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間章 俺もmerryしたい
クリスマス女王は誰? -リンゼロッテの下へ行こう編-
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この話は、
『クリスマス女王へのプレゼントは俺』
の次の話となります。
『クリスマス女王は誰?』
というタイトルで5つの話がありますので、どれか一つを選んでお読みください。
この話は、
-リンゼロッテの下へ行こう編-
となります。
話の最後に作者の自己満足的な挿絵がついています。
だいぶ下についていますのでスクロールしてご覧ください。
もちろん見ないでいただいても大丈夫です。
-------------------------------------------
女神と一緒にネロの館に戻った俺。
バッシャーン!!
扉を開けた瞬間、顔面に何かが掛かった。
「うわっぷっぷっ!」
俺は慌てて顔を拭う。何か酒臭い。
顔を上げて見渡すと、酒場の中で何人か暴れまわっている人がいる。
手には泡立つワインを豪快に振って、中のワインを飛び散らかしている。
「シャンパンファイトか!F1か!!」
「おお!キチク!来たねえ!!食らえっ!!」
思わずツッコンだ俺に、シャンパンが浴びせられる。
犯人の主犯格はやはりネロだ。
あ、ずるい。
女神は自分にだけ魔法障壁を展開してワインを浴びないようにしてる。それで俺を見てケラケラ笑ってる。
「うわっぷ!!」
「どうだい!」
「・・・・うーーー!もっと!!」
「うおぁははは!!さすがだねえ!!」
いきなりなのに、乗ってしまう俺の馬鹿さ加減がすごい。
ネロに掛けられたシャンパンをほとんど飲み干してやった。さらにはおかわり。
「ネロも食らえ!」
ロドルフおねえが気を利かせて俺にもボトルを渡してくれる。
当然反撃だ。めっちゃ楽しいなこれ。
きっと明日、酒場が大変なことになるんだろうが・・・。
でも今日ぐらいいいだろう。
「キチクめ!これでも食らえ!」
ネロの次の一撃。
俺の口にローストビーフを突っ込んでくる。
「何を!!」
俺はそれを豪快に食べつつ、傍にあったテーブルのポテトフライをネロの口に突っ込む。
「まだまだ!!」
「ふん!これごとき!!!」
「大したことないねえ!!」
シャンパンファイトはいつの間にかフードファイトになってた。
二人とも頬をパンパンにしている。
白熱しちゃった俺とネロを酒の肴に酒場は大いに盛り上がってる。
「ギャハハハ!!」と笑い声が絶えまない。娼婦も客もみんな赤ら顔。
この雰囲気、一体感。
とてもいい感じ。楽しい。
クリスマスの大宴会だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、逃げ帰って来たわけだ。」
カチャリ、とナイフを置くリンゼロッテ。
屋敷のダイニングで、独り食事を取っていたようで、傍らには執事が控えている。
リンゼロッテもネロの酒場の宴会にも参加していたが、乱れる前に退散したんだそうだ。
酒場のみんなはもうだいぶベロ酔いで、やばい雰囲気になって来たから、俺はリンゼロッテの屋敷に避難してきたのだ。俺も一緒に卓に着き、酔い覚ましに紅茶をいただいている。
「今日は素晴らしい一日だったな。子供たちもあんなに喜んで。
頑張ってこのサンタというものになり切った甲斐があったよ。」
食事を続けながら、不敵に笑顔を浮かべるリンゼロッテ。
「しかし、大勢で騒ぐというのもなかなか楽しいものではあるが・・・。
私はこうして、日々の糧に感謝し、祈りを捧げて穏やかに食事をするのが好きだな。」
「ははは。特に今日はクリスマスだからね。粛々とするのもいいかもね。」
「そうだったな。クリスマスという特別な日にしたんだったな。キチクにしては信仰を思わせる行動だったな。」
「まあ、マーカラさんを讃えるなんて、リンゼロッテは怒ってしまうんじゃないかと心配していたけど・・・。」
ぴたりとリンゼロッテのフォークが止まる。
「多少は憤りがなくはない。しかし、私も女神様の敬虔な信徒だ。信仰を持つという素晴らしさを知っている。それが大きな支えになることも多いのだ。人々が信仰を持つというのは非常に良いことなのだ。」
「う・・・うん・・・。」
言えない。リンゼロッテには決して言えない。
