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第1章 アリシアの諜報活動
28 2度目の登城
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ヴュンシュマン将軍が登城して2日後。
「あ!?ちょっと待って!あれヴュンシュマン将軍じゃない!?」
「え?・・・あ!本当だ!やだー!エルゼさーん!」
1階の給仕準備室で待機していたパーラーが、たまたま窓の外を見て遠くにいるヴュンシュマン将軍に気付いた。急いで少し離れた場所にいたエルゼに報告をした。
「・・・本当ね。入り口の近衛兵が応接室まで案内するから、そしたら誰か2階と3階にも行って、全員連れて帰ってきてちょうだい。私は今すぐロットナーさんに報告してくるわ」
エルゼは急いで窓際に立ち、カーテンに隠れながら外を確認すると、振り向いて指示を飛ばす。1階にいるパーラー全員が作業を止めて頷いた。
「わかりました!」
「まだ距離があるから間に合うと思います。2階と3階は私が!」
「ありがとう。気を付けて行くのよ」
エルゼと先輩パーラーの一人が慌てて部屋を出ていく。もう一人のパーラーは室内を区切るカーテンを引いて、隠れ場所の確認を始めた。アリシアはカーテンに隠れてそっと外を窺う。
(・・・あれがヴュンシュマン将軍か。やっと正面から見れたわ)
前回の登城時は一人だったが、今日は護衛を二人連れてきている。
(まだ遠くて顔がハッキリとは分からないけど、本当、猫背ね・・・)
姿勢が悪いせいか、全体的にどことなく柄の悪さを感じてしまう。もしかすると猫背は関係なく、彼の内面から溢れている雰囲気なのかもしれないが。
ヴュンシュマン将軍の後ろを歩く護衛二人は、軍人らしく姿勢が良い。それが余計にヴュンシュマン将軍の姿勢の悪さを目立たせている。
「ミリィ、今回も絶対にヴュンシュマン将軍の目に触れちゃ駄目よ」
リーゼも同じくカーテンの影から外を確認すると、ヴュンシュマン将軍を観察しているアリシアに声をかけた。
「うん。分かってる。リズ、ありがとう」
リーゼに視線を向けて、アリシアは笑みを浮かべた。そして言おうか言うまいか悩んだ末に、リーゼに声をかけた。
「・・・・・・・・・・・・ねぇ」
「何?」
きょとんとしているリーゼに、アリシアは内緒話をするように口元に手を当て、小声で続ける。
「今日は護衛を二人連れてるでしょ。姿勢悪いせいで、軍人二人に連行されてるゴロツキに見えるんだけど」
「ちょっ!・・・・・・本当」
リーゼは口を押えて吹き出しそうになるのを堪えてから、再度窓の外を見る。そして体を震わせて小さく笑い出した。
「ミリィ・・・やめてよ。そうとしか見えなくなったじゃない」
「何?どうかした?」
隠れ場所を確認していたもう一人の先輩パーラーが、震えるリーゼを不思議そうに見ながら近寄ってきた。リーゼが笑いを抑えながら伝えると、先輩パーラーも外を見て笑い出した。
「例えが的確過ぎる!まさにその通りね!」
「しー!声が大きい!聞こえちゃうわ!」
大笑いし始めた先輩パーラーを、アリシアは慌てて諫める。
「ごめんごめん。でもレッツェルが悪いわよ」
「そこは私も同感」
抑え気味に笑い続ける先輩パーラーに、リーゼも笑いながら同意する。アリシアはそんなに笑うとは思っていなかったので、戸惑いながら「えー」と不満の声を上げた。
「取り合えず隠れ場所はOKよ。今のうちに給仕の準備、しておきましょ」
「あ、そうね」
「確かに。気付かなくてごめんなさい。手伝うわ」
「謝らなくていいの。レッツェルはヴュンシュマン将軍の顔覚えておいた方がいいからね」
先輩パーラーが笑いをおさめると、アリシアとリーゼに準備を促す。リーゼとアリシアも同意し、3人とも窓際を離れて準備を始めた。
* * *
「失礼します。ヴュンシュマン将軍がお帰りになったので、厳戒態勢は解除です。お疲れ様でした」
「では私もこれで引き揚げます。お疲れ様でした」
前回同様、近衛兵が給仕準備室に訪れて解除を伝えてくれる。するともう一人近衛兵が顔を出して声をかけてきた。
今回は魔王ギルベルトが給仕準備室の前にも近衛兵を置いてくれたのだ。恐らく前回、3階給仕準備室をヴュンシュマン将軍が覗いていた件について、警戒してくれたのだろう。
「あなた方もお疲れさまでした。ここに居てくださって、パーラー一同安心感が段違いでした。ありがとうございます」
エルゼが代表して礼を言うと、二人の近衛兵は笑みを浮かべて去って行った。
「じゃあ通常体制に戻るわよ。2階と3階担当は戻って、何かイタズラされていないか、念の為確認しておいてね」
「はい」
「分かりましたー」
「お疲れさまでした」
エルゼの指示の元、部屋を出ていくパーラー達を見送る。リーゼも「私は念のため今日も聞き込みしてきます!」と意気込んで出て行った。前回2階給仕準備室にヴュンシュマン将軍が立ち寄ったのを知れたのは、リーゼの聞き込みの結果だ。近衛兵はもちろん魔王ギルベルトに報告するだろうが、パーラーにまでその情報が来ていたかは分からない。なのでエルゼは快く了承して送り出したのだった。
アリシアは窓に寄り、ヴュンシュマン将軍が王宮に戻らずちゃんと馬車待機所まで行くのか、念の為に確認しておこうと外を見た。
「・・・あれ?」
「ん?どうかした?」
声を上げたアリシアに、近くにいた先輩パーラーが声をかけた。
「来る時は護衛が2人いたのに、今は一人しかいないなって」
「・・・本当ね。何か用事でお使いに出したんじゃない?」
「・・・・・・」
本当にそうだろうか。アリシアは帰っていくヴュンシュマン将軍の後ろ姿をもう一度見た後、窓から見える範囲に人影がないか探りながら考える。
(魔王暗殺を企ててる人の護衛が王宮で一人消えた・・・って結構危険な状況なんじゃないの?)
