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第3章 ハルシュタイン将軍とサリヴァンの娘
60 エルフの策略
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1年半近く空けていた実家に、アリシアは帰って来た。アリシアとユウヤを乗せた馬車は、王都に入ってからバティストの馬車と別れた後、無事にサリヴァン邸の前に着いた。
「あー疲れた。アリシアもお疲れ」
「ユウヤ様、お疲れさまでした」
一週間の馬車の移動はやはり疲れる。労うユウヤに、アリシアも微笑みを返した。
二人の荷物は護衛が運んでくれると言うので、まずは家のチャイムを鳴らす。今回はユウヤと神聖ルアンキリの護衛がいる。母達が驚かないようにチャイムを鳴らすことにした。
すぐに母カエデの声で「はーい」と聞こえた。大使として行く前に荷物を取りに来た時に少し話したが、ちゃんと会うのは本当に1年半ぶりだ。
ドアが開いてユウヤとアリシアに気付くと、カエデは満面の笑みを浮かべた。
「ユウヤ様、いらっしゃいませ。アリシア、おかえりなさい」
「おう。邪魔するぜ」
「母さん、ただいま」
カエデはアリシア達の後ろにいる護衛達にも笑みを向けた。
「皆様もお疲れさまでした。荷物ですね。とりあえず玄関内に置いてくだされば、あとはうちの息子達がやりますので」
そう言ってカエデは全員玄関に通す。過去のサリヴァン家当主の肖像画だったり、鎧だったりが飾ってある広い玄関で、カエデは「その辺に置いてください」と護衛達にお願いしていた。
「母さん、兄さんもいるの?」
「うん。すぐ来るわ」
護衛達は数人で荷物を運んでくれたので、すぐに終わった。丁寧にカエデと共に礼を伝えて見送ってから、応接室へと移動する。
ユウヤはよく来るので勝手知ったる、だ。先に応接室に行ってもらった。今晩はサリヴァン家に泊まる予定になっている。
応接室のソファに座ると、すぐにドアがノックされた。
「おう!アリシアおかえり!ユウヤ様、ご無沙汰しております」
「姉さん!無事でよかった!おかえり!ユウヤ様、いらっしゃいませ」
「よ。また邪魔するぜ」
「兄さん、ダーマット。ただいま」
赤髪の兄エンジュと金髪の弟ダーマットが顔を覗かせてそれぞれソファに座った。カエデは紅茶を用意している。アリシア達が到着する日時は知らせておいたので、テーブルの上には既に茶菓子が用意されていた。
「エンジュ、ちょうど良かった。お前にも聞いて欲しい。大事な話だ」
「俺にも?なんですか?」
ユウヤが紅茶を淹れているカエデに視線を向ける。気付いたカエデはすぐに笑みを浮かべた。
「あ、どうぞ。作業しながら聞いてますので」
カエデに頷くと、ユウヤは横に座ったアリシアへ顔を向けた。
「どっちが話す?」
「・・・・・・お願いしてもいいでしょうか。自分の事ですが、やっぱり恥ずかしいので」
問われてアリシアは少し考えたが、カエデとダーマットならまだしも、エンジュにも話すのは気恥ずかしい。
アリシアの言葉にフフッと笑ってからユウヤは「いいぜ」と言った。
「アリシアの結婚についてだ」
「はっ!?アリシアが、結婚!?」
「・・・兄さん、うるさい」
だから嫌だったのよ、と半目でエンジュを見る。カエデには1か月前に寄った際軽く話していたので、「あら」と期待した顔をしている。ダーマットは「ええ?」と声を上げたが、エンジュの声が大きくて搔き消されている。
「いやだって・・・。嘘だろー!!俺より先に結婚かよ!!まだ彼女すらいないのに!!」
「・・・相変わらずね」
アリシアは呆れ顔でエンジュを見やる。ユウヤはエンジュの反応にクククと笑っている。
