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48.家族
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式典はアイザックが立派に仕切り、そのうちにコーネリアスも戻ってきた。
何事もなかったかのように式典は進み、問題なく終えることができた。
ロゼッタはブリジットのことが心配で、すぐに父と兄と共に控室へと向かう。
「母さま!」
扉をノックし、返事を待つよりも早く勢いよく扉を開ける。
礼儀作法としては、もちろんよろしくないことだ。だが、今はそんなことを考えている余裕はなかった。
椅子に座るブリジットの傍らに駆け寄ると、彼女は優しく頭を撫でてくれた。
「こんな姿のままごめんなさいね……。アイザックもありがとう。今日はとても助かったわ」
お礼を言う彼女の顔色は良くなっているように見えたが、どこかまだ具合が悪そうだ。
「母上……その、本当に僕たちの弟か妹が?」
アイザックはおそるおそる尋ねる。
先ほど式典を滞りなく進めていたことから、彼はすでに懐妊を知っているのはないかとロゼッタは思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
突発的な事態にもすぐに対応できるアイザックは、やはり優秀だ。
「ええ、間違いないそうよ」
彼女は自分の下腹部を愛おしむように手を当てながら、静かに答えてくれる。
そこでようやくアイザックも嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「おめでとうございます、母上。新しい家族が増えますね」
「そうね。私たち家族の、三人目の子どもになるわね」
優しく微笑むブリジットを眺めながら、ロゼッタは胸がいっぱいになって泣き出してしまいそうになる。
なさぬ仲であるはずの彼女が、ロゼッタのことを家族として認めてくれているのだ。
家族に愛されているのだと、自分は望まれているのだと、はっきりと実感することができた。
誰にも愛されなかったと思っていたニーナも、実はそうではなかった。
知らなかっただけで、きちんと彼女を見守っていてくれた人たちがいたのだ。
そのことを理解できたことは、ロゼッタにとって大きな前進だったと思う。
家族がロゼッタを愛し、守り、支えてくれたからこそ、自分もまた同じものを返したいと願う。
「母さま、生まれてくる弟か妹は、わたしが守るから安心してください」
ロゼッタは真っ直ぐな眼差しで、ブリジットに誓う。
自分の存在を必要だと思ってくれる人がいる限り、きっと頑張れるはずだ。
ブリジットは一瞬だけ面食らったような顔をしていたが、すぐに優しい笑みに変わる。
「ありがとう。頼りにしているわ」
「はい!」
ロゼッタは大きく深く、しっかりと頷く。
これから生まれてくる弟か妹も、愛されることを知ってくれるといい。
そして、みんなが笑顔になれたらいい。
ロゼッタはそう願わずにはいられなかった。
何事もなかったかのように式典は進み、問題なく終えることができた。
ロゼッタはブリジットのことが心配で、すぐに父と兄と共に控室へと向かう。
「母さま!」
扉をノックし、返事を待つよりも早く勢いよく扉を開ける。
礼儀作法としては、もちろんよろしくないことだ。だが、今はそんなことを考えている余裕はなかった。
椅子に座るブリジットの傍らに駆け寄ると、彼女は優しく頭を撫でてくれた。
「こんな姿のままごめんなさいね……。アイザックもありがとう。今日はとても助かったわ」
お礼を言う彼女の顔色は良くなっているように見えたが、どこかまだ具合が悪そうだ。
「母上……その、本当に僕たちの弟か妹が?」
アイザックはおそるおそる尋ねる。
先ほど式典を滞りなく進めていたことから、彼はすでに懐妊を知っているのはないかとロゼッタは思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
突発的な事態にもすぐに対応できるアイザックは、やはり優秀だ。
「ええ、間違いないそうよ」
彼女は自分の下腹部を愛おしむように手を当てながら、静かに答えてくれる。
そこでようやくアイザックも嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「おめでとうございます、母上。新しい家族が増えますね」
「そうね。私たち家族の、三人目の子どもになるわね」
優しく微笑むブリジットを眺めながら、ロゼッタは胸がいっぱいになって泣き出してしまいそうになる。
なさぬ仲であるはずの彼女が、ロゼッタのことを家族として認めてくれているのだ。
家族に愛されているのだと、自分は望まれているのだと、はっきりと実感することができた。
誰にも愛されなかったと思っていたニーナも、実はそうではなかった。
知らなかっただけで、きちんと彼女を見守っていてくれた人たちがいたのだ。
そのことを理解できたことは、ロゼッタにとって大きな前進だったと思う。
家族がロゼッタを愛し、守り、支えてくれたからこそ、自分もまた同じものを返したいと願う。
「母さま、生まれてくる弟か妹は、わたしが守るから安心してください」
ロゼッタは真っ直ぐな眼差しで、ブリジットに誓う。
自分の存在を必要だと思ってくれる人がいる限り、きっと頑張れるはずだ。
ブリジットは一瞬だけ面食らったような顔をしていたが、すぐに優しい笑みに変わる。
「ありがとう。頼りにしているわ」
「はい!」
ロゼッタは大きく深く、しっかりと頷く。
これから生まれてくる弟か妹も、愛されることを知ってくれるといい。
そして、みんなが笑顔になれたらいい。
ロゼッタはそう願わずにはいられなかった。
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