本当にお使いで離れた可能性はあるだろう。しかしその現場をアリシアは見ていない。
王宮の建物の入り口で近衛兵にチェックされるので、そこまで護衛は二人いたはずだ。最大級の警戒対象なのだ。見落とすはずがない。であれば、居なくなったのはその後。王宮の建物を出て、アリシアが気付くまでの間に、護衛の一人がどこかへ向かった。
行政館のアードラー文官長に連絡しに行っただけかもしれない。トラウトナー文官長も交えてグルオル地方の打ち合わせをする予定かもしれない。ヴュンシュマン将軍はそもそもグルオル地方の対応で登城しているのだ。何らおかしくはない。
(でももし王宮のどこかに潜んでいて、夜になって魔王様を暗殺・・・なんて事になったら・・・)
万が一を考えたら、やはり見過ごすわけにはいかない。グルオル地方の洪水も、もしかしたら魔王暗殺計画の一旦かもしれないのだ。警戒されないように魔王ギルベルトに近づくための計画だとしたら、彼らがこの機会を逃すわけがない。
アリシアは窓から離れると、室内に残ったパーラーたちに声を掛ける。
「緊張したらお手洗いに行きたくなっちゃった。ちょっと行ってくるね」
「うん。いってらっしゃーい」
1階の給仕準備室を出ると、アリシアはお手洗い方向に歩きながら、辺りを見渡す。
(丁度いい場所なかったっけ)
思い出しながら考えを巡らす。ふと、進む先に小さい談話室があるのを思い出した。使用人が小休憩や上司と相談する時の為の場所だ。
アリシアは小走りで近寄ると、空室であることを確認し、すぐに『使用中』に変えて中に入る。
「えーと、手紙手紙・・・」
パーラーの制服のポケットを探ると、二つの封筒を取り出した。ペンとインクは談話室に備え付けがあるので、それを借りる。一つの封筒から何も書かれていない便箋を取り出すと、すぐにアリシアは書き出した。
『ヴュンシュマン将軍の護衛が登城時は2名いましたが、帰り際を窓から確認したところ、1名になっていました。お使いで離れた可能性もありますが、念の為ご報告致します。アメリア=レッツェル』
もう一つの封筒からも同じく便箋を取り出すと、同じ内容を書き留めた。インクが乾いたのを確認し、封筒に戻し入れる。別のポケットから赤い封蝋シールを取り出して、二つの封筒にそれぞれ貼り付けた。
ハルシュタイン将軍との取り決めで、赤い封蝋は緊急の意味がある。アリシアは何かあった場合に備えて、普段から封筒セットを持ち歩いていたのだ。
「ハンナ、カミル」
窓を開けて、魔力を乗せて名前を呼ぶ。すぐに見慣れた灰色のハンナと、今回初めて呼び出した真っ白なブリフィタ、カミルが現れた。
「まずはカミル。ギルベルト様へ。緊急よ」
宛先も差出人も書いてない封筒を差し出し、言葉に魔力を乗せて伝える。カミルは「クー!」と鳴いて胸元に封筒を吸い込ませると、すぐに飛び去った。
「ハンナ、ハルシュタイン将軍へ。緊急よ」
ハンナも「クゥ」と鳴いて封筒を受け取ると、あっという間に飛び立っていった。
(後は魔王様とハルシュタイン将軍、リーネルト将軍が対応してくださるわ)
単なる杞憂でありますように、と願いながらアリシアは窓を閉めた。
「あ!?ちょっと待って!あれヴュンシュマン将軍じゃない!?」
「え?・・・あ!本当だ!やだー!エルゼさーん!」
1階の給仕準備室で待機していたパーラーが、たまたま窓の外を見て遠くにいるヴュンシュマン将軍に気付いた。急いで少し離れた場所にいたエルゼに報告をした。
「・・・本当ね。入り口の近衛兵が応接室まで案内するから、そしたら誰か2階と3階にも行って、全員連れて帰ってきてちょうだい。私は今すぐロットナーさんに報告してくるわ」
エルゼは急いで窓際に立ち、カーテンに隠れながら外を確認すると、振り向いて指示を飛ばす。1階にいるパーラー全員が作業を止めて頷いた。
「わかりました!」
「まだ距離があるから間に合うと思います。2階と3階は私が!」
「ありがとう。気を付けて行くのよ」
エルゼと先輩パーラーの一人が慌てて部屋を出ていく。もう一人のパーラーは室内を区切るカーテンを引いて、隠れ場所の確認を始めた。アリシアはカーテンに隠れてそっと外を窺う。
(・・・あれがヴュンシュマン将軍か。やっと正面から見れたわ)
前回の登城時は一人だったが、今日は護衛を二人連れてきている。