「いい反応すんじゃねーか。見た目だけじゃなくて、その反応までオーウィンとソックリだな」
「・・・そうなんですか?」
「あいつも今のエンジュと同じ頃は、こんなんだったよ」
「そうねぇ。懐かしいわ」
カエデはフフッと笑いながら紅茶を置いていく。アリシアは嘆くエンジュを眺めて言った。
「早く父さんみたいに落ち着いて欲しいわ」
「彼女が出来たら落ち着くだろ」
ハハッと笑ってユウヤは紅茶を口に運んでいる。
「・・・で?どこの誰ですか。今その話をするって事は、まさか」
恨みがましい目でアリシアを見ながら、エンジュはユウヤに問う。ユウヤはニヤリとした。
「驚け。ハルシュタイン将軍だ」
「・・・・・・・・・・・・は!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ええ!?」
エンジュとダーマットはポカンとし、少し経ってから二人とも声を上げた。
「クラウス=ハルシュタインよ。第1軍将軍の」
「・・・・・・嘘だろ」
「え・・・・・・あの?」
アリシアがダメ押しでフルネームを言うと、信じられないと顔に書くエンジュと、口に手を当てるダーマットがそれぞれ言葉を漏らす。
「あらー。やっぱり上手く行ったのね。アリシアから聞いた時、そんな気がしてたのよー」
口元に指先を当ててフフフと楽しそうに笑いながら、カエデもソファに座る。
「でもお前・・・あれだぞ・・・。あの、あー・・・うん」
「バティスト王子との縁談が来てんだろ?アリシアには話した」
エンジュはバッと音を立ててユウヤを見た後、再びバッと音を立ててアリシアへ顔を向ける。しばしアリシアを見つめた後、はー、と大きくため息をついてソファに寄り掛かった。
「精霊神様が保留にしておきなさいって言うから、ずっと引き延ばしてたんだ。アリシア本人の意思を確認してからってな」
「他にも、姉さん宛ての縁談話が凄くってさ。姉さんの意志を尊重しますのでって、お断りの手紙書くの、大変なんだ」
「そうだろうな」
「・・・・・・それは、ごめんなさい」
まさか既に縁談が来ていたとは、とアリシアは申し訳ない気持ちになった。ダーマットの言葉通り、凄い量が来ているのだろう。
「これからは全部断れ。バティスト王子のもだ」
「・・・いいんですか」
「ああ。一カ月後、和平協議でハルシュタイン将軍が魔国ティナドランの文官の護衛として来る。彼が帰った後にアリシアとハルシュタイン将軍の婚約を発表する」
「え・・・でも反発が凄いんじゃないですか?」
エンジュの言葉に、ユウヤは再びニヤリとした。
「敢えて反発を出すんだよ」
「・・・ああ、アレを使うのですね」
カエデは気付いたようだ。一人頷いている。
「え?アレって何?母さん」
ダーマットがカエデへと問う。しかしカエデはニコニコしながらユウヤを見ている。
「エルフが人類と結婚する時、ハヤトが毎回相手の国に契約書を書かせてたんだ。こういう時の為にな」
「あ、アレか」
ハッとしてエンジュは顔を上げた。ダーマットは知らないようで、ユウヤの言葉を待っている。
「そう、アレだ。どの国もエルフの血が欲しい。だから必ずその条件を飲むんだ。アリシアに至ってはいつでも可能なように、ハヤトが全て用意してる」
そう言ってユウヤはダーマットにも詳細を伝える。
「・・・そんな契約してたんですね」
ダーマットは驚いた顔をしている。アリシアも知らなかったので、聞いた時は精霊神の用意周到さに感服したものだ。
ユウヤは人差し指を上下させながら、順番を説明する。
「ハルシュタイン将軍が来て、帰国後に婚約を発表する。反発が出る。すぐにその契約を持ち出して、親父が声明を出す。アリシア=クロス=サリヴァンは、魔国との友好も兼ねてクラウス=ハルシュタインと結婚をする、ってな。誰も公に文句は言えなくなる」