クリスマスをやる本当の目的が、俺がmerryしたいだけだったなんて・・・。すまん。
「それはそうと、これ。」
俺はポケットから小さなの箱を取り出す。
仰々しく台座に置かれた真っ黒いダイヤモンドだ。
カツーン。
黒いダイヤモンドを見て狼狽えたリンゼロッテがフォークを落としてしまう。
カトラリーを床に落とすなど、淑女としてはあるまじき失態だ。
しかし、急激に、ものすごく、それほどまでに狼狽えていた。
「まっ・・・まっ・・・・まっ・・・・・・・まさか!?」
「えっ?」
俺はなんでこんなにリンゼロッテが狼狽えているのかわからなかった。
しかも瞬時に顔が高揚していて、なんだかとてもうれしそうだ。
「ぷっ・・・ぷっ・・・・プロポーズなのか!?」
リンゼロッテは意を決したように、キラキラした目をさらに輝かせて真っすぐ俺を見る。
「あー・・・・・・。」
やってしまった。完全に勘違いさせてしまった。
そうだよね、何も言わずにいきなりこんなの見せたらそう思ってしまうか。
しかもクリスマスだし・・・。
「ふうー・・・・。いいぞ。
気持ちの整理はついた。プロポーズの言葉を聞かせてくれ。」
胸に手を当て、深呼吸するリンゼロッテ。
胸元が大きくはだけた白いドレスがまたよく似合う。
「リンゼロッテ・・・・。ごめん、この宝石は、人気投票でクリスマス女王になった人への贈り物です。あのマーカラさんから・・・・。」
俺は真っすぐにリンゼロッテを向くことができず、顔を逸らし気味に横目で見る。
当然俺の顔は苦い。
「―――――!」
勘違いリンゼロッテは言葉を失ってしまう。
瞳孔が開いて、瞳が泳いでいる。口も金魚のようにパクパクしている。
顔も赤くなってきたから、ほんとに金魚みたいだ。
「・・・・えっと、なんかほんとごめん。」
固まっている金魚ロッテとの間が辛くて、俺は再度謝ってしまう。
「・・・・すまない。私が完全に早とちりした・・・。
しかし謝らないでくれ。謝られると余計イタい・・・。」
わかりやすく落胆するリンゼロッテだが、俺に気を使わせまいと乾いた笑顔を見せる。さらに痛々しいけど。
「・・・でも、人気No1すごいじゃん?ほら、このブラックダイヤモンドも!
ああ、そういえばリンゼロッテのサンタの格好を見てなかったなあ!見たいなあ!」
俺にやれることは限られている。
必要以上にお道化て、和ませなきゃ・・・。
「むう・・・。そこまで言うなら、披露しよう。」
「うへっ?」
適当に言ったその場を取り繕う言葉を、リンゼロッテは真に受けて拾ってしまった。
実は俺に見せたかったのだと知ったのは後の話。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
大掛かりに備え付けられた暖炉を見る。
アンティーク風な意匠を凝らしていて、とても味がある雰囲気だ。
パチパチッと暖炉の薪が小さく爆ぜる。
薪から上がる炎はユラユラと揺れて室内を照らし、色っぽく演出している。
ここはリンゼロッテの寝室だ。
お嬢様らしく寝台には天蓋が付いていて、柔らかそうなシルクが垂らされる。
暖炉の前には膝くらいの高さのローテーブルとソファが置かれている。
俺はそのソファに座って待っていた。
「待たせたな。」
後ろから声がして、俺は振り向く。
そこにはサンタの格好をしたリンゼロッテが立つ。
頭に縁にモコモコのファー付いた赤い毛糸の帽子。三角形の帽子は先端に白いボンボンがついている。
ドレス自体は先ほどの食事の時の白いドレスのままだが、肩には帽子と同じ赤い色のケープを羽織っている。これも縁をモコモコのファーがあしらわれている。
そして、腕には二の腕までの長さがあるシルクの手袋、黒いオペラグローブをしていた。
とまあ格好はこんな感じでサンタなのだが、なりきりリンゼロッテなのだ。
腰に手を当てて腰を少しくねらせ、斜め45度で俺を見る。
モデルよろしく見事にポーズを決めてる。顔も・・・見事なドヤ顔だ。
「・・・・うん!かわいい!!」
相変わらずのなりきりだな、なんて一瞬呆れたが、こういうときはレスポンスが大事だ。しっかりと返事をする。
実際に確かにかわいい。
目力のあるはっきりとした顔立ちを、サンタ帽のおかげで柔らかい雰囲気に見せ、さらに綺麗な金髪に赤色が映える。首元だけで留まっているケープはその下から真っ白い肌の胸元が主張していた。
見れば見るほど見惚れてしまう。
「だろう?
