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03.迷いと決意
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惚れ薬だという花びらの砂糖菓子を眺めながら、ポリーヌは自室で一人考えた。
この砂糖菓子を食べさせれば、ジェレミーは自分を好きになってくれるという。
「でも、本当にいいのかしら……」
ポリーヌの脳裏には、あの令嬢と親しげに話すジェレミーの姿が浮かんでいた。
惚れ薬でジェレミーの気持ちを変えることができたとしても、いつかは後悔しそうな気がする。
「やっぱり、やめておこうかしら」
妹の気遣いは嬉しかったが、ポリーヌは悩んだ。
すると、ジェレミーがポリーヌを訪ねてきたという知らせが入った。
「どうしよう……」
ポリーヌは迷ったが、ジェレミーを待たせるわけにもいかず、砂糖菓子の小箱を持って部屋を出る。
応接室に向かうと、ジェレミーはソファに座って待っていた。
「ポリーヌ嬢、急にすまない」
ジェレミーは立ち上がって、申し訳なさそうに言った。
ポリーヌは慌てて首を横に振る。
「い、いえ……少し驚きましたが、嬉しいですわ」
「……そうか」
ジェレミーはほっとしたように表情を緩めた。
ポリーヌはどきりとする。
こげ茶色の髪と青い瞳は、温和な印象を与える。だが、鍛えられた体つきに引き締まった口元、精悍さを感じさせる顔立ちが、彼本来の持つ魅力を引き立てていた。
婚約者なのに、ジェレミーの顔を正面からまじまじと見たのは久しぶりだ。ポリーヌは胸が高鳴るのを感じた。
「それで、今日はどうされたのですか?」
ポリーヌが尋ねると、ジェレミーは言いづらそうに口を開いた。
「実は……きみに話があって来たんだ」
「私に……?」
「ああ。その……」
ジェレミーは、そこで言葉を詰まらせる。
言い淀む姿を見て、ポリーヌは嫌な予感がした。まさか、婚約破棄を言い渡されるのではないだろうか。
「あ、あの! お茶を持ってきますわ」
ポリーヌは逃げるように、応接室を出た。
「あ、ああ……」
ジェレミーの戸惑ったような声が聞こえたが、構わずにキッチンへ向かう。
「まさか、本当に婚約破棄を言い渡されるのかしら……?」
不安な気持ちで、お茶の準備を始める。
手元には惚れ薬だという砂糖菓子があった。
「……これを、食べさせれば……」
ポリーヌは迷ったが、覚悟を決めて砂糖菓子をお茶に浮かべた。
すぐに砂糖は溶けて、花びらがお茶に浮く。甘い香りが湯気に漂う。
「これで、きっと……」
ポリーヌは、震える手でお茶を運んだ。
ジェレミーのいる応接室に戻ると、彼は窓の外を眺めていた。
「お待たせしました」
「ああ、ありがとう」
ジェレミーの前にお茶を出すと、彼は微笑んで礼を言った。
「おや、この花びらは……?」
お茶に浮かぶ花びらを見て、ジェレミーが驚いたような顔をする。
「さ、砂糖菓子ですの」
ポリーヌは笑顔を返したが、内心どきどきしていた。
この砂糖菓子を食べさせれば、ジェレミーは自分を好きになってくれるという。
「でも、本当にいいのかしら……」
ポリーヌの脳裏には、あの令嬢と親しげに話すジェレミーの姿が浮かんでいた。
惚れ薬でジェレミーの気持ちを変えることができたとしても、いつかは後悔しそうな気がする。
「やっぱり、やめておこうかしら」
妹の気遣いは嬉しかったが、ポリーヌは悩んだ。
すると、ジェレミーがポリーヌを訪ねてきたという知らせが入った。
「どうしよう……」
ポリーヌは迷ったが、ジェレミーを待たせるわけにもいかず、砂糖菓子の小箱を持って部屋を出る。
応接室に向かうと、ジェレミーはソファに座って待っていた。
「ポリーヌ嬢、急にすまない」
ジェレミーは立ち上がって、申し訳なさそうに言った。
ポリーヌは慌てて首を横に振る。
「い、いえ……少し驚きましたが、嬉しいですわ」
「……そうか」
ジェレミーはほっとしたように表情を緩めた。
ポリーヌはどきりとする。
こげ茶色の髪と青い瞳は、温和な印象を与える。だが、鍛えられた体つきに引き締まった口元、精悍さを感じさせる顔立ちが、彼本来の持つ魅力を引き立てていた。
婚約者なのに、ジェレミーの顔を正面からまじまじと見たのは久しぶりだ。ポリーヌは胸が高鳴るのを感じた。
「それで、今日はどうされたのですか?」
ポリーヌが尋ねると、ジェレミーは言いづらそうに口を開いた。
「実は……きみに話があって来たんだ」
「私に……?」
「ああ。その……」
ジェレミーは、そこで言葉を詰まらせる。
言い淀む姿を見て、ポリーヌは嫌な予感がした。まさか、婚約破棄を言い渡されるのではないだろうか。
「あ、あの! お茶を持ってきますわ」
ポリーヌは逃げるように、応接室を出た。
「あ、ああ……」
ジェレミーの戸惑ったような声が聞こえたが、構わずにキッチンへ向かう。
「まさか、本当に婚約破棄を言い渡されるのかしら……?」
不安な気持ちで、お茶の準備を始める。
手元には惚れ薬だという砂糖菓子があった。
「……これを、食べさせれば……」
ポリーヌは迷ったが、覚悟を決めて砂糖菓子をお茶に浮かべた。
すぐに砂糖は溶けて、花びらがお茶に浮く。甘い香りが湯気に漂う。
「これで、きっと……」
ポリーヌは、震える手でお茶を運んだ。
ジェレミーのいる応接室に戻ると、彼は窓の外を眺めていた。
「お待たせしました」
「ああ、ありがとう」
ジェレミーの前にお茶を出すと、彼は微笑んで礼を言った。
「おや、この花びらは……?」
お茶に浮かぶ花びらを見て、ジェレミーが驚いたような顔をする。
「さ、砂糖菓子ですの」
ポリーヌは笑顔を返したが、内心どきどきしていた。
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