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06.お菓子作り
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「落ち着いたかしら?」
しばらくして、アマーリアはヘスティアの背中をぽんぽんと軽く叩きながら問いかけた。
「はい……申し訳ありません」
「いいのよ」
そう言って、アマーリアは微笑む。
その笑顔を見て、また泣きそうになるがなんとかこらえた。
「あの……ありがとうございます……」
そんなヘスティアを見て、アマーリアは優しく微笑む。そして彼女はゆっくりと口を開いた。
「あなたのような娘がいたら良かったのに」
「え……?」
突然のことに、ヘスティアは驚いてアマーリアを見つめる。
すると、アマーリアはふふっと笑った。
「私には娘がいないの。息子ばかり三人いるけれど、もう皆成人してしまったし、可愛らしさなんて欠片もないのよ」
そう言って、アマーリアは困ったように眉尻を下げる。
「え……成人……ということは……」
アマーリアの見た目は、二十代後半にしか見えない。
しかし今の発言からすると、彼女は子供を三人産んだということになる。それも、すでに成人しているという。
ということは、彼女はいったい何歳なのだろうか。そんな疑問が浮かんできたが、さすがに失礼だと思って言葉を飲み込んだ。
「だから、あなたみたいな可愛い娘が欲しかったの。あなたが来てくれて本当に嬉しいわ」
そう言ってアマーリアは微笑む。その笑顔は嘘偽りのないもので、ヘスティアも嬉しくなった。
「そんな……光栄です」
そう言って微笑むと、アマーリアはさらに笑みを深めた。
そして、ヘスティアの手を取る。
「そうだわ。この地域の伝統的なお菓子作りを教えてあげるわ。あなたならきっと上手にできるはずよ」
「お……お菓子、ですか?」
突然の提案に驚くヘスティアを見て、アマーリアは悪戯っぽく笑った。
「ええ、そうよ。火の精霊の加護を込めて、安全と健康を願うお菓子なの。貴族から庶民まで、奥方や娘が家族や大切な人に作るのよ」
「家族や……大切な人に……」
その言葉に、胸が熱くなる。
今まで家族と呼べる存在などいなかった。血の繋がりはあっても、家族と言えるような関係ではなかったから。
しかし、この地に来てからは違う。
アマーリアやレイモンドは、ヘスティアを温かく迎え入れてくれた。使用人の皆も、親切に接してくれる。
この屋敷で、ヘスティアは本当の家族のような存在になれたのだと思うと、胸がいっぱいになる。
この恩を返したい。役に立たなければと、強く思った。
「どうかしら? 一緒に作ってみない?」
「はい……ぜひ、お願いします」
ヘスティアがそう答えると、アマーリアは嬉しそうに笑った。
そして二人は一緒に、厨房へ向かう。
厨房では、料理長や使用人たちが忙しく働いていた。
アマーリアが声をかけると、皆手を止めて振り返る。そして驚いたように目を見開いた。
「アマーリアさま? どうされたのですか?」
「突然ごめんなさいね。少しお菓子を作りたくて……いいかしら?」
アマーリアがそう言うと、料理長は笑顔で頷いた。
「もちろんでございます」
そう言って、料理長は他の料理人たちに目配せをする。すると彼らはテキパキと動き始めた。
あっという間に準備が進められていく。
「さあ、こちらへ」
料理長に促され、ヘスティアは調理台の前に立たされた。アマーリアは隣に立っている。
「まずは材料を計りましょうね」
そう言うと、料理長は粉や砂糖などの食材を大きな秤の上にのせる。そしてボウルに入れたバターや牛乳などと一緒に混ぜ合わせ始めた。
ヘスティアも見よう見まねでやってみるが、なかなかうまくいかず苦戦する。
そんなヘスティアにアマーリアは優しく教えてくれた。
「もう少しこうやって混ぜるのよ」
そう言って彼女は、丁寧に手本を見せてくれる。その手つきはとても滑らかで、思わず見惚れてしまうくらいだ。
「こう……でしょうか……?」
「ええ、そうよ。上手だわ」
褒められて嬉しくなる。
もっと上手くなりたいと思ったその時だった。ヘスティアの手元を見ていたアマーリアが、突然声を上げたのだ。
「……あら?」
「どうかなさいましたか?」