私も気に入っている。執事の手作りなんだ。」
「えっマジで?なんでもできちゃうね、あのおっさん・・・。」
バトラー業務の他に、戦闘や料理もやってしまうだけではなく、裁縫まで。ちょっとびっくりもするが、正直そこはどうでもいい。
俺は尚もリンゼロッテを見つめる。
「キチクにそんなに見つめられると・・・なんだか緊張してしまうな。」
全身を舐めるように見る俺に、リンゼロッテはポーズを決めたまま動かない。
いや、俺が必要以上にガン見しているから動けないのだ。
リンゼロッテのドヤ顔はいつの間にか、ツンデレ顔になってた。
「かわいいから、動かないでよ。まだ見ていたい。」
「そ、そうなのか?」
たまに漏れてしまうときがあるが、基本的には俺はかわいいとか言わない。
だって恥ずかしいじゃん。
だけど今は酒場でのお酒が残っているせいか、恥ずかしげもなく言ってしまった。
しかもかなり効果的で、リンゼロッテの心をくすぐれているようだ。
リンゼロッテはかわいらしくモジモジして、少し顔を上気させる。
「うへへ。」
俺は居ても経ってもいられなくなり、ソファから立ち上がってリンゼロッテに近づく。
「キチク・・・顔がエロい・・・。」
「だめ、サンタロッテ。動くな。」
「そ、そんな・・・。」
俺はリンゼロッテの前に立ち、彼女の首筋に唇で触れる。
ケープの縁のファーが少しこそばい。
「んっ・・・。」
ポーズを決めたまま動かないリンゼロッテから、甘い吐息が漏れる。
俺はそのまま首筋を這い、左手を彼女の腰に手を回し、右手で彼女の白いドレスの上からそっと胸に触れる。
外でも出歩ける用の厚手で硬い生地のドレスだったから、胸は大きく押し上げられてる。
そのドレスと胸の隙間に俺は強引に手を差し入れる。
「んあっ・・・。」
俺の指が乳首に触れた途端に、またいい声が漏れた。
「いい声が聞こえるな。」
俺は少し茶化したニュアンスで言う。
「むう・・・。人気No1のサンタの私を弄ぶというのか・・・。
ちゃんとありがたみが分かっているのか?っああ!」
俺はドレスからムリヤリ乳首をはだけさせ、口に含む。偉そうなサンタを黙らせることに成功する。
「ちょ、ちょっとドレスが硬くて痛い・・・。後ろのファスナーを・・・。」
「これか?」
俺はジジーッと、そのファスナーを下げる。
するとドレスが広がり、全体的に少しずり下がった。
「動くなと言われ、私はそうしているのだが、脱がせてはくれないのか?」
惜しげもなく露わになった胸に目を奪われていた俺に、リンゼロッテが促してくる。
少し恥じらいも見えるが、目を真っすぐ俺に向けて人を食ったような顔を向けてくる。
挑戦状を受け取った俺は、彼女のドレスを床まで下げる。
リンゼロッテはショーツを穿いただけの姿で裸体を晒す。
だが、肩には赤いケープを掛けていて、頭にはサンタ帽を被ったままだ。
「ほーっ」と軽く眼福を楽しんだ後、俺はおもむろに彼女を両の手で抱き上げた。
「待て待て、まだケープを羽織ったままだ!」
俺の手の中からなにやら喚く声が聞こえるが、気にしない。
俺はリンゼロッテをそのまま寝台まで連れ込む。
寝台にリンゼロッテを仰向けに寝かせ、俺は膝と肘を立てて彼女を覆う。
「やってみたかったんだ・・・。」
俺はポソリと呟く。
「何をだ?」
リンゼロッテに向けて言ったわけではなかったが、リンゼロッテは聞き返してくる。
どんなことを要求されるかと思っているのか、少しだけ眉が険しくなるのが見えた。
ちょっと恥ずかしいが、ここはもう素直にやりたいことを言おう。
そう思って、俺は口を開く。
「クリスマスのプレゼントを渡しにきた女サンタをムリヤリ蹂躙して惚れさせたった、をだ。」
「プハッ。なんだそれ。
だから、ドレスは脱がせてケープと帽子、手袋はそのままなのか?」
「そうだよ。」
前世の時、クリスマスに一人で読んでいた薄い本のタイトルだ。
俺のやりたいことを聞いて、リンゼロッテは可愛らしく吹き出す。
その笑みはまさに笑顔に花が咲くというやつだ。
