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第一章 惑星ガイノス開拓計画
リョースケの奮闘
しおりを挟む『ID-773b99375S、木村リョースケを認証しました。ご用件をどうぞ』
「どうもHALちゃん、ちょいと観測して欲しい計画があるんだけど」
『了解しました。量子観測機に接続します。観測する内容の入力をどうぞ、入力内容は細かい程精度が上がります』
俺は今仮想空間にダイブして量子コンピューターHALに繋がっている。その機能の一つ、量子観測機を使いに来たからだ。
量子観測機とは簡単に言えば未来予測である。その膨大な演算能力が出力した予想は99,5%の的中率を誇る。
ほぼ確実に当たる占いのようなものだ。
当然タダではない。その使用料はおいそれとは出せない金額である。なので専ら企業の重大な事業計画や国家プロジェクトなどで使われているのだ。
ここで出たパーセンテージによって計画を実行に移すか、断念するかが決定すると言っても過言ではない。
ちなみにこの通話は量子暗号でプロテクトされているので、アイデアが盗まれる心配はない。
まあ、地球上で最も高い性能を持つ量子コンピューターに、ハッキングしようとする輩など今の時代いないとは思うが。
『入力内容を確認しました。しばらくお待ち下さい』
念入りに計画内容を入力したが、俺は心配はしていなかった。
現役でバリバリ働いてた頃、数え切れない程プロジェクトを成功させていた俺はこの手の直感がハズれたことは今まで一度もない。
そういうデザインをされて生まれて来たから当然ではあるけども…
ただ、HALが出す数値、言わば成功保証書だけは絶対に必要だ。これがないと始まらない、何せこの後は政府相手にプレゼンする予定だからな。スムーズに交渉する為にはこの程度の出費は必要経費だ。
しかし、うむ…ひさびさに仕事をしている感がある。実に楽しい。
ハンティング・ワールドを計画して以来、仕事でワクワクする事なんてなかったからな。正に生ける屍だった。人間、やっぱり多少は働かないとダメだな。
『観測が完了しました。この計画の成功率は96,73%です。実行した場合の項目ごとの詳細はコチラになります。なお、未知の項目は随時追加可能です』
…え?
…
…えっ?
よ、予想外の数値が出てきた…低くても80%良くて85%だと予想していたが11%以上も高い!いや、高くて困ることはないんだけれど。
参考なまでに言っておくとHALが出した数値が80%を超えたらよっぽどの事がない限り成功すると言われている。
フッフッフ、これで鬼に金棒だ。早速次の段階に取り掛かろう、今日から忙しくなるぞ。
「ありがとう。じゃ署名入りデータをお願いするよ」
『了解しました。では、成功をお祈りしています』
目の前が一瞬真っ白になり、仮想空間から離脱。両隣にはミラとバニーが座っており、先程と変わらないリビングの風景があった。いや、訂正する。変わっていた事が一つ。ズボンが降ろされていた…二人の手はパンツに伸びている。
「…何してんの?」
「チッ!思ったより早かったぜ」
「惜しかったわね♪」
「舌打ちするな!…まったく油断も隙もねえな。もう少しでHALの前でヘンな声出すところだったじゃねえか」
「またまた、ダーリンたら。そういうプレイがお好みでしょ?」
「お好みじゃねえよ…嫌いじゃないけども…ってそうじゃなくて!ミラ、お母さんと繋いでくれ」
「まあ!リョースケったらママと合体したいだなんて!そんな事普通、娘に頼むかしら!!この変態!」
「ワザとらしくリアクションしてんじゃねえよ。繋げてくれとは言ったけど、合体とは一言も言ってねえよ」
「いえ、ちょっと待って!?…ママとリョースケと3人で?…アリね。アリかもしれないわ、うん。分かったわリョースケ。そこまで言うなら私も覚悟を決めましょう」
「何の覚悟を決めたんだよ。一ミリも理解してねえじゃねえか、いいから繋いでくれよ」
「チッ!…しょうがないわね………あ、ママ。今大丈夫?うん、リョースケが話があるって言うから…そう…繋ぐわよ」
全く、どういう思考回路で恋人とお母さんと絡むなんて発想が出てくるんだよ。
ミラがこんなになった原因をいつか突き止めてやる!
