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全ての始まり
第七話
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それからのことは、正直よく覚えていない。
気づいたら自分の席に座ってたし、頭上では昼休みを告げるチャイムが鳴り響いていた。人は、自分のキャパを超えるものに遭遇すると、何も考えられなくなるらしい。今日、新しく学んだことの一つだった。
「惡澤……どうしよう、俺、転校するかも……」
「えーいきなり何?」
渾身の思いで打ち明けたにも関わらず、隣に座る男はスマホから目を離そうともしない。これには流石にイラッときて、油断している脇腹に、何度も肘打ちをお見舞いしてやった。それが友達の話を聞く態度かってんだ。
「お前信じてないだろ!! もう、もう大変だったんだからな!?」
「いてて、わかったわかった。ちゃんと信じるって~」
気怠げなオレンジ色が向けられて、これで満足かとでも言うように、ぽんぽんと頭を撫でられる。普段は甘えたの癖に、こういう時だけ子供扱いするのはやめて欲しい。
けれど、ひとまずは聞いてくれるだけマシだと考えなければ。惡澤以外に相談できる友達なんていないしな。
……なんか、自分で言ってて悲しくなってきた。
「ん~、なるほどねぇ。勇者の子孫がいきなり婚約を申し込んできてぇ、それを心配したお兄さんが、みつるを転校させようとしてるってことか。ふっ……あっは、なに~そのおかしな状況!」
「笑ってる場合じゃないんだって!! うぅ……。婚約なんて死んでも嫌だけど、転校したら親族共に死ぬまで馬鹿にされる……。どちらにせよ死ぬ」
「婚約なんて断ればいいじゃん。まだ返事してないんでしょ?」
俺だって、他の家からの申し出ならば、こんなに悩んだりしない。今回はあまりに相手が悪すぎるんだ。
「わかるか? あの天勝が朔魔に申し込んだんだぞ? この時点でどう断っても角しか立たないんだよぉ……」
あいつのことだから、両家の関係を改善するため――とか何とかいって、耳触りの良い理由をつけたに決まってる。
クソ面倒なことに、相手があの天勝家だ。断る為には相応の理由が必要なんだろうけど、どう足掻いても、生理的に無理だからとしか言いようがない。
だって笑顔を見るだけで虫唾が走るんだぞ? 結婚なんてしてみろ、間違いなくストレスで死ぬ。というか、想像しただけで鳥肌がすごい。
最悪な未来図を思い浮かべ、声にならない唸り声をあげていると、惡澤が思い出したように口を開いた。
「……あっ、いいこと思いついたかも~」
「ほんとか!?」
「うん。いっそのことさぁ、みつると俺が婚約すればいいんだよ」
「……………?」
首を傾げたのなんて、いつぶりだろう。気づいた時には、結構な角度で視界が斜めっていた。
「あはは、梟みたーい」
「……冗談にしてはタチが悪いんじゃないか?」
「冗談じゃないってぇ。ほら、他に婚約者がいれば自然に断れるし、アイツもいい加減に諦めるでしょ」
「それはそう、だけど……」
気づいたら自分の席に座ってたし、頭上では昼休みを告げるチャイムが鳴り響いていた。人は、自分のキャパを超えるものに遭遇すると、何も考えられなくなるらしい。今日、新しく学んだことの一つだった。
「惡澤……どうしよう、俺、転校するかも……」
「えーいきなり何?」
渾身の思いで打ち明けたにも関わらず、隣に座る男はスマホから目を離そうともしない。これには流石にイラッときて、油断している脇腹に、何度も肘打ちをお見舞いしてやった。それが友達の話を聞く態度かってんだ。
「お前信じてないだろ!! もう、もう大変だったんだからな!?」
「いてて、わかったわかった。ちゃんと信じるって~」
気怠げなオレンジ色が向けられて、これで満足かとでも言うように、ぽんぽんと頭を撫でられる。普段は甘えたの癖に、こういう時だけ子供扱いするのはやめて欲しい。
けれど、ひとまずは聞いてくれるだけマシだと考えなければ。惡澤以外に相談できる友達なんていないしな。
……なんか、自分で言ってて悲しくなってきた。
「ん~、なるほどねぇ。勇者の子孫がいきなり婚約を申し込んできてぇ、それを心配したお兄さんが、みつるを転校させようとしてるってことか。ふっ……あっは、なに~そのおかしな状況!」
「笑ってる場合じゃないんだって!! うぅ……。婚約なんて死んでも嫌だけど、転校したら親族共に死ぬまで馬鹿にされる……。どちらにせよ死ぬ」
「婚約なんて断ればいいじゃん。まだ返事してないんでしょ?」
俺だって、他の家からの申し出ならば、こんなに悩んだりしない。今回はあまりに相手が悪すぎるんだ。
「わかるか? あの天勝が朔魔に申し込んだんだぞ? この時点でどう断っても角しか立たないんだよぉ……」
あいつのことだから、両家の関係を改善するため――とか何とかいって、耳触りの良い理由をつけたに決まってる。
クソ面倒なことに、相手があの天勝家だ。断る為には相応の理由が必要なんだろうけど、どう足掻いても、生理的に無理だからとしか言いようがない。
だって笑顔を見るだけで虫唾が走るんだぞ? 結婚なんてしてみろ、間違いなくストレスで死ぬ。というか、想像しただけで鳥肌がすごい。
最悪な未来図を思い浮かべ、声にならない唸り声をあげていると、惡澤が思い出したように口を開いた。
「……あっ、いいこと思いついたかも~」
「ほんとか!?」
「うん。いっそのことさぁ、みつると俺が婚約すればいいんだよ」
「……………?」
首を傾げたのなんて、いつぶりだろう。気づいた時には、結構な角度で視界が斜めっていた。
「あはは、梟みたーい」
「……冗談にしてはタチが悪いんじゃないか?」
「冗談じゃないってぇ。ほら、他に婚約者がいれば自然に断れるし、アイツもいい加減に諦めるでしょ」
「それはそう、だけど……」
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