「だが、キチク・・・。残念だが、どうやらその願いは叶いそうにない。」
笑みの後、リンゼロッテは遺憾の意を伝えてくる。
「えっ?なんで?」
意味ありげなことを言ったリンゼロッテが、身体を浮かせて俺の首に両手を回してきた。
そのまま体重をかけて俺を抱き寄せる。
「残念ながら、女サンタはすでに惚れている。
だから、女サンタをムリヤリ蹂躙して惚れさせたったではない。
題名を付けるなら、
プレゼントは女サンタ。惚れているキチクをカラダで蹂躙して虜にしたった、が正解だ。」
ちょっと真面目な顔をして見つめてくるリンゼロッテ。
訂正したタイトルもアホな感じで小気味いい。
「だいぶ変わったけど、そういうのもありかっ。ははっ。」
俺は思わず顔を綻ばせてしまう。
そして、薄い本にそんなようなタイトルがあったような、なかったようなと思いを馳せる。
「うーん、思い出せないから、きっとない。」
「何の話だ?」
「ううん。こっちの話。」
「さてはNo1サンタを前にして、他のサンタの事を考えたな!?
すぐに他のサンタの事を考えられなくさせてやる!!こうだ!!」
下になっているリンゼロッテは俺とともに左に回転し、上下をスイッチする。
そして上乗りになったリンゼロッテは露わになっている胸で俺の顔を埋める。
その後遅れて、赤いケープが俺の顔とリンゼロッテの胸をふんわりと包む。
「おおう・・・・サンタぱふぱふ・・・。」
ふにふにと柔らかく、温かい。
No1サンタの胸に挟まれて、とても満たされた気分になる。至福のひと時だ。
俺にこんなクリスマスが訪れるなんて、想像もできなかったよ。
まったく・・・。俺の耳に触れるケープのファーがやはりくすぐったいよ。
『クリスマス女王へのプレゼントは俺』
の次の話となります。
『クリスマス女王は誰?』
というタイトルで5つの話がありますので、どれか一つを選んでお読みください。
この話は、
-リンゼロッテの下へ行こう編-
となります。
話の最後に作者の自己満足的な挿絵がついています。
だいぶ下についていますのでスクロールしてご覧ください。
もちろん見ないでいただいても大丈夫です。
-------------------------------------------
女神と一緒にネロの館に戻った俺。
バッシャーン!!
扉を開けた瞬間、顔面に何かが掛かった。
「うわっぷっぷっ!」
俺は慌てて顔を拭う。何か酒臭い。
顔を上げて見渡すと、酒場の中で何人か暴れまわっている人がいる。
手には泡立つワインを豪快に振って、中のワインを飛び散らかしている。
「シャンパンファイトか!F1か!!」
「おお!キチク!来たねえ!!食らえっ!!」
思わずツッコンだ俺に、シャンパンが浴びせられる。
犯人の主犯格はやはりネロだ。
あ、ずるい。
女神は自分にだけ魔法障壁を展開してワインを浴びないようにしてる。それで俺を見てケラケラ笑ってる。
「うわっぷ!!」
「どうだい!」
「・・・・うーーー!もっと!!」
「うおぁははは!!さすがだねえ!!」
いきなりなのに、乗ってしまう俺の馬鹿さ加減がすごい。
ネロに掛けられたシャンパンをほとんど飲み干してやった。さらにはおかわり。
「ネロも食らえ!」
ロドルフおねえが気を利かせて俺にもボトルを渡してくれる。
当然反撃だ。めっちゃ楽しいなこれ。
きっと明日、酒場が大変なことになるんだろうが・・・。
でも今日ぐらいいいだろう。
「キチクめ!これでも食らえ!」
ネロの次の一撃。
俺の口にローストビーフを突っ込んでくる。
「何を!!」
俺はそれを豪快に食べつつ、傍にあったテーブルのポテトフライをネロの口に突っ込む。
「まだまだ!!」
「ふん!これごとき!!!」
「大したことないねえ!!」
シャンパンファイトはいつの間にかフードファイトになってた。
二人とも頬をパンパンにしている。
白熱しちゃった俺とネロを酒の肴に酒場は大いに盛り上がってる。
「ギャハハハ!!」と笑い声が絶えまない。娼婦も客もみんな赤ら顔。