『リョースケ君!久しぶりねー!どうしたの?もしかして親子丼のお誘いかしらー!?やだもう、照れるわねー』
原因を突き止めると誓った2秒後に原因が見つかった事に驚きを隠せない。
「お久しぶりですエマさん。取り敢えず落ち着いて下さい。誰もそんな話はしていません」
『あら?違ったの?残念ねー、おばさん最近ご無沙汰だからちょっと先走っちゃったわ♪』
エマ・フレイショーアーは宇宙開発省のトップである。つまり、マイクの親父さんの上司ということだ。
おばさんなんて言ってるが、身体はバイオテクノロジーの恩恵でミラと変わらない若さを保っている。十分に人目を惹く美人さんだ。
「またまた、エマさんを誘いたい男性なんて掃いて捨てる程いるでしょうに」
『そんな事ないわよー?それに誘われたとしてもリョースケ君みたいに素敵な男性じゃないと断っちゃうのよね♪』
「ハハ、お世辞だとしても嬉しいですエマさん…ってちょミラ!パンツを脱がすな!ほらぁ!エマさんがそんな事言うからミラが…おいバニーも手伝ってんじゃねえ!」
『あらあら、ミラったら嫉妬深いわねーおばさんも混ぜて貰ってもいいかしら?』
「ええ是非。ですがそれは次の機会に、今日は大事な話がありまして…ウッ!」
『ウッ!って何かしらリョースケ君?その大事な話よりそっちが気になっちゃうわ』
「ハム…ンン…リョースケ…ハム…どうぞごゆっくり、話してていいわよ?…ハア…」
「ハアン…フフ♪…アム…リョーちゃん元気になっちゃった♪」
何故恋人のお母さんと話している時に…コイツらどういう性癖を所有しているというのか。心から楽しそうに微笑む二人は、ハンティング・ワールドで培った連携プレーを活かして俺の小刀を大太刀にまで鍛え上げやがった。
何を言ってるか分からない人もいるかも知れないが、察してくれ…おい、マリーまで何故俺のシャツを脱がそうとする?
「いえ、何でもありません。ちょっとタンスの角に小指をぶつけただけです…クッ…ウッ!」
『いいぞ、もっとやれミラ』
「娘さんの性に対するストレートな表現は、エマさんの熱心な教育の賜物だと今確信しました」
『やだリョースケ君たら!そんなにkotobazemeされたら、大変なコトになっているこのパンツを脱がざるをえないわ…エイ♪』
「エイ♪じゃないよ!ちょっと何してんの?俺そんな事言ってないでしょ!?」
『フッ…ここを誰の仕事場だと
思っているのかしら?宇宙開発省のセキュリティーを舐めないで貰いたいわね(キリッ!』
「職場でパンツを脱ぐな!」
『ちなみに暗証番号を知っている秘書は午前の業務を終えて、もうすぐ報告に来る予定』
「セキュリティー関係ないよ!」
『いつ秘書が入って来るかと思うと…ウフフ♪ゾクゾクするわね?さあミラ、恋人の喘ぎ声をたっぷり聞かせてちょうだい?』
「おっけー任せてママ」
「もうやだこの変態母娘ーーーー!!」
******
『ふぅ…惑星ガイノス開拓計画?』
その後すぐにエマさんの秘書が入って来た事によって、ようやく話が出来る状況に落ち着いた。
こちらも三人にハリセンをかまして椅子に座らせた。
「そうです。今朝のニュースとガイノスの資料を偶然にも拝見する機会がありまして」
『偶然てあなたね……成る程…バカラックね…後でosiokiしてやるわ』
「僕は何も言ってませんよ?まあ、マイクの親父さんは喜ぶかもしれませんので止めはしないですが」
『確かにあの馬鹿ラックは喜びそうだわ…別の方法を考えましょう。さてリョースケ君、宇宙開発省の代表者としてはガイノスの開拓には賛成よ。あの惑星には計り知れない可能性が眠っているから。でも個人的には反対するわ。資料を見て分かっているとは思うけど現状はかなり厳しいわよ。いえ、控え目な言い方はよしましょう…開拓は無理よ』
