人生最高到達点

プロローグ

「ね？　約束は守らないと」

　人気のない路地裏。散乱したゴミと悪臭が立ち込めるその場所で、あまりにも場違いな男が微笑んだ。

　死にかけの虫みたいに、ジジ、ジジと頭の上から音が鳴り、ぼやけた視界が嫌な点滅を繰り返す。
　蹴り倒された勢いのまま強かに打ちつけた頭が痛い。男の顔が近づく度、左胸に押し当てられた革靴がじわりじわりと重みを増した。知らず喉から呻きが漏れる。

「ああ嬉しいな。ずっとこの日を楽しみにしてたんだ」

　意識が切れる直前、ごんっと鈍い音がした。

　今日の天気は雨のち晴れ、ところにより札束が降るかもしれません。空になったアタッシュケースにご注意を！