料理長が問いかけると、アマーリアは驚いたような表情を浮かべていた。
「これ、いつもの炎華粉かしら? なんだか違う気がするわ……」
「炎華粉?」
聞き慣れない言葉に首を傾げると、アマーリアは優しく微笑んだ。
「ええ、そうよ。この粉はね、火で炙ると花のような香りがするの」
「へえ……そうなのですか」
初めて聞く話に、ヘスティアは興味津々で耳を傾ける。
そんなヘスティアを見て、アマーリアはさらに笑みを深めた。
「この地域の特産品なのよ。小麦粉の一種なんだけれど、火の精霊の加護を受けたと言われているわ。炎華粉を使うと、とても甘くて香ばしいお菓子になるのよ」
「なるほど……」
アマーリアの説明を聞いて、ヘスティアは納得する。
「でも……いつもよりも香りが強い気がするわね。それに、色も赤いわ……。ねえ、あなた」
アマーリアは料理長に声をかける。彼は手を止めると振り返った。
「はい、なんでしょう?」
「この炎華粉はいつも使っているものと同じかしら?」
「はい、そのはずですが……」
料理長は答えながら首を傾げる。そして少し考えてから口を開いた。
「いや、でも……確かにいつもより香りが強い気がしますね……」
料理長の言葉に、アマーリアは考え込んだ。そしてしばらく悩んだ後、彼女はにっこりと微笑んだ。
「まあいいわ。悪いことではないものね。とりあえず作りましょう」
そう言って、アマーリアは調理を続けるように促す。
ヘスティアも慌てて手を動かした。
「ええ、そうですね」
料理長も頷いて作業を再開する。
そして数分ほどで生地が出来上がった。それを型に流し込み、オーブンで焼いていく。
「焼き加減に気をつけるのよ」
アマーリアの言葉に、ヘスティアは大きく頷く。そしてじっと焼き上がりを待った。
しばらくして、ふんわりとした甘い香りが漂ってくる。
「そろそろかしらね?」
アマーリアはそう言うが、ヘスティアは首を横に振った。
どうしてか、まだもう少し待たなければならないような気がするのだ。
「いえ、あとちょっと……。もう少し待ってください」
「……ええ、わかったわ」
ヘスティアの言葉に、アマーリアは優しく微笑む。
そして二人で焼き上がりを見守ることにした。
数分経ってから、ヘスティアはオーブンを開けると、中から取り出す。
「まあ、美味しそうに焼けたわね」
アマーリアが嬉しそうに微笑むと、料理長も笑顔で頷いた。
「はい! これは美味しそうです!」
その言葉どおり、オーブンから取り出されたクッキーはふっくらとして香ばしい香りを漂わせていた。
表面はこんがりと焼けて茶色くなっており、中までしっかり火が通ったことが分かる。
ヘスティアは達成感で胸がいっぱいになった。
「さあ、冷めてしまう前にいただきましょう」
アマーリアの言葉に、ヘスティアは席に着く。そしてお皿に取り分けられたクッキーを手に取った。
「いただきます……」
ヘスティアはそう呟いてから、クッキーを一口齧る。サクッとした食感と共に口の中に広がる甘さに、思わず頬が緩んだ。
鼻に抜けていく花のような香りも心地良くて、とても幸せな気持ちになる。
「美味しいです!」
「ふふ……よかったわ」
アマーリアも嬉しそうに微笑むと、自分の分を食べ始めた。そして驚いたように目を見開く。
「まあ……本当に素晴らしいわ。これほど美味しいお菓子を食べたのは初めてよ」
そう言ってアマーリアは感嘆の声を上げる。
「ほら、あなたたちも食べてみて」
アマーリアは料理長たちにもクッキーを勧めた。彼らは戸惑いながらも、一つずつ手に取り口に運ぶ。そして全員が驚いたように目を見開いた。
「本当だ! これは美味しい!」
「こんなに美味しいお菓子は初めてです!」
口々に感想を述べる彼らを見て、アマーリアは満足そうな表情を浮かべる。そして彼女は、ヘスティアに向き合った。
「ありがとう、ヘスティア。きっとあなたには、火の精霊の加護があるのね」
「そ……そんなこと……」
アマーリアの言葉に、ヘスティアは驚いて首を横に振る。しかし彼女は優しく微笑んで続けた。
「いいえ、きっとそうよ。だってこんなにも素敵なお菓子を作れるんだもの」
そう言って、アマーリアは微笑む。そして彼女は手を伸ばしてヘスティアの手を取った。その温もりに胸が熱くなる。
「レイモンドが帰ってきたら、このお菓子を食べさせてあげましょうね。きっとあの子も喜ぶわ」