この雰囲気、一体感。
とてもいい感じ。楽しい。
クリスマスの大宴会だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、逃げ帰って来たわけだ。」
カチャリ、とナイフを置くリンゼロッテ。
屋敷のダイニングで、独り食事を取っていたようで、傍らには執事が控えている。
リンゼロッテもネロの酒場の宴会にも参加していたが、乱れる前に退散したんだそうだ。
酒場のみんなはもうだいぶベロ酔いで、やばい雰囲気になって来たから、俺はリンゼロッテの屋敷に避難してきたのだ。俺も一緒に卓に着き、酔い覚ましに紅茶をいただいている。
「今日は素晴らしい一日だったな。子供たちもあんなに喜んで。
頑張ってこのサンタというものになり切った甲斐があったよ。」
食事を続けながら、不敵に笑顔を浮かべるリンゼロッテ。
「しかし、大勢で騒ぐというのもなかなか楽しいものではあるが・・・。
私はこうして、日々の糧に感謝し、祈りを捧げて穏やかに食事をするのが好きだな。」
「ははは。特に今日はクリスマスだからね。粛々とするのもいいかもね。」
「そうだったな。クリスマスという特別な日にしたんだったな。キチクにしては信仰を思わせる行動だったな。」
「まあ、マーカラさんを讃えるなんて、リンゼロッテは怒ってしまうんじゃないかと心配していたけど・・・。」
ぴたりとリンゼロッテのフォークが止まる。
「多少は憤りがなくはない。しかし、私も女神様の敬虔な信徒だ。信仰を持つという素晴らしさを知っている。それが大きな支えになることも多いのだ。人々が信仰を持つというのは非常に良いことなのだ。」
「う・・・うん・・・。」
言えない。リンゼロッテには決して言えない。
クリスマスをやる本当の目的が、俺がmerryしたいだけだったなんて・・・。すまん。
「それはそうと、これ。」
俺はポケットから小さなの箱を取り出す。
仰々しく台座に置かれた真っ黒いダイヤモンドだ。
カツーン。
黒いダイヤモンドを見て狼狽えたリンゼロッテがフォークを落としてしまう。
カトラリーを床に落とすなど、淑女としてはあるまじき失態だ。
しかし、急激に、ものすごく、それほどまでに狼狽えていた。
「まっ・・・まっ・・・・まっ・・・・・・・まさか!?」
「えっ?」
俺はなんでこんなにリンゼロッテが狼狽えているのかわからなかった。
しかも瞬時に顔が高揚していて、なんだかとてもうれしそうだ。
「ぷっ・・・ぷっ・・・・プロポーズなのか!?」
リンゼロッテは意を決したように、キラキラした目をさらに輝かせて真っすぐ俺を見る。
「あー・・・・・・。」
やってしまった。完全に勘違いさせてしまった。
そうだよね、何も言わずにいきなりこんなの見せたらそう思ってしまうか。
しかもクリスマスだし・・・。
「ふうー・・・・。いいぞ。
気持ちの整理はついた。プロポーズの言葉を聞かせてくれ。」
胸に手を当て、深呼吸するリンゼロッテ。
胸元が大きくはだけた白いドレスがまたよく似合う。
「リンゼロッテ・・・・。ごめん、この宝石は、人気投票でクリスマス女王になった人への贈り物です。あのマーカラさんから・・・・。」
俺は真っすぐにリンゼロッテを向くことができず、顔を逸らし気味に横目で見る。
当然俺の顔は苦い。
「―――――!」
勘違いリンゼロッテは言葉を失ってしまう。
瞳孔が開いて、瞳が泳いでいる。口も金魚のようにパクパクしている。
顔も赤くなってきたから、ほんとに金魚みたいだ。
「・・・・えっと、なんかほんとごめん。」
固まっている金魚ロッテとの間が辛くて、俺は再度謝ってしまう。
「・・・・すまない。私が完全に早とちりした・・・。
しかし謝らないでくれ。謝られると余計イタい・・・。」
わかりやすく落胆するリンゼロッテだが、俺に気を使わせまいと乾いた笑顔を見せる。さらに痛々しいけど。
「・・・でも、人気No1すごいじゃん?ほら、このブラックダイヤモンドも!
