ハーフエルフと魔国動乱~敵国で諜報活動してたら、敵国将軍に気に入られてしまいました~

木々野コトネ

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第1章 アリシアの諜報活動

12 類似事件と将軍

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 アリシアが悲鳴を上げた瞬間、ハルシュタイン将軍はビクリと体を震わせ、伸ばしていた手を引っ込めた。音もなく2メートル程後ろへ下がると、しまったと言いたげな顔をして辺りへ・・・壁や扉の向こう側へと視線を向ける。

(あ・・・あれ?)

 生き霊が悲鳴に驚いて後退した。しかも周囲を警戒しているようだ。生き霊がそんなことをするだろうか。

 アリシアは今になって冷静さを欠いていたことに気が付く。しかしそれと同時に隣の部屋からドタバタと大きな足音がした。
 音が気になり耳を澄ましていると、やや遠くからガチャリと扉を開ける音がし、今度はアリシアの部屋の扉からガチャリと音がした瞬間。

「ミリィ!!!どうしたの!!?」

 突然勢い良くアリシアの部屋の扉が開き、その勢いのままバン!と大きな音を立てて壁に当たった。

(あ・・・ドア、壊れなかったかな)

 音の大きさに驚いて、今気にすべきではない事だと分かっていても、ついつい気になり視線を扉へと向ける。そこには隣室のリーゼが驚愕した顔でこちらを見ていた。
 寝る準備を既に終えていたのだろうリーゼは、少し癖のある肩下の長さの黒髪を下ろし、ダークブルーの瞳を見開いている。服も部屋着なのだろう。楽そうなシャツにロングスカートを身に着けている。

「なんで・・・ハルシュタイン将軍!!?」

 アリシアの悲鳴と同じくらい大きな声で、リーゼが叫んだ。

(あれ?リズにも見えてるって事は・・・)

「え!?本物!?」

 驚いてアリシアがハルシュタイン将軍の顔を見ると、彼は片手で顔を覆い、俯いていた。

(ええ!?嘘でしょ!?なんで!?)

 リーゼの声に、他の女性使用人達も何事かと廊下に出てきた。皆ラフな部屋着だ。アリシアの部屋を覗き込んでは「本当にハルシュタイン将軍がいらっしゃる!」と驚いて固まっている。

「参った・・・」

 廊下のざわめきでほとんどかき消されていたが、近くにいるアリシアにはハルシュタイン将軍の呟きが聞こえた。

 はあ、と大きなため息を付いてからハルシュタイン将軍が顔から手を離すと、廊下へと向き直った。

「驚かせてすまない。個人的にレッツェルに話があって来たんだが、驚かせてしまった。まだここには来たばかりで、皆が心配するようなことは何もない」

 言いながら両手を小さく上げて降参のようなポーズをして、アリシアへ視線を向けた。
 呆然としていたアリシアは、そこでハッとする。何をしに来たのかは分からないが、何もされていないのは確かだ。いくら部屋に忍び込まれたと言っても、何かあったと思われるのはアリシアもごめん被りたい。

「ハルシュタイン将軍の仰る通りです。何もされていません。突然の訪問だったので、使用人宿舎にハルシュタイン将軍が本当に居るとは思わず・・・その・・・てっきり幽霊かと」

 最後の言葉は、急に恥ずかしくなって小さくなってしまった。しかし廊下で様子を伺っている女性使用人にも聞こえたようだ。「なんで幽霊?」という呟きや小さく笑う声が聞こえる。ますます恥ずかしい思いに駆られ、アリシアは俯いた。

「なるほど」

 近くから小さい声と息を吐くような僅かな笑い声が聞こえた。顔を上げると、少し離れた位置でハルシュタイン将軍が微笑を浮かべてアリシアを眺めていた。

(ハルシュタイン将軍も、こんな顔するんだ・・・)

 いつもの何かを企んでいそうな笑みでもなく、挑発的な笑みでもない。リーネルト将軍との会話中にする少年のような笑みとも違う。
 ただただ余計な力が抜けた、フワリとした微笑だった。

