上 下
21 / 53

No.21

しおりを挟む

 翌朝、メイさんに起こされた俺は準備をして部屋を出た。

 そして俺は今、猛烈に困惑している。

 昨日はピンクのドレスを用意して俺に化粧をしてくれたメイさんが、今日用意してくれた服が貴族が着るような豪華な男物の服だったのだ。 

 それについて聞いてみると、

 「ラグー様はパメラ様の婚約者ですのでこれで間違いありません。それともラグー様はそういったご趣味がお有りですか?」と返された。

 これが困惑せずにいられますか?と言う話である。

 昨日とは全く違う視線を俺に向けるメイさんは「素敵です」と顔を赤らめている。

 パメラ様は本当に何をしたんだと思ってしまう。

 メイさんに案内されて会食をした場所まで来ると俺はメイさんに質問した。

 「メイさん、僕は男に見えますか?」

 俺の突然の質問に首を傾げるメイさん

 「中性的でとても素敵な男性に見えますよ。パメラ様の婚約者でなければ私がラグー様を欲しいくらいですよ」

 堂々とそう言った笑顔のメイさんは綺麗だった。

 「そうですか……」と呟いて中に入った俺は、パリントン公爵の手招きでパメラ様の隣に座らされた。
 そして座って直ぐに、回りに聞こえないよう小声で隣に座るパメラ様に話しかける。

 「パメラ様は何をされたんですか?」

 「何ってスキル『記憶操作』を使っただけよ」

 何そのスキル、どんなスキルかは知らないけど名前からして怖い……

 「パパメラ様、そのスキルって家族に使って大丈夫なんですか?」

 「ラグー何を言ってるの?ラグーを守る為なら大丈夫か大丈夫じゃないかなんて関係無い。例え家族でも回数制限全て使って黙らせるわ」

 パメラ様はなんて男前なのだろう。
 そんな事より回数制限?
 スキル記憶操作は回数制限が有るのか?

 「因みに、回数制限はどれくらいで、どの程度記憶を操作出来るんですか?」

 「一生で使える回数は五回で完全に記憶を書き換える事が出来るわ」

 怖!本当に恐ろしいスキルだと思う。
 回数制限が無ければかなり強力なスキルだろう。いやあっても強力だ。

 「あらあら二人とも本当に仲が宜しいのね」

 アインシア様そう言ってが俺達に視線を向けていた。

 「失礼いたしました。アインシア様」

 俺は立ち上がりアインシアへ頭を下げた。

 「お母様、ラグーと私は両想いなの」

 えっここでそんな事を言いますか?と思ったが、

 「あら、パメラがそんな事を言うなんて私は嬉しいわ、ねぇあなた」

 「そうじゃの、ワシもこんなに優秀な息子が出来て嬉しいわい!かっかっか」

 とアインシア様とパリントン公爵は嬉しそうにしていた。

 「私もラグーくんのような弟が出来て鼻が高いよ」

 そしてハリス様は昨日の事など無かったかのようにしていた。 

 俺はそんな三人を見て、何処までパメラ様が記憶を弄ったのかは分からないが改めてスキル記憶操作は恐ろしいと思った。

 そして会食が終わり、俺はパメラ様とデリー公爵家の庭で話をしている。

 「パメラ様は何処まで記憶を操作されたんですか?」

 「お兄様とラグーの図書館で出会ったお兄様の記憶を私と出会った事に書き換えて、お父様とお母様の記憶も私の都合の良いように書き換えて、それからメイの記憶も書き換えたわ」

 まず、ハリス様、パリントン公爵、アインシア様、おまけにメイさんの記憶を書き換えたなら回数制限の有るスキルを四回使った事になる。
 確かパメラ様は制限が五回と言ってたから、残りは一回しかスキルを使えない事になる。

 いくら関係無いと言っても、俺の為にそこまでスキルを使って助けてくれたパメラ様に申し訳無い気持ちでいっぱいになった。

 「パメラ様、本当にありがとうございます」

 俺は心からのお礼を伝えた。

 「いいよ気にしないで、ラグーの為だもん」

 照れ臭そうにするパメラ様は本当に可愛いくてつい思った事を口に出してしまった。

 「パメラ様は本当に可愛らしいです。僕はパメラ様の婚約者になれて幸せです」

 その瞬間パメラ様は顔を真っ赤にして息を詰まらせた。

 「うっ、らららラグー、ふふ不意打ちは卑怯よ」

 パメラ様があたふたとするのを俺は微笑ましく見ていた。

 そして、パメラ様に魔法を教えてもらうために移動する馬車の用意が出来たとメイさんがやってきた。

 「ラグー様、パメラ様、馬車の用意が出来ました」

 「わ分かったわ、メイ」

 「それでは彼方へ」

 と振り返ったメイさんが「私だってラグー様に……ゴニョゴニョ」

 ボソボソ呟いていたがよく聞こえず俺は魔法を教えてもらうため、移動に使う馬車へと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...