最後にユウヤは『これで終わり』と言いたげに、手を広げて見せた。
「・・・なるほど」
エンジュはそう呟くと、腕を組んで考え込んだ。ダーマットも口元に手を当て、下を向いて考えている。
「・・・うん。表面的にはそれで抑えられそう。終戦後の各地の策略を潰しまくった長にはその実績がある。今は長を軽く見る奴はいない」
ダーマットがそう言うのであれば、本当に大丈夫なのだろう。アリシアはホッとする。しかしダーマットの隣からエンジュが異を唱えた。
「表向きはな。裏で動く奴も出てくる」
「そうだね。でもそこはどうとでもなるでしょ。家には母さんがガッチガチに結界張ればいいし、何かあればエルフの里が動くわけだから」
「世の中、頭のオカシイ奴が多いんだ。軍にもな」
「ああ・・・・・・まあ、そこは否定しないけど」
「エルフの里は何か起こってからじゃないと行動できない。アリシア、お前護身術の稽古は続けてたか」
「ううん。魔国に潜入してる間は出来なかったから、エルフの里に戻ってからなら」
「だよな。お前、明日からでいいから鍛え直せ。俺も付き合う。軍からも馬鹿が出てくる可能性あるから。今回は俺が脅しても抑えきれないかもしれない。なんせ結婚だからな」
「・・・・・・」
アリシアの頭に、クラウスから言われた言葉が浮かんだ。『サリヴァン大隊長がどうしてアリシアをそんなに訓練したのか、次に会ったら聞いてみると良い』と。
「もしかして兄さん、それが理由で私を鍛えてたの?」
「当たり前だろ。俺より下の奴なら俺が抑えるけど、上官には逆らえない。父さんの目を掻い潜って行く可能性もあったから、お前自身で防ぐ必要があったんだよ」
「・・・・・・ごめん、兄さん。てっきり単なる筋肉馬鹿だと思ってたわ」
「俺も・・・」
「おい!お前ら!ダーマットまで!ひどく無いか!?」
「あっはっはっは!」
兄妹の会話にユウヤが大笑いを始めた。
「あー疲れた。アリシアもお疲れ」
「ユウヤ様、お疲れさまでした」
一週間の馬車の移動はやはり疲れる。労うユウヤに、アリシアも微笑みを返した。
二人の荷物は護衛が運んでくれると言うので、まずは家のチャイムを鳴らす。今回はユウヤと神聖ルアンキリの護衛がいる。母達が驚かないようにチャイムを鳴らすことにした。
すぐに母カエデの声で「はーい」と聞こえた。大使として行く前に荷物を取りに来た時に少し話したが、ちゃんと会うのは本当に1年半ぶりだ。
ドアが開いてユウヤとアリシアに気付くと、カエデは満面の笑みを浮かべた。
「ユウヤ様、いらっしゃいませ。アリシア、おかえりなさい」
「おう。邪魔するぜ」
「母さん、ただいま」
カエデはアリシア達の後ろにいる護衛達にも笑みを向けた。
「皆様もお疲れさまでした。荷物ですね。とりあえず玄関内に置いてくだされば、あとはうちの息子達がやりますので」
そう言ってカエデは全員玄関に通す。過去のサリヴァン家当主の肖像画だったり、鎧だったりが飾ってある広い玄関で、カエデは「その辺に置いてください」と護衛達にお願いしていた。
「母さん、兄さんもいるの?」
「うん。すぐ来るわ」
護衛達は数人で荷物を運んでくれたので、すぐに終わった。丁寧にカエデと共に礼を伝えて見送ってから、応接室へと移動する。
ユウヤはよく来るので勝手知ったる、だ。先に応接室に行ってもらった。今晩はサリヴァン家に泊まる予定になっている。
応接室のソファに座ると、すぐにドアがノックされた。
「おう!アリシアおかえり!ユウヤ様、ご無沙汰しております」
「姉さん!無事でよかった!おかえり!ユウヤ様、いらっしゃいませ」