 その笑みは部屋の奥にいるアリシアに向けているので、正反対にいる廊下の女性使用人達には見えていない。もし見えてたら後できゃあきゃあ言うんだろうなぁと、その珍しい表情を眺めたままボンヤリ考えていた。

「これは一体何事ですか」

 凛とした声にアリシアの意識は現実に戻る。声がした方向を見ると、廊下にロットナーが立っていた。
 群がっていた女性使用人達はロットナーに場所を譲って後ろに引いている。ロットナーに遅れて、再びリーゼが顔を出した。息を切らしている。

(リズがロットナーさんを呼んできたのね)

 ロットナーの部屋は別棟の家族用使用人宿舎にある。文官である旦那様とお子さん2人の4人家族だと聞いている。
 ここと隣接している棟だが、階段を降りて外に出て、別棟の入り口からまた階段を登らなければならない。リーゼは他の女性使用人達が出てきてすぐに、走って呼びに行ったのだろう。

「ハルシュタイン将軍。もう夜も遅い時間です。女性の部屋に来る時間ではないはずですよ」

 ストレートに嗜めるロットナーに、ハルシュタイン将軍は苦笑を浮かべた。

「その通りだ。つい気が急いてしまって、部下の部屋に行くのと同じ感覚で来てしまった。すまない、レッツェル。驚かせたな」

 苦笑を残しつつも申し訳なさそうな顔を向けるハルシュタイン将軍に、アリシアは顔を横に振った。

「いいえ。私も幽霊と思い込んでしまって・・・大変な失礼を致しました」

 状況が状況だったとはいえ、将軍に向かって幽霊は失礼だった。アリシアは頭を下げた。

「頭を上げてくれ。君がそう思ってしまうのも仕方ない。今回は私が悪かったんだ。だが話すことがあったのは本当だ。また日を改める」

 アリシアが頭を上げると、ハルシュタイン将軍は再び先程の柔らかい笑みを浮かべていた。
 しかしそれもすぐに引っ込めると、颯爽と部屋を出ていき、改めて廊下にいる女性使用人達にも詫びてから立ち去って行った。

「さあ、朝が早い者もいるでしょう?あなた達も部屋に戻りなさい」

 ロットナーがそう言うと、数人「そうだったわ!」と慌てて立ち去り、他の女性使用人達も部屋に戻って行った。

「レッツェル、少し良いかしら」

 リーゼ以外の全員が廊下からいなくなったのを確認してから、ロットナーがアリシアへと声をかけた。

「はい。何もない部屋ですが、どうぞ」

 アリシアの声に頷くと、ロットナーはリーゼと共に室内に入り、扉を閉める。
 アリシアはテーブルの椅子を一つ横に移動し、机の椅子を持ってきてテーブルの空いたスペースへと移動させる。そしてテーブル用の椅子を二人に勧めた。

「よろしければこちらへ。お茶を淹れましょうか?」
「構わないわ。そんなに長居はしませんから」

 遅い時間だしどうしようか、と思い確認すると、ロットナーは首を横に振りながら椅子に座る。続いてリーゼも椅子に座ると、ロットナーが口を開いた。

「まずは何があったか、詳しく教えてもらえますか?」
「はい」

 なるほど事情聴取かと納得する。もう遅い時間でもあるし、すぐに話して終わらせるためにも、お茶を断ったのだろう。

「部屋で、そこの机に着いていました。突然背後から名前を呼ばれて。最初は気のせいかとも思ったのですが、再度呼ばれて後ろを振り向いたらハルシュタイン将軍が玄関に・・・部屋の内側に立っていました」
「鍵はかけていましたか?」
「はい。鍵をかけた後は必ず扉が開かない事を確認するようにしていますので、間違いなく」

 アリシアが答えると、ロットナーとリーゼ、二人ともサッと顔色を悪くした。

「ハルシュタイン将軍に何かされましたか?」
「いえ。名前を呼ばれた後、こちらに近づいてきて・・・。でも足音も服のこすれる音もしなかったので、幽霊と思い込んで悲鳴を上げたら、リズが・・・ヒュフナーが駆けつけてくれました」

