王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ

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16.もう家族ではない

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「え……?」

 三人組の顔色が変わる。信じられないものを見るような目で、セシールを見た。

「な……何を言っているの? お姉さま? こんなに綺麗になっているんだから、もう一回くらい身代わりになったって大丈夫でしょう?」

 太った少女は、信じられないという顔で言う。

「そうよ! また元に戻れるかもしれないじゃないの!」

 中年女性は悲鳴のような声を上げる。

「ああ……そうでした。ベルトランさまだけではなく、そのご両親もですね。私のことを娘と言ってくださって……本当に嬉しかったです」

 セシールはベルトランの両親と対面したときのことを思い出して微笑む。
 醜く太っていたにも関わらず、ベルトランの両親はセシールを温かく受け入れてくれた。
 何かを要求することもなく、優しく世話を焼いてくれたのだ。

「何を……何を言っているんだ、お前は!」

「そうよ! あなたは私たちの娘よ!」

 中年夫婦が顔を真っ赤にして叫ぶ。

「そこまでにしてもらおうか」

 ベルトランがセシールを庇うように一歩前に出る。
 全身から怒りが立ち昇っているかのようだ。

「彼女は俺の妻、セシール・ヴァンクールとなる。お前たちが家族と呼ぶ権利はない」

 ベルトランは静かに言う。
 その声はひどく落ち着いていた。しかし、だからこそ冷え切った怒りが滲み出ている。

「何を……何を言って……」

「黙れ。これ以上、俺の妻を侮辱することは許さない」

 ベルトランはそう言って三人組を睨む。

「ひっ……」

 強い殺意が浮かぶ視線に、三人は小さく悲鳴を上げる。
 ガクガクと震え出し、恐怖に満ちた顔で固まってしまった。

「お前たちは王都に連行する。手配書も回っているからな。せいぜい己の行いを悔いるがいい」

 ベルトランは冷ややかな口調で言うと、門番に合図を送る。
 門番は三人組を捕らえて馬車へと連れて行った。

「セシール、大丈夫か?」

 ベルトランはセシールに向き直り、心配そうに問いかける。

「ありがとうございます……大丈夫です……」

 セシールは弱々しく微笑むと、震える手でベルトランの手を握った。
 その手の温もりに、少し心が落ち着く。

「よく頑張ったな」

 ベルトランはそう言って微笑む。
 優しい笑顔に、セシールの心が癒やされていく。

「はい……」

 セシールはそっと頷く。
 ゆっくりと息を吐き出して力を抜くと、瞳からポロポロと涙が零れた。
 どうやら、かなり気を張っていたらしい。

「もう大丈夫だ。俺が傍にいる」

 ベルトランはそう言ってセシールを抱きしめる。
 優しい腕の温もりに、セシールは安心して身を委ねた。
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