「よ。また邪魔するぜ」
「兄さん、ダーマット。ただいま」
赤髪の兄エンジュと金髪の弟ダーマットが顔を覗かせてそれぞれソファに座った。カエデは紅茶を用意している。アリシア達が到着する日時は知らせておいたので、テーブルの上には既に茶菓子が用意されていた。
「エンジュ、ちょうど良かった。お前にも聞いて欲しい。大事な話だ」
「俺にも?なんですか?」
ユウヤが紅茶を淹れているカエデに視線を向ける。気付いたカエデはすぐに笑みを浮かべた。
「あ、どうぞ。作業しながら聞いてますので」
カエデに頷くと、ユウヤは横に座ったアリシアへ顔を向けた。
「どっちが話す?」
「・・・・・・お願いしてもいいでしょうか。自分の事ですが、やっぱり恥ずかしいので」
問われてアリシアは少し考えたが、カエデとダーマットならまだしも、エンジュにも話すのは気恥ずかしい。
アリシアの言葉にフフッと笑ってからユウヤは「いいぜ」と言った。
「アリシアの結婚についてだ」
「はっ!?アリシアが、結婚!?」
「・・・兄さん、うるさい」
だから嫌だったのよ、と半目でエンジュを見る。カエデには1か月前に寄った際軽く話していたので、「あら」と期待した顔をしている。ダーマットは「ええ?」と声を上げたが、エンジュの声が大きくて搔き消されている。
「いやだって・・・。嘘だろー!!俺より先に結婚かよ!!まだ彼女すらいないのに!!」
「・・・相変わらずね」
アリシアは呆れ顔でエンジュを見やる。ユウヤはエンジュの反応にクククと笑っている。
「いい反応すんじゃねーか。見た目だけじゃなくて、その反応までオーウィンとソックリだな」
「・・・そうなんですか?」
「あいつも今のエンジュと同じ頃は、こんなんだったよ」
「そうねぇ。懐かしいわ」
カエデはフフッと笑いながら紅茶を置いていく。アリシアは嘆くエンジュを眺めて言った。
「早く父さんみたいに落ち着いて欲しいわ」
「彼女が出来たら落ち着くだろ」
ハハッと笑ってユウヤは紅茶を口に運んでいる。
「・・・で?どこの誰ですか。今その話をするって事は、まさか」
恨みがましい目でアリシアを見ながら、エンジュはユウヤに問う。ユウヤはニヤリとした。
「驚け。ハルシュタイン将軍だ」
「・・・・・・・・・・・・は!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ええ!?」
エンジュとダーマットはポカンとし、少し経ってから二人とも声を上げた。
「クラウス=ハルシュタインよ。第1軍将軍の」
「・・・・・・嘘だろ」
「え・・・・・・あの?」
アリシアがダメ押しでフルネームを言うと、信じられないと顔に書くエンジュと、口に手を当てるダーマットがそれぞれ言葉を漏らす。
「あらー。やっぱり上手く行ったのね。アリシアから聞いた時、そんな気がしてたのよー」
口元に指先を当ててフフフと楽しそうに笑いながら、カエデもソファに座る。
「でもお前・・・あれだぞ・・・。あの、あー・・・うん」
「バティスト王子との縁談が来てんだろ?アリシアには話した」
エンジュはバッと音を立ててユウヤを見た後、再びバッと音を立ててアリシアへ顔を向ける。しばしアリシアを見つめた後、はー、と大きくため息をついてソファに寄り掛かった。
「精霊神様が保留にしておきなさいって言うから、ずっと引き延ばしてたんだ。アリシア本人の意思を確認してからってな」
「他にも、姉さん宛ての縁談話が凄くってさ。姉さんの意志を尊重しますのでって、お断りの手紙書くの、大変なんだ」
「そうだろうな」
「・・・・・・それは、ごめんなさい」
まさか既に縁談が来ていたとは、とアリシアは申し訳ない気持ちになった。ダーマットの言葉通り、凄い量が来ているのだろう。
