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昨夜も結局よく眠れずに目をさましたシャステはベッドの上で、夜の気配を残した明朝の空気の中、伸びをした。
「んー……」
やっぱりおかしい、何か変だ。
昨日、様子がおかしかったレーベ。いつもなら小言ばかりだし、シャステを見るたびに表情を歪める彼が、優しい笑みをうかべたこと。
そして、それに恋する少女かのように真っ赤になってしまった自分。それなのに……それなのに、彼を嫌ってやまない自分。
「ヘンだわ……」
シャステはベッドから降りると、今日はある場所へ行こうと考えた。さすがにレーベとシャステの喧嘩くらいでは何も残っていないかもしれないが……。
メイドの手を借りて身支度を整え、シャステが部屋を出るとグラナートが首を傾げた。
「姫様? 今日はどこかへお出かけですか?」
彼の質問に、シャステは頷いて言う。
「ええ、ちょっと地下の書庫に行こうと思って」
そう言った途端、グラナートの表情が一瞬強張ったような気がしたのだが、彼はすぐに微笑んで言う。
「姫様、今、あの場所は陛下の許可がないと立ち入れないようになっているのです」
「え? どうして?」
確かに重要な場所であるが、シャステでも父の許可が必要なほどだろうか?
「理由は私にも……ですが、入れないことだけは確かです」
優しく微笑んでいる彼の表情に、シャステは違和感を覚えた……ので……。
「そう、じゃあしようがないわね」
寂しそうに微笑んでそう言うと、シャステは大人しく部屋に戻り、夜を待った。
(あぁもう! こういうとき、魔法が使えたらどれほど便利なのかしらっ!)
グラナートとレーベが交代するときに毎回隙がないか窺っていたのだが、ない。
さすがシャステの護衛を務める二人だけあり、まったく隙がない。こんなときだけ二人の有能ぶりが癪に障る。
父からあの地下室へ入ってはいけないなんてシャステは言われていない。
それにグラナートの様子もおかしい、嘘をついている可能性が高いということは、何か隠している可能性も高いということだ。
もう一度時計を見れば午前三時、さすがにシャステも眠っていると二人も思っているだろう。
その予想は当たり、交代の際に誰も居ない時間というのが初めてできた。
シャステはその機を逃さず部屋を飛びだす。
その背をレーベが見ていたことに気づかずに。
◇◇◇
その後、シャステは書物で埋め尽くされた薄暗い城の地下に居た。
この書庫には、王国で起きた様々な事件が記録されている。
(いくらなんでも、あたしとレーベの喧嘩くらいじゃ記録されていないだろうけど)
ただ、不自然なことが多いのだ。レーベも何かを隠しているし、ただの喧嘩でなかったとしたら……?
シャステは二人が不仲になった時期を思い起こしながら、古びた本棚の列を目で追っていたのだが、ふと、記憶にないタイトルが視界に映る。
――シャステ王女の暗殺記録。
「あたし……? 暗殺……?」
身に覚えがない、そう思いながら本を手に取った。
まさか過去に同じ名前の王女が居たのだろうか?
しかし、まだ新しいところを見るとつい最近書かれた物のようだ。
つまり、そのシャステはおそらく自分自身で間違いない。
こくりと唾を飲み込んで、シャステはその本を開いた。
読み進めていくうちに、鼓動が耳から聞こえてくるような緊張感に襲われた。
魔法の蝋燭に照らされた文字が歪んで見える。
断片的に頭に入ってくる、本の内容。
――初夏の深夜、王女の部屋に侵入者が。
――ヴォルフレイア公爵が応戦 し たが 敵は 術者 王女 操られ……。
――背後から 右 脇腹 刺す。
――駆けつけたハーバールス伯爵 術者を 捕縛。
けれどその先はもう頭に入ってこなかった。
ひどい耳鳴り、身体ががたがたと震えて、持っていた本を取り落とした。
視界がまわる、思いだしたくない記憶。
ぷつりと、意識はそこで途切れて落ちた。
そう、あのとき、レーベはシャステに背を向けていた。
『どうして……あたし……?』
なぜナイフを握っているの?