 ロットナーは少し考えた後、リーゼへと視線を向けた。次はリーゼに事情を話すように目で促している。それに気付いたリーゼはすぐに口を開いた。

「レッツェルの悲鳴が聞こえて、慌てて廊下に出ました。レッツェルの部屋の扉のノブを回したら、鍵は開いていて。急いでドアを開けたら、そこにハルシュタイン将軍が立っていたので、敢えて大声を上げました」

 リーゼの言葉にロットナーは頷いた。

「良い判断でした」
「レッツェルまでリューベックのような事になったらと思うと怖くて・・・ひとまず何事もなく済んで安心しました」
「そうですね」

 再びリーゼの言葉に頷くと、ロットナーはアリシアへと視線を向ける。数秒何かを考えるようにじっと見つめた後、口を開いた。

「レッツェル。あなたに話しておきたいことがあります。ハルシュタイン将軍の事ですから、本当に話があって来たのだと思いますが、万が一があってからでは遅いと、リューベックの時に身に沁みました」

 ロットナーの言葉に、リーゼも思いつめた顔をして俯いた。

「4カ月前・・・去年10月に王宮使用人が3人辞めたことは知っていますか?」
「はい。そのうちの二人は、リーネルト将軍の取り合いで問題を起こして解雇と聞きました」

 ロットナーは頷いて続ける。

「そう。そしてもう一人は、今ヒュフナーが言ったパーラーメイドのパトリツィア=リューベックです」 


 魔国ティナドランでは18歳で学園を卒業すると大抵の者は職に就くことになる。リューベックも18歳から王宮でパーラーメイドとして働いていた。
 去年の7月。リューベックは当時19歳。ある将軍が登城し、リューベックが給仕を行った。その際に彼女を気に入ったのだろう。それ以降何かにつけてはリューベックに付きまとい、権威をチラつかせて自分に従わせようとしていた。
 なんとか誤魔化して逃げていたが、去年9月。就寝中のリューベックの部屋に、魔術で開錠して忍び込み、強制的に行為に及ばれてしまった。室内に防音の結界を張られたことで、彼女が泣き叫んで助けを呼んでも、誰も気付けなかったのだ。

 リューベックはその時の恐怖とショックで、その将軍を見かけただけで過呼吸を起こして倒れるようになった。
 次第にその症状は悪化していく。王宮に居ては、いつ将軍と出会うか分からないという、恐怖とストレスが原因だろう。将軍が居なくても過呼吸を起こす様になり、彼女は王宮で仕事を続けられなくなった。結果、仕事を辞めて王宮を去ったのだった。


「リューベックは私と同い年で、仲良くしてたの。私もリューベックが逃げられるように協力してたんだけど、まさか使用人宿舎に忍び込んでまで来るなんて思わなくて・・・」
「それに鍵開けの魔術は、その鍵の構造を理解していないと扱えない特殊な魔術です。将軍ともあろうお人が、そんな卑怯な真似をするとは、誰も想像出来ませんでした」
「そんな・・・」

 アリシアも話を聞いているうちに顔が青ざめた。

 たまに何処かの国の王族が同じようなことをやらかした、と聞くこともあるが、アリシアにとって遠い世界の話だった。神聖ルアンキリ国にも王族はいるが、神域を抱える国故に、彼らは誇り高い。歴代の王族を見ても愚か者と評されるのは数人程度。王族はいるが貴族制度のない国なので、権力をカサに横暴な振る舞いをする人もいない。だからこそ余計に、アリシアにとって遠い世界の話だった。

(そんな話が身近にあるなんて)

 怖い、と素直にアリシアは思った。

 リューベックという子はどれほど怖い思いをしただろうか。誰も助けに来ない事に絶望しただろうし、心を許していない相手に強制的に体を開かれる恐怖も、嫌悪感も、苦しみも、悲しみも。アリシアが想像できない程に強く感じただろう。

