何処かの世界の誰かの日録

温羅アイカ

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序章(前

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物心ついた時からそうだった。

人の心が理解できなかった。

たくさん怒られた。たくさん泣かれた。たくさん罵倒された。

全て理解できなかった。それでまた怒られた。

気が付いたら、ボクは独りだった。

『お前は悪魔だ。』
そうかもしれない。

『産んだのが間違い。』
産んで、と頼んだ覚えはない。

『死んだらいいのに。』

『居なくなったらいいのに。』

‥悪いことをしたら怒る。人が死んだら悲しむ。良いことがあったら笑う。楽しい事があったら喜ぶ。好き、嫌い、やるべき事、やってはならない事。

わからない。
わから、ない‥。
ボクにはみんながわからない。でも、ボクがおかしいのは、わかっている。

でも、どうしたら、理解できる‥?




時が経った。

ボクはどうやら『人』ではなかったらしい。

ボクは人から稀に生まれる、バケモノだったらしい。

たまたま村に訪れた魔術師。
「そこの子は人間じゃないぞ。災厄を避けたかったら親を殺してそいつを追放するんだな。」

そこからは怒涛の日々だった。
まずお母さんが村人たちによって殺された。
死ぬ直前、お母さんはボクに向かって、お前が私を殺したんだ。地獄に堕ちろバケモノ。と言った。
次にお父さんが殺された。
彼は何も言わず、ただ生き絶える寸前までボクを睨んでいた。

次はボクだった。

魔術師は追放と言ったが、人を殺す快感、罪悪感に囚われた村人たちは、ボクを殴り殺すことにしたらしい。

手と足を縛られた。何言っているか聞き取れないほど口々に罵倒された。目が開かなくなるほど殴られた。肋骨、左腕、数本の指が折れた。痛くない場所は無くなった。

それでもボクは分からなかった。
涙は出なかった。

反応しないボクを見て、村人たちはまた、バケモノ、と罵った。

四日間に渡る断食と断水。あらゆる暴行。


結局、ボクは死ななかった。

ボクは、死なないらしい。そういう身体らしい。

やはり、ボクはバケモノだった。

ボクを殺すことを諦めた村人たちは、夜にボクを森の中の大きな木の根元へ捨てた。

ボロボロなボクは動けなかった。ずっと縛られていた為、関節は固まっていた。何も食べず、飲まずにいた為、常に目眩と飢餓感が揺らいでた。
呼吸するたびに、折れた肋骨から絶叫のような痛みが走った。
夜の森。何処かに身を隠さなければ、狼や魔物などに襲われてしまう。
動かなければ。
‥考えていても体は動いてくれなかった。

もう、ここまでかな。

薄い睡眠欲が脳を漂い始めた。

諦観。

なぜ、こうなったのだろうなぁ、と。

最後にポツリとそう呟き、ボクは眠りについた。
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