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No.21
しおりを挟む翌朝、メイさんに起こされた俺は準備をして部屋を出た。
そして俺は今、猛烈に困惑している。
昨日はピンクのドレスを用意して俺に化粧をしてくれたメイさんが、今日用意してくれた服が貴族が着るような豪華な男物の服だったのだ。
それについて聞いてみると、
「ラグー様はパメラ様の婚約者ですのでこれで間違いありません。それともラグー様はそういったご趣味がお有りですか?」と返された。
これが困惑せずにいられますか?と言う話である。
昨日とは全く違う視線を俺に向けるメイさんは「素敵です」と顔を赤らめている。
パメラ様は本当に何をしたんだと思ってしまう。
メイさんに案内されて会食をした場所まで来ると俺はメイさんに質問した。
「メイさん、僕は男に見えますか?」
俺の突然の質問に首を傾げるメイさん
「中性的でとても素敵な男性に見えますよ。パメラ様の婚約者でなければ私がラグー様を欲しいくらいですよ」
堂々とそう言った笑顔のメイさんは綺麗だった。
「そうですか……」と呟いて中に入った俺は、パリントン公爵の手招きでパメラ様の隣に座らされた。
そして座って直ぐに、回りに聞こえないよう小声で隣に座るパメラ様に話しかける。
「パメラ様は何をされたんですか?」
「何ってスキル『記憶操作』を使っただけよ」
何そのスキル、どんなスキルかは知らないけど名前からして怖い……
「パパメラ様、そのスキルって家族に使って大丈夫なんですか?」
「ラグー何を言ってるの?ラグーを守る為なら大丈夫か大丈夫じゃないかなんて関係無い。例え家族でも回数制限全て使って黙らせるわ」
パメラ様はなんて男前なのだろう。
そんな事より回数制限?
スキル記憶操作は回数制限が有るのか?
「因みに、回数制限はどれくらいで、どの程度記憶を操作出来るんですか?」
「一生で使える回数は五回で完全に記憶を書き換える事が出来るわ」
怖!本当に恐ろしいスキルだと思う。
回数制限が無ければかなり強力なスキルだろう。いやあっても強力だ。
「あらあら二人とも本当に仲が宜しいのね」
アインシア様そう言ってが俺達に視線を向けていた。
「失礼いたしました。アインシア様」
俺は立ち上がりアインシアへ頭を下げた。
「お母様、ラグーと私は両想いなの」
えっここでそんな事を言いますか?と思ったが、
「あら、パメラがそんな事を言うなんて私は嬉しいわ、ねぇあなた」
「そうじゃの、ワシもこんなに優秀な息子が出来て嬉しいわい!かっかっか」
とアインシア様とパリントン公爵は嬉しそうにしていた。
「私もラグーくんのような弟が出来て鼻が高いよ」
そしてハリス様は昨日の事など無かったかのようにしていた。
俺はそんな三人を見て、何処までパメラ様が記憶を弄ったのかは分からないが改めてスキル記憶操作は恐ろしいと思った。
そして会食が終わり、俺はパメラ様とデリー公爵家の庭で話をしている。
「パメラ様は何処まで記憶を操作されたんですか?」
「お兄様とラグーの図書館で出会ったお兄様の記憶を私と出会った事に書き換えて、お父様とお母様の記憶も私の都合の良いように書き換えて、それからメイの記憶も書き換えたわ」
まず、ハリス様、パリントン公爵、アインシア様、おまけにメイさんの記憶を書き換えたなら回数制限の有るスキルを四回使った事になる。
確かパメラ様は制限が五回と言ってたから、残りは一回しかスキルを使えない事になる。
いくら関係無いと言っても、俺の為にそこまでスキルを使って助けてくれたパメラ様に申し訳無い気持ちでいっぱいになった。
「パメラ様、本当にありがとうございます」
俺は心からのお礼を伝えた。
「いいよ気にしないで、ラグーの為だもん」
照れ臭そうにするパメラ様は本当に可愛いくてつい思った事を口に出してしまった。
「パメラ様は本当に可愛らしいです。僕はパメラ様の婚約者になれて幸せです」
その瞬間パメラ様は顔を真っ赤にして息を詰まらせた。
「うっ、らららラグー、ふふ不意打ちは卑怯よ」
パメラ様があたふたとするのを俺は微笑ましく見ていた。
そして、パメラ様に魔法を教えてもらうために移動する馬車の用意が出来たとメイさんがやってきた。
「ラグー様、パメラ様、馬車の用意が出来ました」
「わ分かったわ、メイ」
「それでは彼方へ」
と振り返ったメイさんが「私だってラグー様に……ゴニョゴニョ」
ボソボソ呟いていたがよく聞こえず俺は魔法を教えてもらうため、移動に使う馬車へと向かった。
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