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24.不敬

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 ロゼッタは、王妃の宮殿から自室へと戻る。
 侍女たちが出迎えてくれたが、その表情には心配そうな色が浮かんでいた。

「あの、ロゼッタさま……王妃殿下とお話ししていたのですか?」

 侍女の一人がおずおずとした様子で尋ねる。ロゼッタは頷いた。

「ええ、そうよ」

 すると、他の侍女たちも心配そうに尋ねてくる。

「王妃殿下にひどいことを言われませんでしたか?」

「まだ幼いロゼッタさまに王妃殿下のお相手は酷ですわ」

「お美しい方ですが、冷酷で恐ろしい方ですもの」

 侍女たちは口々に王妃を非難するようなことを言うが、ロゼッタはそれを聞き流す。
 彼女たちの態度には、何やら不快感を覚える。
 王妃はロゼッタにとても親切にしてくれた。
 もしかしたらそれが信用を得るための演技という可能性もある。だが、力のないロゼッタに対して、そのような労力を費やすだろうか。
 それよりも、侍女たちが王妃のことを悪く吹き込もうとしているように思えた。

「わたしは大丈夫よ」

「でも……」

 なおも食い下がろうとする侍女たちに、ロゼッタは穏やかな口調で告げる。

「それよりも、どうしてあなたたちは王妃陛下のことを殿下と呼ぶの? 不敬だとは思わないの?」

 ロゼッタの問いに、侍女たちの動きが止まる。
 そして互いに顔を見合わせたあと、困ったような笑みを浮かべた。

「それは……その……」

「いろいろありまして……」

「ロゼッタさまにはまだわかりませんわ」

 口ごもる侍女たちを見て、ロゼッタはため息をつく。
 そして、さらに口を開こうとしたところで、扉をノックする音が響いてきた。

「はい」

 ロゼッタが返事をすると、扉が開かれて一人の男性が入ってくる。それは、この宮殿の主であり、ロゼッタの父親である国王コーネリアスだった。

「ロゼッタ、王妃の宮殿から戻ったと聞いて様子を見に来たのだ」

 コーネリアスはそう言って近づいてくると、優しくロゼッタを抱き寄せる。
 そして、侍女たちに視線を向けると口を開いた。

「お前たちは下がってよい」

 コーネリアスがそう命じると、侍女たちは一礼して部屋から出ていく。その後ろ姿を見送ってから、ロゼッタは父親に向き直った。

「おとうさま、お帰りなさいませ」

「ただいま、私の愛しい娘」

 コーネリアスは優しい微笑みを浮かべると、ロゼッタの頭を撫でる。そして、その顔を覗き込むように身を屈めた。

「王妃と話をしたそうだが、どんな話をしたのかな?」

 コーネリアスは穏やかな口調で尋ねる。その声色からは、娘の身を案じる父親の心情が滲み出ていた。
 ロゼッタは優しい父親を安心させるように笑顔を浮かべると口を開く。

「わたしのことを気遣ってくださいました。母さまはとても優しい方です」

 ロゼッタの言葉に、コーネリアスは一瞬驚いたような表情を浮かべる。しかし、すぐに笑顔を浮かべると頷いた。

「そうか、それは良かったな」

「はい!」

 ロゼッタは元気よく返事をすると、父親に向かって微笑みを返す。
 その笑顔を見て、コーネリアスは安堵したように息を吐いた。
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