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46.建国祭
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そうして、いよいよ迎えた建国記念日当日。
城には多くの貴族たちが集まってきた。
特に、貴婦人たちは美しいドレスに身を包み、自慢の髪を結い上げている。
ロゼッタもまた、今日は普段よりももっと華やかに見える衣装を身につけていた。
愛らしいピンクのフリルがたくさんあしらわれたドレスで、レースのリボンや宝石も散りばめられている。
そして、頭にはティアラが輝いていた。
今は控室で準備を整え、少し休んでいるところだった。
「とても可愛いね、お姫さま」
兄のアイザックが、微笑ましそうな目で見つめてくる。
ロゼッタは笑顔を見せて兄を見上げた。
「お兄さまにもよく似合ってます。きっと世界で一番格好良い王子さまですね」
「お褒めいただき、光栄だよ。だけど、僕よりお姫さまのほうがずっと素敵だよ」
ロゼッタが少し照れて顔を俯かせると、アイザックは慈愛のこもった眼差しで頭を撫でてくれる。
そこに、不意にノック音が響いた。
アイザックは手を止めて、扉に向けて声をかける。するとすぐに扉が開かれた。
現れたのは、正装姿のコーネリアスとブリジットだ。
二人は並ぶととても絵になって見える。
「まあ、ロゼッタ。とても可愛らしいわ。アイザックも素敵よ」
「本当だな。これは素晴らしい日になりそうだ」
二人は嬉しそうに微笑んでくれる。
コーネリアスの側にはブリジットが寄り添い、穏やかな表情をしていた。
ただ、ブリジットの顔色が少し良くないように見える。それをわかっているのか、コーネリアスは気遣わしそうに彼女の腰に手を添えている。
「母さま、具合がお悪いんですか?」
ロゼッタはそっと近づいて尋ねてみる。
ブリジットはこちらを見るとにっこりと笑ってみせた。
「いいえ、ちょっと緊張しているだけよ」
彼女はいつもと変わらない調子で答える。
少し訝しく思ったのの、ロゼッタはそれ以上何も言わなかった。
そして、ついに式典の始まりを告げる鐘が鳴らされる。
会場へ向かうよう促す侍従の声を聞きながら、ロゼッタたちは部屋を出て階段へと向かう。
建国記念の記念式典は、広間で行われた。
玉座の前には赤い絨毯が敷かれており、そこを真っ直ぐに進み壇上へと向かう。
ロゼッタはアイザックと共にコーネリアスたちの後ろについて歩く。
かつてニーナが処刑を言い渡された場だったが、今のロゼッタは堂々と歩く王家の一員だ。
「あれが、第一王女のロゼッタさまね……」
「なんて愛くるしいお顔立ちでしょう。まるで絵画から抜け出してきたかのようだわ……」
「王太子殿下と同じ金の髪……ああ、やはり兄妹ね。お二人とも同じ黄金色だもの」
「六歳でしたかしら。その年で式典への参加を許されるなんて、早いこと……王太子殿下並みの扱いよね」
そんな囁きが、ちらほらと聞こえてくる。
ロゼッタがこうした場に姿を現すのは初めてのことだったので、余計に注目されてしまっているのだろう。
居心地の悪さを感じながらも、懸命に背筋を伸ばし前を向いて歩く。
やがて壇上に上り、皆から注目される中、ゆっくりとした動作で用意された席へと腰掛ける。
アイザックも隣に座るが、彼の緊張はほとんど見られない。さすがというべきだった。
「これより、建国記念日における式典を開催する」
国王であるコーネリアスによる宣言ののち、様々な祝辞が述べられる。
続いて貴族たちからの挨拶が始まるはずだったが、コーネリアスはそれを遮った。その視線の先には、顔色がますます悪くなったブリジットがいる。
「その前に、発表するべきことがある」
彼から出た思わぬ言葉に、会場内はどよめきに包まれた。
ロゼッタも驚き、戸惑ってしまう。
何を話すつもりなのか気になったものの、ここで立ち上がるわけにもいかない。
「陛下……どうか……」
蒼白になったブリジットが、掠れた声で訴えるように呟く。しかし、彼は首を横に振るだけだった。
その様子を見た貴族たちの間から、ひそひそと話し合う声が聞こえる。
「とうとう、新しい側妃を迎えるのかしら……」
「王妃の顔色が悪いのは、そういうこと……?」
「まあまあ……! それで、どの方かしら?」
