫌な予感がしていた私はその『嫌な予感』が当たってしまった事に固まってしまった。

◇◇◇
 
 私は突然動かなくなった宮田さんに質問する。

 「宮田さんは賢とはどうゆう関係?」

 固まったまま何も言わない宮田さんに少しイラッとする。

 「宮田さん!聞いてるの?」

 少し強目の口調で言われた宮田さんはハッとして慌てて答えた。

 「わ、わ、私もけ、賢くんの彼女だけど?」

 宮田さんの答えには驚きと怒りが込み上げる。

 「はぁぁぁぁぁぁ!!」と奇声を上げ賢を睨みつける。

◇◇◇

 紗枝のまさかの発言と、殺し屋の様な殺気を纏い睨みつける滝川さんにあたふたとする僕に更なる恐怖を与える滝川さん

 「どうゆう事かな、け.ん.??」

 ひきつった顔にドスの効いた声の滝川さんの圧力に僕の心臓は鷲掴みにされた気がする。
 ガクガクとする膝と体は動かない。
 これが蛇に睨まれたカエルの気持ちだろう。

 何かを言おうとするも、

 「あっ、と…えっと、それは、…えっと…」

 キャパオーバーの僕は全く言葉が出てこない。

 何もできず言えずの僕にはどうする事もできないこの修羅場に手を差しのべる人物が現れた。

◇◇◇

 この状況を興奮しながら見ていたけどさすがにこれはまずい!

 北澤美織、動きます!

 「ストップ、スト~ップ!皆ちょっと落ち着こうよ、ね、ね?」

 (ちょっと動くのが遅かった…)

 反省しつつ三人の間に割って入る。

 「ちょっと、美織ジャマしないでよ!」

 「んっ、ジャマ」

 「た、助かった…」

 三者三様の思いを口にする三人に私は提案した。

 「本当に落ち着こうよ!ほら、ここじゃ人の目もあるし…とりあえず近くの公園に行こうよ!」

 私の提案に杏と宮田さんは周りを見て、互いに『なるほど』と頷く。

 「わかったよ、美織」

 「公園に行きましょう」

 「良かった~、よし!なら急げ~Goだよ!」

 笑顔で親指を上げている私は『とりあえず何とかなった』と冷や汗を垂らしていたのには誰も気がついていないと思う。

 公園に行く事になった杏と宮田さんは染谷君を間に挟み、左右に別れ拒否権のない染谷君の手を握ると引きずるようにして公園に向かった行った。

 私関係ないし、怖いから帰ってもいいかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

青春再見

佐伯明理(さえきあかり)
青春
主婦のわたし。子供たちを送った帰り道に……。

『高校生活』

篠崎俊樹
青春
書き下ろしの連載青春小説です。自分自身に仮託して、私自身の昔のことを書いていきます。書籍化を目指します。どうぞよろしくお願いいたします!

ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお
青春
佐倉さくら 自己紹介するとたいていクスっと笑われる。 でも、名前ほどにおもしろい女子じゃない。 ないはずなんだけど、なんで、こんなに事件が多い? そんな佐倉さくらは、世田谷は豪徳寺の女子高生だぞ。

どうして、その子なの?

冴月希衣@商業BL販売中
青春
都築鮎佳(つづき あゆか)・高1。 真面目でお堅くて、自分に厳しいぶん他人にも厳しい。責任感は強いけど、融通は利かないし口を開けば辛辣な台詞ばかりが出てくる、キツい子。 それが、他人から見た私、らしい。 「友だちになりたくない女子の筆頭。ただのクラスメートで充分」 こんな陰口言われてるのも知ってる。 うん。私、ちゃんとわかってる。そんな私が、あの人の恋愛対象に入れるわけもないってこと。 でも、ずっと好きだった。ずっとずっと、十年もずっと好きだったのに。 「どうして、その子なの?」 ——ずっと好きだった幼なじみに、とうとう彼女ができました—— ☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆ 『花霞にたゆたう君に』のスピンオフ作品。本編未読でもお読みいただけます。 表紙絵:香咲まりさん ◆本文、画像の無断転載禁止◆ No reproduction or republication without written permission.

桃は食ふとも食らはるるな

虎島沙風
青春
[桃は食っても歳桃という名の桃には食われるな] 〈あらすじ〉  高校一年生の露梨紗夜(つゆなしさや)は、クラスメイトの歳桃宮龍(さいとうくろう)と犬猿の仲だ。お互いのことを殺したいぐらい嫌い合っている。  だが、紗夜が、学年イチの美少女である蒲谷瑞姫(ほたにたまき)に命を狙われていることをきっかけに、二人は瑞姫を倒すまでバディを組むことになる。  二人は傷つけ合いながらも何だかんだで協力し合い、お互いに不本意極まりないことだが心の距離を縮めていく。  ところが、歳桃が瑞姫のことを本気で好きになったと打ち明けて紗夜を裏切る。  紗夜にとって、歳桃の裏切りは予想以上に痛手だった。紗夜は、新生バディの歳桃と瑞姫の手によって、絶体絶命の窮地に陥る。  瀕死の重傷を負った自分を前にしても、眉一つ動かさない歳桃に動揺を隠しきれない紗夜。  今にも自分に止めを刺してこようとする歳桃に対して、紗夜は命乞いをせずに──。 「諦めなよ。僕たちコンビにかなう敵なんてこの世に存在しない。二人が揃った時点で君の負けは確定しているのだから」

処理中です...