王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ

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15.家族

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「だったら……あのまま侍女の座を奪わずにいれば、私はこんな目にあわなかったっていうこと? いずれお姉さまが耐えきれずに死んで、補償金をもらって幸せになれたの?」

 絶望の表情を浮かべ、太った少女は呟く。

「そんな……あいつを野垂れ死にになどさせるんじゃなかった……どこかで生きていないか……」

「そうよ……今からでもあの娘を探して、また王女殿下に差し出せば……そうすれば……」

 中年夫婦は虚ろな目をしながら、ぶつぶつと呻く。

「……本当に最低だな、お前たちは。家族を何だと思っているんだ」

 ベルトランは怒りを隠そうともせず、静かな声で言った。
 その目は冷たく三人を見下ろしていた。

「お姉さまだって、私たちの役に立てるのなら幸せに決まっているわ! だって家族なんだもの!」

「そうだ! それが家族の絆だ! 我々の役に立つために生まれてきたんだから、喜んで命を差し出すに決まっている!」

「そうよ! 今度こそ、どんなに変わり果てた姿になっていたところで、受け入れてあげるわ! それができるのは、家族だけよ!」

 太った少女、中年男性、中年女性がそれぞれ叫ぶ。
 彼らを眺めながら、セシールは呆然と立ち尽くしていた。
 家族と信じていた者たちは、最初からセシールを道具としか思っていなかったのだ。

 しかし、どこかで納得している自分もいる。
 役に立たなければ、家族として認められないと思い続けてきた。
 それは、子どもながらに彼らの態度から感じ取っていたからだ。

「私……馬鹿ね……家族のために頑張っていたつもりだったけれど……本当に家族だと思っていたのは……私だけだった」

 セシールは小さな声で呟く。視界が涙で滲んだ。
 その途端、初めて気づいたように三人組がセシールを見た。

「誰よ、あんた……え……まさか……お姉さま!?」

 太った少女は驚いたように目を見開く。

「そんな……まさか、本当に生きていたのか!?」

「まあ、なんてこと!」

 中年夫婦も驚きの声を上げる。その表情は喜びに満ちていた。

「ああ、よかったわ! お姉さまだもの、きっと私たちに尽くしてくれるわよね? だって家族だもの!」

 太った少女はそう言って微笑む。

「そうね! 家族だもの! きっと助けてくれるわ!」

 中年女性は嬉しそうに言う。

「そうだ、お前は家族のために命を差し出すのが当然だ! それが家族というものだ!」

 中年男性も叫ぶ。その声は喜びに震えていた。

「家族? どちらさまですか? 私の家族は、こちらのベルトランさまだけです」

 セシールは三人組を見据えて、きっぱりとした口調で告げる。
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