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18話 王との会談

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次の日、俺はサラと2人で王城の前へと来ていた。昨日は手続きとかで結構時間がかかったらしいが今日は来客という扱いですぐに奥へと通された。

外から見ても非常に大きいとわかる建物だったが、中に入ってみての感想は圧巻としか言えない。昨日見たスラムの館などおもちゃに見える。俺は落ち着かなく辺りを見ながら進んでいく。サラは何度も来たことがあるのかなんともなさそうだが俺は何回来てもこうなる自信はある。

10分以上迷路のような道を歩かされ、ようやく玉座の間の前にたどり着く。広すぎるってのも不便だな。

「ここで少々お待ちください」

案内役はそう言うと玉座の間の前にいる騎士と話をしている。少し時間がかかりそうだ。

「毎回こうなると面倒だな、お前は慣れたのか?」

「まさかー、貴方はともかく私なんて何回も会ってるからもう少し手続きを簡略にしてほしいってずっと思ってるわ。もちろん一国の長と簡単に会えるなんてリスクがでかすぎるからできないのはわかってはいるんだけど・・・そろそろ入れそうね」

案内役がこちらに戻ってくる。ようやく部屋へと入れるようにはなったが幾つか注意をされる。細かいことは覚えていないが大体が粗相のないようにってことだった。

俺達は玉座の間へと足を踏み入れる。ここに来るまでにいろんな部屋が見えたがそのどれよりも大きい。まさに王のための空間といった感じの荘厳さも感じられる空間に圧倒されてしまった。

「お主がユウタか、サラ殿から聞いておるぞ。なんでも娘の命の恩人だとか。本当に感謝する。・・・ところで今日はマリーも来るとのことだったがどこにいるのかな?」

「王様、そのことで少し話が。マリー様を今から呼びますがこのことを口外しないと約束していただけないでしょうか。そうでなければ王様と言えど今ここで会わせることはできません」

「ううむ、わかった」

「では少々お待ちください。ユウタ、アレを」

俺は魔石を取り出し、魔石を数回叩く。魔術式の起動の合図だ。王女の収納魔法が発動され、異空間と繋ぐ門が現れる。俺達は何度も見た光景だが王様にとってはかなり刺激が強かったようだ。

「え?え?その魔石は・・・いや、詮索するのはよそう。それにしてもここで収納魔法を使うとは・・・まさか?」

「そのまさかです。王様」

直後、マリーが現れる。目の前にいる父との久しぶりの再会に抱き合う2人。しばらく2人の時間が流れる。サラも俺もこの時ばかりは感動していた。

「昨日無事だとは聞いていたがやっぱり実際に会うまではどこか疑っていたところがあった。でもこうして会うと本当に無事で嬉しいという思いがこみ上げてくるよ」

(しかし、収納魔法は街や城に入る前に厳重にチェックされるはず。その答えがこの魔石にあるのだろうが聞かない約束だからな)

収納魔法は便利な魔法だが危険なものを持ち込む時にこれほど便利なものはない。そのため、その人が収納魔法で何を保存しているか調べる魔法というのも存在している。サラが同行するようになっても王女の収納魔法を使い続ける必要があったのはこの魔法のせいである。

「さて、そろそろ本題へと入るとしましょう。面会の時間も限られています」

「おぉ、そうだったな。では・・・ワシらは娘への魔物襲撃と今報告されている魔物の被害。この2つは繋がっておると考えておる。魔物の被害は深刻な問題で早急の対応が必要なんじゃが魔物どもに手を焼いている。そして娘が魔物の被害にあった件じゃが・・・何者かが会談の情報とマリーの居場所を報告していたとワシは推測しておる。そういえばあの襲撃から生き延びた騎士が1人おったのう。そいつと会って話をしてみれば何かわかるかもしれんが・・・」

「おかしいわね、あの戦いの中で生き延びた騎士は魔の森の中まで一緒に居たデビッドだけのはず。そのデビッドも魔の森でやられてしまったから誰も生き残ってない。少なくとも私の目にはそう見えたんだけど」

「その騎士は何か言っていなかった?」

「そうじゃのう、確か途中でマリーと戦闘中にはぐれて合流しようとしたけどその前に魔物にやられて気絶したとか言っていたのう」

「うーん、戦闘中はみんなあまり余裕がなかったからないとは言い切れないわね。他には?」

王様は地図のある1点を指さす。

「ここで戦闘があって娘とはぐれたと言っていた。ワシらはその言葉を信じて捜索したが特に手がかりは得られなかった」

「ここ?本当にそう言っていたの?」

「あ、あぁ。間違いない。ワシの他にもう一人聞いていた者もおるから確認してもいいが」

「まぁそれは私達が帰った後で確認お願い。それより、私達が襲われたのはここよ」

王様の指した点とは違う1点を指さす。微妙に距離が離れていて王様の指した場所を中心的に捜査する場合外れてしまう場所だった。

「しかし、あの場所で戦闘があった形跡があったっていう報告は来ている。これも偽装なのか?」

「それはわからないけれど・・・今示した場所も捜査してほしいわ。ある程度は手を加えられているかもしれないけど完全にはできないはずよ」

「それはできない。お前の捜査は表向きは続いているが実はもうしていない。情報がどこから漏れたかということを調査している。それに他の者は魔物の相手で手いっぱいだ。今のこの国にそんな余裕はないのだ」

「それは仕方ないわね。じゃあ例の騎士、あの人の調査それくらいはできると思うから監視含めてそれはお願い」

「わ、わかった。それくらいはしよう。それで魔物だが・・・聞いたところによるとユウタは相当な手練れだ。そこで我が国、いや人類のために手を貸してはくれないか?」

「おう、元々王女様と約束したからな。ただし、お礼はたっぷりいただくぜ」

「わかった、約束をしよう。この件を解決した暁には望むものを与えよう。もちろん、旅に同行したものも同じだ。では、そちらの方からも色々と聞きたい」

王女は魔物の襲撃から魔の森であったこと、魔物の拠点を潰したことなど今までの旅の軌跡を所々端折りながら伝えていった。

「ふむぅ、もしかしたらお前達が魔物を倒していなければ今頃我々はもっとひどい状態になっていたかもしれない。いや、おそらくそうなっている。今の時点でも何か返してあげたいところだがお前達の存在を公表すべきかと言われると何とも言えない。困ったな・・・」

「しばらくは今まで通り魔物の拠点を一つづつ潰していきます。その中で何かわかったらまたこうして話しましょう」

「うむ、わかった。それと魔物を操っている者を捕らえたときじゃが、衛兵へと突き出してもらえばこちらで何とかしよう。これと一緒に衛兵に出せばワシの命だとすぐにわかってもらえる。衛兵が怪しいときはこれでも駄目になってしまうがな。そろそろ時間じゃな、今日は会えてうれしかったぞ。マリー・・・」

王様が涙を拭いてまた前を見たとき、もう娘の姿はなかった。こいつらなら何とかしてくれる。連日嫌な話ばかりではあったがようやく希望と言う名の光が見えてきた。

「頼んだぞ・・・」

部屋を出る前に王様は印が何か所かついている地図を渡す。調査で魔物の住処と怪しまれている点だそうだ。これはありがたい。俺とサラは王様に別れを告げ、城を後にした。王女と出会ってからの一つの目標は達成した。これからは魔物の討伐と調査である。新たな目的を得た俺達の旅が再び始まった。
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