(まだ遠くて顔がハッキリとは分からないけど、本当、猫背ね・・・)
姿勢が悪いせいか、全体的にどことなく柄の悪さを感じてしまう。もしかすると猫背は関係なく、彼の内面から溢れている雰囲気なのかもしれないが。
ヴュンシュマン将軍の後ろを歩く護衛二人は、軍人らしく姿勢が良い。それが余計にヴュンシュマン将軍の姿勢の悪さを目立たせている。
「ミリィ、今回も絶対にヴュンシュマン将軍の目に触れちゃ駄目よ」
リーゼも同じくカーテンの影から外を確認すると、ヴュンシュマン将軍を観察しているアリシアに声をかけた。
「うん。分かってる。リズ、ありがとう」
リーゼに視線を向けて、アリシアは笑みを浮かべた。そして言おうか言うまいか悩んだ末に、リーゼに声をかけた。
「・・・・・・・・・・・・ねぇ」
「何?」
きょとんとしているリーゼに、アリシアは内緒話をするように口元に手を当て、小声で続ける。
「今日は護衛を二人連れてるでしょ。姿勢悪いせいで、軍人二人に連行されてるゴロツキに見えるんだけど」
「ちょっ!・・・・・・本当」
リーゼは口を押えて吹き出しそうになるのを堪えてから、再度窓の外を見る。そして体を震わせて小さく笑い出した。
「ミリィ・・・やめてよ。そうとしか見えなくなったじゃない」
「何?どうかした?」
隠れ場所を確認していたもう一人の先輩パーラーが、震えるリーゼを不思議そうに見ながら近寄ってきた。リーゼが笑いを抑えながら伝えると、先輩パーラーも外を見て笑い出した。
「例えが的確過ぎる!まさにその通りね!」
「しー!声が大きい!聞こえちゃうわ!」
大笑いし始めた先輩パーラーを、アリシアは慌てて諫める。
「ごめんごめん。でもレッツェルが悪いわよ」
「そこは私も同感」
抑え気味に笑い続ける先輩パーラーに、リーゼも笑いながら同意する。アリシアはそんなに笑うとは思っていなかったので、戸惑いながら「えー」と不満の声を上げた。
「取り合えず隠れ場所はOKよ。今のうちに給仕の準備、しておきましょ」
「あ、そうね」
「確かに。気付かなくてごめんなさい。手伝うわ」
「謝らなくていいの。レッツェルはヴュンシュマン将軍の顔覚えておいた方がいいからね」
先輩パーラーが笑いをおさめると、アリシアとリーゼに準備を促す。リーゼとアリシアも同意し、3人とも窓際を離れて準備を始めた。
* * *
「失礼します。ヴュンシュマン将軍がお帰りになったので、厳戒態勢は解除です。お疲れ様でした」
「では私もこれで引き揚げます。お疲れ様でした」
前回同様、近衛兵が給仕準備室に訪れて解除を伝えてくれる。するともう一人近衛兵が顔を出して声をかけてきた。
今回は魔王ギルベルトが給仕準備室の前にも近衛兵を置いてくれたのだ。恐らく前回、3階給仕準備室をヴュンシュマン将軍が覗いていた件について、警戒してくれたのだろう。
「あなた方もお疲れさまでした。ここに居てくださって、パーラー一同安心感が段違いでした。ありがとうございます」
エルゼが代表して礼を言うと、二人の近衛兵は笑みを浮かべて去って行った。
「じゃあ通常体制に戻るわよ。2階と3階担当は戻って、何かイタズラされていないか、念の為確認しておいてね」
「はい」
「分かりましたー」
「お疲れさまでした」
エルゼの指示の元、部屋を出ていくパーラー達を見送る。リーゼも「私は念のため今日も聞き込みしてきます!」と意気込んで出て行った。前回2階給仕準備室にヴュンシュマン将軍が立ち寄ったのを知れたのは、リーゼの聞き込みの結果だ。近衛兵はもちろん魔王ギルベルトに報告するだろうが、パーラーにまでその情報が来ていたかは分からない。なのでエルゼは快く了承して送り出したのだった。
アリシアは窓に寄り、ヴュンシュマン将軍が王宮に戻らずちゃんと馬車待機所まで行くのか、念の為に確認しておこうと外を見た。
「・・・あれ?」
「ん?どうかした?」
声を上げたアリシアに、近くにいた先輩パーラーが声をかけた。
「来る時は護衛が2人いたのに、今は一人しかいないなって」
「・・・本当ね。何か用事でお使いに出したんじゃない?」
「・・・・・・」
本当にそうだろうか。アリシアは帰っていくヴュンシュマン将軍の後ろ姿をもう一度見た後、窓から見える範囲に人影がないか探りながら考える。
(魔王暗殺を企ててる人の護衛が王宮で一人消えた・・・って結構危険な状況なんじゃないの?)