ああ、そういえばリンゼロッテのサンタの格好を見てなかったなあ!見たいなあ!」
俺にやれることは限られている。
必要以上にお道化て、和ませなきゃ・・・。
「むう・・・。そこまで言うなら、披露しよう。」
「うへっ?」
適当に言ったその場を取り繕う言葉を、リンゼロッテは真に受けて拾ってしまった。
実は俺に見せたかったのだと知ったのは後の話。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
大掛かりに備え付けられた暖炉を見る。
アンティーク風な意匠を凝らしていて、とても味がある雰囲気だ。
パチパチッと暖炉の薪が小さく爆ぜる。
薪から上がる炎はユラユラと揺れて室内を照らし、色っぽく演出している。
ここはリンゼロッテの寝室だ。
お嬢様らしく寝台には天蓋が付いていて、柔らかそうなシルクが垂らされる。
暖炉の前には膝くらいの高さのローテーブルとソファが置かれている。
俺はそのソファに座って待っていた。
「待たせたな。」
後ろから声がして、俺は振り向く。
そこにはサンタの格好をしたリンゼロッテが立つ。
頭に縁にモコモコのファー付いた赤い毛糸の帽子。三角形の帽子は先端に白いボンボンがついている。
ドレス自体は先ほどの食事の時の白いドレスのままだが、肩には帽子と同じ赤い色のケープを羽織っている。これも縁をモコモコのファーがあしらわれている。
そして、腕には二の腕までの長さがあるシルクの手袋、黒いオペラグローブをしていた。
とまあ格好はこんな感じでサンタなのだが、なりきりリンゼロッテなのだ。
腰に手を当てて腰を少しくねらせ、斜め45度で俺を見る。
モデルよろしく見事にポーズを決めてる。顔も・・・見事なドヤ顔だ。
「・・・・うん!かわいい!!」
相変わらずのなりきりだな、なんて一瞬呆れたが、こういうときはレスポンスが大事だ。しっかりと返事をする。
実際に確かにかわいい。
目力のあるはっきりとした顔立ちを、サンタ帽のおかげで柔らかい雰囲気に見せ、さらに綺麗な金髪に赤色が映える。首元だけで留まっているケープはその下から真っ白い肌の胸元が主張していた。
見れば見るほど見惚れてしまう。
「だろう?
私も気に入っている。執事の手作りなんだ。」
「えっマジで?なんでもできちゃうね、あのおっさん・・・。」
バトラー業務の他に、戦闘や料理もやってしまうだけではなく、裁縫まで。ちょっとびっくりもするが、正直そこはどうでもいい。
俺は尚もリンゼロッテを見つめる。
「キチクにそんなに見つめられると・・・なんだか緊張してしまうな。」
全身を舐めるように見る俺に、リンゼロッテはポーズを決めたまま動かない。
いや、俺が必要以上にガン見しているから動けないのだ。
リンゼロッテのドヤ顔はいつの間にか、ツンデレ顔になってた。
「かわいいから、動かないでよ。まだ見ていたい。」
「そ、そうなのか?」
たまに漏れてしまうときがあるが、基本的には俺はかわいいとか言わない。
だって恥ずかしいじゃん。
だけど今は酒場でのお酒が残っているせいか、恥ずかしげもなく言ってしまった。
しかもかなり効果的で、リンゼロッテの心をくすぐれているようだ。
リンゼロッテはかわいらしくモジモジして、少し顔を上気させる。
「うへへ。」
俺は居ても経ってもいられなくなり、ソファから立ち上がってリンゼロッテに近づく。
「キチク・・・顔がエロい・・・。」
「だめ、サンタロッテ。動くな。」
「そ、そんな・・・。」
俺はリンゼロッテの前に立ち、彼女の首筋に唇で触れる。
ケープの縁のファーが少しこそばい。
「んっ・・・。」
ポーズを決めたまま動かないリンゼロッテから、甘い吐息が漏れる。
俺はそのまま首筋を這い、左手を彼女の腰に手を回し、右手で彼女の白いドレスの上からそっと胸に触れる。
外でも出歩ける用の厚手で硬い生地のドレスだったから、胸は大きく押し上げられてる。
そのドレスと胸の隙間に俺は強引に手を差し入れる。
「んあっ・・・。」
俺の指が乳首に触れた途端に、またいい声が漏れた。
