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17話 旅の問題

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「うっぷ、もう食べれない・・・」

「私も、今日中に食わないと駄目そうだけど諦めるしかないわね」

なんだかんだ言ってもったいないの精神が働き、渡された大量の食べ物を毎食食べている。育ちの良さそうなユカも俺と同じように食べているのは謎だけど。

「さて、今日はこの辺りで休もうか。俺から見張りをするから先に休んでくれ」

「じゃあ遠慮なく。疲れがたまって来たらすぐに起こしなさいよ」

やはり2人での旅となると休息の時間が厳しい。あと1人でもいれば・・・

『なかなか難しいでしょうね。好き好んでサウスの街に行く人なんていないですからね』

「それなんだよなぁ、この間の村でもサウスの街に関する情報は何もなかったからそういうことだよね・・・」

やはり誰も行きたがらないから自分で行くしかないのか・・・そう思っていた時

『地震の直後は様子を見に誰かが言ったとは思います。流石に薄情な人ばかりということはないでしょう』

まぁそれはそうだ。そうでなくても状況確認の依頼は出ていると考えるのが普通だ。

だとしたらそれに関する情報は少しくらいは出てこないとおかしい。何か原因があるのだろうか・・・

『結局は行ってみないと分からないということです。ここまでは順調に進めているのですから焦らず行きましょう』

むぅ、確かに。やることは変わらないんだから新たな情報を手に入れるまではとにかく進むしかないか。

何かある度に色々と考えるが結局答えにはたどり着けない。今がまさにその時である。そういう時は無駄な時間を使いがちだ。

(今はお前がいるおかげで止めてくれるけどな)

『珍しく褒められた気がします』

(そういうところだぞ)

俺が頭の中で言い争っていることをユカは薄々感づいているようだ。何か楽しそうに見える。

「言っておくが碌でも無い奴だぞ」

「それはどっちの方のことを言っているのかしら」

「それを俺に言うとはいい度胸だな」

『全くです』

はぁ、どいつもこいつも俺の敵ばかりだ。

並列思考によって得られるものは知識、状況判断等挙げていけばキリがない。それに対してのデメリットなんて先に上げたものに比べれば小さいものだ。

・・・と言い聞かせ続けてきてここまでやってきた。あるかもわからない常時発動のスキルを何とかするという目標を掲げてここまではやって来れた。

しかし、この世界の住人ならば並列思考のスキルを有難がることこそあれ、忌み嫌うことはほとんどないのである。理由は単純で先に上げたメリットの方が圧倒的に大きいからだ。思考を除かれていることに対することをストレスとは思わない。完全にスキルの機能として受け入れているところがあるからだ。

しかし、アンドレもとい斎藤信二は前世の記憶を持ったまま転生してしまった。現代的な考えが残ったままのこの状態では並列思考というものを不気味に思うのはある意味仕方がないことなのだ。

スキルを与えた存在もこのことを考慮できていなかったため良かれと思ってこのスキルを与えたのだ。

もちろん、このことをアンドレは知る由もないしスキルを与えた存在も彼の苦しみを知ることはない。

結果的に世界を救ってくれれば知ったことではないのだ。

アンドレは日々苦しみながらも日々世界を救うための行動を結果的にする羽目になっている。それが運命であるかのように・・・

「なんだかすこし雰囲気が変わってきたか?」

次の街はサウスの街の手前では最も大きい街だ。この街はサウスの街とも交易が盛んであるため、情報収集にはうってつけだ。

だが、その街が近づいて来るに従い、何やら魔物の様子がおかしい。明らかに魔物の強さが上がっているのだ。

『今の貴方達では対処は可能ですが並の冒険者では苦戦は免れられないです。魔物の数も多くなってますし駆除が追いついていない可能性が高いです』

街の周囲に魔物が増えれば交易を阻害してしまうことにもなる。

そうなれば必然的に街からの情報も来なくなる。しかし、普通ならば徐々に魔物が強くなっていくのでどこまでは情報が入ってくるのかということはわかるのだ。

(そうなっていないから情報が中途半端なのか?それとも手前の街の情報を集めることを怠ったのが悪いのか?)

『次回以降は集める情報の範囲を広げて提案するようにします。今回は今更引き返すわけにもいかないのでこのまま進みましょう』

こういう時に融通が利かないやつとも思ったがある意味俺の分身体でもあるので俺自身が気づけなかったことに期待するのは何か違う。自身の未熟さを悔やむがこれも勉強と思うしかない。

「気づいていると思うが魔物の様子が今までと明らかに違う。なんとなく予想できたかもしれないがこれからは今までのような呑気な旅とはいかない。休息の取り方も見直さなければいけないかもな」

今までは一人が見張りでもう一人が休むという方式を取っていたが、いつまでできるかは分からない。一人では魔物の対処が困難になった時、休むことができなくなってしまう。そうなればもう進むことはできなくなる。

「疲れも溜まってきたし次の街に着いたら色々と備えないとね。この様子だと街の中ですら怪しいかもしれないけど・・・そうなったときは引き返すことも視野に入れないといけないかもしれないわ」

ユカの口から引き返すという単語が出てきたことに驚いた。しかし、彼女もそれくらいの判断はできる人だ。自身が助からなければさらに多くの人に迷惑がかかることも理解している。

「やっぱり2人じゃ厳しいのかな。それとも何か安全に休息を取れるような方法があればいいんだけど・・・」

大きくなりつつある疲労回復という問題に悩まされつつ2人の冒険者は人通りの少ない街道を進んでいく。
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