「そうでしょうね、あのモンスターを見てガイノスに行こうなんて人間はまずいないでしょう」
『その通り。その後ドローンからのデータが送られて来ているのだけれど、情報が集まれば集まるほどウンザリするような環境よ。だからいくら莫大なビジネスチャンスがあるとはいえ、娘の恋人を見殺しにするわけにはいかない』
仕事モードに入ったエマさんは、先程とは打って変わって真面目な声で計画を断念するよう促してくる。
まあ、そりゃそうだ。あれを見たら誰でも反対するに決まっている。
『平和条約の例外が認められないか国会で掛け合ったのだけれど、やはり自衛以外の目的で兵器の製造は却下されたわ。だから軍隊に頼るという選択肢も諦めてね。そんな状況で宇宙船を出す政府も企業も当然いないわ。という訳で現状は打つ手なしよ』
要するにガイノスの開拓は絶望的である、と。
フフン、誰も手出し出来ないブルーオーシャンか。これがビジネスなら余裕の一人勝ち、笑いが止まらないだろう。
しかし、今回は利益は二の次だ。俺の目的は違う。
「何とも心の躍る条件ですね。心配してくださるのは有り難いですが、僕の計画は兵器の製造も軍隊も必要ありません。ひとまずコチラを確認してください」
『これは…HALの署名入りデータ?まさか量子観測機を使ったの?』
ちなみにHALの署名はこれまた量子暗号化されており、複製は絶対に出来ない。
もし、複製してバレた場合(100%バレるが)重大な詐欺罪にあたり、一生刑務所での生活が待っている。
『成功率は…きゅ、96%オーバー!?何なのこの数値は!見たことないわ!リョースケ君疑うようだけど、偽造してないわよね?』
ええ、そういう反応になりますよね。
「娘の恋人を疑うだなんて心外ですねエマさん。僕がそんな男に見えますか?」
『いえ…そうよね、どうかしてたわ。初めて見た数値だったものだから…ごめんなさいねリョースケ君許してちょうだい』
「いえいえ、正直僕も最初は信じられなかったのでお気持ちは分かります。という訳で、どうでしょうか?」
『ちょっと待って…この計画が実現すれば…凄い…地球の抱える問題が同時に二つも?いえ、ガイノスの問題を含めば三つ。それに予想される経済効果は…oh…何てことなの。リョースケ君抱いて…いえ先走ったわ。あなた天才ね、まさかの発想だわ…』
何故この母娘は話の途中で脈絡なく発情するのだろう?遺伝子に異常があるとしか思えない。美人だから素直に嬉しいけども。
「恐れ入ります。では、ご協力頂けますか?」
『勿論支援するわよ。政府は正式にあなたに依頼することになるでしょう。ところでリョースケ君。疑う訳ではないのだけど、この調査員達は本当に大丈夫なの?確かにこれなら死人が出る心配はなさそうだけど…ちゃんと協力してくれるかしら?』
「ご心配なく。アイツ等キ○ガイですから」
『そ、そう…理由になってない気がするけど、まあいいわ。うーん、それにしても文句のつけようがない計画書ね。宇宙船の手配も政府に頼り切りではないし』
「それについては民間企業に当てがあります。勿論、そちらに頼る部分も出てきますが」
『当然頼ってちょうだい。他に何か必要なものはあるかしら?』
「今のところはない…あ、訓練施設があれば、もしくは人気のない広い場所でも構いません」
『お安い御用だわ、手配しておきましょう。じゃあ条件が整い次第プレゼンと行きましょう、その時は私も同席するから』
「え?それはエマさんにお任せしますよ。僕が行く必要ありませんよね?」
『こっちに来させて、夜は打ち上げ。その後グヘヘな展開にすんだよ。察しろよ』
「デジャヴかな?」
「楽しみねママ」
『負けないわよミラ』
「もうやだこの母娘ーーーー!!」
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