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01.家族のために
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「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」
妹の叫び声を聞き、セシールはどう答えていいのかわからなかった。
「まあまあ、落ち着きなさい、ジャクリーン。セシールが王女付き侍女になったことにより、我がルマット家も王家と繋がりができたということだ。これはとても喜ばしいことなのだよ」
ルマット男爵が優しく諭すように言った。
「そうは言ってもお父さま! 私は納得できないわ! だって、お姉さまは庶子よ! 卑しい血を引いているくせに! 王女さまの侍女になんてふさわしくないわ!」
それでもジャクリーンは納得がいかない様子だった。彼女は興奮したまま言い返す。
今年十歳になったばかりのセシールは、新興の男爵家の庶子に過ぎない。しかし、なぜか王女付きの侍女に選ばれたのだ。
セシール本人も、どうして自分が選ばれたのか不思議だし、ふさわしいとも思えない。
亜麻色の髪に茶色の瞳という平凡な色に、平凡な容姿。金髪碧眼の妹ジャクリーンのほうが、見た目にも侍女にふさわしいのではないかと思える。
「ジャクリーン、そのようなことを口にしてはいけませんよ。セシールも大切な家族の一員なのです」
ルマット男爵夫人がジャクリーンをたしなめた。
「お母さままで……。お姉さまばっかり贔屓にして……。もう知らないわ!」
ジャクリーンはそう言うと、怒って部屋から出て行ってしまった。
「ジャクリーン! 待ちなさい! ああ、あの子ったら……」
夫人は困った顔をして、額に手を当てた。
「セシール、ごめんなさいね。あの子には、後でよく言い聞かせておくわ。きっと、あの子もわかってくれると思うの。だって私たちは家族なのだから」
「はい、お義母さま。私もジャクリーンと仲良くしたいと思っています」
「ありがとう、セシール」
夫人は優しく微笑んだ。
彼女は生さぬ仲のセシールに、いつも穏やかに接してくれる。
セシールの実の母は屋敷で働いていたメイドだったらしい。母はセシールを産んですぐに亡くなってしまったと聞く。
しかし、夫人はセシールのことをルマット家の娘として認めてくれているのだ。
だからこそ、セシールは夫人の期待に応えたいと思っていた。
「そうだ、我々は家族だ。我々は皆、家族だ」
ルマット男爵は何度も頷いた。
「ええ、そのとおりですわ、あなた」
夫人は夫の言葉に頷いた。
「お前が王女付き侍女となることは、我々家族にとって喜ばしいことだ。王女殿下に無礼があってはならない。くれぐれも礼儀正しく振る舞うのだぞ。そして、しっかりお仕えするのだ」
「はい、お父さま。わかりました」
セシールは真剣な顔で答えた。
「ふむ、いい返事だ。家族の役に立っているのだと、誇りに思うがいい。いいか、どんなにつらくても頑張るのだぞ。それが、家族のためであり、お前のためでもあるのだからな」
男爵は満足そうに微笑んだ。
夫人も優しく微笑んでいる。
二人の姿を眺めながら、セシールは心の中で決意を固めた。
自分は王女付きの侍女として、誠心誠意仕えなければならないのだ。
それが家族のためなのだから。
妹の叫び声を聞き、セシールはどう答えていいのかわからなかった。
「まあまあ、落ち着きなさい、ジャクリーン。セシールが王女付き侍女になったことにより、我がルマット家も王家と繋がりができたということだ。これはとても喜ばしいことなのだよ」
ルマット男爵が優しく諭すように言った。
「そうは言ってもお父さま! 私は納得できないわ! だって、お姉さまは庶子よ! 卑しい血を引いているくせに! 王女さまの侍女になんてふさわしくないわ!」
それでもジャクリーンは納得がいかない様子だった。彼女は興奮したまま言い返す。
今年十歳になったばかりのセシールは、新興の男爵家の庶子に過ぎない。しかし、なぜか王女付きの侍女に選ばれたのだ。
セシール本人も、どうして自分が選ばれたのか不思議だし、ふさわしいとも思えない。
亜麻色の髪に茶色の瞳という平凡な色に、平凡な容姿。金髪碧眼の妹ジャクリーンのほうが、見た目にも侍女にふさわしいのではないかと思える。
「ジャクリーン、そのようなことを口にしてはいけませんよ。セシールも大切な家族の一員なのです」
ルマット男爵夫人がジャクリーンをたしなめた。
「お母さままで……。お姉さまばっかり贔屓にして……。もう知らないわ!」
ジャクリーンはそう言うと、怒って部屋から出て行ってしまった。
「ジャクリーン! 待ちなさい! ああ、あの子ったら……」
夫人は困った顔をして、額に手を当てた。
「セシール、ごめんなさいね。あの子には、後でよく言い聞かせておくわ。きっと、あの子もわかってくれると思うの。だって私たちは家族なのだから」
「はい、お義母さま。私もジャクリーンと仲良くしたいと思っています」
「ありがとう、セシール」
夫人は優しく微笑んだ。
彼女は生さぬ仲のセシールに、いつも穏やかに接してくれる。
セシールの実の母は屋敷で働いていたメイドだったらしい。母はセシールを産んですぐに亡くなってしまったと聞く。
しかし、夫人はセシールのことをルマット家の娘として認めてくれているのだ。
だからこそ、セシールは夫人の期待に応えたいと思っていた。
「そうだ、我々は家族だ。我々は皆、家族だ」
ルマット男爵は何度も頷いた。
「ええ、そのとおりですわ、あなた」
夫人は夫の言葉に頷いた。
「お前が王女付き侍女となることは、我々家族にとって喜ばしいことだ。王女殿下に無礼があってはならない。くれぐれも礼儀正しく振る舞うのだぞ。そして、しっかりお仕えするのだ」
「はい、お父さま。わかりました」
セシールは真剣な顔で答えた。
「ふむ、いい返事だ。家族の役に立っているのだと、誇りに思うがいい。いいか、どんなにつらくても頑張るのだぞ。それが、家族のためであり、お前のためでもあるのだからな」
男爵は満足そうに微笑んだ。
夫人も優しく微笑んでいる。
二人の姿を眺めながら、セシールは心の中で決意を固めた。
自分は王女付きの侍女として、誠心誠意仕えなければならないのだ。
それが家族のためなのだから。
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