「いい声が聞こえるな。」
俺は少し茶化したニュアンスで言う。
「むう・・・。人気No1のサンタの私を弄ぶというのか・・・。
ちゃんとありがたみが分かっているのか?っああ!」
俺はドレスからムリヤリ乳首をはだけさせ、口に含む。偉そうなサンタを黙らせることに成功する。
「ちょ、ちょっとドレスが硬くて痛い・・・。後ろのファスナーを・・・。」
「これか?」
俺はジジーッと、そのファスナーを下げる。
するとドレスが広がり、全体的に少しずり下がった。
「動くなと言われ、私はそうしているのだが、脱がせてはくれないのか?」
惜しげもなく露わになった胸に目を奪われていた俺に、リンゼロッテが促してくる。
少し恥じらいも見えるが、目を真っすぐ俺に向けて人を食ったような顔を向けてくる。
挑戦状を受け取った俺は、彼女のドレスを床まで下げる。
リンゼロッテはショーツを穿いただけの姿で裸体を晒す。
だが、肩には赤いケープを掛けていて、頭にはサンタ帽を被ったままだ。
「ほーっ」と軽く眼福を楽しんだ後、俺はおもむろに彼女を両の手で抱き上げた。
「待て待て、まだケープを羽織ったままだ!」
俺の手の中からなにやら喚く声が聞こえるが、気にしない。
俺はリンゼロッテをそのまま寝台まで連れ込む。
寝台にリンゼロッテを仰向けに寝かせ、俺は膝と肘を立てて彼女を覆う。
「やってみたかったんだ・・・。」
俺はポソリと呟く。
「何をだ?」
リンゼロッテに向けて言ったわけではなかったが、リンゼロッテは聞き返してくる。
どんなことを要求されるかと思っているのか、少しだけ眉が険しくなるのが見えた。
ちょっと恥ずかしいが、ここはもう素直にやりたいことを言おう。
そう思って、俺は口を開く。
「クリスマスのプレゼントを渡しにきた女サンタをムリヤリ蹂躙して惚れさせたった、をだ。」
「プハッ。なんだそれ。
だから、ドレスは脱がせてケープと帽子、手袋はそのままなのか?」
「そうだよ。」
前世の時、クリスマスに一人で読んでいた薄い本のタイトルだ。
俺のやりたいことを聞いて、リンゼロッテは可愛らしく吹き出す。
その笑みはまさに笑顔に花が咲くというやつだ。
「だが、キチク・・・。残念だが、どうやらその願いは叶いそうにない。」
笑みの後、リンゼロッテは遺憾の意を伝えてくる。
「えっ?なんで?」
意味ありげなことを言ったリンゼロッテが、身体を浮かせて俺の首に両手を回してきた。
そのまま体重をかけて俺を抱き寄せる。
「残念ながら、女サンタはすでに惚れている。
だから、女サンタをムリヤリ蹂躙して惚れさせたったではない。
題名を付けるなら、
プレゼントは女サンタ。惚れているキチクをカラダで蹂躙して虜にしたった、が正解だ。」
ちょっと真面目な顔をして見つめてくるリンゼロッテ。
訂正したタイトルもアホな感じで小気味いい。
「だいぶ変わったけど、そういうのもありかっ。ははっ。」
俺は思わず顔を綻ばせてしまう。
そして、薄い本にそんなようなタイトルがあったような、なかったようなと思いを馳せる。
「うーん、思い出せないから、きっとない。」
「何の話だ?」
「ううん。こっちの話。」
「さてはNo1サンタを前にして、他のサンタの事を考えたな!?
すぐに他のサンタの事を考えられなくさせてやる!!こうだ!!」
下になっているリンゼロッテは俺とともに左に回転し、上下をスイッチする。
そして上乗りになったリンゼロッテは露わになっている胸で俺の顔を埋める。
その後遅れて、赤いケープが俺の顔とリンゼロッテの胸をふんわりと包む。
「おおう・・・・サンタぱふぱふ・・・。」
ふにふにと柔らかく、温かい。
No1サンタの胸に挟まれて、とても満たされた気分になる。至福のひと時だ。
俺にこんなクリスマスが訪れるなんて、想像もできなかったよ。
まったく・・・。俺の耳に触れるケープのファーがやはりくすぐったいよ。
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