本当にお使いで離れた可能性はあるだろう。しかしその現場をアリシアは見ていない。
王宮の建物の入り口で近衛兵にチェックされるので、そこまで護衛は二人いたはずだ。最大級の警戒対象なのだ。見落とすはずがない。であれば、居なくなったのはその後。王宮の建物を出て、アリシアが気付くまでの間に、護衛の一人がどこかへ向かった。
行政館のアードラー文官長に連絡しに行っただけかもしれない。トラウトナー文官長も交えてグルオル地方の打ち合わせをする予定かもしれない。ヴュンシュマン将軍はそもそもグルオル地方の対応で登城しているのだ。何らおかしくはない。
(でももし王宮のどこかに潜んでいて、夜になって魔王様を暗殺・・・なんて事になったら・・・)
万が一を考えたら、やはり見過ごすわけにはいかない。グルオル地方の洪水も、もしかしたら魔王暗殺計画の一旦かもしれないのだ。警戒されないように魔王ギルベルトに近づくための計画だとしたら、彼らがこの機会を逃すわけがない。
アリシアは窓から離れると、室内に残ったパーラーたちに声を掛ける。
「緊張したらお手洗いに行きたくなっちゃった。ちょっと行ってくるね」
「うん。いってらっしゃーい」
1階の給仕準備室を出ると、アリシアはお手洗い方向に歩きながら、辺りを見渡す。
(丁度いい場所なかったっけ)
思い出しながら考えを巡らす。ふと、進む先に小さい談話室があるのを思い出した。使用人が小休憩や上司と相談する時の為の場所だ。
アリシアは小走りで近寄ると、空室であることを確認し、すぐに『使用中』に変えて中に入る。
「えーと、手紙手紙・・・」
パーラーの制服のポケットを探ると、二つの封筒を取り出した。ペンとインクは談話室に備え付けがあるので、それを借りる。一つの封筒から何も書かれていない便箋を取り出すと、すぐにアリシアは書き出した。
『ヴュンシュマン将軍の護衛が登城時は2名いましたが、帰り際を窓から確認したところ、1名になっていました。お使いで離れた可能性もありますが、念の為ご報告致します。アメリア=レッツェル』
もう一つの封筒からも同じく便箋を取り出すと、同じ内容を書き留めた。インクが乾いたのを確認し、封筒に戻し入れる。別のポケットから赤い封蝋シールを取り出して、二つの封筒にそれぞれ貼り付けた。
ハルシュタイン将軍との取り決めで、赤い封蝋は緊急の意味がある。アリシアは何かあった場合に備えて、普段から封筒セットを持ち歩いていたのだ。
「ハンナ、カミル」
窓を開けて、魔力を乗せて名前を呼ぶ。すぐに見慣れた灰色のハンナと、今回初めて呼び出した真っ白なブリフィタ、カミルが現れた。
「まずはカミル。ギルベルト様へ。緊急よ」
宛先も差出人も書いてない封筒を差し出し、言葉に魔力を乗せて伝える。カミルは「クー!」と鳴いて胸元に封筒を吸い込ませると、すぐに飛び去った。
「ハンナ、ハルシュタイン将軍へ。緊急よ」
ハンナも「クゥ」と鳴いて封筒を受け取ると、あっという間に飛び立っていった。
(後は魔王様とハルシュタイン将軍、リーネルト将軍が対応してくださるわ)
単なる杞憂でありますように、と願いながらアリシアは窓を閉めた。
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