「これからは全部断れ。バティスト王子のもだ」
「・・・いいんですか」
「ああ。一カ月後、和平協議でハルシュタイン将軍が魔国ティナドランの文官の護衛として来る。彼が帰った後にアリシアとハルシュタイン将軍の婚約を発表する」
「え・・・でも反発が凄いんじゃないですか?」
エンジュの言葉に、ユウヤは再びニヤリとした。
「敢えて反発を出すんだよ」
「・・・ああ、アレを使うのですね」
カエデは気付いたようだ。一人頷いている。
「え?アレって何?母さん」
ダーマットがカエデへと問う。しかしカエデはニコニコしながらユウヤを見ている。
「エルフが人類と結婚する時、ハヤトが毎回相手の国に契約書を書かせてたんだ。こういう時の為にな」
「あ、アレか」
ハッとしてエンジュは顔を上げた。ダーマットは知らないようで、ユウヤの言葉を待っている。
「そう、アレだ。どの国もエルフの血が欲しい。だから必ずその条件を飲むんだ。アリシアに至ってはいつでも可能なように、ハヤトが全て用意してる」
そう言ってユウヤはダーマットにも詳細を伝える。
「・・・そんな契約してたんですね」
ダーマットは驚いた顔をしている。アリシアも知らなかったので、聞いた時は精霊神の用意周到さに感服したものだ。
ユウヤは人差し指を上下させながら、順番を説明する。
「ハルシュタイン将軍が来て、帰国後に婚約を発表する。反発が出る。すぐにその契約を持ち出して、親父が声明を出す。アリシア=クロス=サリヴァンは、魔国との友好も兼ねてクラウス=ハルシュタインと結婚をする、ってな。誰も公に文句は言えなくなる」
最後にユウヤは『これで終わり』と言いたげに、手を広げて見せた。
「・・・なるほど」
エンジュはそう呟くと、腕を組んで考え込んだ。ダーマットも口元に手を当て、下を向いて考えている。
「・・・うん。表面的にはそれで抑えられそう。終戦後の各地の策略を潰しまくった長にはその実績がある。今は長を軽く見る奴はいない」
ダーマットがそう言うのであれば、本当に大丈夫なのだろう。アリシアはホッとする。しかしダーマットの隣からエンジュが異を唱えた。
「表向きはな。裏で動く奴も出てくる」
「そうだね。でもそこはどうとでもなるでしょ。家には母さんがガッチガチに結界張ればいいし、何かあればエルフの里が動くわけだから」
「世の中、頭のオカシイ奴が多いんだ。軍にもな」
「ああ・・・・・・まあ、そこは否定しないけど」
「エルフの里は何か起こってからじゃないと行動できない。アリシア、お前護身術の稽古は続けてたか」
「ううん。魔国に潜入してる間は出来なかったから、エルフの里に戻ってからなら」
「だよな。お前、明日からでいいから鍛え直せ。俺も付き合う。軍からも馬鹿が出てくる可能性あるから。今回は俺が脅しても抑えきれないかもしれない。なんせ結婚だからな」
「・・・・・・」
アリシアの頭に、クラウスから言われた言葉が浮かんだ。『サリヴァン大隊長がどうしてアリシアをそんなに訓練したのか、次に会ったら聞いてみると良い』と。
「もしかして兄さん、それが理由で私を鍛えてたの?」
「当たり前だろ。俺より下の奴なら俺が抑えるけど、上官には逆らえない。父さんの目を掻い潜って行く可能性もあったから、お前自身で防ぐ必要があったんだよ」
「・・・・・・ごめん、兄さん。てっきり単なる筋肉馬鹿だと思ってたわ」
「俺も・・・」
「おい!お前ら!ダーマットまで!ひどく無いか!?」
「あっはっはっは!」
兄妹の会話にユウヤが大笑いを始めた。
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