なぜ――。
――あたしはあなたを刺したの?
自分を守って戦ってくれたレーベを、背後から貫いたのは確かに、シャステの持つナイフだった。
自身の手からこぼれ落ちる血まみれのナイフを、どこか遠い意識の中で見つめていた。
理解できない。
なぜ?
手を濡らすのは多量の血液。
頬を伝うのは理不尽で身勝手な涙。
魔力を持たないシャステでは、術者に対抗できなかった、それゆえの末路だった。
◇◇◇
シャステ・フィリ・エルテリアは生まれつき魔力を持たなかった。
王族としては欠陥品と言っても良い、自分に価値がないことはシャステ自身がよく知っていた。
しかしそんな不良品のような王族でも、邪魔に思う人間は居るものだ。
あれは、そうだ、夏を迎えようとしていた……ちょうど今頃の深夜のことだった。
自室で眠っていたシャステは、耳をつんざくような金属音で目をさました。
目の前の光景に、どっと冷や汗が流れていく。シャステに切りかかろうとしたのだろう黒ずくめの男のナイフを、物音に気づいたのだろう、レーベの剣が受け止めている。
レーベは男のナイフを弾き飛ばし、相手の息の根を止めるために剣を振るう。
シャステのすぐ傍に転がったそのナイフに、引き攣った悲鳴が喉奥からこぼれる。
剣とナイフでの勝負では、レーベのほうが圧倒的だった。
男が始末されるのは時間の問題だろう。
しかし……。
「――っ」
頭が痛い、シャステは額を押さえて、ひどくなる動悸に大きく息を吐いた。
緊張のせいだろうか?
いや、違う?
これはなんだろう?
めまいと共に、ふらりとベッドからおりた彼女はすぐ傍に転がっていたナイフを手に取り、そして――。
肉を貫く嫌な感触が両手に伝わる。
「っぐ……シャステ⁉」
レーベの苦しげな声が響いた。
「どうして……あたし……?」
シャステを庇って背を向けていたレーベを、刺したのは他でもないシャステ自身の手であった。
もやがかかったようにぼんやりとした意識の中でも、身体が震え、歯ががちがちと音をたてる。
全身から力が抜けていき、ナイフが音をたてて床に落ちる、そんな彼女の金色の瞳には、新たなナイフを構える男の姿が映っていた。
そして再び響く、肉を裂く嫌な音。
シャステを庇い、きつく抱きしめて、レーベが苦しそうな息を噛み殺すのが分かる。
「シャステ、無事か? ぼくは大丈夫だ、だから――」
レーベの顔は見えないが、シャステは何が起きたのか理解していた。
声が震える、けれど、何も言わないでいることもできなかった。
「ごめ……なさ、ごめんなさい……」
自分が、何をしたのか。
操られたのだ、ただでさえ欠陥品のような存在のくせに。
このままでは、レーベが死んでしまう、それだけは嫌だと彼から離れようとしても、抱きしめる腕はけっしてはなしてくれない。
そうして、男のナイフがレーベの心臓を狙ったときだった。
どすりと鈍い音が響き、男は昏倒した。
そのうしろから、冷えた表情のグラナートが現れる。
「レーベ、傷は?」
普段の彼とは別人のように無表情で、淡々と問いかけたグラナートに、レーベは片手に淡い光を宿して言う。
「平気だ、このくらい。すぐに治せる、それより――」
シャステの意識は、平気だと言うレーベの言葉に、安堵と共に遠のいていった。
――あたしのせいだわ。
そして罪悪感と後悔がどっと押し寄せる。
一歩間違えば、レーベは死んでいたのに違いない。
――あたしの、せいで……。
シャステとレーベはもともと幼馴染であり、そして何より……ある頃から二人は恋仲でもあった。
「んー……」
やっぱりおかしい、何か変だ。
昨日、様子がおかしかったレーベ。いつもなら小言ばかりだし、シャステを見るたびに表情を歪める彼が、優しい笑みをうかべたこと。