「は、はい……」
ヘスティアは頬を染めながら、小さく頷いた。
しばらくして、アマーリアはヘスティアの背中をぽんぽんと軽く叩きながら問いかけた。
「はい……申し訳ありません」
「いいのよ」
そう言って、アマーリアは微笑む。
その笑顔を見て、また泣きそうになるがなんとかこらえた。
「あの……ありがとうございます……」
そんなヘスティアを見て、アマーリアは優しく微笑む。そして彼女はゆっくりと口を開いた。
「あなたのような娘がいたら良かったのに」
「え……?」
突然のことに、ヘスティアは驚いてアマーリアを見つめる。
すると、アマーリアはふふっと笑った。
「私には娘がいないの。息子ばかり三人いるけれど、もう皆成人してしまったし、可愛らしさなんて欠片もないのよ」
そう言って、アマーリアは困ったように眉尻を下げる。
「え……成人……ということは……」
アマーリアの見た目は、二十代後半にしか見えない。
しかし今の発言からすると、彼女は子供を三人産んだということになる。それも、すでに成人しているという。
ということは、彼女はいったい何歳なのだろうか。そんな疑問が浮かんできたが、さすがに失礼だと思って言葉を飲み込んだ。
「だから、あなたみたいな可愛い娘が欲しかったの。あなたが来てくれて本当に嬉しいわ」
そう言ってアマーリアは微笑む。その笑顔は嘘偽りのないもので、ヘスティアも嬉しくなった。
「そんな……光栄です」
そう言って微笑むと、アマーリアはさらに笑みを深めた。
そして、ヘスティアの手を取る。
「そうだわ。この地域の伝統的なお菓子作りを教えてあげるわ。あなたならきっと上手にできるはずよ」
「お……お菓子、ですか?」
突然の提案に驚くヘスティアを見て、アマーリアは悪戯っぽく笑った。
「ええ、そうよ。火の精霊の加護を込めて、安全と健康を願うお菓子なの。貴族から庶民まで、奥方や娘が家族や大切な人に作るのよ」
「家族や……大切な人に……」
その言葉に、胸が熱くなる。
今まで家族と呼べる存在などいなかった。血の繋がりはあっても、家族と言えるような関係ではなかったから。
しかし、この地に来てからは違う。
アマーリアやレイモンドは、ヘスティアを温かく迎え入れてくれた。使用人の皆も、親切に接してくれる。
この屋敷で、ヘスティアは本当の家族のような存在になれたのだと思うと、胸がいっぱいになる。
この恩を返したい。役に立たなければと、強く思った。
「どうかしら? 一緒に作ってみない?」
「はい……ぜひ、お願いします」
ヘスティアがそう答えると、アマーリアは嬉しそうに笑った。
そして二人は一緒に、厨房へ向かう。
厨房では、料理長や使用人たちが忙しく働いていた。
アマーリアが声をかけると、皆手を止めて振り返る。そして驚いたように目を見開いた。
「アマーリアさま? どうされたのですか?」
「突然ごめんなさいね。少しお菓子を作りたくて……いいかしら?」
アマーリアがそう言うと、料理長は笑顔で頷いた。
「もちろんでございます」
そう言って、料理長は他の料理人たちに目配せをする。すると彼らはテキパキと動き始めた。
あっという間に準備が進められていく。
「さあ、こちらへ」
料理長に促され、ヘスティアは調理台の前に立たされた。アマーリアは隣に立っている。
「まずは材料を計りましょうね」
そう言うと、料理長は粉や砂糖などの食材を大きな秤の上にのせる。そしてボウルに入れたバターや牛乳などと一緒に混ぜ合わせ始めた。
ヘスティアも見よう見まねでやってみるが、なかなかうまくいかず苦戦する。
そんなヘスティアにアマーリアは優しく教えてくれた。
「もう少しこうやって混ぜるのよ」
そう言って彼女は、丁寧に手本を見せてくれる。その手つきはとても滑らかで、思わず見惚れてしまうくらいだ。
「こう……でしょうか……?」
「ええ、そうよ。上手だわ」
褒められて嬉しくなる。
もっと上手くなりたいと思ったその時だった。ヘスティアの手元を見ていたアマーリアが、突然声を上げたのだ。
「……あら?」
「どうかなさいましたか?」
料理長が問いかけると、アマーリアは驚いたような表情を浮かべていた。
「これ、いつもの炎華粉かしら? なんだか違う気がするわ……」
「炎華粉?」
聞き慣れない言葉に首を傾げると、アマーリアは優しく微笑んだ。