ざわつく場内の雰囲気の中、再びコーネリアスの言葉が発せられる。
城には多くの貴族たちが集まってきた。
特に、貴婦人たちは美しいドレスに身を包み、自慢の髪を結い上げている。
ロゼッタもまた、今日は普段よりももっと華やかに見える衣装を身につけていた。
愛らしいピンクのフリルがたくさんあしらわれたドレスで、レースのリボンや宝石も散りばめられている。
そして、頭にはティアラが輝いていた。
今は控室で準備を整え、少し休んでいるところだった。
「とても可愛いね、お姫さま」
兄のアイザックが、微笑ましそうな目で見つめてくる。
ロゼッタは笑顔を見せて兄を見上げた。
「お兄さまにもよく似合ってます。きっと世界で一番格好良い王子さまですね」
「お褒めいただき、光栄だよ。だけど、僕よりお姫さまのほうがずっと素敵だよ」
ロゼッタが少し照れて顔を俯かせると、アイザックは慈愛のこもった眼差しで頭を撫でてくれる。
そこに、不意にノック音が響いた。
アイザックは手を止めて、扉に向けて声をかける。するとすぐに扉が開かれた。
現れたのは、正装姿のコーネリアスとブリジットだ。
二人は並ぶととても絵になって見える。
「まあ、ロゼッタ。とても可愛らしいわ。アイザックも素敵よ」
「本当だな。これは素晴らしい日になりそうだ」
二人は嬉しそうに微笑んでくれる。
コーネリアスの側にはブリジットが寄り添い、穏やかな表情をしていた。
ただ、ブリジットの顔色が少し良くないように見える。それをわかっているのか、コーネリアスは気遣わしそうに彼女の腰に手を添えている。
「母さま、具合がお悪いんですか?」
ロゼッタはそっと近づいて尋ねてみる。
ブリジットはこちらを見るとにっこりと笑ってみせた。
「いいえ、ちょっと緊張しているだけよ」
彼女はいつもと変わらない調子で答える。
少し訝しく思ったのの、ロゼッタはそれ以上何も言わなかった。
そして、ついに式典の始まりを告げる鐘が鳴らされる。
会場へ向かうよう促す侍従の声を聞きながら、ロゼッタたちは部屋を出て階段へと向かう。
建国記念の記念式典は、広間で行われた。
玉座の前には赤い絨毯が敷かれており、そこを真っ直ぐに進み壇上へと向かう。
ロゼッタはアイザックと共にコーネリアスたちの後ろについて歩く。
かつてニーナが処刑を言い渡された場だったが、今のロゼッタは堂々と歩く王家の一員だ。
「あれが、第一王女のロゼッタさまね……」
「なんて愛くるしいお顔立ちでしょう。まるで絵画から抜け出してきたかのようだわ……」
「王太子殿下と同じ金の髪……ああ、やはり兄妹ね。お二人とも同じ黄金色だもの」
「六歳でしたかしら。その年で式典への参加を許されるなんて、早いこと……王太子殿下並みの扱いよね」
そんな囁きが、ちらほらと聞こえてくる。
ロゼッタがこうした場に姿を現すのは初めてのことだったので、余計に注目されてしまっているのだろう。
居心地の悪さを感じながらも、懸命に背筋を伸ばし前を向いて歩く。
やがて壇上に上り、皆から注目される中、ゆっくりとした動作で用意された席へと腰掛ける。
アイザックも隣に座るが、彼の緊張はほとんど見られない。さすがというべきだった。
「これより、建国記念日における式典を開催する」
国王であるコーネリアスによる宣言ののち、様々な祝辞が述べられる。
続いて貴族たちからの挨拶が始まるはずだったが、コーネリアスはそれを遮った。その視線の先には、顔色がますます悪くなったブリジットがいる。
「その前に、発表するべきことがある」
彼から出た思わぬ言葉に、会場内はどよめきに包まれた。
ロゼッタも驚き、戸惑ってしまう。
何を話すつもりなのか気になったものの、ここで立ち上がるわけにもいかない。
「陛下……どうか……」
蒼白になったブリジットが、掠れた声で訴えるように呟く。しかし、彼は首を横に振るだけだった。
その様子を見た貴族たちの間から、ひそひそと話し合う声が聞こえる。
「とうとう、新しい側妃を迎えるのかしら……」
「王妃の顔色が悪いのは、そういうこと……?」
「まあまあ……! それで、どの方かしら?」
ざわつく場内の雰囲気の中、再びコーネリアスの言葉が発せられる。
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