そして、それに恋する少女かのように真っ赤になってしまった自分。それなのに……それなのに、彼を嫌ってやまない自分。
「ヘンだわ……」
シャステはベッドから降りると、今日はある場所へ行こうと考えた。さすがにレーベとシャステの喧嘩くらいでは何も残っていないかもしれないが……。
メイドの手を借りて身支度を整え、シャステが部屋を出るとグラナートが首を傾げた。
「姫様? 今日はどこかへお出かけですか?」
彼の質問に、シャステは頷いて言う。
「ええ、ちょっと地下の書庫に行こうと思って」
そう言った途端、グラナートの表情が一瞬強張ったような気がしたのだが、彼はすぐに微笑んで言う。
「姫様、今、あの場所は陛下の許可がないと立ち入れないようになっているのです」
「え? どうして?」
確かに重要な場所であるが、シャステでも父の許可が必要なほどだろうか?
「理由は私にも……ですが、入れないことだけは確かです」
優しく微笑んでいる彼の表情に、シャステは違和感を覚えた……ので……。
「そう、じゃあしようがないわね」
寂しそうに微笑んでそう言うと、シャステは大人しく部屋に戻り、夜を待った。
(あぁもう! こういうとき、魔法が使えたらどれほど便利なのかしらっ!)
グラナートとレーベが交代するときに毎回隙がないか窺っていたのだが、ない。
さすがシャステの護衛を務める二人だけあり、まったく隙がない。こんなときだけ二人の有能ぶりが癪に障る。
父からあの地下室へ入ってはいけないなんてシャステは言われていない。
それにグラナートの様子もおかしい、嘘をついている可能性が高いということは、何か隠している可能性も高いということだ。
もう一度時計を見れば午前三時、さすがにシャステも眠っていると二人も思っているだろう。
その予想は当たり、交代の際に誰も居ない時間というのが初めてできた。
シャステはその機を逃さず部屋を飛びだす。
その背をレーベが見ていたことに気づかずに。
◇◇◇
その後、シャステは書物で埋め尽くされた薄暗い城の地下に居た。
この書庫には、王国で起きた様々な事件が記録されている。
(いくらなんでも、あたしとレーベの喧嘩くらいじゃ記録されていないだろうけど)
ただ、不自然なことが多いのだ。レーベも何かを隠しているし、ただの喧嘩でなかったとしたら……?
シャステは二人が不仲になった時期を思い起こしながら、古びた本棚の列を目で追っていたのだが、ふと、記憶にないタイトルが視界に映る。
――シャステ王女の暗殺記録。
「あたし……? 暗殺……?」
身に覚えがない、そう思いながら本を手に取った。
まさか過去に同じ名前の王女が居たのだろうか?
しかし、まだ新しいところを見るとつい最近書かれた物のようだ。
つまり、そのシャステはおそらく自分自身で間違いない。
こくりと唾を飲み込んで、シャステはその本を開いた。
読み進めていくうちに、鼓動が耳から聞こえてくるような緊張感に襲われた。
魔法の蝋燭に照らされた文字が歪んで見える。
断片的に頭に入ってくる、本の内容。
――初夏の深夜、王女の部屋に侵入者が。
――ヴォルフレイア公爵が応戦 し たが 敵は 術者 王女 操られ……。
――背後から 右 脇腹 刺す。
――駆けつけたハーバールス伯爵 術者を 捕縛。
けれどその先はもう頭に入ってこなかった。
ひどい耳鳴り、身体ががたがたと震えて、持っていた本を取り落とした。
視界がまわる、思いだしたくない記憶。
ぷつりと、意識はそこで途切れて落ちた。
そう、あのとき、レーベはシャステに背を向けていた。
『どうして……あたし……?』
なぜナイフを握っているの?