 アリシアは顔を上げてリーゼを見つめる。
 リーゼは正義感が強い。仲が良かった同僚を助けていたにも関わらず、守りきれなかった。どれだけ無力感と罪悪感に苛まれた事だろうか。

「その将軍に処罰はなかったのですか?」

 年頃の女の子の心に一生消えない傷をつけたのだ。神聖ルアンキリ国では大臣や軍部の上層部が同じ事をすれば、謹慎を申し付けられ、加えてスキャンダルとして大きく騒がれる。その結果、大半は辞職せざるを得なくなるのだが。
 話を聞く限り、今も将軍職に就いているように聞こえた。

「魔王様から1週間自宅謹慎を言い渡されました」
「・・・え、それだけですか?他に処罰はなく・・・?」

 ロットナーはかぶりを振った。

「相手は将軍です。その時の戦争情勢によっては降格処分が国損に繋がります。なので将軍に対する処罰は魔王様の采配で決めることになっています。魔王様は一兵卒への降格を望んでいらっしゃいましたが・・・そもそもあの将軍は特殊な形で将軍職に就きました。その為初犯ということもあり、降格は出来なかったそうです」
「そんな・・・」

 それではほぼ野放しではないか。そういった犯罪をする者は再犯率が高いと言われているのに。

 そしてロットナーの口ぶりから、これだけの情報があればどの将軍か分かるだろう、と言外で伝えられてるのが分かる。その事は非常にありがたいのだが。

(全くわかんない・・・)

 常識レベルの話なら聞けば怪しまれる可能性があるので、下手に聞けない。
 困った。他の諜報員の過去の報告にもしかして載っていたりするだろうか。しかしアリシアの権限で読めるのは半年前までだ。半年前にはアリシアはこの国に潜入していたし、その頃の報告は全て読んでいる。

(己の身に振り掛からないとは言いきれない。これは精霊神様に聞いた方が良いのかしら。でもご多忙なあの方のお時間を割かせるのは申し訳ないし・・・)

 アリシアが違うところで悶々としていると、それを怖がっていると心配したリーゼが明るい声を上げた。

「ミリィ、大丈夫よ。あなたが一人で給仕するようになって以降、あの方はまだ登城してないわ。もし登城されたとしても、慣れたベテラン勢が対応するから」
「そうなの・・・」

 リーゼの言葉にホッとする。特別対応が決められているのなら、その将軍が登城した時に分かるかもしれない。

「あの方に関しては対策をしているので今のところ大丈夫だと思います。それより・・・ハルシュタイン将軍がレッツェルをご指名になるのは、女性関係で面倒事が起こらないからだと報告を受けました。しかしあれから時間も経っていますし、万が一もあり得るならば、対策はしておいた方が良いでしょう」

 安堵していたアリシアは、その言葉にロットナーへと視線を向ける。隣に座るリーゼもロットナーに真面目な顔を向ける。

「明日、錠前屋を呼びます。レッツェルの部屋の鍵を魔術では開錠できない物に替えましょう。給仕の際も、ハルシュタイン将軍がいらっしゃる場合は二人体制にするよう伝えておきます」
「・・・え。そんな・・・」

 確かにリューベックの話には恐怖を感じたが、そこまでする必要があるだろうか。相手はハルシュタイン将軍だ。彼はそんな事をするタイプではないと思うのだが。
 しかし実際に部屋に忍び込まれているので、完全な否定は出来なかった。

「恋は盲目という言葉もあります。どれほど真面目な方でも、間違いを起こさないとは言い切れません。レッツェル、私達が安心するためだと思ってください」
「そうよミリィ!今は紳士でも、急にケダモノになるかもしれないわ!念には念を、よ!」
「ケダモノ」

 リーゼの酷い言いように、アリシアは笑いがこみあげた。あの思慮深く真面目で慎重な将軍がケダモノになるなんて、ちょっと想像できない。

「ふふ・・・分かりました。それで皆さんが安心できるというなら、そうします」

 アリシアの言葉に、ロットナーとリーゼはしっかりと頷いた。
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