「ええ、そうよ。この粉はね、火で炙ると花のような香りがするの」
「へえ……そうなのですか」
初めて聞く話に、ヘスティアは興味津々で耳を傾ける。
そんなヘスティアを見て、アマーリアはさらに笑みを深めた。
「この地域の特産品なのよ。小麦粉の一種なんだけれど、火の精霊の加護を受けたと言われているわ。炎華粉を使うと、とても甘くて香ばしいお菓子になるのよ」
「なるほど……」
アマーリアの説明を聞いて、ヘスティアは納得する。
「でも……いつもよりも香りが強い気がするわね。それに、色も赤いわ……。ねえ、あなた」
アマーリアは料理長に声をかける。彼は手を止めると振り返った。
「はい、なんでしょう?」
「この炎華粉はいつも使っているものと同じかしら?」
「はい、そのはずですが……」
料理長は答えながら首を傾げる。そして少し考えてから口を開いた。
「いや、でも……確かにいつもより香りが強い気がしますね……」
料理長の言葉に、アマーリアは考え込んだ。そしてしばらく悩んだ後、彼女はにっこりと微笑んだ。
「まあいいわ。悪いことではないものね。とりあえず作りましょう」
そう言って、アマーリアは調理を続けるように促す。
ヘスティアも慌てて手を動かした。
「ええ、そうですね」
料理長も頷いて作業を再開する。
そして数分ほどで生地が出来上がった。それを型に流し込み、オーブンで焼いていく。
「焼き加減に気をつけるのよ」
アマーリアの言葉に、ヘスティアは大きく頷く。そしてじっと焼き上がりを待った。
しばらくして、ふんわりとした甘い香りが漂ってくる。
「そろそろかしらね?」
アマーリアはそう言うが、ヘスティアは首を横に振った。
どうしてか、まだもう少し待たなければならないような気がするのだ。
「いえ、あとちょっと……。もう少し待ってください」
「……ええ、わかったわ」
ヘスティアの言葉に、アマーリアは優しく微笑む。
そして二人で焼き上がりを見守ることにした。
数分経ってから、ヘスティアはオーブンを開けると、中から取り出す。
「まあ、美味しそうに焼けたわね」
アマーリアが嬉しそうに微笑むと、料理長も笑顔で頷いた。
「はい! これは美味しそうです!」
その言葉どおり、オーブンから取り出されたクッキーはふっくらとして香ばしい香りを漂わせていた。
表面はこんがりと焼けて茶色くなっており、中までしっかり火が通ったことが分かる。
ヘスティアは達成感で胸がいっぱいになった。
「さあ、冷めてしまう前にいただきましょう」
アマーリアの言葉に、ヘスティアは席に着く。そしてお皿に取り分けられたクッキーを手に取った。
「いただきます……」
ヘスティアはそう呟いてから、クッキーを一口齧る。サクッとした食感と共に口の中に広がる甘さに、思わず頬が緩んだ。
鼻に抜けていく花のような香りも心地良くて、とても幸せな気持ちになる。
「美味しいです!」
「ふふ……よかったわ」
アマーリアも嬉しそうに微笑むと、自分の分を食べ始めた。そして驚いたように目を見開く。
「まあ……本当に素晴らしいわ。これほど美味しいお菓子を食べたのは初めてよ」
そう言ってアマーリアは感嘆の声を上げる。
「ほら、あなたたちも食べてみて」
アマーリアは料理長たちにもクッキーを勧めた。彼らは戸惑いながらも、一つずつ手に取り口に運ぶ。そして全員が驚いたように目を見開いた。
「本当だ! これは美味しい!」
「こんなに美味しいお菓子は初めてです!」
口々に感想を述べる彼らを見て、アマーリアは満足そうな表情を浮かべる。そして彼女は、ヘスティアに向き合った。
「ありがとう、ヘスティア。きっとあなたには、火の精霊の加護があるのね」
「そ……そんなこと……」
アマーリアの言葉に、ヘスティアは驚いて首を横に振る。しかし彼女は優しく微笑んで続けた。
「いいえ、きっとそうよ。だってこんなにも素敵なお菓子を作れるんだもの」
そう言って、アマーリアは微笑む。そして彼女は手を伸ばしてヘスティアの手を取った。その温もりに胸が熱くなる。
「レイモンドが帰ってきたら、このお菓子を食べさせてあげましょうね。きっとあの子も喜ぶわ」
「は、はい……」
ヘスティアは頬を染めながら、小さく頷いた。
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