なぜ――。
――あたしはあなたを刺したの?
自分を守って戦ってくれたレーベを、背後から貫いたのは確かに、シャステの持つナイフだった。
自身の手からこぼれ落ちる血まみれのナイフを、どこか遠い意識の中で見つめていた。
理解できない。
なぜ?
手を濡らすのは多量の血液。
頬を伝うのは理不尽で身勝手な涙。
魔力を持たないシャステでは、術者に対抗できなかった、それゆえの末路だった。
◇◇◇
シャステ・フィリ・エルテリアは生まれつき魔力を持たなかった。
王族としては欠陥品と言っても良い、自分に価値がないことはシャステ自身がよく知っていた。
しかしそんな不良品のような王族でも、邪魔に思う人間は居るものだ。
あれは、そうだ、夏を迎えようとしていた……ちょうど今頃の深夜のことだった。
自室で眠っていたシャステは、耳をつんざくような金属音で目をさました。
目の前の光景に、どっと冷や汗が流れていく。シャステに切りかかろうとしたのだろう黒ずくめの男のナイフを、物音に気づいたのだろう、レーベの剣が受け止めている。
レーベは男のナイフを弾き飛ばし、相手の息の根を止めるために剣を振るう。
シャステのすぐ傍に転がったそのナイフに、引き攣った悲鳴が喉奥からこぼれる。
剣とナイフでの勝負では、レーベのほうが圧倒的だった。
男が始末されるのは時間の問題だろう。
しかし……。
「――っ」
頭が痛い、シャステは額を押さえて、ひどくなる動悸に大きく息を吐いた。
緊張のせいだろうか?
いや、違う?
これはなんだろう?
めまいと共に、ふらりとベッドからおりた彼女はすぐ傍に転がっていたナイフを手に取り、そして――。
肉を貫く嫌な感触が両手に伝わる。
「っぐ……シャステ⁉」
レーベの苦しげな声が響いた。
「どうして……あたし……?」
シャステを庇って背を向けていたレーベを、刺したのは他でもないシャステ自身の手であった。
もやがかかったようにぼんやりとした意識の中でも、身体が震え、歯ががちがちと音をたてる。
全身から力が抜けていき、ナイフが音をたてて床に落ちる、そんな彼女の金色の瞳には、新たなナイフを構える男の姿が映っていた。
そして再び響く、肉を裂く嫌な音。
シャステを庇い、きつく抱きしめて、レーベが苦しそうな息を噛み殺すのが分かる。
「シャステ、無事か? ぼくは大丈夫だ、だから――」
レーベの顔は見えないが、シャステは何が起きたのか理解していた。
声が震える、けれど、何も言わないでいることもできなかった。
「ごめ……なさ、ごめんなさい……」
自分が、何をしたのか。
操られたのだ、ただでさえ欠陥品のような存在のくせに。
このままでは、レーベが死んでしまう、それだけは嫌だと彼から離れようとしても、抱きしめる腕はけっしてはなしてくれない。
そうして、男のナイフがレーベの心臓を狙ったときだった。
どすりと鈍い音が響き、男は昏倒した。
そのうしろから、冷えた表情のグラナートが現れる。
「レーベ、傷は?」
普段の彼とは別人のように無表情で、淡々と問いかけたグラナートに、レーベは片手に淡い光を宿して言う。
「平気だ、このくらい。すぐに治せる、それより――」
シャステの意識は、平気だと言うレーベの言葉に、安堵と共に遠のいていった。
――あたしのせいだわ。
そして罪悪感と後悔がどっと押し寄せる。
一歩間違えば、レーベは死んでいたのに違いない。
――あたしの、せいで……。
シャステとレーベはもともと幼馴染であり、そして何より……ある頃から二人は恋仲でもあった。
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