ファンタジー短編集

葵 すみれ

文字の大きさ
上 下
1 / 6
追放された補助魔術師はざまぁする気もないのに、元パーティーは勝手に全滅した件

01.追放

しおりを挟む
「アシス、お前をパーティーから追放する! 前々から実力もないくせに口うるさい奴だと思っていたが、もう限界だ! さっさと失せろ!」

 パーティーのリーダーにして戦士であるノーキンが、大声で言い放った。
 雑用係にして補助魔術師であるアシスは、目を見開いた後、落胆に肩を落とす。

 事の発端は、依頼を受けてワイバーン討伐に向かう最中、森の中でオークの群れを見つけたことだった。
 アシスは後顧の憂いを断つために、まずはオークを倒しておくべきだと主張した。
 しかし、オークを倒したところで報酬は出ない。
 報酬が出ない上に、必要のない雑魚を狩る労力なんてかけていられないと、他のパーティーメンバー全員から反対された。
 アシスは普段からこういった細かいことを指摘していたため、それが積もり積もって、ノーキンがとうとう爆発してしまったのだ。

「残念だけど、仕方ないねっ! だってアシスくん、ウザいんだもん! オークなんて雑魚、もしかかってきたところで余裕って感じだしぃ? 時間のムダムダ! さっさと先に行こうよ!」

 盗賊であるシリィが、小柄な体に見合わぬ豊満な胸を突き出しながら、嘲りを浮かべる。

「慎重が過ぎると思います。我々には、素早い討伐も求められているのです。オークを相手にするのは、時間の無駄でしかありません。残念ですが、アシスさんは我々のパーティーにふさわしくないと、私も思います」

 治癒術師であるガールが穏やかな口調ながらも、きっぱりとアシスを拒絶する。

「……わかった。でも、この討伐が終わってからにしてほしい。それからなら、何も言わずにパーティーを抜けるから」

「あ? 討伐報酬は譲らないってことか? 浅ましい奴だな! もうお前のような役立たずに分け前なんて渡したくねえんだよ! さっさと消えろよ!」

「だが、お前たちだけでは……」

 さっさと追い払いたがるノーキンに食い下がろうとするアシスだが、シリィとガールの二人も苛立ちを露わにしてくる。

「ちょっとちょっと、何言っちゃってんの? ショボい補助魔法しか使えない、お荷物のくせしてさぁ。アンタなんていなくても、ううん、いないほうが動きやすいの! 戦ってもいないくせに邪魔! 自惚れないでよね!」

「あなたなど不要だということがわかりませんか? 裏方なら裏方らしく謙虚な態度でへりくだっていればまだしも、あれこれとケチをつけるだけの傲慢なお荷物など、害悪でしかありません。我々には二度と関わらないでください」

 女性陣二人にも責められ、アシスは大きくため息を漏らして口をつぐんだ。

「……わかった。元気でな」

 それだけを言い残し、アシスは彼らの元を立ち去った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

ちょっっっっっと早かった!〜婚約破棄されたらリアクションは慎重に!〜

オリハルコン陸
ファンタジー
王子から婚約破棄を告げられた令嬢。 ちょっっっっっと反応をミスってしまい……

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

処理中です...